放射線による被害は軽微と言えるのか

2011年2月26日

●本当のロックンローラーは栃木県出身だった

恥ずかしながら、 「ずっとウソだった」(かっこいいです。)を聴くまでは、斉藤和義を知りませんでした。

しかもこの本当のロックンローラーは、栃木県出身でした。誇りですね。

子どもが生まれて間もないのに、福島の事故で空気も大地も海も山も川も汚染されてしまって、「冗談じゃないよ」という気持ちだったと本人が語っていました。

忌野清志郎亡き後、ダメなものはダメと言えるミュージシャンは、斉藤さんだけになってしまったのでしょうか。

●須田顕一氏も大丈夫おじさん

下野新聞の読者室余話の執筆者に須田顕一という人います。

下野新聞は脱核発電ではなかったのかで紹介したように、須田氏は懲りない人です。 1月18日付けの読者室余話でも「放射線への対応 冷静に」と題する文章を書いています。次のように書かれています。

札幌医科大の高田純教授は「福島は広島にもチェルノブイリにもならなかった」という論文で「チェルノブイリ原子炉事故とは全くと比べものにならない低線量で、しかも福島県民にさえ健康被害はない」と結論づけています。

高田氏は、核発電推進派の御用学者と目されており、「仏の光は放射能を弾き飛ばす」と主張する幸福の科学の関係者だという説もあります。Wikipediaによると日本の核抑止力構築の必要性を主張している学者です。

高田氏の言説を論拠にするなら、低線量で健康被害は出ないという結論になるのは当然です。

しかし、被曝による健康被害は4、5年後に爆発的に出るというのが、チェルノブイリの教訓です。高田氏や須田氏に5年後にも被害が出ないことが分かるのでしょうか。

高田氏は健康被害は出ないと言いますが、2012年2月23日発売の週刊文春には「福島からの札幌批難の子供に甲状腺に深刻所見」という記事が載っています。

「福島から北海道に避難した子供120人を甲状腺検査したところ、11人に、「甲状腺がん」が疑われる深刻な所見がある。」と書いてあるようです(放射能防御プロジェクト 木下黄太のブログ)。

ちなみに、高田氏に関するWikipediaの記事を読んでいたら、2011年7月末に行われた「福島支援シンポジウム」で一緒に出演した田母神俊雄氏は、「原発の上を飛ぶカラスが落ちましたか」と述べたと書かれています。

しかし、確かにカラスは落ちていないようですが、福島県の野鳥が異常に減少しているそうです。

「アサ芸+」の福島「野鳥の異常減少」を緊急報告をご覧ください。

「福島、チェルノブイリの両地域に共通する14種類の鳥類で比較して、福島の事故のほうが影響は深刻だったという。」と書かれています。

●チェルノブイリ事故の教訓とは

2012年1月5日に経済学者の池田信夫氏がニューズウィーク日本語版にチェルノブイリ原発事故で最大の被害をもたらしたのは放射能ではないという記事を書いています。

記事は、次の文章から始まります。

1986年に当時のソ連で起こったチェルノブイリ原発事故から、昨年で25年。ロシア政府は、25年間の調査をまとめた報告書を出した。これはロシア語でしか発表されていないため、ほとんど知られていないが、重要な教訓を含んでいる。中川恵一氏(東大)の新著『放射線医が語る被ばくと発がんの真実』には、その結論部分が訳されているので紹介しよう。

そして「重要な教訓」とは、「チェルノブイリ事故の放射能による死者は、59人しか確認されていないのだ。」から、「微量の放射線にこだわって、これ以上彼らを隔離したままにすることは人道上ゆるされない。」ということだと池田氏は書きます。

