かぬま魅力向上特別委員会が秘密会を決めた理由は正当か

2018-07-05

●秘密会の理由が判明した

かぬま魅力向上特別委員会が2018年3月14日に開催した第3回会議を秘密会にして、傍聴者3人を常任委員会室から追い出した事件の経緯については、鹿沼市議会のかぬま魅力向上特別委員会が傍聴者を追い出したでお知らせしたとおりです。

そこでは、「秘密会とされた理由は、会議の方向性が決まらない中で、委員の発言が断片的に報道されると困るということのようです。」と書きましたが、詳しい理由が分かりました。

明るい鹿沼をつくる会準備会が2018年4月29日に同委員会あてに質問状を出したところ、5月9日付けで回答が出ました。

そこには、次のように書かれています。

鹿沼市議会基本条例の規定の通り、私たちは市民に開かれた議会を常に心がけています。
鹿沼市議会委員会条例の第8条及び第11条により傍聴人の退場を命じたものです。
委員長の秘密会発議理由は次のとおりです。
(1)かぬま魅力向上特別委員会の討議内容が、決定されていない事項にもかかわらずあたかも決定された事のような文面が発表されていたこと。
(2)かぬま魅力向上特別委員会の調査目的・方法・目指す所等が定まっていない事。
これらにより、誤解された情報が公開されることを未然に防ぐためにも、委員会内部でいったん精査してから公開すると決定しました。
第3回かぬま魅力向上特別委員会が秘密会となった事は私たちも遺憾です。
第4回かぬま魅力向上特別委員会以降は開かれた議会を目指す精神に則り公開の場での委員会開催を致します。


●謝罪なし

回答書には、謝罪の言葉もなく、反省の弁もありません。

「第3回かぬま魅力向上特別委員会が秘密会となった事は私たちも遺憾です。」とあります。

「遺憾」とは、「期待したようにならず、心残りであること。残念に思うこと。」です。

つまりは、秘密会にしたのは、ミニコミ紙がおかしな記事を書くからであって議会の責任ではない、と言いたいのです。

委員会としては、全く非を認めていません。

鹿沼市議会基本条例には、
「市民参加、市民に開かれた活動」(前文)、
「透明性を確保するとともに、市民に開かれた議会を目指す」(第2条第1号)、
「市民の意見を把握し、政策形成に生かせるよう、市民参加の機会を確保する」(第2条第2号)、
「市民の意見を基に調査し、及び研究し、政策提言、政策立案等に努める」(第2条第3号)、
「説明責任を果たすため、市民に分かりやすい方法で議会の会議の原則公開及び情報の提供を行う」(第2条第5号)、
「議会は、市民に対して積極的に情報を発信し、情報の共有化を推進するとともに、説明責任を十分に果たさなければならない」(第6条第1項)、
「議会は、本会議、常任委員会その他の会議を原則として全て公開する」(第6条第2項)
と書かれているのですから、安易に秘密会にして、市民を排除してはいけないと思うのですが、正副議長や赤坂議員たちの解釈は違うようです。

●秘密会決定の経緯

秘密会決定の経緯については、2018年5月28日に開催された各派幹事会で同委員会や議会事務局からの説明があったようです。

そこでの配付資料には、次のように書かれています。

(2018年3月14日の)
正午過ぎ 第3回かぬま魅力向上特別委員会開催にかかる事前協議
出席者:正副議長、赤坂委員長、阿部議員、石川議会事務局長
協議結果:ビラにより、市民に対し委員会及び発言した個人の信頼を損ねる状況である。
議論テーマは鹿沼の魅力について各委員より提言と根拠を述べてもらうものであり、形成過程の意見はプライバシーの保護に配慮するべき。
第3回の委員会は非公開とする。

14時から 第3回かぬま魅力向上特別委員会
冒頭、委員長発議により会議を秘密会にすることについて賛成多数で可決されたため、傍聴人に対し退席を求めた(傍聴人3名退席)。

事前協議の出席者のうち正副議長とは、関口正一議長(当時)と谷中恵子副議長です。秘密会の決定は、正副議長の意向だったのかもしれません。

事前協議に阿部秀実議員(日本共産党)が役員でもないのに出席していたのは驚きですが、「ビラ」と呼ばれているミニコミ紙「明るい鹿沼」が日本共産党と関わりがあるのかを確認するためだったのではないかと推測されています。

