原告側はL21kの堤防天端の盛り土の高さが「10cm程度以上」だったと主張した(鬼怒川大水害)その3

2022-07-06

●盛り土の高さが10cm程度では舗装面は計画高水位以下にならない

前回までに書いたとおり、原告側は、L21.00kの「堤防天端の大半を占める舗装部分はそれより低く、上記の現況横断図を見ると、10cm程度以上低く、計画高水位以下の可能性があった。」と主張しますが、計算が合いません。

「それより低く」の「それ」とは、2011年度のL21.00kの堤防高21.040m(盛り土の頂上の標高)と解すべきなので、舗装面の高さは、それより10cm低かったとすると、20.94mですから、計画高水位20.830mより11cm高いし、仮に舗装面が堤防高より20cm低かったとしても、計画高水位より1cm高いことになります。

舗装面が公式の堤防高より21cmを超えて低くならないと、計画高水位を下回りません。

「10cm程度以上」と書いてあるので、盛り土の高さがちょうど10cmだと仮定して舗装面の高さを算出すると、計画高水位以下にならない(逆に11cm高い)のですから、「計画高水位以下の可能性があった。」という主張を裁判所は理解できないと思います。(ラジオで同性婚に関する大阪地裁判決(2022-06-20)について聞いていたら、憲法学者・木村草太は「内部の意見がまとまらず複雑骨折している」と評しましたが、そんな感じです。)

●総括部分の意味も不明確

原告側は、まとめとして、「以上のとおり、左岸20〜21kmは、実際の天端高は測量結果よりも低く、計画高水位以下の可能性があったのであり、最も優先的に堤防整備がされるべき箇所であった。」と主張しますが、種々問題があると思います。

【「実際の天端高」と「測量結果」とは何か】

それまでに書かれていなかった「実際の天端高」と「測量結果」という言葉が総括部分で初めて出てきますが、いきなり定義されていない新語を出されても読み手は理解できません。

準備書面は、一読して分かるように書くべきだと思います。

【「左岸20〜21kmは、実際の天端高は測量結果よりも低く」は事実に反する】

「実際の天端高は測量結果よりも低く」の意味は、おそらくは、盛り土の頂上の測量値と舗装面の高さは違うということだと思いますが、そのことは、写真は引用していますが、基本的には、L21.00kの横断図で説明しているだけですから、そのことをL20.00k〜21.00kの1kmの範囲に広げることは論理の飛躍です。

左岸21.00km地点だけで舗装面が低かったことを主張しても、L20.00k〜21.00kの区間が同様の状況であったという主張にはなりません。

L20.00k〜21.00kが危険だったと主張するには、それなりの証明が必要なはずです。(付近を写した写真が引用されてはいますが、盛り土の延長が1kmも続くことの証明にはなりません。)

「左岸20〜21kmは、実際の天端高は測量結果よりも低く」という記述は、1kmにわたり盛り土があったことを前提としていことになると思われますが、そのような事実は確認されておらず、証明していない事実を主張していると思われ、裁判所は採用しないと思います。

【「実際の天端高は測量結果よりも低く」の何が問題なのかが指摘されていない】

原告側は、舗装面が堤防高より低いと何が問題なのかを説明していません。(説明するつもりがないから越水時の写真を載せないのでしょうから、辻褄は合っているのですが。)

いきなり、最優先で整備すべき箇所だった、という結論に持っていきます。

説明が足りないと思います。

【「計画高水位以下の可能性があったのであり」の説明もしていない】

上記のとおり、舗装面の高さが「計画高水位以下の可能性があった」という話には無理があります。

盛り土の高さについて「10cm」という数字を出しておきながら、舗装面の高さが「計画高水位以下の可能性があった」と書かれても、読み手は何のことか分かりません。

そもそも堤防高(2011年度で21.040m)も計画高水位(20.830m)も説明しないのですから、盛り土の高さの数字(10cm)だけを示しても、何が問題なのかが伝わらないと思います。

【優先的に整備すべき、が本質なのか】

「最も優先的に堤防整備がされるべき箇所であった。」が結びの言葉であり、これが問題の本質だと原告側が考えているということです。(緊急に整備すべき箇所とは考えないということです。そもそも原告側が緊急と優先を混同し、区別していないことは原告ら準備書面(8)p20の下から3行からp21の上から4行までを読めば明らかです。

