多様性排除が民主的なのか

2009-09-04

●死票の多さ

8月30日の総選挙で民主党が圧勝しました。

問題なのは、死票の多さです。2009-09-01日本経済新聞には、次のように書かれています。見出しは、「自民の「死票」74%」です。

小選挙区で落選した候補者に投じられて議席に反映されなかった「死票」は約3270万で、総得票の46.3%を占めた。自民党では得票数の74%に当たる約2019万票無駄になった。圧勝した民主党の死票は13.2%の約441万票だった。

(中略) 共産党は152人の小選挙区候補が全敗したため、約298万票すべてが死票になった。社民党は約105万票(総得票の76.5%)、幸福実現党は約107万票(同100%)だった。

05年の前回選挙では、死票が最も多かったのは民主党の約1896万票(同76.5%)で、自民党は約615万票(同18.9%)だった。

小選挙区の総得票の46.3%に当たる約3270万票が死票になってしまうのが小選挙区制なのです。ひどい制度だと思いませんか。

●47%の得票率で74%の議席占有率

2009-09-03赤旗には、「小選挙区制弊害明白」の見出しで次のように書かれています。

民主党は小選挙区で221議席(議席占有率73.7%)を獲得しましたが、得票率は47.4%にすぎません。同党の得票率で小選挙区定数(300)を比例配分すると142議席となり、79議席も”水増し”されたことになります。

逆に自民党は得票率38.6%(2730万票)で議席占有率21.3%(64議席)、日本共産党は得票率4.2%(298万票)で議席はゼロでした。

政党の得票率を定数に掛けると、自民党は115議席、共産党は12議席となります。ところが実際には、自民党は64議席、共産党はゼロだったわけです。

民主党だけが47%の得票率で74%の議席占有率という効率的な選挙ができたわけです。「この結果について、岡田克也幹事長は「小選挙区制のすごさとすばらしさが出た結果だ」と述べました。」(2009-09-03赤旗)。

死票をたくさん出し、民意を正確に反映しないことがそんなに「すばらし」いことなのでしょうか。小選挙区制を支持する民主党は(自民党も同じですが)、権力を握ることが目的であって、多様な民意を尊重する考えはないのだと思います。

さらに民主党のマニフェスト(政権公約)には、衆議院の比例定数を80削減することが盛り込まれているらしいのです。

民主党が議員定数削減を公約にしたで紹介した赤旗記事によれば、 「80削減を07年参院選の結果にあてはめた場合、自民・民主の両党が67・6%の得票で95・3%の議席を独占する事態になります。」(2009-08-08しんぶん赤旗)。

弱小政党の議席が5%以下になっても問題ないというのが比例定数削減を進める民主党の考え方ということになります。

考え方の多様性を認めない政党に生物多様性の意味を理解できるはずがありません。多様性を否定し、小選挙区制を支持する政党に政権を担う資格はないと思います。

民主党は比例区の定数を無駄と考えているよう(2009-08-06赤旗)なのですが、民意をより正確に反映させる仕組みがどうして無駄なのか私には分かりません。無駄をなくすというのであれば、憲法違反の政党助成金(総額は2009年分で319億円)を廃止することが先ではないでしょうか。時事通信社の試算によれば、民主党が来年受け取る政党助成金は173億円になるそうです(2009-09-03赤旗)。

マニフェストに掲げた以上、民主党は比例定数の削減を実現させるでしょう。マニフェストに掲げたからというよりも、比例定数を縮小した方が民主党に有利だからでしょうけど。

民主党の看板は「民主」です。民主党がその名に反して「民主」を否定する意図が分かりません。多様な考え方を排除することがなぜ民主的と言えるのか、私には理解できません。

(文責:事務局)
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