イスラエルの外務副大臣が入植を神話で正当化した

2017-10-25

●警察庁の電話詐欺防止対策は正しいか

本題に入る前に電話詐欺の防止方法について考えたいと思います。

2017年10月17日付け東京新聞によると、「警察官などを名乗り、キャッシュカードをだまし取る電話詐欺」による被害が都内では9月までの前年同期比で10倍以上に激増しており、「警察庁は「警察や銀行であろうと、キャッシュカードを預かることは絶対にない」と注意を呼びかけている。」そうです。

しかし、この呼びかけに効果があるのかどうか疑問です。

この呼びかけは、警察官や銀行員が「キャッシュカードを預かる」と言ったら、その人は詐欺師だと思ってほしい、ということだと思います。だから、警察官や銀行員がキャッシュカードを預かることは絶対にないことを覚えておいてほしい、ということだと思います。

しかし、人が電話を使った「なりすまし型」の詐欺師にだまされる場合、単に話の内容にだまされるのではないと思います。

まず、電話をかけてきた相手が警察官や銀行員だと信じ込むことからだまされることが始まるのだと思います。

つまり、人が電話の相手を警察官や銀行員だといったん信じた場合には、話の内容がおかしいかどうかなんて考えないものだと思います。なぜなら、一般的に警察官や銀行員なら市民や顧客をだますようなことをするはずがないからです(立場上の話ですが)。電話の相手が自分の息子だと信じた場合には、息子が自分にウソをつくはずがないという前提で話を聞きますから、簡単にだまされるのは当然と言えます。

実際被害者は、似たような詐欺事件があるのは知っているケースが多いといいますが、それでもだまされるのは、自分にかかってきた電話は、本物の警察官からだ、と信じるからでしょう。

詐欺師の側から言えば、いったん自分を警察官や銀行員と信じさせることに成功したならば、いわば第一関門を通ってしまえば、かなりおかしなことを言っても疑われないと思います。

被害者が相手が本物の警察官や銀行員だと思い込んだら、「警察官や銀行員がキャッシュカードを預かることは絶対にない」ということを覚えていて、詐欺師に対して「警察官や銀行員がキャッシュカードを預かることは絶対にないと新聞に書いてあった」と言ったとしても、「それは一般論で、今回はこれこれこういう理由で例外なんですよ。」とか言われて丸め込まれてしまうのではないでしょうか。

「話の内容がおかしいと思ったら、相手が詐欺師だと疑った方がいい」という発想は、一見もっともな話ですが、人がだまされる場合の心理を理解しない発想ではないでしょうか。

多くの人は、「何が話されるのか」よりも「誰が話すのか」ということに重点を置いて話を聞くのではないでしょうか。

そうだとすれば、電話詐欺防止対策は、「話の内容を聞いた上で、おかしいかどうかを判断せよ」ではダメであって、「話の内容を聞く前に、相手が本当に警察官や銀行員かを確認せよ」という発想でないといけないのではないでしょうか。

「相手が本物の警察官や銀行員かを確認できるまでは、話を聞いてはいけない」という呼びかけをしていかないと電話詐欺は減らないような気がします。

とはいえ、多くの人は、詐欺師に「○○警察署刑事課の○○です。」と言われたら、疑っては失礼だと思うでしょうから、「相手が本物か確認して」と言われても難しいものがあります。

かく言う私も、見知らぬ人からの電話を受けて、いちいち本物かどうかを確認せず、とりあえずは、相手の話を聞いてしまいます。

しかし、方向性としては、「第一関門を通すな」ではないでしょうか。

●イスラエルの外務副大臣の発言に注目

ここから本題です。

2017年10月7日付け東京新聞に「イランの核開発・テロ支援 脅威/イスラエル アラブと連携し対抗」という記事が載っています。

イスラエルのツィピ・ホトベリ外務副大臣(38)が、東京新聞の単独インタビューに応じたという記事です。

本筋の話はともかく、入植が(パレスチナ)との和平交渉の障害となっているのではないか、と質問されたホトベリ氏は、次のように答えました。

入植地は四千年以上前からユダ人が生活した場所。国際社会は紛争の焦点を間違って捉えている。和平を阻んでいるのは入植地ではなく、パレスチナのロケットやナイフ、テロだ

この質問は、「2016年12月23日、国連安保理でイスラエルのパレスチナ占領地への入植活動を「法的な正当性がなく国際法に違反する」とし「東エルサレムを含む占領地でのすべての入植活動を迅速かつ完全に中止するよう求める」決議が採択され、賛成14票、反対1票で可決された。」(Wikipediaイスラエル)という事実を受けてのものだと思われます。

