県議がデタラメを言ってはいけないと思う

2016-03-19

●小林県議が2015年9月水害について話した

小林幹夫・栃木県議会議員が鹿沼議会議員だった時のダムに関する発言が非論理的であったことについては、過去記事「ダムを造る理由は正しいか」に書きましたが、小林県議は、未だにおかしなことを言っています。

小林県議は、2016年の1月又は2月に「小林幹夫後援会新春の集い」を開いており、その時の県議のあいさつがYouTubeにアップされています。

あいさつの中で、小林県議は、2015年9月の水害について次のように話しています。

あの災害、本当に大きな災害だったんです。大きな災害で鹿沼市の方々は本当に大変な思いをした。でも、あの災害は未然に防げた可能性も大いにあるんです。実は南摩ダムが平成26年に完成をしていれば、黒川の上流や大芦川の上流で取水をしていれば、あのような大きな災害に私はならなかったと思います。

これは、民主党政権が南摩ダムは要らないということで、50年に1度、100年に1度の災害なんかに公共事業なんか要らないって、はっきり言ったわけであります。

ところがどうでしょう。50年に1回、100年に1回の災害があって、あれだけの大災害が起きたわけであります。そして、災害が起きたときには、困ったときには自衛隊(聞き取れない)、それも宇都宮駐屯地に非常に優秀な有事即応部隊がいるんです。

そして、災害が起きたときに、宇都宮市と日光市は、もうすぐさま自衛隊に出動要請をして、助けていただいた。

鹿沼市はどうでしょう。要請をしなかったのです。これは不思議でなりません。市会議員が、鈴木議員が多分質問したと思うんですけれども、なぜ自衛隊を呼ばなかったんですかと。自衛隊を呼ぶ状況ではありませんでしたという答弁です。本当にそうなんかな。首を傾げてしまいますけれども、そういうことが、今、鹿沼市で現実的に行われているということを是非皆さんご理解をいただきたいと思います。


●鈴木毅市議も同様の発言をした

小林県議は、「あの災害は未然に防げた可能性も大いにあるんです。実は南摩ダムが平成26年に完成をしていれば、黒川の上流や大芦川の上流で取水をしていれば、あのような大きな災害に私はならなかったと思います。」と言いました。

去年初当選を果たした鈴木毅・鹿沼市議会議員も2016年3月10日の一般質問において、次のとおり同様の発言をしました。

大量の雨量を調節するために治水ダムというものがあります。その目的のために南摩ダムの建設が予定されていたと私は思います。そして予定どおり建設がなされていれば、平成27年には完成しており、その結果、大芦川、黒川の上流で生じた多量の雨水はほとんど南摩ダムで貯留ができ、昨年の大災害にはならなかったと私は思いました。


●鹿沼市長の答弁

上記鈴木市議の質問に対する佐藤信・鹿沼市長の答弁は、次のとおりです。

南摩ダムの質問についてお答えをいたします。
まず、思川、大芦川の治水に関する南摩ダムの必要性についてでありますが、そもそも南摩ダムは思川開発事業において位置付けられた多目的ダムであります。目的の一つとして、洪水調整、いわゆる洪水の目的が当然あるわけでありますけれども、それはダムよりも下流域の洪水調整を目的としたものであって、そもそも黒川や大芦川の治水については、目的とされておりません。誤解のないようにお願いしたいと思います。

本来は、黒川と大芦川から取水した水を南摩ダムに送って貯水するとともに、もし、黒川や大芦川が渇水となった際には、ダムから川へと水を戻すという計画であります。

ダムの水と川の水とを行き来させて、農業用水などに利用することを目的としたものでありますので、黒川、大芦川の災害時の洪水調整や治水について期待するのは誤りであります。

したがって、仮に昨年9月の関東・東北豪雨の際に、南摩ダムが完成していて、黒川、大芦川から取水がされたとしてもですね、あれだけの大豪雨の中で、災害を防ぐことはできなかったのであります。