裁判官でも科学者でも庶民でもやることは同じで、事実を認定し判断を下しています。

事故から教訓を引き出すのは結構ですが、池田氏の事実認定は恣意的ではないかと思います。

●ロシア政府の報告書は信頼できるか

池田氏は、ロシア政府の調査報告書から教訓を導き出すべきだと書きますが、そもそもロシア政府の調査報告書は信頼に値するでしょうか。

ロシア政府は今後も核開発を進めるためにチェルノブイリ事故を矮小化したいでしょうから、ロシア政府の発表する事実を真に受けること事態が危険だと思います。

ロシア政府の言うことを真に受けて教訓としていたら、更なる悲劇に教われると考えるべきです。

ロシア政府の発表を信用する前に、ロシア政府がウソの発表をする動機がないかどうかを考えるのが学者ではないでしょうか。

ロシアは現在32の核発電所を保有しており、建設中のものが10基で、今後24基の建設が予定されているそうです(「世界」2011年6月号p37)。

ロシア政府が、核が人類と共存できない技術だという結論が出るような調査をするでしょうか。

●チェルノブイリ事故の死者数は59人か

チェルノブイリ事故による死者数についていろいろ調べたのですが、諸説紛々という状態で、余りにも開きがあり、本当のところは分かりません。

Wikipediaには、次のように書かれています。

事故から20年後の2006年を迎え、癌死亡者数の見積もりは調査機関によっても変動し、世界保健機関(WHO) はリクビダートルと呼ばれる事故処理の従事者と最汚染汚染地域および避難住民を対象にした4,000件に、その他の汚染地域住民を対象にした5,000件を加えた9,000件との推計を発表した[15]。

これはウクライナ、ロシア、ベラルーシの3カ国のみによる値で[16]、WHOのM.Repacholiによれば、前回4000件としたのは低汚染地域を含めてまで推定するのは科学的ではないと判断したためとしており、事実上の閾値を設けていたことが分かった[17]。

WHOの国際がん研究機関(IARC) は、ヨーロッパ諸国全体(40ヶ国)の住民も含めて、1万6,000件との推計を示し[18][19]、米国科学アカデミー傘下の米国学術研究会議(National Research Council)による「電離放射線の生物学的影響」第7次報告書(BEIR-VII)[20]に基づき全体の致死リスク係数を10%/Svから5.1%/Svに引き下げられたが、対象範囲を広げたために死亡予測数の増加となった[21]。

WHOは、1959年に、IAEAと世界保健総会決議(World Health Assembly:WHA)においてWHA_12-40という協定に署名しており、IAEAの合意なしには核の健康被害についての研究結果等を発表できないとする批判もあり、核戦争防止国際医師会議のドイツ支部がまとめた報告書には、WHOの独立性と信頼性に対する疑問が呈示されている[22]。

欧州緑の党による要請を受けて報告されたTORCH reportによると、事故による全世界の集団線量は約60万[人・Sv]、過剰癌死亡数を約3万から6万件と推定している[23]。環境団体グリーンピースは9万3,000件を推計し、さらに将来的には追加で14万件が加算されると予測している[24]。ロシア医科学アカデミーでは、21万2,000件という値を推計している[25]。

2007年にはロシアのAlexey V. Yablokovらが英語に限らずロシア語などのスラブ系の諸言語の文献をまとめた総説の中で1986年から2004年の間で98万5000件を推計、2009年にはロシア語から英訳されてChernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the Environmentというタイトルで出版された[26]。ウクライナのチェルノブイリ連合(NGO)は、現在までの事故による死亡者数を約73万4,000件と見積もっている[27]。

京都大学原子炉実験所の今中哲二については、Wikipediaによれば「2万件から6万件」であるという見解と紹介されていますが、 チェルノブイリ事故による死者の数という論文で次のように書いています。

これからは、「今中さん、チェルノブイリ事故ではどれだけの人が死んだんですか?」と聞かれたら「いまの“私の勘”では、最終的な死者の数は10 万人から20 万人くらい、そのうち半分が放射線被曝によるもので、残りは事故の間接的な影響でしょう」と答えることにしよう。もとより雑ぱくな議論であり、いい加減な仮定の基にはそれに見合った結論しか出てこないことは承知であるが、「よく分からないので無いことにしよう」と結論するよりましな試みではないか、と思っている。