●入植地は四千年以上前からユダヤ人が生活した場所は史実か

Wikipediaの「古代イスラエル」によると、「紀元前1207年の出来事を記したエジプトのイスラエル石碑(英語版)には:(ヒエログリフ: (略) - YSRYR - イスラエル)についての言及が認められ、これがイスラエルという部族集団の実在を確認できる最古の文献とされている。」と書かれています。

また、「ヨルダン川東岸の山岳地帯からカナン地方に進出してきた前述のイスラエル人達の出自は不明である。」とあります。

Wikipediaの「イスラエル王国」には、イスラエル王国とは、「紀元前11世紀から紀元前8世紀まで古代イスラエルに存在したユダヤ人の国家。」であるとされ、詳しくは、紀元前1021年頃から紀元前722年まで存在したとされます。

四千年前には、ユダヤ人国家であるイスラエルは存在しませんでしたし、イスラエルという部族集団の存在も確認されていません。

したがって、「入植地は四千年以上前からユダ人が生活した場所」を史実と言うことには無理があると思います。

たとえ史実だとしても、「阿刀田高氏はイスラエル問題を知らないのか」で紹介したように、「(1966年)当時のイスラエル国内の60%以上、西側諸国に住むユダヤ人の90%以上は、何世紀か前にロシアのステップ草原を徘徊していたハザール人の子孫であり、血統的に本当のユダヤ人ではない」「このように「アシュケナジー系ユダヤ人」は、『旧約聖書』に登場するユダヤ人(セム系民族)とは「血縁的に全く関係のない民族(ヤペテ系民族)」であり、国をあげてユダヤ教に大改宗して以来、現在に至るまで"ユダヤ人"になりきってしまっているのである。」という説が正しいとすると、多くのユダヤ人の祖先はパレスチナに住んでいなかったことになります。

●阿刀田高氏は地ならしをしている

要するに、ホトベリ氏は、イスラエルによるパレスチナ占領地への入植活動を神話によって正当化するものだと思いますが、その神話が受け入れやすくなるように地ならしをしているのが阿刀田高氏だと思います(「阿刀田高氏はイスラエル問題を知らないのか」を参照)。

阿刀田氏の「ユダヤ人は世界に散り、国をなくしながらも民族の血を守り続け、1948年にイスラエル国として復活することになる。」(2017年7月21日付け東京新聞)という文章を読んだ人は、ホトベリ氏はこのことを言っているのだと納得するでしょう。

●土地を奪われた者の立場は考えなくてよいのか

ホトベリ氏は、「和平を阻んでいるのは入植地ではなく、パレスチナのロケットやナイフ、テロだ」と言います。

つまり、イスラエルが入植しても、パレスチナ側がおとなしくしていれば、和平は実現すると言っています。

確かにそうなのですが、土地を奪われた者の立場は考えなくてよいのでしょうか。

ホトベリ氏の主張は、奪う者の立場からの身勝手な主張のように思います。

●どっちもどっちではない

ホトベリ氏は、「パレスチナのロケットやナイフ、テロだ」と言って、どっちもどっちという話にしたがっているように見えますが、パレスチナ側がやっているのは最大でもせいぜいロケット弾の打ち込みです。

しかし、例えば2014年のガザ侵攻では、イスラエルを訪問した田母神俊雄がラファエル社などから聞いた話として、「ハマスのミサイル、ロケット攻撃で死んだのはわずか3名」という話もあります。

これに対し、イスラエルは戦闘機でパレスチナ自治区を空爆しました。両者の戦力が全然違うのです。

2014年のガザ侵攻におけるイスラエル側の民間人犠牲者が7人(イスラエル側犠牲者の約1割)だったのに対して、パレスチナ側の民間人犠牲者は、「国際連合人道問題調整事務所(OCHA)によると1460人に上った。」といいます。パレスチナ側の犠牲者は2000人を超えるので、約7割が民間人犠牲者だったのです。どちらがテロリストかは明らかです。

「土地を略奪されても、抵抗するな」という不条理を押し付ける理由としては、神話を持ち出すくらいしかないのかもしれません。

なぜ日本人がこんな不条理の地ならしをしなければならないのか、私には分かりません。

(文責:事務局)
フロントページへ>その他の話題へ>このページのTopへ