「鹿沼市職員は危険だったのか」など

2008-05-21,2008-05-22修正,2008-05-23追記,2008-05-25修正・追記、2008-05-27修正

●鹿沼市職員は危険だったのか(2008-05-22修正)

2008-05-12に鹿沼市のジャスコ解体工事入札にからんだ談合疑惑をめぐる鹿沼市議会調査特別委員会が開かれ、入札参加業者や当時の市幹部への事情聴取が行われました。

13日付け朝日は次のように書いています。

委員会後、記者会見した小野口幸司委員長によると、市幹部は、暴力団関係者が昨年12月10日に1回、14日に2回の計3回、市役所に来たことを明らかにした。特に要求はなかったが、市職員は恐ろしい思いをし、副市長へ報告したという。

まだまだ分からないことだらけです。暴力団関係者が3回来たということですが、何をしに来たのか、何を言ったのか、全く分かりません。なぜ、「恐ろしい思いをし」たのかも分かりません。言葉に恐怖を感じたのでしょうか。態度に感じたのでしょうか。「市職員」とは幹部だったのか、そうでなかったのかも分かりません。職員は、なぜ暴力団関係者が来たと分かったのかも分かりません。刺青を見せられたのでしょうか。組織名の入った名刺を渡されたのでしょうか。市職員は、以前から暴力団関係者の顔を知っていたのでしょうか。知っていたとしたら、いつからなぜ知っていたのでしょうか。疑問は尽きません。

13日付け読売も調査特別委員会について報じており、次のように書いています。

市職員は「来庁した暴力団に何を求められ、どういう対応をとったのか」との質問に対し、「工事の情報公開を迫られた。副市長に報告し、組織で対応するよう指示を受けた」と答えた。

朝日の記事とかなり違います。おそらく小野口委員長の話が情報源だと思いますが、これほど記事に違いがあっても良いのでしょうか。

朝日は「(暴力団関係者から)特に要求はなかった」と書きますが、読売は「工事の情報公開を迫られた。」と書いています。

朝日は「市職員は恐ろしい思いをし」たと書きますが、読売には職員の心理状態に触れていません。

朝日は、「副市長へ報告した」とだけ書きますが、読売は「副市長に報告し、組織で対応するよう指示を受けた」と書きます。

暴力団関係者から特に要求はなかったのでしょうか。工事の情報公開を迫られたのでしょうか。情報公開を迫られることが職員にとってそれほど恐ろしいことでしょうか。情報公開請求書の書き方を教えればいいだけの話ではないでしょうか。そもそも恐ろしい思いをしたのでしょうか。「副市長に報告した」と職員が言ったことは間違いないようですが、報告しただけで終わったのでしょうか。それとも副市長から指示があったのでしょうか。「組織で対応するよう指示」があったとすれば、なぜその指示どおりに事が運ばなかったのでしょうか。二つの新聞を読み比べて、ますます分からなくなりました。

●議長と組長の馴れ初めは?(2008-05-22追記)

5月16日開催の鹿沼市議会政治倫理審査会で小松英夫議長が弁明しました。17日付け下野には、「事件前の組長との関係については、息子同士が同級生、野球仲間で面識があったと説明」と書かれています。

一方、15日付け朝日によると、職務強要罪で起訴された口粟野在住の清掃業者が組長と共謀して小松議長を脅した際、「(組長と)お中元やお歳暮のやりとりもしてるでしょう。」と言ったと起訴状に書いてあるそうです。

「息子同士が同級生、野球仲間」というだけでは、中元歳暮のやりとりまではしないのが普通です。もしも中元歳暮のやりとりがあったとすれば、そこまで親密になるきっかけは何だったのでしょうか。さっぱり分かりません。

●密会録音に改ざんがある?(2008-05-23追記)

旧ジャスコ解体工事入札を巡る問題を調査する鹿沼市議会調査特別委員会が5月19日に開かれました。2008-05-20下野によると、参考人として出席した中津宰氏(中津工業社長)は、暴力団組長との会合内容が録音され出回ったことについて、「音声は削除、改ざんがある」と主張したそうです

どの部分に削除、改ざんがあるのかさっぱり分かりません。

「最低価格で失格した業者の一つで、暴力団関係者に金品供与したとして同市から2カ月の指名停止処分を受けた伊藤技建の伊藤繁夫社長は、金品供与の内容について「花見の券を(組長から)買った」と証言した。」(2008-05-20下野。括弧書きは引用者)そうです。なぜカネを払ったのか、いくら払ったのかも今のところ全く分かりません。

分からないことだらけでストレスがたまります。

●改ざん部分が分かった(2008-05-25追加)

上記のように書きましたが、2008-05-20朝日には、中津会頭の発言について次のように書かれています。

また、中津会頭は密会の場で、「市長、議長、会頭は違った道の帝王だから、なんだってうまく鹿沼市を持っていける」と発言したことを認めた。そのうえで「『鹿沼市のために』と言っているのにその言葉が削除されている」とも述べ、「(流出した録音媒体は)改ざんされている」と主張した。

というわけで、中津会頭が録音に削除があると主張している部分が分かりました。このことをもって中津会頭は、「改ざんされている」と言っているのだと思います。

しかし、私が録音を聞く限り、音声は連続しており、編集してあるようには思えませんでした。

朝日は、「中津会頭は密会の場で、「市長、議長、会頭は違った道の帝王だから、なんだってうまく鹿沼市を持っていける」と発言したことを認めた。」と書きますが、これでは市長、議長、会頭が違った道の帝王だと中津会頭が言ったことになってしまいます。

