原告側はL21kの堤防天端の盛り土の高さが「10cm程度以上」だったと主張した(鬼怒川大水害)その2

2022-07-06

●最重要問題の記述が11行だった

問題の記述は、原告ら準備書面(7)p14〜15であり、そっくり引用します。

(3) 加えて、左岸21km付近の堤防は、堤防天端の高さが均一ではなかった。
国土交通省の第1回鬼怒川堤防調査委員会資料(平成27年9月28日)(甲3号証)の21頁に次の写真と現況横断図が示されている。

写真と現況横断図

このように、堤防横断では、天端は川側の表肩がアスファルト舗装されている中央部より盛り上がって高くなっており(写真では盛土がされているように見える)、そこが天端表肩として、堤防天端高の測量がされている。堤防天端の大半を占める舗装部分はそれより低く、上記の現況横断図を見ると、10cm程度以上低く、計画高水位以下の可能性があった。

以上のとおり、左岸20〜21kmは、実際の天端高は測量結果よりも低く、計画高水位以下の可能性があったのであり、最も優先的に堤防整備がされるべき箇所であった。

以上が問題の記述の全てです。

上記準備書面では、本文は11行です。図を含めると、1頁と3行です。

破堤区間の堤防がどれだけ危険な状況であったか、そして、なぜそのような状況になるまで放置されたのかは、鬼怒川の破堤に関する最重要問題であり詳細に記述すべきだと思いますが、それにしてはあまりにも粗略です。

●最重要問題が軽く扱われた

被告からも、「原告らの主張では、鬼怒川の直轄区間のうち、なぜ上三坂地区について、他の区間に優先して堤防を整備すべきなのかについて、全く明らかになっておらず、主張として失当である。」(被告準備書面(4)p17)と言われてしまっています。

つまり、破堤区間に係る堤防のどこに問題があったというのか、言えるものなら言ってみな、と居直って挑発されているのです。

したがって、原告側は、まずは、破堤した堤防の破堤時点での状況を詳しく述べる必要があると思います。

しかし、このことについて、それまで原告側が主張してきたことは、破堤区間に係る堤防について、L21.00kの堤防高が他の箇所と比べて低かったこと(堤防高の比較の基準は、堤防高と計画高水位の接近度です。)、当該地点での流下能力が小さかったこと及び天端幅が4mのところがあったこと、だけだったと思います。(天端幅の問題は、訴状p12やp26では言っていたのですが、従来の主張を敷衍して整理した原告ら準備書面(8)においては言及しておらず、主張を取りやめたと解釈するほかないと思います。主張を続ける意味がないと考えたということになります。)

L21.00kの堤防の横断図は、2015年には公表されていました。

鬼怒川堤防調査委員会の委員は、堤防の形状の異常さに気づいていたのかもしれませんが、御用学者だとすれば、報告書に記載するわけにもいかず、一方、原告側には河川の専門家が支援していない悲しさで、堤防の形状が異常だと気づかなかったということでしょう。

原告側は、原告ら準備書面(7)の段階になって、L21.00kの堤防の形状に問題があると認識するに至ったのですから、破堤区間が危険だったことや関連する問題点については、必要かつ十分に述べる必要があったと思います。

定量的に、裁判所に理解できるように、必要かつ十分に主張するためには少なくとも10頁程度の紙面は必要だと思われるのに、1頁分だけではいかにも不十分だと思います。

少なくとも、唯一の具体的な数字である「10cm」を出した根拠を説明しなければ説得力がないと思います。

後記のとおり、原告側は、主張するのをやめてしまった堤防の天端幅が狭かったことについては、原告ら準備書面(5)p25において、航空写真の縮尺から比例式を使って天端幅を読み取ったことを、(計算の基礎とした写真は示さないものの)文章で示しています。

主張をやめてしまった天端幅の問題については(計算の基礎とした写真は示さないものの)計算方法を示しているのに、最重要問題である、堤防の越水阻止能力はどれほどか、という数字の根拠については、縮尺をカットした「現況横断図を見ると」だけしか言わないのは不均衡です。