優先の話が結論部分では緊急性の話にすり替わっています。他の箇所と比較して相対的に安全性の低い箇所と絶対的に危険であり緊急に整備すべき箇所とは別問題であり、どうしてそれがイコールになるのか理解できません。原告ら準備書面(12)p7〜8では「緊急性」が10回も連呼されますが、破堤区間に緊急性があったことを原告側はどこで論証したのでしょうか。私には見つかりませんでした。原告側の「緊急性」の定義は、上記のとおり、他の箇所と比較して、より安全性が低いということであり、日本語辞書からは導けない独特な定義であることに注意しなければなりません。)

被災箇所が他の箇所と比較して少しでも安全度が低ければ優先度と緊急性が高いというのが原告側の論理ですから、比較することが必要かつ十分な作業になるので、被災箇所がどれほど危険だったのか、そこでの管理の何が問題だったのかを掘り下げて解明することに関心が向かないのは自然の成り行きなのかもしれません。

●問題を解明するには

L21.00k付近の堤防の形状の問題を掘り下げて解明するには、次の事実を踏まえるべきだと思います。

(ア)L21.00k付近には盛り土があった。
(イ)定期測量では、盛り土の頂上を測量して、堤防高として扱っていた。
(ウ)盛り土の頂上の高さと舗装面の高さの差は、2011年度時点で31cmだった。
(エ)舗装面は、計画高水位より10cm低かった。
(オ)その結果、洪水の水位が堤防高に達する前に盛り土の上下流から洪水が回り込んで舗装面を冠水させた。

以上から、さらに、次の問題を検討する必要があると思います。
(a)L21.00kの堤防のような堤防は、鬼怒川に、あるいは他の河川にもあるのか。
(b)盛り土は、いつから、なぜ設置されたのか。どのような役割を果たしていたのか。逆に弊害はあったのか。
(c)堤防高とは、どの地点を測量した値なのか。その根拠規定は何か。
(d)盛り土の頂上を測量して堤防高とすることが適法だったのか。
(e)堤防高の測量の仕方に関する規定は、L21.00kのような盛り土のある堤防を想定していたのか。

もちろん、検討した結果をどこまで陳述するかは別に吟味すべきですが、少なくとも上記のような問題を検討していなければ、必要かつ十分な陳述はできないと思います。

しかし、原告側が上記を検討したとは思えません。

あらゆる問題を検討した上で、不要な部分を削ぎ落とした結果として約1頁の記述になったようには見えません。

●2005年度からL21.00kの堤防の舗装面の高さは計画高水位とほぼ同じだった

決壊地点の堤防の舗装面の高さは計画高水位以下だった(鬼怒川大水害)の図の整理番号13及び14で示したとおり(下図)、2005年度の中三坂地先築堤設計報告書(共和技術、乙17)により、L21.00kの堤防の舗装面の高さは計画高水位とほぼ同じ20.84mだったことが分かっていました。

平面図共和技術 misakaTeibou03.html13

平面図共和技術拡大図 misakaTeibou03.html14

2005年度時点で、L21.00kの舗装面の高さ20.84mは、計画高水位20.830mを1cm上回るだけでした。

乙17は、答弁書(2018年11月28日)と同時に提出されている上に、破堤区間に係る築堤設計報告書ですから、原告側は、当該報告書の全文を情報公開請求して入手し、じっくり読んでいたはずです。

2005年度に20.84mだったL21.00kの堤防の舗装面の高さが、2011年度までに10cm隆起して20.94m程度(「2011年度の堤防高21.040m」から「原告側がいう盛り土の高さ10cm程度」を引いた値)になるはずがありません。

その意味でも、盛り土の高さ10cm程度はあり得ない数字です。

どこがおかしいのかを指摘して批判しようとしても、「上記の現況横断図を見ると」しか言わないのですから、取り付く島がありません。

ここで言いたいのは、2005年度の中三坂地先築堤設計報告書(共和技術、乙17)には、L21.00kの堤防の舗装面の高さが計画高水位とほぼ同じ(正確には+1cm)20.84mだったという原告側にとって極めて有利な事実が記載されているのに、原告側は、未だに無視し続けているということです。

