水資源機構による費用対効果計算のどこが間違っているのか

2009-06-04,2009-06-06追記

●年平均被害軽減期待額は8.9億円

「中ノ畑ダム」、「遠ノ木ダム」とは何か に書いたとおり、「思川開発事業治水経済調査検討業務報告書(2001年3月)」には、南摩ダムによる思川の乙女(小山市)より上流における年平均被害軽減期待額が書かれています。

南摩ダムにより思川における洪水被害の軽減が期待できる額は、年平均で8.9億円と書かれています(p96)。

●実際の被害額は2億円

南摩ダムの治水容量は500万m3もありますが、流域面積は12.4km2しかありません。思川の乙女地点の流域面積(760km2)の約1.6%にすぎません。

南摩ダムの効果として毎年8.9億円の洪水被害が軽減できるというのが国の描いたストーリーです。

南摩ダムにそんなに大きな効果があるのだろうかと思い、5月12日に栃木県知事に対して、「思川における水害の年間被害額を記載した文書(記録のある限り過去にさかのぼる。他の河川の被害額を抹消するなどの加工をしないこと。)」の公開を求めました。

昨日、河川課から資料が送られてきました。私は過去の分まで求めているのに、河川課は2008年度分しか出してきません。情報の出し惜しみをして訴訟活動を妨害しているとしか思えません。

それはともかく、2008年度における思川の被害額は、2億2250万円でした。2008年は台風が本州に来なかった年なので例年より被害は少ないのかもしれません。何しろ県が複数年の資料を出さないので、現時点では実際の年平均被害額が算出できません。

仮に実際の年平均被害額が例えば4億円程度だったとしても、そもそも毎年4億円程度の被害しかない思川に南摩ダムを建設して毎年9億円程度の被害を軽減できるという水資源機構の計算は、破たんしています。

南摩ダムを建設すれば、思川流域の洪水被害がゼロになるわけではありませんので、仮に実際の年平均被害額が9億円に近い数字だったとしても、南摩ダムの年平均被害軽減期待額を9億円とすることは、実態を無視した議論であり、机上の空論です。

国は、2002年3月の実施方針変更の指示が出たときに思川開発事業計画の費用対効果を計算していますが、そのときは、支川思川における年平均被害軽減期待額を5.31億円としており、計算するたびに数字がコロッと変わるのですから、いい加減なものです。

●年平均被害額は2.5億円だった(2009-06-06追記)

2001年度までのデータですが、思川の洪水被害額のデータを持っていることを思い出しました。1991年度から2001年度までの11年間の思川の洪水被害額は次のとおりです。                                                                               
年度被害額(千円)
1991992,881
19920
1993230,321
1994114,973
199521,972
19967,743
199786,755
1998418,682
19990
20000
2001881,815
平均250,377
    

やはり、思川の洪水被害の実績は、平均で2.5億円程度と見ていいと思います。上記期間における南摩川の年平均被害額は2千万円程度ですので、これを足しても3億円には及びません。それにもかかわらず、「南摩ダムを建設すれば、思川の水害が毎年5億円あるいは9億円も軽減される」という国及び水資源機構の計算は、詭弁というほかありません。     

(文責:事務局)
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