堤防の状況が最重要問題にしては軽く扱われたように思われ、原告側の弁論が必要かつ十分だったと言えるのかは疑問に思います。

十分かどうかという問題ではなく、そもそも意味が伝わっていないと思います。

少なくとも、次の事項に触れるべきだったと思います。
(1) L21.00kの堤防高
(2) 盛り土の高さが10cm程度であると考えることの根拠
(3) 舗装面の標高
(4)L21.00kの堤防の形が許容されるべきものか
(5)「堤防高」とはそもそもなんぞや
(6)L21.00kの堤防の越水状況を示す写真

いずれにせよ、被告から「なぜ上三坂地区について、他の区間に優先して堤防を整備すべきなのかについて、全く明らかになっておらず、主張として失当である。」(被告準備書面(4)p17)とまで言われたから、上三坂地区の堤防がいかに悲惨な状況であったのかを説明しなければならない場面で、わずか11行の記述で終わりだったというわけです。

●「天端の高さが均一ではなかった」ことが問題の本質ではない

原告側は、上記主張の冒頭で「左岸21km付近の堤防は、堤防天端の_さが均一ではなかった。」(原告ら準備書面(7)p14)と言います。これが(3)の項目で述べることの結論であり、本質的な問題だ、と言っていることになります。

堤防高の測量の仕方が誤りであることを指摘しないのですから、測量の仕方は正しいと言っていることになります。

問題の本質は、天端の高さが均一でなかったことではなく、被告が堤防高を偽装していたことだと私は思います。(意図は立証できませんが、公式の堤防高に達する規模の洪水が来れば、水位が堤防高に達する前に越水することを知らなかったはずはなく、いわば未必の故意があったと言えると思います。原告側は、この点に関する被告の認識を求釈明申立てで確認すべきだと思います。)

また、堤防の形とはどうあるべきか、端的に言えば、天端にあのような盛り土があっていいのか、という問題でもあると思います。

いずれにせよ、仮に2011年度のL21.00kの堤防高がY P21.040mのレベルで均一に確保されていたとしても、計画高水位(20.830m)を21cm上回るだけですから、2015年9月洪水で破堤しなかったとは言えないので、「天端の高さが均一ではなかった」ことが問題の本質ではないと思います。

●検討会議の資料を証拠として提出する理由が分からない

細かい点に難癖をつけるつもりではないのですが、そして、学術論文など書いたことがない私が論文作成のリテラシーを弁えているとは思っていないのですが、原告ら準備書面(7)には、文章作成の流儀について疑問に思うことがあります。

原告側は、「国土交通省の第1回鬼怒川堤防調査委員会資料(平成27年9月28日)(甲3号証)の21頁に次の写真と現況横断図が示されている。」と書きますが、読み手にストレスを与えていると思います。

原告ら準備書面(7)p15に引用された写真と現況横断図は、タイトルは違いますが、鬼怒川堤防調査委員会報告書p2−14にも掲載されています。

この話の前提として、裁判所は第1回_怒川堤防調査委員会資料に掲載された図面と写真が_怒川堤防調査委員会報告書にも掲載されているかをいちいち確認しないと思います。

鬼怒川堤防調査委員会報告書は、第1回(2015年9月27日)から第4回までの会議で検討され(根拠は関東地方整備局のサイト)、2016年3月29日に公表されました。

それまでの検討会議で使われた資料には、最終的に報告書に掲載された情報もあれば、そうでない情報もあります。

報告書に掲載されなかった情報については、掲載されなかった理由は様々でしょう。

最終報告書に載せるほど重要でない、推測であり信憑性が薄い、報告書にまで掲載すると後々まで頻繁に参照されて行政に都合が悪い(この場合は、検討会議の資料から引用するしかありません。)、などが考えられます。

そうだとすると、第1回会議の資料から準備書面に引用した図や写真を見た裁判所は、それらには信憑性に問題があるから報告書に掲載されなかった可能性があり、うかつに信用すべきでないという警戒感を持つ(眉唾で見る)可能性があると思います。

そうだとすれば、信憑性に疑問を持たれること自体が損だと思います。

ともかくも、報告書に掲載されたものと全く同じ情報を、なぜ、あえて、検討途中の会議資料から引用するのか私には分かりません。

検討途中の会議資料から引用された情報を見た場合、(1)当該情報は最終的な報告書には記載されていない、(2)当該情報には最終的な報告書には記載されないだけの何らかの理由がある、と考えるのは私だけでしょうか。