●横断図から盛り土の高さは算出できる

2011年度定期測量によるL21.00kの横断図から盛り土の高さを算出できます。

下図は、鬼怒川堤防調査委員会報告書p2−14に掲載された「図 2.18 決壊前横断図(左岸 21.0k)」です。

青線(15mの標高線)と赤文字は私が加筆しました。

報告書決壊前横断図

aの長さは、2011年度の堤防高21.040mと15mの差なので6.04mになります。

bは、盛り土の高さです。

aとbの図面上の長さは、定規を当てれば分かります。

私がパソコンの画面で測るとaは18.9mmであり、bは1mmです。

したがって、盛り土の実際の高さをxとすると、
18.9:6.04=1:x
という比例式が立つので、x=約0.32mとなります。

したがって、舗装面の高さは21.04m―0.32m=20.72mとなります。

●横断図から舗装面の高さを直接読み取ってみた

次に舗装面の高さを直接求めてみます。

下図は、ベースは上図と同じです(青線と赤文字は私が加筆)が、縦方向に引き伸ばしてみました。(引き伸ばすと線が太くなるので、誤差が縮まるというものでもないようです。ちなみに、縮尺を消さずに、引き伸ばすことを説明した上で引き伸ばすことは、非難されるべきことではないと思います。)

報告書決壊前横断図引き伸ばし

aは、堤防高21.04m―15m=6.04mです。

cは、舗装面の高さマイナス15mで、その実際の長さをxとします。

私のブラウザ上でaとcの長さを定規で測ると、aは32.5mm、cは31mmでした。

32.5:6.04=31:x
という式が立つので、x=5.76になります。

これに基準線の標高15mを足した20.76mが舗装面の標高になります。

肉眼で1mm以下を読み取るのですから、誤差は大きいとはいえ、正解と3cmしか違いません。

正解から21cmもかけ離れた「10cm」という数字は、どう逆立ちしても出てくるはずがありません。

正解は31cmですから、10cmという数字で主張することは、攻撃力を3分の1に減殺することになります。自傷行為です。

●ウェブサイトにも盛り土の高さは30cm以上という情報は載っていた

原告ら準備書面(7)が書かれたのは2021年1月ですが、その約3か月前の2020年10月に書かれた次のウェブサイトの記事に、盛り土の高さはアスファルト面より30cm以上高いように見える、という情報は載っていました。

naturalright.orgの鬼怒川三坂堤防の特異性と崩壊原因 5 三坂堤防の特異性というページには、次のように書かれていました。

分かりにくいのですが、この草の生えている天端、段付きの上段の方の天端は、アスファルト面より30cm以上高いように見えます。幅は、なで肩になっているのでなんともいえませんが、アスファルト面と同じくらいありそうです。これをあわせたのが、集計表上の「5.7m」なのでしょう。それにしても、特異な形状です。

30cmの根拠は書かれておらず、読み方によっては、原告側と同様に、写真からそう見えると言っているという読み方もできますが、あれだけ緻密に調査をされているサイトなので、横断図を使った計算をしていないはずがありません。

そのほか、当「鹿沼のダム」でも、同年12月に、決壊地点の堤防の舗装面の高さは計画高水位以下だった(鬼怒川大水害)において、「したがって、堤防高(盛り土の頂上)と舗装面の高さの差は、最低でも31cm程度はあったと見るべきです。」と書いています。

