真瀬宏子・野木町長も質問に答えなかった

2013年7月30日

●野木町長に質問をした

2013年6月27日、ダム反対鹿沼市民協議会は、野木町長に対し思川開発事業への参画について質問状を送付しました。

野木町長への質問事項は以下のとおりです。

1 野木町の水需要(1日最大給水量)は今後増えると想定しますか。理由もお願いします。
2 水需要が増えないとすれば、野木町が思川開発事業への参画を継続する理由は何でしょうか。
3 野木町上水道の地下水依存率を40%又は65%にまで高めるお考えはありますか。理由もお願いします。
4 野木町が支払う思川開発事業の建設負担金の額及び供給単価は、現在のところいくらですか。
5 栃木県が「栃木県南地域における水道水源確保に関する検討(案)」に沿って事業を進めた場合、野木町が支払う思川開発事業及び渡良瀬遊水池の建設負担金の額及び供給単価は、いくらになりますか。
6 栃木県は、「栃木県南地域における水道水源確保に関する検討(案)」の関連資料において、「野木町は、地下水依存度は低いものの、水道広域化を図る観点から対象区域としています。」という見解を示しています。野木町が栃木県内の水道広域化事業に参画することにどのようなメリットがありますか。

●栃木県の方針は地下水依存率を65%にすること

栃木県は、「栃木県南地域における水道水源確保に関する検討報告書」(以下「検討報告書」という。)において県南関係市町(栃木市、下野市、壬生町、野木町、岩舟町)の水道水源の地下水依存率が平均で92.6%(2010年度)であり好ましくないので、最終的には地下水依存率を40%にすべきだが、中間目標として2030年度に65%にするという方針を決めました。そのためには35,000m3/日の表流水が必要であるとするのが、検討報告書の結論です。

●野木町に新規水需要はない

野木町は、2001年3月2日付け野企第619号「水需要量について」により栃木県に対し、「2025年における水需要予測量 11,664m3/日」とし、「この水需要量に対する水源としては、思川開発事業に参画し確保する考えであります。」、「新規水需要量 364m3/日」、「地下水水源転換量 0m3/日」と報告しています。

しかし、野木町上水道の1日最大給水量は2001年度の8,363m3/日をピークに減少傾向にあり、その後8,000m3/日を超えたのは2005年度の8,049m3/日だけです。2025年に11,664m3/日に達する見込みはありません。

野木町の人口は、10月1日現在で見れば、1999年の27,053人をピークに減少傾向にあり、2012年には25,494人にまで減少しています。

給水人口も2006年度の22,894人をピークに減少傾向にあり、2012年度には22,662人にまで減少しています。

野木町の人口と給水人口は今後も減少傾向が続くと思われますので、今後水需要が増加することはないと思われます。

野木町には新規水需要がありません。

●野木町の地下水依存率は1.4%なのに県の方針を支持

野木町の上水道の地下水依存率は1.4%(2010年度)であり、栃木県の設定した目標である40%や65%よりはるかに低いので、水源を地下水から表流水に転換する必要性もありません。

野木町は新規水需要がなく、水源転換のための需要もないので、新規に表流水を確保する必要性は全くありません。

ところが栃木県は、「栃木県南地域における水道水源確保に関する検討(案)」について提出されたパブリックコメントに対する栃木県の意見として「野木町は、地下水依存度は低いものの、水道広域化を図る観点から(検討の)対象区域としています。」という見解を示しています。

野木町長も2013年2月27日付け野政第173号「思川開発事業への参画による県南地域の水道水源確保について(回答)」で次のように回答しています。

野木町としては、県が示した栃木県南地域における水道水源確保に関する検討報告書に沿った、県が思川開発事業に引き続き参加することに異議はございません。

野木町は2001年に栃木県が実施した調査で思川開発事業への参画の意思を表明しました。2013年になっても「県が思川開発事業に引き続き参加することに異議はございません。」と言うのであれば、普通に考えたら、野木町は、今以上に表流水を必要とすることはないにもかかわらず、思川開発事業による表流水を買わされることになってしまうはずです。

野木町は、新規水需要もなく、地下水源を表流水に転換する必要性もないのに、思川開発事業を利用した水道用水供給事業に参画するメリットは何かという疑問に対する栃木県の回答が「野木町は、地下水依存度は低いものの、水道広域化を図る観点から(検討の)対象区域としています。」ということです。