私だけでないとすれば、原告側の引用の仕方は、読み手にストレスを与えています。

論文作成のリテラシーとしても、ある報告書の記載事項を引用すれば済む話を、わざわざ検討会議の資料から引用することはしないのが普通だと思います。

手当たり次第に引用すればいいというものではなく、検討過程で出てきた情報と最終成果物に記載された情報が同じである場合は、成果物の情報を優先して引用すべきであると考えるのは私だけでしょうか。

また、原告側は引用する頁を「21頁」と書いていますが、原告ら準備書面(7)p15には、「(甲3「第1回_怒川堤防調査委員会報告書資料」(19頁)」と書いており2頁ずれており、頁番号を統一すべきです。

なお、「第1回鬼怒川堤防調査委員会報告書資料」は「第1回鬼怒川堤防調査委員会資料」の誤記です。

第1回会議の段階で「報告書」は存在しないからです。

●写真に撮影時期の記載がない

原告ら準備書面(7)p15には、冒頭、「堤防形状」の写真が引用されていますが、撮影日が書かれていません。

引用元の第1回鬼怒川堤防調査委員会資料p19には、写真が3枚掲載されていて、「写真撮影日:H25/10/13」という表記は、「川表坂路」を示す1の写真の上にしかありませんが、3枚が同じ日に撮影されたという意味であることは分かります。

写真を引用する場合には、撮影日を記載するのが普通だと思われ、撮影日を記載しないということは、信用しなくていいですよ、と言っているのと同じだと思います。

ちなみに、2013年10月13日は日曜日であること及びp20には同じ写真に同月17日(木曜日)と記入されている(下の写真の左側)ことから、p19の写真の撮影日は、2013年10月17日が正解だと考えられます。

●控えめで遠慮がちな表現にする必要があるのか

原告側は、「写真では盛土がされているように見える」という慎重で、控えめで、遠慮がちな言い方をします。

横断図を見ているのですから、天端が2段になっていることは明らかです。

では、何ゆえに「見える」と言って断定を避けるのかと言えば、上段部分は盛り土ではないのかもしれないということでしょう。

自分たちは常に正しいことを言っているのであり、盛り土かどうかはっきりとは分からないものを「盛り土」であると軽率に呼んでしまい、被告から「あれは盛り土ではない」と指摘されたら恥ずかしいということでしょう。

確かにものの名前は大事です。

河畔砂丘を「砂丘林」とか「自然堤防」と呼んでいるようでは、ものごとの本質が伝わらないでしょう。

そうであれば、今回の問題でも、「天端表肩」とか「堤防天端高」とか言うべきではないでしょう。

原告側は、最も気を使う場所を間違えていないでしょうか。

今回のテーマで最も気を使うべき問題は、堤防の舗装面の高さです。

そこを当てずっぽうのように、計算根拠も示さず、大胆に、正解よりも21cmも高い数字(約20.94mになる。)を言っておいて、「盛り土」という名称の正誤に細心の注意を払うのはちぐはぐだと思います。

●越水時の写真が引用されていない

原告ら準備書面(7)p15には、被災前のL21.00k付近の堤防の写真が掲載されていますが、越水時の写真が掲載されていません。

堤防が被災直前にどのような状況であったから、被災時にどのようになってしまったのか、を説明する場面で越水時の写真をなぜ示さないのでしょうか。

堤防に舗装面より高い盛り土があっても、ちっとも役立っていないぞ、と主張しなければならない場面で、証拠写真を示さないという選択肢があり得るのでしょうか。

●現況横断図の標高線が削られている

原告ら準備書面(7)p15では、下図のとおり、2011年度定期測量によるL21.00kの現況横断図を引用しています。

現況横断図

しかし、引用元の第1回鬼怒川堤防調査委員会資料p19に掲載されている現況横断図は、下図であり、上図とは2点で異なります。

原資料現況横断図

原資料には、基準となる標高Y.P.15.00mの位置が左右に短い線で表示されています。それらを結べば水平な線になります。

盛り土の頂上の水平な線が「堤防高」(2011年度)を示しており、それが21.040mであることが分かっています。

したがって、2本の線の間の実際の距離は、21.040m―15.00m=6.04mとなり、これが縮尺となって、図面の長さから実際の長さを割り出すことができる仕組みになっています。(上図は、縦横比が1:1なので、この縮尺は、どの方向の長さにもそのまま使えます。)