すべてを疑うのが科学的な態度ですが、池田氏は、ロシア政府の発表のみを正解であるとして立論していますので、非科学的と言えます。

そもそも諸説紛々であり、最大では98万5000人という推計もあることを紹介しないで、ロシア政府の報告書だけを引用していること自体、人をだますための議論と見るべきでしょう。

チェルノブイリ事故による死者数について諸説あることを池田氏が知らないとすれば、あまりにも無知であるし、知っていて最少の59人説だけを論拠に安全論を振りかざすとすれば、悪質です。

私は、池田氏の言う59人説が少ないから間違っているとは考えていません。

池田氏は、チェルノブイリ事故による死者数については諸説あること、そしてなぜ59人説が妥当なのかの論拠を示さないのですから、池田氏の主張はエセ科学や詭弁という批判を加えられても仕方がないと思います。

●池田氏にどう対処するか

池田氏は、ブログに「核のゴミ問題は解決できる」という記事で、「再処理なんかしないで、放射性廃棄物をドラム缶に入れて日本海溝の底1万mに投棄すればいいのだ。」、又は、「モンゴルなどの途上国に核のゴミを「輸出」することだ。」と書いています。無責任だと思います。

チェルノブイリ事故における死者数を59人と断定してしまうような池田氏の発言を相手にすべきではないという意見がネット上でかなり見受けられますが、相手にしないで状況がよくなるかというとそうではないと思います。

世の中には私のように、言われなければ分からないタイプの人たちが相当数います。池田氏の発言のどこがおかしいのかを指摘する人がいなければ、彼の信者を増やすことになります。

彼の信者が有権者の多数を占め、核発電推進政策を支持すれば、私たちが地獄に道連れにされる可能性があります。

だから、疲れる作業ではありますが、池田氏の論理のおかしな点について指摘しておくことは必要だと思います。

おかしな意見を相手にしないで済めば、こんな楽なことはありませんが、「悪貨は良貨を駆逐する」ということが往々にしてあるもののです。

●ICRPやUNSCEARは科学的か

池田氏は、UNSCEARを信頼しているようですが、核に関する国際機関とはどのようなものでしょうか。

国際放射線防護委員会ICRPは、「原発開発推進を前提に核保有国が進める世界政治にのっとったポリシーを作る機関」であるという説もあります。なぜなら、「ICRPはイギリスの非営利団体(NPO)として公認の慈善団体であり、科学事務局の所在地はカナダのオタワに設けられている[3]。助成金の拠出機関は、国際原子力機関や経済協力開発機構原子力機関などの原子力機関をはじめ、世界保健機構、ISRや国際放射線防護学会(International Radiation Protection Association; IRPA)などの放射線防護に関する学会、イギリス、アメリカ、欧州共同体、スウェーデン、日本、アルゼンチン、カナダなどの各国内にある機関からなされている」(Wikipedia)からです。

原子放射線の影響に関する国連科学委員会UNSCEARもそんなものかもしれません。UNSCEARは、「科学的事実に基づいて核実験の即時停止を求めるなどの提案を行う意図で設置されました。」(ICRP、UNSCEARは妥当なの?科学者の信用をどう取り戻す?という解説もありますが、Wikipediaによると、核実験の即時停止を求める提案をかわす意図もあって当委員会を設置する提案がされたと書かれています。

そうだとすると、「純粋に科学的所見から調査報告書をまとめる事を意図して作られた組織であり」という解説は眉唾です。

なお、死者数の問題から離れますが、そのUNSCEARでさえも、「「結局、いかに少量の放射線でもこれをうけると有害な遺伝的影響と、また多分身体的影響が起こることを免れない」と、極めて曖昧な表現ではあったが、微量放射線によるガン・白血病への影響も認める表現を採用した。」(ICRP、UNSCEARは妥当なの?科学者の信用をどう取り戻す?)ようです。

池田氏はほかの記事では、世界保健機関WHOの発表を論拠にしているのですが、WHOも、「WHOは、1959年に、IAEAと世界保健総会決議(World Health Assembly:WHA)においてWHA_12-40という協定に署名しており、IAEAの合意なしには核の健康被害についての研究結果等を発表できない」(Wikipedia)仕組みなのですから、その発表が科学的かどうかは最初から疑ってかかる必要があります。