●退席を求めたのは冒頭ではない

各派幹事会の配付資料では、「冒頭」秘密会を決めたように書かれていますが、事実ではないと思います。

退席させられた人の話によると、同委員会の会議は普通に始まり、約20分後に阿部秀実議員が検討してきたことを発表する際に、「で、今回は公開でやるのですか。」と発言したことを受けて、赤坂委員長が突然に秘密会を発議したのが事実だというのです。

配付資料になぜウソを書くのか、理解できません。

●秘密会の理由は正当か

鹿沼市議会委員会条例第17条第1項では、「委員会は、その議決で秘密会とすることができる。」と定めているだけなので、会議の内容がどのような場合に秘密会にすることが許されているのか分かりません。

したがって、会議の内容がどのようなものであっても、議決要件(鹿沼市では出席議員の過半数)さえ満たせば適法である、という解釈も一応可能です。

しかし、さいたま市議会では、「なお、議会の本会議及び委員会は公開が原則となるが、例外として、プライバシーの保護等の観点から、審議する事項が公益を害するような場合や個人の利益にかかわる重要なものである場合には、議長又は出席議員(委員会の場合は委員長又は委員)の発議により、一時会議の公開を停止し、秘密会とすることができる(地方自治法第115条、委員会条例第20条)。」(「さいたま市議会基本条例」逐条解説)という運用方針を示しています。

したがって鹿沼市でも、秘密会は、「プライバシーの保護等の観点から、審議する事項が公益を害するような場合や個人の利益にかかわる重要なものである場合」に限定して許されると解釈するのが妥当だと思います。

秘密会にする理由は何でもよいと解釈するならば、鹿沼市議会基本条例第2条第5号及び第6条第2項が会議の原則公開を規定した意味がなくなるからです。

では、かぬま魅力向上特別委員会が秘密会を決めた理由は、「プライバシーの保護等の観点から、審議する事項が公益を害するような場合や個人の利益にかかわる重要なものである場合」に該当するのでしょうか。

5月9日付け回答書に書いてある理由と5月28日の各派幹事会資料に書いてある理由が異なること自体が理由に正当性がない証拠だと思いますが、それはさておき、以下に検討したいと思います。

●「決定されていない事項にもかかわらずあたかも決定された事のような文面が発表されていた」の意味が分からない

回答書には、「かぬま魅力向上特別委員会の討議内容が、決定されていない事項にもかかわらずあたかも決定された事のような文面が発表されていた」と書かれています。

しかし、「明るい鹿沼」No.6に書かれていたことは、基本的には次のとおりです。

関口議長、谷中副議長の委員会へのお願いの後、各議員が、鹿沼市の魅力やその向上についての思いを発表しました。
「大きいショッピングモールがあれば人が集まる」「教育を魅力の一番にするために、鹿沼市 の教育者(臨時職員等)の賃金をあげれば、高い水準の教育ができる。そうすれば人が集まる」等
その後、左記のテーマについて次回会議3月14日までに考えておくことを決めました。

つまり、委員の発言を二つ紹介したことと、次回までの宿題を出したことを知らせたことです。

委員の発言は、委員個人の発言であり、委員会として決めたことを書いたものではないことは明白です。

「(鹿沼の魅力とは何かを)3月14日までに考えておくこと」と宿題を出したのは事実です。

何をもって「決定されていない事項にもかかわらずあたかも決定された事のような文面が発表されていた」と言うのか理解できません。

また、「プライバシーの保護等の観点から、審議する事項が公益を害するような場合や個人の利益にかかわる重要なものである場合」に該当しないと思います。

したがって、上記理由は、正当な理由ではないと思います。

●「調査目的・方法・目指す所等が定まっていない」も理由にならない

回答書では、「調査目的・方法・目指す所等が定まっていない事」が秘密会にした理由だと言いますが、なぜそれらに関する議論が秘密裏にされなければならないのか、私にはさっぱり分かりません。

また「これらにより、誤解された情報が公開されることを未然に防ぐため」とも言いますが、そもそもこの委員会のテーマは、鹿沼市の魅力の向上と発信です。「誤解された情報が公開される」としても、それでどんな弊害があるのでしょうか。