ところが、原告側は、基準となる標高を示す「YP+15.00」の表示を削りました。

原告側は、盛り土の高さは「10cm程度以上」と言うのですが、本当にそうなのかを、裁判所が(原資料を見ない限り)検証できないようにしたのです。

堤防横断図を引用するのに縮尺を削るのは独特の発想だと思います。学術論文では見られない現象だと思います。

●現況横断図が引き伸ばされている

原告側が行った現況横断図への加工は、基準となる標高線の削除だけではありませんでした。

引用元の現況横断図の文字が正方形であるのに対して、原告ら準備書面(7)p15に掲載された現況横断図の文字が縦長になっているのを見れば分かるように、原告側は、縦方向に引き伸ばして引用しています。

なぜこんな小細工をするのか分かりません。

グラフを作成する場合に、問題点を強調するために縦軸をゼロから始めない場合がありますが、それは見れば分かることであり、非難されることではないと思います。

図を一定方向に引き伸ばして引用することも、その意図を説明すれば問題ないと思います。

しかし、原資料の現況横断図は、上記のとおり、縦横比が1:1であり、実際の形状と相似形なのですから、断りもなく縦横比を変えることには問題があると思います。不当なイメージ操作をしようとしていると勘ぐられるだけで得なことはないと思います。(堤防の高さ(実力)の問題は、イメージ操作をしないと勝てないような問題でしょうか。盛り土の高さを10cm程度と見ているので、イメージ操作が必要だと考えたとすれば、辻褄は合います。)

●定義されていない言葉が使われている

原告ら準備書面(7)p15には、「表肩が」とか「天端表肩」と書かれていますが、「表肩」という言葉は聞いたことがありませんし、ネット検索しても出てきません。

「表法肩」なら聞いたことがありますが。

「堤防天端高の測量がされている。」と書かれていますが、「堤防天端高」も河川用語ではないので、原告側が使いたいのであれば、定義することが必要なはずです。

被告が盛り土の頂上で測量したのは、「堤防高」だと思います。

「堤防高」を「堤防天端高」と言い換えると混乱すると思います。

裁判では造語を避けるのが筋だと思います。

どうしても造語をするなら、その都度定義しなければ読み手に通じません。

ちなみに、原告ら準備書面(8)p39に「無害能力」という 、私が聞いたことがない用語が2箇所で使われていますが、これもおそらく造語であり、読み手を混乱させています。

●原告側は堤防高を示さない

原告側は、原告ら準備書面(7)p15で、L21.00kの2011年度の堤防高を示しません。

「堤防天端高の測量がされている。」が「堤防高の測量がされている。」の意味だとすれば、原告側が引用した横断図は2011年度の定期測量による現況横断図なのですから、堤防高とされている21.040mという具体的な数字を示さなければ、何が言いたいのか裁判所に伝わらないと思います。

定量的な記述をしない(具体的なイメージを抱かせない)のも、原告側の書面の特徴です。(例えば、「かつては十分な高さと幅があって」(原告ら準備書面(9)p12)と言いながら、「かつて」がいつなのかは最後まで言いませんでした。)

●「10cm」の算出根拠を示さなければ説得力がない

原告側は、「堤防天端の大半を占める舗装部分はそれより低く、上記の現況横断図を見ると、10cm程度以上低く、計画高水位以下の可能性があった。」と主張します。

前提として、「それより低く」の「それ」とは、盛り土の頂上で測量した標高で、2011年度測量による公式な堤防高とされる21.040mのことだと思います。

L21.00kの堤防の高さに関する実力(浸透性に問題がないことを前提として、その高さまで洪水を越水させない能力)が舗装面の高さであることは、越水状況を写した写真を見れば明らかです。