横断図から普通に読み取ったら、盛り土の高さは約30cmになるのが必然です。

原告側が両サイトを見ていたとは限らないものの、何らかの形で、これらの「盛り土の高さ30cm以上説」が伝わっていた可能性はあります。

●原告側は比例計算ができた

ここまで検討しても、原告側がなぜ盛り土の高さが10cm程度以上であるという被告に有利な主張をした理由が全く分かりません。

原告側は、比例計算をする能力がなかったわけではありません。

前記のとおり、原告ら準備書面(5)p25において、航空写真から堤防の天端幅を計算しているからです。(しかし、天端幅が2.55mから約5.01m程度であると言い、2倍もの幅を持った数字にどれだけの意味があるのか分かりません。また、当該航空写真を「決壊当時の航空写真」とか「この写真」と言いながら、どの写真かを示さないのですから、信用してくれなくても結構です、と言っているようなもので、何のために天端幅の話を持ち出したのか疑問です。また、原告側は、答弁書p14の主張に対して反論しているのですが、被告は、天端幅が狭いことが決壊の時期を早めたとする事実は報告されていない、と言っているのであり、天端幅が4mであったことを否認していないのですから、天端幅が4mだったと繰り返し主張しても、被告の主張に応答しておらず、反論になっていません。そもそも天端幅の議論をするなら、seexaa.netに掲載されている堤防関連データ表や被告が堤防管理に使っている「管理基平面図」等を材料に議論するのが普通だと思いますが、国会議員ヒアリングでの国土交通省の回答と原告側だけが見ている空中写真の話だけを材料に議論するのでは、本気度を疑われると思います。攻撃の仕方が一々正攻法ではありません。)

そんなわけで、原告側は、天端幅について縮尺から実際の距離を出す比例計算をしているので、比例計算をする能力がありました。

なので、原告側は、2011年度にL21.00kの盛り土の高さが30cm程度であることを知っていたと言わざるを得ません。

naturalright.orgの鬼怒川2015や当「鹿沼のダム」を読むまでもありません。

原告側は、盛り土の高さが30cm程度であることを知っていたと確実に言えます。

その理由は、一つには、地図や横断図の縮尺を使う作業は、中学校の数学で習う比例計算であり、弁護団に計算能力がなかったとは考えられないからです。

二つには、原告側は、航空写真から道路幅を計算しており、縮尺の使い方を知っていることが証明されているからです。航空写真の縮尺は使えるが、河川横断図の縮尺が使えないということはあり得ません。

そして、L21.00kの堤防高マイナス盛り土の高さが舗装面の高さ(堤防の実力)という関係にあるのですから、提訴の目的が勝訴であるとすると、勝訴するためには、盛り土の高さが10cmではなく、正解の約30cmであると主張しなければならないことも普通に考えれば分かることです。

それでも、あえて原告に不利な数字である10cmという数字を提示しなければならなかった理由を1年半近く考えているのですが、未だに全く分かりません。

●改訂版を出せばそれで終わりではないはずだ

ちなみに、原告側は、原告ら準備書面(8)p29では、原告ら準備書面(7)p15の記述には触れずに、つまり、何事もなかったかのように、盛り土の高さが「約30cm」である(舗装面の高さがH W L―10cmということ。ただし、原告側はH W L―8cmと主張している。)という説を改訂版として主張しています。

舗装面の高さが明記された証拠が出てきたので、盛り土の高さが10cm程度以上という被告に有利な主張を続けることを断念したということです。

いくら新証拠が出てきて状況が変わったとはいえ、誤った主張を読ませて裁判所に迷惑をかけたのですから、それまでの主張は水に流してくださいという態度では誠実さに欠けると思います。

兵庫県尼崎市の住民票データ入りU S Bメモリー紛失事件でも、無事に見つかったからそれでおしまいにしましょう、というわけにはいかないはずです。

原告側自身の問題としても、舗装面の高さが計画高水位以下だったと主張する場面で、逆に計画高水位以上(+11cm)になる数字を示し、被告に有利な主張をしたのですから、というよりも、舗装面の高さの数字さえ示さず、何が言いたいのか分からない書面を書いたのですから、なぜそんなことになったのかを総括しないと、前に進めないはずです。

●問題点が少なくとも三つある

既に触れた部分もありますが、原告ら準備書面(7)におけるL21.00k付近の堤防高に関する主張には、少なくとも三つの問題があると思います。

一つは、分量が少なすぎることです。

被災時に堤防がいかに悲惨な状況であったか、そして、なぜそうなのかしまったのかを説明することは、最重要問題だと思われることは既に書いたとおりです。

破堤区間の堤防高が計画高水位以下であったとの主張が成り立てば、被告に大きな打撃を与えることができるということは、原告勝訴を願う者なら誰しも考えることだと思います。