IAEAとは、国際原子力機関と訳され、「1957年7月に国際連合の下に設立された原子力の平和利用促進のための機関」(はてなブックマーク)です。

IAEAは、核発電推進のための機関です。

WHOは、このIAEAに牛耳られているということです。

WHOやUNSCEARという権威の出した数字を根拠にした立論を私たちは疑う必要があると思います。

●死亡者数は10万人以上であることを池田氏も認めている

池田氏は、次のように書きます。

結果的に20万人が家を失い、1250人がストレスで自殺し、10万人以上が妊娠中絶したと推定される。

池田氏は、事故を起因とするストレスによる自殺や人工妊娠中絶により奪われた胎児の命の数が10万を超えることは認めるわけですが、それらの命の数は、放射線により必然的に奪われた命ではなく、本人自らが、あるいは妊婦が勝手に奪った命だから、事故による死者数に加えるべきではないと考えているわけです。

しかし、事故により職と家を奪われたのなら、そして池田氏が信頼するUNSCEARが「結局、いかに少量の放射線でもこれをうけると有害な遺伝的影響と、また多分身体的影響が起こることを免れない」のだとしたら、周辺の人々が自殺や人工妊娠中絶をするのは必然ではないでしょうか。

●がんで死ななければいいのか

確かに死者の数は、被害の大きさを測る上で重要な指標になると思いますが、死ななければ問題がないということにはならないと思います。

1万人の人の寿命が10年ずつ縮んだら、10万年の人生が失われるのであり、仮に80年で割ると、1250人が死んだのと同じだという理屈もあり、あながち詭弁とは思えません。

胎児が被曝したら知能障害や奇形などの障害を生じることが知られています。 引用はしませんが、Wikipediaの"射線障害"を参照してください。

下記サイトは、奇形児の映像が載っています。それらがチェルノブイリ事故以降に発生した事例か、事故との因果関係があるのかと言えば、確たる証拠はありませんが、事故と関係がないという証拠もありませんので、安全側に立てば、関係ありという前提で考えるべきです。 http://www.youtube.com/watch?feature=endscreen&NR=1&v=mXMUTaSortI
http://www.youtube.com/watch?v=VuiWFVamQWg&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=yotP4qMSfB0&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=bL61CFakJ8w&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=_LA_PnAQONo&feature=fvwrel

福島の事故後、耳のないウサギが生まれたという動画(下記)もあります。原因は不明ですが、放射線の影響と考えることもできます。 http://www.youtube.com/watch?v=iiwUrbKMrEM&feature=fvwrel

京都大学原子炉実験所のホームページには、チェルノブイリ原発事故によるベラルーシでの遺伝的影響というページがあります。

そこには、新生児の先天性障害がチェルノブイリ事故の前に比較して事故後に増えているというデータが示され、結論として次のように書かれています。

われわれの調査結果は,ベラルーシの住民において胎児異常の頻度が増加していることを示している.それらは,人工流産胎児の形成障害および新生児の先天性障害として現われている.そうした増加の原因はまだ断定されていない.しかしながら,胎児障害の頻度と,放射能汚染レベルや平均被曝量との間に認められる相関性,ならびに新たな突然変異が寄与する先天性障害の増加といったこと は,先天性障害頻度の経年変化において,放射線被曝が何らかの影響を与えていることを示している.