役に立たない盛り土があるために、堤防高が、その実力よりも盛り土の高さの分だけ高く評価されてきたことが問題の本質だと考えると、盛り土の高さがどれだけだったのかは、L21.00kの堤防の形状の問題で最重要事項のはずですが、肝心の10cmの算出根拠を原告側は示さないのですから、説得力に欠けます。(本当の最重要事項は、堤防の高さ面での実力を表す「舗装面の高さ」なのですが、原告ら準備書面(7)を作成していた2021年1月時点では、「舗装面の高さ」を直接測量したデータが記載された横断図が存在することに気づかず(このあたりが河川の専門家が支援者の中にいないことの悲しさです。)、公式の堤防高から盛り土の高さを控除した値が「舗装面の高さ」になる、という構図でしか発想できなかったということです。当サイトも同様の発想でした。)

「上記の現況横断図を見ると」が、「10cm」という数字の唯一の根拠になりますが、原告側が加工した現況横断図には、基準となる標高線が記入されていないのですから、読み手は盛り土の高さの計算のしようがありません。

手がかりがあるとすれば、堤防高と地盤高の差(比高)を示す「約2m」と「約4m」という数値がありますが、「約」が付いているのですから、縮尺にはなりません。

それでも強引に、「約4m」とされた長さを、ちょうど4mとみなして、あえて大雑把に試算します。

パソコンの画面上の「約4m」で示された線の長さを定規で図ると17.2mm程度であり、盛り土の高さは1.1mm程度です。盛り土の実際の高さをxとすると、
4m:17.2mm=xm:1.1mm
という比例式が成り立つので、x=約0.26mとなります。

正解は31cmなのですが、これだけ雑に計算しても、誤差は2割で収まります。

10cmという数字をどうやって出したのか、想像もつきません。

当てずっぽうにしても、正解の3分の1以下の数字ですから、外れすぎています。

見た目で盛り土の高さと「約2m」と表示される線の長さと比較しても、盛り土の高さが「約2m」と表示された線の長さの20分の1しかないようには見えません。

とにかく、原告側は、盛り土の高さ10cmの根拠については、「上記の現況横断図を見ると」としか言わないのです。

原告側が科学論争を挑んでいるとは思えません。原告側が科学論争から逃げて、勝ちはあるのか疑問です。

なお、2011年度に盛り土の高さが31cmだったことは、鬼怒川左岸21kの堤防高は計画高水位より10cm低かったことの明確な証拠があった(鬼怒川大水害)に書いたとおりです。

●裁判所がどういう事実認定をするのかが問題だ

ちなみに、原告側は、盛り土の高さが「約10cm」とは言っておらず、「10cm程度以上」と、もって回った言い方をしていますが、「以上」を付けた理由が分かりません。

確かに、盛り土の高さが31cmである場合、「10cm程度以上」と表現しても、日本語としては誤りとは言えません。

あえて、「以上」を付けた理由を考えれば、正解が31cmであることを想定していたのかもしれませんが、そうであれば、最初から31cm、あるいは「30cm程度」と書くべきであり、その3分の1の「10cm」という数字を出す意味が分かりません。

例えて言えば、60歳の人が「私の年齢は30歳以上である。」と言う場合、日本語として間違いではないとしても、芸人でもないのにそんなことを言う人を世間はまともな人間として扱わないでしょう。

裁判所も「原告らは「10cm程度以上」と主張するが、本当は31cmであったと認められる。」という親切な事実認定をしてくれるとは思えないので、「以上」を付けたことに意味はないと思います。

訴訟では、最適な表現をして裁判所にこちらの主張を正しく伝えることが弁論の目的なのであって、つまり、正しく伝わらなければ意味がないのであって、「誤解される表現だったとしても理論的に間違ったことは言っていない」という言い訳をしても意味がないと思います。

「10cm」という数字を示したことに対する責任というものがあると思います。

「10cm程度以上」と主張しても、「3cm程度以上」と主張しても、「約30cm」と主張しても、効果は同じであるという意見は、あまりにも乱暴だと思われ、世間の賛同は得られないと思います。

裁判では、最適な言葉を選ぶのが筋だと思います。

(文責:事務局)
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