●野木町は表流水の水源を変更することになる

現在、野木町は渡良瀬遊水池の水利権を11,300m3/日保有しています(根拠は、「栃木の水道」(2011年度版))が、実際は、渡良瀬遊水池ではなく思川から取水し、茨城県古河市との共有施設である思川浄水場(野木町地内)で浄水しています。思川浄水場は、「思川の表流水を水源とし、公称処理能力は 61,950 m3/日です。現在、古河地区・総和地区・野木町へ給水しています。」(古河市水道ビジョンp6)。ちなみに思川浄水場で働く職員は、すべて古河市の職員のようです。

したがって、新規水需要もなく、地下水源からの水源転換の必要性もない野木町が思川開発事業を利用した水道用水供給事業に参画するということは、表流水の水源を変更することを意味します。

●野木町は水道用水供給事業への参画のメリットを説明せよ

野木町は、どっちみち思川の河川水を水道水源とするのであれば、今のままでもよいのではないかと考えられます。

にもかかわらず野木町が「水道広域化を図る」という栃木県の方針に協力し、思川開発事業による開発水を利用した、栃木県又は県南関係市町で構成する広域行政一部事務組合が経営する水道用水供給事業から受水するというのであれば、そうすることによってだれにどのような利益が生じるのかを野木町長は説明すべきです。

なぜなら、思川開発事業には1,850億円以上の公金が投じられ、栃木県は国庫補助を受けるものの、利水で64億円、治水で130億円の負担金を税金と水道料金から払うことになるのですから、思川開発事業を推進又は促進する立場の者は、納税者と水道利用者に推進又は促進の理由を説明する義務があると考えるからです。自治体については、説明責任の法的根拠はないと思いますが、条理上はあると思います。利潤を追求する民間企業にだって説明責任は道義的にあると考えられているのですから。

野木町の水道普及率は99.1%(2011年度)です。野木町が水源を広域水道に変更するなら、水道用水供給事業に要する巨額の建設費を負担することになり水道料金の値上げにつながりますから、全町民への十分な説明が必要なはずです。

●特に鹿沼市民に対しては説明責任がある

思川開発事業が推進されれば、巨額の公金が費やされるだけでなく、鹿沼市内の環境が破壊され、絶滅が危惧される生物が絶滅するおそれがあり、農業用水、飲料井戸及び上水道水源井戸に悪影響が出るおそれもあります。

したがって、真瀬町長は、私たち鹿沼市民に対して一層の説明責任があるはずです。

真瀬町長は、鹿沼市の環境が野木町の利益の犠牲になってもよいと言うのならば、野木町の受ける利益が、鹿沼市が犠牲になることもやむを得ないほど大きいものであることを説明すべきです。

●野木町長は回答を拒否した

ところが、野木町の真瀬宏子町長は、上記質問に対して、2013年7月19日付けの「思川開発事業への参画について(回答)」(PDFファイル24MB)という文書で、次のように回答しました。

盛夏の候、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、2013年6月27日付でいただいたご質問につきましては、県及び関係機関に影響があるので回答は差し控えさせていただきます。

真瀬町長は、「野木町としては、県が示した栃木県南地域における水道水源確保に関する検討報告書に沿った、県が思川開発事業に引き続き参加することに異議はございません。」と言い、野木町が思川開発事業に参画することについても撤回の意思を示していないので、まぎれもなく思川開発事業を促進する立場にあります。

そうでありながら、野木町が思川開発事業に参画することによってどのようなメリットがあるのかを私たちのような鹿沼市民や栃木県内の納税者に説明することを真瀬町長は拒否するのです。

つまり、真瀬町長は、納税者や水道利用者は税金や料金を払えばよい、それらの使い道の理由を納税者や水道利用者に教える必要はないと言っているわけで、前近代的な考え方の持ち主だということになってしまいます。

●真相は闇の中

栃木県知事は公開質問に回答しなかったでお知らせしたように、思川開発事業を考える流域の会は、2013年4月1日に栃木県知事に対して「野木町は「水道広域化を図る観点から(検討の)対象区域とした」とのことですが、野木町は水道用水供給事業に参画することにどのようなメリットがあるのですか。」と質問しましたが、福田富一・栃木県知事は、2013年4月26日付け砂水第37号で回答を拒否しました。

今回、野木町長にも同じことを質問したわけですが、県と示し合わせたように回答拒否です。

これで私たちが、野木町が水道用水供給事業に参画する理由を知ることは極めて困難になりました。

公金を使う立場にある者が公金を使う理由を説明しないことが許されるのでしょうか。

野木町が思川開発事業の参画団体である以上、栃木県民の国民の払った税金が野木町のために使われるということを真瀬町長は理解しているのでしょうか。

●野木町民に疑問は起きないのか

野木町が現在の水源を放棄し、栃木県又は一部事務組合が経営する水道用水供給事業に乗り換えるとすれば、水道料金が上がることは必至と思われますが、野木町民はだれもこのことを疑問に思わないのでしょうか。