しかし、録音を聞く限り、中津会頭は、「市長中心にね、その辺にそんで新井さんもいる、議長がいる、会頭ですから、そんで、そっちのね、違った道の帝王ですから、それでもって手を組めば、なんだってね、うまく鹿沼市を持っていけるわけですよ。」と言っていますから、中津会頭は、「組長」あるいは「総長」という言葉は省略していますが、組長のことを「違った道の帝王」と言っているように思います。

要するに5月20日付け朝日の記事で、中津会頭の発言には「組長」と「手を組めば」という言葉が抜けていますので、市長と議長が癒着しちゃうというのもかなり問題ではありますが、「暴力団と手を組む」という、中津会頭の発言の本質的な部分が表現されておらず、特に反社会的な発言ではないことになってしまいます。自分たちを「帝王」と呼ぶ、単なる傲慢な発言にすぎないことになってしまいます。

朝日がせっかく下野より詳しい記事を書いてくれるのは助かるのですが、中津会頭の発言の意味が問題になっているので、発言の意味が伝わるような書き方をしてほしかったと思います。

では、中津会頭が主張するように、上記の発言に「鹿沼市のために」を加えるとどうなるのでしょうか。「鹿沼市のために」という言葉がどこにあったのか分かりませんが、とりあえず最後の方に加えてみますと、 「市長中心にね、その辺にそんで新井さんもいる、議長がいる、会頭ですから、そんで、そっちのね、違った道の帝王ですから、それでもって手を組めば、なんだってね、(鹿沼市のため)にうまく鹿沼市を持っていけるわけですよ。」となります。

まず分からないのは、中津会頭の言う「鹿沼市のために」の「鹿沼市」とは何を指すのか、です。鹿沼市民全体でしょうか、特定の集団でしょうか。市民全体を指すとすると、次に分からないのは、市長と市議会議長と商工会議所会頭と元県議会議長と組長が手を組むと、なぜ市民全体のためにうまく鹿沼市を持っていけることになるか、ということです。市長らと暴力団組長が手を組むことがどうして鹿沼市民全体の利益になるのか、私には分かりません。

中津会頭が削除されたと主張する「鹿沼市のために」を彼の発言に加えると意味が分からなくなります。敢えて意味を通そうとすると、中津会頭の言う「鹿沼市」とは、特定の集団を指すと理解するしかないと思います。

●栃木県経営者協会が少子化対策を提言(2008-05-23追記,2008-05-27修正)

2008-05-16読売は次のように報じています。

県経営者協会(青木勳会長)は15日、少子化の影響で経済活力の低下が懸念されるとして、出生率の数値目標を示すなどとして5項目の少子化対策を提言書にまとめ、福田知事に提出した。

「女性1人が生涯に産む子供の数を示す県内の合計特殊出生率1.40(2006年)を10年間で1.60まで引き上げ、全国トップ水準を目指す」という数値目標を示しています。栃木県経営者協会は、人口問題を理解しているとは思えません。福田知事は、この提言を真に受けることのないように願います。シーザーやアレキサンダー大王じゃあるまいし、権力によって、出生率を上げて人口を増やすことなどできません。不可能への挑戦も結構ですが、ポケットマネーでやってほしいと思います。税金を使われてはたまりません。

栃木県経営者協会はどのような企業によって構成されているのかというと、当サイトでもテーマに取り上げた、下野新聞社やキヤノンが含まれています。東武宇都宮百貨店、レオン自動機、東京電力などを含むそうそうたるメンバーです。それにしてはピントの外れた提言だと思います。出生率の数値目標まで掲げるのなら、税金と民間資本をいくら投入すればどれだけ出生率が上がるという費用対効果に関するシミュレーションまでしてほしいと思います。「効果が出るかどうかは分からないが、とにかく税金を使え」というような主張を経営者たちがするはずはないでしょう。

なぜ経営者たちは出生率を上げたいのか。「経済活動の低下が懸念される」からです。経営者たちは人口の増加を望んでいるわけではありません。年寄りが増えても物を買いません。若い人の消費活動は盛んです。同時に若い人は労働力としても必要です。若い世代に物を買わせたいのに、若い世代が少ないのは困るというわけです。それは分かりますが、科学的に物を考えてほしいと思います。

行政はどうすべきか。産みやすい、育てやすい環境の整備は、逆に出生率が下がるとしても必要ですが、ほかにもやるべきことはたくさんあります。限界集落対策も必要です。認知症の高齢者が増えていくことは確実ですが、現在の成年後見制度は自己責任で後見人を探してくださいという制度です。そのため質の悪い後見人が横領事件などを引き起こしています。世田谷区では成年後見人の養成事業をやっているそうです。確率的に起こりえないことにカネと人を注ぎ込んでいないで、確率的に起こりうることへの対応策に早急に取り組むべきだと思います。市のレベルでもやれることはあるはずです。自治体のレベルでできることは限界があるにせよ、それならそれで制度の創設や改正に向けて県や国への要請活動を活発に行うべきです。

栃木県経営者協会の会員企業の中には、キヤノン製品を買ってよいのかで書いたように、偽装請負(請負契約を偽装した派遣契約)で法を犯したキヤノンがあります。違法ではないにせよ、社員を非正規化することによって、賃金や社会保険料の会社負担分を減らして利益を上げてきた会社が多いのではないでしょうか。2006年には、年収200万円以下の労働者が1,000万人を超えていると言われています。カネがなければ、結婚も出産も困難になります。少子化の原因は単純ではありませんが、企業が若者を使い捨てにしてきたことも一因ではないでしょうか。

そうだとすれば、若者を使い捨てにしてきた企業が、製品を作っても買ってくれる人がいなくなるとか安い労働力が使えなくなるという理由で、県に税金を使って人口を増やすように要求するのは、虫が良い話ではないでしょうか。

(文責:事務局)
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