そうであれば、そのような重要事項は、反論の余地がないほどに丁寧に説明すべきであり、約1頁で説明することは土台無理な話です。

二つは、数字を示さないことです。

原告側が示した具体的な数字は、「10cm程度以上」だけです。

舗装部分の高さが「計画高水位以下の可能性があった。」と主張しますが、もったいつけてほのめかすだけで数字は示しません。

数字が知りたければ、裁判所が自ら計算しなさいという話になりますが、そんな傲慢な当事者を裁判所が勝たせてくれるとは思われません。

舗装面の高さを数字で示すとすれば、堤防高(盛り土の頂上で測量)21.040m―0.1m=20.94mですが、それは、計画高水位20.830mよりも大きく、「計画高水位以下の可能性があった。」という主張と矛盾してしまうので、数字を示せなくなったのかもしれません。

三つは、計画高水位を重要視していないということです。

上記のとおり、原告側は、「(舗装面の高さが)計画高水位以下の可能性があった。」と言い、抽象論は勇ましいのですが、具体的に数字を出す段階になると、腰が引けてしまったかのように、「10cm」としか言えないのですから、上記のとおり、舗装面の高さは20.94mにしかならず、計画高水位20.830mよりも11cm高いのであり、言行不一致です。

2011年度のL21.00kの堤防高(盛り土の頂上で測量)は21.04mで計画高水位+21cmだったのですから、「盛り土の高さが21cm以上だ」と主張しないと、舗装面の高さが計画高水位以下にはなりません。

だから、原告側に、堤防高が計画高水位以下であったことが決め手になるという認識があれば、盛り土の高さについて21cm未満の数字を示すことはあり得ません。

2011年度定期測量によれば、鬼怒川の28kより下流の左岸の距離標地点で計画高水位より低い地点はなかった(決壊地点の堤防の舗装面の高さは計画高水位以下だった(鬼怒川大水害)の図の整理番号2参照)のですから、つまり、常総市東部の住民は少なくとも計画高水位以上の堤防で守られていたはずでしたが、実は、常総市東部のど真ん中付近のL21.00kの堤防高(越水を防ぐ高さ=舗装面の高さ)は計画高水位以下だったとなれば被告の怠慢は明らかであり、原告側にとって大変有利な話のはずですが、計画高水位+11cm程度になる数字を提示する理由が分かりません。

そもそも原告側は、計画高水位の説明さえしないのですから、計画高水位を重要視していないことは明らかです。

●被告は反論したのか

被告は、L21.00kの堤防天端の盛り土の高さ(舗装面の高さに関する議論でもある)について反論したのでしょうか。

読み方が足りないのか、被告が反論した部分は私には見つかりませんでした。

おそらく反論していないと思います。

被告が反論しない理由は、三つくらいは想像できます。
(ア) 意味不明なので反論する必要がない。
(イ) 不利なテーマなので下手に反論すると藪蛇になる。
(ウ) 原告側が舗装面の高さがH W L+11cmと言ってくれているのに、わざわざ被告の方からH W L―10cmが事実であると主張するのは損である。

●盛り土の高さが10cm程度に見えるのか

下図は、2015年9月10日にL21.00k付近の堤防で越水が起きている写真です。鬼怒川堤防調査委員会報告書p3−8からの引用です。

越水
misakaTeibou04.html 5

河川巡視員が12:05頃に撮影したものとされています。

問題は、L21.00kの標示ポールの立っている盛り土の頂上と舗装面の差はどれくらいか、ということです。

舗装面の冠水の水深を写真から読み取ることは困難ですが、私には、既に10cm程度は冠水しているように見えます。盛り土の頂上は、その冠水の水位より更に20cm程度高いように見えます。

そうだとすると、盛り土の頂上と舗装面の差が10cm程度ということはあり得ないと思います。

原告側は、原告ら準備書面(7)p15では、L21.00k付近の堤防で越水や冠水が起きている写真を引用していません。

もしも、引用していたら、盛り土の高さ「10cm程度以上」という主張があまりにも不自然であることが明らかになっていたと思います。

逆に言えば、原告側が越水と冠水が起きている写真を載せなかったのは、盛り土の高さ「10cm程度以上」という主張の不自然さを露呈させないという意味があったのかもしれません。

そうであれば、なぜそれほどまでに「10cm」にこだわらなければならなかったのかが分かりません。

(文責:事務局)
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