鹿沼市のパブリックコメント制度に問題はないのか

2017-05-04

●第6期鹿沼市行政改革大綱(案)について意見を提出した

2017年2月に鹿沼市が第6期鹿沼市行政改革大綱(案)のパブリックコメントを実施したので、3月に次のような意見を提出しました。

「事業等の企画や計画の策定には、市民等の意見が反映されていること。」と書かれているが、言行不一致があり、きれいごとは書くべきでない。

パブリックコメントを求めると言いながら、最も気軽に発信できるメールによる意見提出を認めていないのは、市民の意見を聴く意欲がないからとしか思えない。入力フォームによる送信は入力がしづらいし、字数制限もあり、パブリックコメントの提出方法として不適切だ(一言だけ言いたいという人は別だが)。

入力フォームで生年月日まで求めるのは情報の集めすぎだ。おそらくは架空の人物でないことを確認するためだと思うが、そこまで疑うことが妥当か疑問だ。

下記のとおり、鹿沼市でもパブリックコメントの趣旨は骨抜きにされており、行政手続法違反の事態が起きている。

「第7次鹿沼市総合計画(案)に係るパブリック・コメントとその回答」を見ると、No.35の「南摩ダムからの撤退を行う。 」という意見に市は、撤退するともしないとも言わず、「南摩ダム(思川開発事業)は、住民及び市が不利益を被ることのないよう、事業主体である独立行政法人水資源機構及び関係機関等との協議を進めていきます。」と、はぐらかしている。

No.52の同様の意見にも「・水道は重要なライフラインの1つであり、生活に欠かせないものであります。・水道水の安定供給を将来にわたって持続するためには、適正で健全な経営方針を確立し、経営の安定化を進める必要があります。・思川開発事業については、住民及び市が不利益を被ることのないよう、事業主体である独立行政法人水資源機構及び関係機関等との協議を進めて参ります。」という考え方を(市は)示している。

しかし、「水道は重要なライフラインの1つであり、生活に欠かせないもの」であることは、南摩ダムに参画する理由にならない。

「水道水の安定供給を将来にわたって持続するためには、適正で健全な経営方針を確立し、経営の安定化を進める必要があります。」と言うが、いつ使うか分からないダム使用権を16億円、金利負担も含めれば24億円も払って取得することは、経営を不安定化することになる。「経営の安定化を進める必要」もダムに参画する理由にならない。

「南摩ダムからの撤退を行う。 」という意見を市が受け入れないというのであれば、南摩ダムへ参画することがなぜ必要なのかを説明するのが筋であるが、何も説明していない。見当外れのことを書いて提出意見を無視しているのが実態である。

すべてがそうだとは言わないが、ダム問題について見る限り、パブリックコメントは、ガス抜きにしかなっていない。

現行のパブリックコメントは、行政のやりたい放題を認める制度になっている。それでも市民の意見をきいたという形にはなってしまうため、問題は一層深刻になったと言える。

提出意見への市の考え方がはぐらかしになっていないかをチェックする制度が必要ではないのか。

そうでもしなければ市民の意見は行政施策に反映されない。
パブリックコメントの趣旨を担保する制度も設けないまま「事業等の企画や計画の策定には、市民等の意見が反映されていること。」というきれいごとは書くべきでない。


●意見は8行でまとめられた

鹿沼市は、第6期鹿沼市行政改革大綱(案) パブリック・コメントとその回答で私の意見を、「意見概要」の欄にたった8行で次のようにまとめました。

文字数で見ると、1296文字を195文字にまとめたということです。約1/7になっています。

【P13 5 行政改革の重点項目 (4)事業の最適化とサービス品質の向上の部分】
・「事業等の企画や計画の策定には、市民等の意見が反映されていること。」と書かれているが、言行不一致があり、きれいごとを書くべきではない。
・パブリックコメントの提出方法として、最も気軽に発信できるメールによる意見提出を認めていないのは、不適切だ。
・入力フォームで生年月日まで求めるのは情報の集めすぎだ。
・パブリックコメントを行っても、趣旨が骨抜きにされており、行政手続法違反の事態が起きている。


●意見への市の回答

鹿沼市が示した私の意見への回答は、次のとおりです。

本大綱は、今後の行政改革の基本的な考え方や目指すべき方向性を定めたものです。市民の意見を計画などに反映させることは、極めて重要なことでありますので、いただいた御意見を参考に、本市のパブリック・コメント制度が、より利用しやすい制度となるよう改善に向けて取り組んでまいります。


●提案がなかったことにされている

上記のとおり、鹿沼市は、私の意見を約1/7に圧縮しました。

その結果、私の提案の一部がなかったことにされています。

「提出意見への市の考え方がはぐらかしになっていないかをチェックする制度が必要ではないのか。」と具体的な提案しているのですが、そんな提案はなかったことにされています。

そんな提案があったことは、私がこうして発信しない限り、市民は知らないのです。

このような意見のまとめ方が「(提出意見を)十分に考慮しなければならない。」と規定する行政手続法第42条の趣旨に合致していると言えるのでしょうか。

●説得力がなくなっている

鹿沼市民が「「事業等の企画や計画の策定には、市民等の意見が反映されていること。」と書かれているが、言行不一致があり、きれいごとを書くべきではない。」という意見を読んだときに、「この人、何言ってんだろう」という感じでしか読まないと思います。

私は総合計画について実施されたパブコメにおける南摩ダムに関する提出意見の例を挙げて「市民の意見が無視されている実態がある」と書いている(そのことについては過去記事ちょいと鹿沼市総合計画審議会会議に行ってきた〜パブリックコメントが無視されていた〜参照)のに、この具体例をカットされてしまったために、極めて説得力のない意見になってしまっています。

「(パブコメの)趣旨が骨抜きにされており、行政手続法違反の事態が起きている。」も、具体的に何のことが分からないと思います。

●お先真っ暗

市は、「市民の意見を計画などに反映させることは、極めて重要なことであります」と書きますが、提出された意見を勝手に約1/7に圧縮し、提案の一部を抹殺するようでは、本気度が疑われます。

しかも、パブコメについてこのような対応をしているのが、行政改革担当部門なのですから、お先真っ暗です。

何を言っても、いいようにはぐらかされてしまうのでは、市民はものを言う意欲を失うと思います。

こんな形だけのパブコメを百年続けても、鹿沼市政への住民参画は実現しないと思います。

(文責:事務局)
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