●遺伝的影響はないのか

池田氏は放射線障害は遺伝しないから奇形児は生まれないと書いています( 放射線障害は遺伝しない)が、第五福竜丸の元乗組員、大石又七氏は、「最初の子どもは死産で奇形児」だったと語っています(北京メディアウオッチ被爆した第五福竜丸の元乗組員、大石又七さんのメッセージ)。

これはどう説明するのでしょうか。池田氏は、放射線障害は遺伝しないから奇形児は生まれないと言っているのですから、大石氏には偶然奇形児が生まれたのであって、放射線の被曝とは関係ないと説明することになります。

確かに関係があるという証明はできません。でも、関係があるかないかは経済学者の池田氏も分からないはずです。

池田氏が引用するロシアの昨年の調査を主導したと思われる、アレクサンドル・ルミャンツェフ・ロシア連邦立小児血液・腫瘍・免疫研究センター長でさえも、「さまざまな細胞障害が、事故後に生まれた子どもに出ている」(「金曜日」2011年12月9日号p16)と言っています。「ロシアは被曝遺伝の可能性を排除しておらず」(同ページ。金曜日編集長の文)ということのようです。

また、チェルノブイリ事故のときに被曝した女の子が成人して出産したら、赤ちゃんに耳の穴が開いていなかったという話をラジオで聴きました。これはどう説明するのでしょうか。

また、池田氏は胎児が被曝して奇形児となることについては触れていません。

胎児の被曝量が増えれば知能障害や奇形児が増えてくることは確実で、重要な問題だと私は思います。池田氏は重要と考えていないようですが、理由は不明です。そもそもこの問題に触れていないのですから。

池田氏は、「ロシア政府の報告書は次のように結論している。」と書きます。

事故に続く25年の状況分析によって、放射能という要因と比較した場合、精神的ストレス、慣れ親しんだ生活様式の破壊、経済活動の制限、事故に関連した物質的損失といったチェルノブイリ事故による社会的・経済的影響のほうがはるかに大きな被害をもたらしていることが明らかになった。

フランスねこのNews Watchingというブログの「消される被曝者(2)『チェルノブイリ事故の死者4000人』の謎とIAEA・WHOの調査手法」ヤブロコフ他というページには、次のように書かれています。 IAEAとWHOによる調査の結果と今回発表された調査の結果は大きく食い違っている。IAEAとWHOがチェルノブイリ事故での死者と放射能による癌患者の総数を「死亡者について直接の死因を特定することは難しい」との注釈付きで9000人、死亡者については4000人と見積もったのに対し、ヤブロコフ博士らの調査では事故が原因となって発生した死亡者数を98万5千人と指摘している。

著者は更に、IAEAとWHOによる調査にかかわる専門家の中には、実際の放射能汚染による健康被害よりも、汚染地域における貧困や住民が持つ被害者意識の方が深刻な影響を与えた、と考え、チェルノブイリ事故の影響は一般に思われている程には深刻ではない、と結論づける者がいることを指摘している。著者はまた、こうした専門家の中には原子力産業との関係を持つ者が含まれている、とも指摘している(注2)。

「今回発表された調査の結果」とか「著書」とは、Chernobyl:Consequences of theCatastrophe for People and the Environmentという著書を指します。

この著書は近々翻訳本が出版されるようです。

概要は、放射能を拡散させない市民の会(秋田県中央)というサイトの「チェルノブイリ-大惨事が人びとと環境におよぼした影響」(PDFファイル)をクリックすると見られます。

何のことはない、池田氏が論拠としているロシア政府の報告とは、「IAEAとWHOによる調査にかかわる専門家」の結論とそっくりだということです。

●IAEAとは何か

で、IAEAとはなんぞやというと、「国際連合傘下の自治機関[2]であり、原子力の平和利用を促進し、軍事転用されないための保障措置の実施をする国際機関である。2005年度のノーベル平和賞を、当時の事務局長モハメド・エルバラダイとともに受賞した。」(Wikipedia)と解説されています。

しかし、その本質はWikipediaの解説を読んでも分かりません。

ベンジャミン・フルフォード著「図解「闇の支配者」頂上決戦」(扶桑社。2011年10月30日発行)p78から引用します。

IAEA(国際原子力機関)が、彼らの宣うお題目通り「原子力の平和利用を目的」とした組織だと思っている人がいるとしたら、オメデタイ話である。

なぜならば、その成り立ちからして、「平和」からは程遠い輩が携わっているのだから。その一人がバーバード・バルークという男。国連原子力委員会のアメリカ代表として「すべての核技術を国際的な管理下に置くこと」というIAEAの元になる考えを作った男だ。