一般の町民には水源を変更する方針を知らされていないのかもしれませんが、水源の変更は重要な問題ですから、野木町長は議員には説明しているのではないでしょうか。ところが新聞を読む限り、野木町の議員が水源について質問しているようには思えません。

●野木町は暗黒の政治に戻るのか

真瀬町長は、根っからの政治家ではなく、画家でした。

猿島インターネットサービスというサイトの野木町:町長選挙、無投票かも?という記事に次のように書かれています。

(2008年)7月16日、野木町発注の公共工事に絡み、1500万円の不透明な現金授受が発覚した永田元一町長(72)が辞職。永田町長は、不正入札事件で2年間の指名停止処分を受けた建設会社元社長に、「慰謝料」の名目で1500万円を支払っていた。

町長選挙は、7月19日告示、7月24日投開票。

現在、元町公民館長で洋画家の真瀬宏子氏(62)が、無所属での立候補を表明している。
真瀬氏は「町長の不祥事の根元を絶ち、町の汚名返上の先頭に立って全力投球したい。町民の利益を尊重し、利権、ゆ着を払拭(ふっしょく)したい」と意思表示。真瀬氏は東京芸大大学院修了後、同町で絵画教室を経営。01年から今年3月まで町公民館長を務めた。

つまり真瀬町長は、前町長の下での腐敗した町政を建て直すために立ち上がったというわけです。健全な町政を取り戻すには、政策の決定過程等における透明性を確保する必要があるのではないでしょうか。

用地買収などの問題を除き、水道行政には原則として秘密はないと思います。水道行政を秘密裏に進めるようでは、野木町政は暗黒の政治に逆戻りするのではないでしょうか。

真瀬町長が「町民の利益を尊重し、利権、ゆ着を払拭(ふっしょく)したい」と言うのならば、野木町が水道用水供給事業に参画することのメリットを町民に説明すべきです。参画しないならしないと明言すべきです。町民に説明すべきことは、町民以外の県民にも説明できるはずです。

真瀬町長からの回答書の「県及び関係機関に影響がある」の意味が分かりません。現在栃木県知事は、思川開発事業について住民訴訟を起こされていて、野木町長が本当のことを話すと知事が敗訴してしまうかもしれないというような意味でしょうか。もしそうであるならば、そのような、正当性のない事業に加担していることを真瀬町長は恥じるべきです。

●参画を明言しないことは無責任だ

真瀬町長が町民にも議会にも水道用水供給事業への参画について説明していないとすれば、思川開発事業が完成したとしても、野木町が水道用水供給事業に参画しなければ町民に不利益は及ばないと考えているのかもしれません。あるいは、思川開発事業の完成はずっと先のことだから、野木町が水道用水供給事業に参画するかどうかは、思川開発事業が完成してから、あるいは完成間近になってから、そのときの町長が考えればいいと考えているのかもしれません。

そうだとしたら、その考え方はあまりにも無責任です。

多分栃木県も県南関係市町に対して「とりあえず栃木県が思川開発事業に参画することについて反対しないでほしい。同事業完成後に同事業による開発水を水源とする水道用水供給事業に参画するかどうかは別問題であり、参画したくなければしなくていい。」という説明をしているものと推測されます。

2001年に思川開発事業への参画を表明していた県南関係市町が、同事業が完成した後で水道用水供給事業に参画しないとしたら、思川開発事業の建設負担金は栃木県の一般会計で支払うしかなく、南摩ダムと導水管で破壊された鹿沼市の環境は戻りません。

県南関係市町のいくつか又は全部が自分の判断の誤りによる損失を栃木県民全体に付け回すことは無責任であり、許されないと思います。

野木町に新規水需要はありませんし、地下水源を表流水に転換する必要性もありませんので、野木町は直ちに思川開発事業から撤退すべきです。

それでも撤退しないというのであれば、表流水の水源を思川浄水場から水道用水供給事業に切り替えることのメリットを正々堂々と説明すべきです。

「県及び関係機関に影響があるので回答は差し控えさせていただきます。」と言うのであれば、回答を拒否してまでも守らなければならない「県及び関係機関」の利益とは一体何なのか、そして回答を拒否することが町民や一般県民の利益を守ることになるのかを真瀬町長は説明すべきです。

(文責:事務局)
文中意見にわたる部分は、著者の個人的な意見であり、当協議会の意見ではありません。
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