八ツ場ダム負担金返還請求は当たり前

2009-09-10

●栃木県知事、八ツ場ダムが中止なら負担金返還を要求すると表明

2009-09-09下野に「八ツ場ダム/中止なら負担金返還を」の見出しで次のような記事が掲載されました。

八ツ場ダム 中止なら負担金返還を 会見で福田知事

 国土交通省が群馬県の八ツ場ダム本体工事の入札を延期したことに対し、福田富一知事は8日の定例会見で「仮に中止となったら、国に支払い済みの部分の返還を求める」と述べた。民主党は政権公約で、同ダムの中止を明記している。

 県砂防水資源課によると、本県は同ダム事業に治水分のみ参加しており負担金は10億4千万円。このうち昨年度末までに5億4千万円を支出している。一度支出した負担金の返還請求は前例がないという。

 返還請求をめぐっては、東京都の石原慎太郎知事も4日の定例記者会見で同様の意見を述べている。利水と治水両面で同事業に参加している都の負担金は総額で635億円。既に457億円を支払っている。

 福田知事の発言は、石原知事の発言に対する感想を求められた中で述べられた。

 民主党の新政権は大型公共事業の見直しを進めようとしているが、福田知事は県内で工事が進められている鹿沼市の思川開発事業(南摩ダム)と日光市の湯西川ダムについては「必要水量を確保するのは県の責務」と述べ、建設に理解を示す従来の立場を繰り返した。

 3ダム事業をめぐっては建設に反対する市民団体が県と宇都宮市を相手に、負担金支出の差し止めなどを求める住民訴訟を起こし、宇都宮地裁と東京高裁で争っている。  (宗像信如)   
 

知事は、八ツ場ダムが中止になったら、ダム建設負担金の返還を求めると言ったわけですが、当然です。今まで負担金を払ってきたこと自体が税金の無駄遣いなのです。  

知事は、税金の無駄遣いを詫びるべきです。県民も怒るべきなのですが、とにかく事実を知らされていないというのが実情です。  

 ●「八ツ場ダム治水負担金10億円」を知らない  

上記記事に書いてあるように、栃木県は八ツ場ダムに治水で参加し、その負担金の額は10億4000万円にもなり、「昨年度末までに5億4千万円を支出している。」のですが、この事実が新聞報道されたのはおそらく初めてだと思います。  

 ●「利根川は栃木県内を流れていない」ことを知らない  

八ツ場ダムは、利根川の支流・吾妻川(群馬県長野原町)に建設される計画のダムです。では、吾妻川にダムを建設して栃木県の水害が減るのでしょうか。  

栃木県南地域の県民は別として、多くの県央・県北の県民は、利根川がどこを流れているかを知らないのではないでしょうか。  

利根川は栃木県内を流れていませんし、県境に接してもいません。利根川と栃木県は、最も近い場所(藤岡町の渡良瀬遊水地付近)でも4kmは離れています。  

ところが、栃木県が八ツ場ダム事業のために支払う負担金の割合は、1981年に作成された利根川洪水の浸水区域図(PDFファイル400KB)を基として決められています。それを見ると、利根川から10km以上も離れた足利市内まで浸水するという想定で負担割合が決めれたことが分かります。しかし、2005年に国が作成した利根川の浸水想定図では、足利は浸水しないことになっているのですから、いい加減なものです。  

これまでに利根川の洪水で足利市が浸水したことがあったでしょうか。1947年のキャサリン台風のときだって、そんなことはありませんでした。  

足利市が利根川の洪水で浸水するはずがないと思います。したがって、利根川の上流をダムでせき止めても、栃木県が著しい利益を得ることはないと考えるのが普通の感覚です。ところが栃木県は、10億円の負担金を承認し、いつのころからかは知りませんが、延々と八ツ場ダムの建設負担金を支払い続けてきました。  

 ●栃木県の八ツ場負担はひどすぎる  

栃木県内を貫流していないし、県境に接してもいない川の上流に建設するダムのために栃木県民の払った税金が10.4億円も使われるのは、理不尽な話だと思います。  

私たちの起こした裁判でも、この点の違法性を強く訴えています。裁判所がこんな理不尽な税金の使い方を許すのかに私たちは注目しています。  

裁判所がこんな理不尽を許すなら、行政はどんな違法もやり放題になってしまいます。  

福田知事は、「「仮に中止となったら、国に支払い済みの部分の返還を求める」と述べた」だけですが、他県を流れる川の治水負担金の返還請求をするのが当然であるのに、「返還請求をしないでやるから八ツ場ダム事業を推進せよ」と言っているようなものではないでしょうか。  

福田知事は、八ツ場ダムの負担金を払い続けてきたことを県民に詫びるでもなく、かえって、民主党政権に対して、同ダムの中止の撤回を迫っているとしか思えないような発言をしているのですから、本末転倒です。八ツ場ダムが栃木県に治水上の利益をもたらすのかという本質が抜けています。  

 ●理解不能な知事発言  

ちなみに、「福田知事は県内で工事が進められている鹿沼市の思川開発事業(南摩ダム)と日光市の湯西川ダムについては「必要水量を確保するのは県の責務」と述べ、建設に理解を示す従来の立場を繰り返した。」そうです。  

南摩ダムの必要性をだれが再検証するのかで紹介したように、福田富一栃木県知事は、「下流県の水需要を確認した上で、もう一度推進か中止かを含めて検証するべきだ」、「八ツ場ダムも南摩ダムも水需要を再度確認した上で(ダムの必要性について)国民に対して説明責任を果たすべきだ」(2009-08-26下野)と言っています。  

県内も下流県も水需要が精査されていないという認識が知事にあるのに、どうして「「必要水量を確保するのは県の責務」と述べ、建設に理解を示す」ことができるのか理解できません。

(文責:事務局)
フロントページへ>その他のダムへ>このページのTopへ