南摩ダムで黒川、大芦川の防げるかという質問についての答は、「そもそも黒川や大芦川の治水については、目的とされておりません。」ということに尽きると思います。

●水資源機構のホームページにも黒川、大芦川への洪水調節効果は書かれていない

水資源機構の思川開発建設所のホームページにも南摩ダムによる黒川、大芦川への洪水調節効果は書かれていません。

「川を流れる水の量を調節し、思川下流地域や利根川中・下流地域の洪水被害の拡大を防ぎます。」と書かれています。

水資源機構は、「思川下流地域」の水害を防止するのが南摩ダムの目的であるとしています。更に「利根川中・下流地域」も治水効果の及ぶ範囲として書かれていますが、これはインチキです。思川の洪水は、すべて渡良瀬遊水地で全量貯留してしまい、利根川に影響を及ぼさないというのが利根川の治水計画ですから、南摩ダムの治水効果が利根川に及ぶはずがありません。

いずれにせよ、南摩ダムの治水効果は、南摩ダムより下流にしか及ばないことは、水資源機構のホームページや思川開発事業のパンフレットを見れば明らかなことです。

「実は南摩ダムが平成26年に完成をしていれば、黒川の上流や大芦川の上流で取水をしていれば、あのような大きな災害に私はならなかった」などという話は、小林県議の思い込みであり、全くのデタラメです。

●大洪水のときには取水しない

なお、確かに、小林県議や鈴木市議が考えるように、黒川、大芦川が大洪水のときに、取水して南摩ダムに送水すれば、両河川の流量が減り、導水が水害防止に役立つようにも思え、私も昔はそういうこともあるのかなと考えたことがありますが、取水される河川が大洪水のときには、取水しないのが現実のようです。

以前、水資源機構の職員に、黒川、大芦川が大洪水のときに取水するのかと質問したところ、取水しないとの回答でした。群馬県の奈良俣ダムも水資源機構が管理する導水ダムですが、管理事務所に電話で問い合わせたところ、大洪水時には取水しないとの回答でした。

大洪水のときに取水したら、流木まで導水トンネルに吸い込んでしまいますから、大洪水時に導水はできないとのことです。

●栃木県議会は意見書を撤回しろ

栃木県議会は、2009年12月14日に湯西川ダム建設事業及び思川開発事業の推進を求める意見書を可決しました。

可決に賛成した議員の中に小林県議も含まれていたはずです。

しかし小林県議は、南摩ダムの目的を誤解していました。誤解していたのは、小林県議だけではないことも考えられます。

少なくとも南摩ダム建設予定地の地元県議が思川開発事業の目的を誤解していたことは確実ですから、栃木県議会は、湯西川ダム建設事業及び思川開発事業の推進を求める意見書を撤回するべきです。

地元県議が事業の目的を誤解していたのですから、上記意見書の可決は、重大な事実誤認に基づく議決であり、無効だと思います。

●小林県議の誤解は事業の無意味さを象徴している

思川開発事業は、1964年に構想が発表されました。それから52年が経過しています。小林県議は、1987年に鹿沼市議会議員に初当選していますので、議員生活は29年になります。

議員生活が30年にも及ぼうというベテランの地元議員が思川開発事業の目的を正しく理解していないという状況は異常ではないでしょうか。

議員にも問題があると思いますが、思川開発事業が異常だということです。同事業は、半世紀にわたり、目的を変え、規模を変え、建設を自己目的化して生き延びてきました。事業主体も議員も事業の本来の目的を見失って、ひたすら建設することにしがみついているのだと思います。

ベテラン議員が事業目的を誤解しているという事実は、事業が意味を失っていることを象徴していると思います。

●宇都宮市は自衛隊の出動要請をしていない

二つ目のデタラメは、「災害が起きたときに、宇都宮市と日光市は、もうすぐさま自衛隊に出動要請をして、助けていただいた。鹿沼市はどうでしょう。要請をしなかったのです。」というくだりです。

ここで「災害」とは、2015年9月豪雨による災害を指すことは文脈上明らかです。

昨年9月、宇都宮市と日光市は、自衛隊の出動要請(災害派遣要請は知事がするので、正確には、「災害派遣要請の要求」なのだと思います。災害派遣要請の仕組参照)をしたのでしょうか。