実はこの男、日本にとっては仇敵だ。第二次世界大戦中、マンハッタン計画の支援者で、原爆投下を強く推薦した男なのだ。同様にIAEA設立にも携わったロスチャイルド家の入婿、ベルトラン・ゴールドシュミットもマンハッタン計画のメンバーだ。

マンハッタン計画とは、「第二次世界大戦中、枢軸国の原爆開発に焦ったアメリカが原子爆弾開発・製造のために、亡命ユダヤ人を中心として科学者、技術者を総動員した国家計画である。」(Wikipedia)と解説されています。

IAEAの現在の事務局長は日本人の天野之弥氏です。

ウィキリークスに流出した文書には、彼が事務局長に就任する前に「アメリカが立候補を支持してくれたことについて礼を述べ、国際原子力機関に対するアメリカの戦略目標を支持していることを、大いに強調した。事務局長が公平で自立していることを、正当に要求している77ヵ国グループに対し、妥協する必要もあるだろうが、上級職員人事から、イランの核兵器計画とされるものの処理に至るまで、あらゆる重要な戦略的決定で、自分は断固として、アメリカ側にたつと、天野は何度も繰り返し、大使に述べた。」(マスコミに載らない海外記事というサイトのイランを覆いつつある戦雲というページ)と書かれているそうです。

IAEAの事務局長がアメリカの下僕であることが明らかになったのです。

そんなIAEAの調査に関わる「専門家」の意見とロシア政府の意見が一致しているわけです。放射線そのものによる被害は軽微であるという結論に依拠した立論に説得力はありません。

●IAEAの調査を信用できるのか

1991年「チェルノブイリ安全宣言」発表した重松逸造氏(IAEA事故調査委員長)を糾弾したドキュメンタリー動画(一部文字おこし)を是非ご覧くだ さい。

Wikipediaは、重松氏を次のように説明しています。

1990年4月、IAEAが発足させたチェルノブイリ原発事故をめぐる国際諮問委員会(IAC)の委員長に就任。各国から集められた200人の専門家集団の責任者として、ソ連国内の汚染状況と住民の健康の調査、住民の防護対策の妥当性の検討を目的とする国際チェルノブイリプロジェクト実施にあたった。

翌1991年5月、ウィーンのIAEA本部で開かれたプロジェクト報告会において、汚染地帯の住民には放射能による健康影響は認められない、むしろ、「ラジオフォビア(放射能恐怖症)」による精神的ストレスの方が問題である、1平方km当り40キュリーという移住基準はもっと上げてもよいが、社会的条件を考えると今のままでしかたないであろう、との報告をまとめ発表した。

広河隆一氏の話によると、重松氏は、汚染の強い地域には入らず、現地の食料も怖くて口にできなかったのに「汚染地帯の住民には放射能による健康影響は認められない」という報告をまとめたというのです。

フランスねこのNews Watchingというブログの「チェルノブイリに学ぶ 〜IAEAの『安全宣言』で何が起きたのか?汚染を生きる子どもたちが支払う代償は」(野呂美加、5月8日)によると、重松氏は、チェルノブイリに行って、「この小児がんは風土病ですね」と言ったらしいです。

こんな非科学的な報告に依拠した池田氏の主張を信じたら、とんでもないことになると思います。

そもそもほとんどの核の専門家なんて、核開発・核利用で食べている核マフィアの一員なのですから、放射線の健康への影響なんて大したことはないと言うに決まっていると思います。

専門家や専門機関の権威を信用したら、とんでもないことになると考えるべきだと思います。

事実、国民が専門家に任せたために日本中が放射性物質で汚染されてしまったという結果が出ています。

●なぜ石炭火力と比べるのか

池田氏は、自動車や石炭火力は原発より危険であるという記事も書いています。

そこでは、「少なくとも人命を基準にするかぎり、原子力は石油火力はもちろん、バイオ燃料より安全なのだ。」と書かれ、核発電は石炭火力発電よりも安全であると強調されています。