いずれにせよ、「プライバシーの保護等の観点から、審議する事項が公益を害するような場合や個人の利益にかかわる重要なものである場合」に該当するとは思えません。

●委員会及び発言した個人の信頼を損ねる

5月28日の各派幹事会資料では、「ビラにより、市民に対し委員会及び発言した個人の信頼を損ねる状況である。」ことを理由としていますが、何をもって「委員会及び発言した個人の信頼を損ねる」と言っているのか、全く理解できません。

「明るい鹿沼」では、議員名を出していないのですから、「個人の信頼を損ねる状況」でないことは明らかです。

委員の発言が委員会の信頼を損ねる、という趣旨であれば、それは委員の発言のせいであって、ミニコミ紙の報道のせいではありません。

これも、「プライバシーの保護等の観点から、審議する事項が公益を害するような場合や個人の利益にかかわる重要なものである場合」に該当するとは思えません。

●形成過程の意見を公開できないなら議会公開と言うな

各派幹事会資料には、「議論テーマは鹿沼の魅力について各委員より提言と根拠を述べてもらうものであり、形成過程の意見はプライバシーの保護に配慮するべき。」が理由とされています。

形成過程の意見を市民に聞かれると困ると考える人は、議員になるべきではないと思います。

また、議会の公開とは、形成過程の意見を公開することに意味があるのであって、結論だけを公開するのであれば、条例で議会公開の原則を規定する意味はありません。

これも、「プライバシーの保護等の観点から、審議する事項が公益を害するような場合や個人の利益にかかわる重要なものである場合」に該当するとは思えません。

したがって、鹿沼市議会では、さいたま市議会の基準によれば、秘密会とすべきでない場合に秘密会にしたということになります。

●私の解釈が正しいのか一抹の不安がある

ただし、上記の私の解釈が正しいとは限りません。

なぜなら、上記事前協議には、わざわざ議事運営の専門家である議会事務局長が出席しており、彼が「そんな理由では秘密会にすることはできない」と忠告した形跡がないからです。

議会事務局の職務には、議会基本条例を読んだこともない議員に対して、条例にはこのように規定されていますよ、と説明して、議員が条例に違反した議事運営をしないように助言することも含まれると思います。

今回、かぬま魅力向上特別委員会が第3回会議を秘密会にしたということは、議会事務局として問題ないと判断して委員長にお墨付きを与えたか、又は、議会事務局としては問題あり、という判断であり、秘密会にするのは妥当でないと助言したが、正副議長や委員長や阿部議員の強い意向に押し切られたか、のどちらかだったことになると思います。

したがって、前者の場合は、専門家が問題ないと判断したのですから、私の解釈が間違っている可能性があります。

●かぬま魅力向上特別委員会は解散したらどうか

地方議会の役割は、第一義的には、執行部への監視機能だと思います。

執行部は、鹿沼市の魅力を向上させ、発信するための工夫を各部署でしていると思います。

議会で、なぜゼロベースで同じことを考えなければならないのでしょうか。二重行政であり不経済です。

各地で議会基本条例制定後、議会からの政策提言がはやりのようですが、議会という組織に向いた活動か、を考えるべきだと思います。

執行部がやろうとしないことを提言するには、議会がゼロから考えるしかありませんが、執行部が既にやっていることであれば、そのどこに問題があるのかを指摘するのが筋だと思います。

会議を4回重ねても、鹿沼市の魅力が何かについて、意見がほとんど出てこないことからも、議会が扱うには向いていないテーマだったと思います。解散してはどうでしょうか。

私としては、議会に政策立案能力など期待していません。強い権限を持つ執行部がおかしなことをやっていないかをきっちりチェックしてほしいと思います。

●清流を破壊する事業になぜ異を唱えないのか

かぬま魅力向上特別委員会の第4回会議で市田登委員は、鹿沼市の魅力の一つは清流だ、と言いました。

そのとおりだと思います。

しかし、鹿沼市長は、県議時代とは異なり、市内の主要な清流を破壊する南摩ダムの建設を促進する立場です。

南摩ダムの使用権を確保するが、実際にはダムの水は使わないから浄水場も建設しない、という水道政策も無駄な投資であり、問題です。

鹿沼市議会議員のほとんどは、このような市長の政策になぜ異を唱えないのでしょうか。

議会は、政策立案をしている暇があったら、監視機能を適切に発揮してほしいと思います。

(文責:事務局)
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