防衛省のホームページを見ると、自衛隊は、9月11日に日光市三依に孤立者の救助のために部隊を派遣したことが掲載されています。

しかし、宇都宮市が派遣要請の要求をしたというお知らせ記事は見つかりません。そこで、宇都宮市行政経営部 危機管理課に問い合わせたところ、昨年9月に自衛隊の派遣要請の要求をしたことはないという回答がありました。

小林県議の「宇都宮市と日光市は、もうすぐさま自衛隊に出動要請をして、助けていただいた」という発言は、半分は事実ですが、宇都宮市についてはデタラメだと思います。

鹿沼市では、孤立者が出なかったのですから、自衛隊の派遣を求めなかったのはおかしなことではないと思います。

もちろん自衛隊ができることは、孤立者の救助だけではないでしょうが、それなら、小林県議は、昨年9月に鹿沼市に、自衛隊に来てもらって何をしてもらうつもりだったのでしょうか。

小林県議は、後記のとおり、昨年9月の鹿沼市での水害は人災だと言って、佐藤市長の判断を批判しているのですから、自衛隊に何をしてもらえば災害が防げたのかを説明するべきだと思います。

●自衛隊幹部が「災害は人災」と言った、もデタラメ

鈴木毅市議の質問に関連して、下野新聞は2016年3月11日に次のような記事を掲載しました。

「災害は人災」発言で対立 鹿沼市長と小林県議

 【鹿沼】佐藤信(さとうしん)市長は10日の定例市議会一般質問で、昨年9月の水害の対応について小林幹夫(こばやしみきお)県議が発言した内容に対し「全くのでたらめ。作り話。市民に不信感と不安を与え、市政に混乱をもたらした」と述べた。鈴木毅(すずきたけし)氏の自衛隊関連の質問に対して答弁した。近く小林県議に発言の真意について回答を求め、内容によっては法的対応も考えているという。
 
  佐藤市長が問題視しているのは、小林県議が2月13日の自民党鹿沼支部緊急役員会で「(自衛隊宇都宮駐屯地の幹部が)私に『鹿沼の昨年の災害は人災ですよね』と話した」などとする部分。その動画は一時インターネット上に流れた。市は自衛隊に問い合わせ、幹部から直接「そのような事実はない」と回答を得たという。   
  
   「人災とされては市として看過できない。ネットにも流れ、市民の中で誤解が生じている。市への名誉毀損(きそん)にもなる」と佐藤市長。
   
   小林県議は取材に対し、「私が人災ですよね、と話したら幹部がうなずいた。それであのあいさつとなった。拡大解釈した部分はある」とし、自衛隊幹部には迷惑を掛けたとしている。しかし、小林県議は「堤防が決壊するなど鹿沼市全体のあの水害で自衛隊の出動を要請しなかったのはまさに人災」ときっぱり。
   
   5月の市長選を控え3選出馬を表明した佐藤市長と、新人候補を擁立した小林県議。互いの“けん制”とみる向きは多い。    
   

要するに、小林県議が2月13日の自民党鹿沼支部緊急役員会で、自衛隊の幹部が「『鹿沼の昨年の災害は人災ですよね』と話した」と話したが、実際は、「私(小林県議)が人災ですよね、と話したら(自衛隊)幹部がうなずいた。」だけだったというのですから、これもデタラメな話です。自分が言ったことを他人が言ったことにしてはいけないでしょう。    

とにかく小林県議の話は、飛躍していて、理論的な反論のしようがありません。    

繰り返しになりますが、「堤防が決壊するなど鹿沼市全体のあの水害で自衛隊の出動を要請しなかったのはまさに人災」と言うのであれば、自衛隊の出動を要請すれば、どのような水害がどのように、どの程度軽減されたのかを小林県議は説明するべきです。    

佐藤市長が「近く小林県議に発言の真意について回答を求め、内容によっては法的対応も考えているという。」のですから、そこで小林県議の考え方が明らかになるはずですので、続報を待ちたいと思います。    

いくら政敵を倒すためとはいえ、税金で食べている人がデタラメを市民の間に振りまくことは許されないと思います。県議さんの言うことなら本当だろうと思う市民も多いはずですから。

(文責:事務局)
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