池田氏は、放射線の安全基準は経済問題であるという記事では次のように書いています。

原発を停止して石炭火力を動かすことによって大気汚染が増え、原発より大きな健康被害が出ると予想されます。世界の専門家が共通に指摘するのは、石炭こそ砒素やクロムや水銀などの有害物質を大量に排出する最悪のエネルギーだということです。

核発電をやめたら石炭火力を主力にするしかないという前提での議論ですが、そんな前提が成り立つのでしょうか。

石炭はこれから主力にすべきエネルギーではないでしょうから、核と石炭を比べる意味は少ないと思います。

再生エネルギーでまかなえるまでは、天然ガスかメタンハイドレートでつなぐべきでしょう。

「化石燃料は二酸化炭素が出るじゃないか」という批判はありますが、核発電だってCO2を出してますし、遺伝子を傷つける毒を出し続け、そのお守りが10万年以上も必要な核発電よりもはるかにましではないでしょうか。

そもそも二酸化炭素地球温暖化原因説そのものがエセ科学かもしれないのです。

●石炭は本質的に危険か

核と石炭を比べるなら、どちらが本質的に危険かを考えるべきです。

確かに、池田氏が書くように「石炭や石油の死者は、主として採掘事故によるもの」でしょう。中国では、炭坑の採掘事故により「2010年だけで7万9552人が亡くなっている」EUROPA(エウロパ)そうです。

しかし、採掘に伴う事故は必然的なものではないでしょう。

イギリスでは炭鉱事故は少ないとテレビでイギリス人が言っていました。

「1910年頃までヨーロッパでも死者300人を越える事故があったが、1913年のイギリスのセングヘニス炭鉱事故(死者439名)以後、欧米では犠牲者300名以上の爆発事故は発生していない。」(Wikipedia"石炭")そうです。

中国の炭鉱でも、安全対策にカネをかければ事故は減らせるはずです。

人命を経済よりも重視するかという国家政策の問題です。

炭鉱の事故による死者が多いのは、石炭というエネルギーの本質とは関係ないでしょう。

ところが、核発電では、ウランの採掘から発電、核廃棄物の処理まで、すべての過程において労働者が被曝します。奴隷労働者を必要とします。どこの国が運営しても奴隷が必要でしょう。

そして、核廃棄物という毒を10 万年も管理しなければなりません。

事故が起きれば、長期にわたって健康被害が継続します。経済的被害も継続し、自殺者が増えるでしょう。

核エネルギーは本質的に危険であると考えるべきでしょう。

上記のように、池田氏は、IAEAの御用学者やロシア政府の発表を鵜呑みにし、放射線を恐れるストレスからの自殺や人工妊娠中絶は放射線そのものから生じる被害ではないために重要ではないと言いたいのだと思います。

しかし、これらの自殺や中絶は、放射線が無色、無味、無臭であり、被曝量と障害の因果関係も明らかでないという性格から生じる必然的な被害であり、本質的な問題だと思います。

●大阪の4歳児からセシウム、ウランが基準値越えで出ました 真白リョウというサイトに大阪の4歳児からセシウム、ウランが基準値越えで出ました。というページがあります。

大阪の4歳児の爪からセシウムとウランが基準値を超えて検出されても、死んだわけでも障害が発生したわけでもないから問題ないと言えるのでしょうか。

池田氏は問題ないと言うのでしょうが、後で問題が発生したらどう責任をとるのでしょうか。

子どもの甲状腺癌は、4年後に爆発的に増加します。広河隆一ドキュメンタリ(文字おこし)というページで紹介されている映像を見ると、事故から8年後までに子どもたちが白血病や甲状腺がんでたくさん死んでいると伝えられています。

広河氏が目撃した子どもたちの死は、池田氏の言う59人の中に入っているのでしょうか。

私には分からないことだらけですが、池田氏はなぜ放射線による被害は軽微だと言えるのか理解できません。

(文責:事務局)
文中意見にわたる部分は、著者の個人的な意見であり、当協議会の意見ではありません。
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