下野新聞は科学に基づいた報道を

2011年10月3日

●下野がジェット燃料が1000 ℃以上で燃えたと報道

9月11日付け下野は、「米同時テロ10年」という記事で次のように報じています。

(ニューヨーク)検視局によると、今年8月末時点でWTC出の死亡が認定された2753人のうち、身元確認されたのは約6割の1632人にとどまり、1121人が未確認のままだ。

なぜそれほど多くの人が未確認なのかということについて、次のように解説しています。

WTCの北棟と南棟に旅客機が激突、崩壊した衝撃とジェット燃料が推定千度以上で燃え続けたことで、遺体の損傷は激しかった。約2万2千の遺体や遺体の一部が見つかったが、多くは長時間高温にさらされた骨片だった。


●ジェット燃料が1000℃以上で燃えるか

ジェット燃料はケロシンを主成分としており、灯油に酸化防止剤、氷結防止剤や腐食防止剤などの添加物を加えたものと考えてよいようです。

Wikipediaによるとジェット燃料の最高燃焼温度は、980℃と書かれています。好条件で燃焼させれば1090℃くらいになるという説もありますが、いずれにせよ1000℃前後と考えてよさそうです。

しかし、「航空デパート・ホーブン」というサイトの「航空機の燃料」というページには、「チャンバー(燃焼室)の温度は、1400℃にもなり」という記述があり、エンジンの中ではかなり高温になるようですが、それはエンジンに取り入れた空気を30倍に圧縮した上で霧状の燃料を噴射するからであり、ビルに衝突した飛行機の燃料タンクから漏れ出た燃料が1000℃以上で燃焼したとは思えません。

ジェット燃料がビルの中にこぼれても酸素が十分に供給されませんから、1000℃以上で燃焼したというのは、そもそも無理な推定です。

●燃料は満タンだったのか

仮に1000℃前後になったとしても、その燃焼は何分間続いたのでしょうか。

その前に衝突した飛行機は燃料をどの程度積んでいたのでしょうか。

上記「航空デパート・ホーブン」によると、ジェット旅客機が燃料満タンで出発することはまずないようです。余裕は見込むにしても、必要な量を積むということでしょう。

WTCに衝突したとされるボーイング767ー200は、航続距離が9,400kmである(根拠は航空軍事用語辞典の「B767」)のに対し、ボストンとロサンゼルスの間の距離は4,175km(2,594マイル)です。

旅客機必要以上に燃料を積むことはありませんから、衝突した飛行機がボーイング767ー200だとすれば、燃料が満タンで離陸したということはないはずです。積載した燃料は、多くてもタンクの6割程度だと思います。

●衝突時に燃料はどれだけ残っていたのか

ビルに衝突したのがボーイング767だとして、衝突時に燃料はどれくらい残っていたのでしょうか。

http://skepticswiki-jp.org/wiki.cgi?page=FrontPageというサイトのWTC1,2の倒壊 (911陰謀論)というページに次のように書かれています。

(アメリカン航空)11便と(ユナイテッド航空)175便は、それぞれ1万ガロンと9,100ガロン程度のジェット燃料を積んでいたが、それを何階にもおよぶ広範囲にばらまいた。一部はエレベータ・シャフトをつたわり、地下にも達している。激突直後に建物の外にそのまま飛び出し、火球となって燃え上がった燃料は、そのうち約15%(WTC1)と10〜25%(WTC2)と推定されている。(1行目の括弧書きは引用者)

公開討論会Wiki『ZERO:9/11の虚構』について(各論)でも、NCSTAR1(NISTが作成した資料。p20,p38)が引用され、ボーイング767の燃料タンクの容量は23,980ガロンでWTCへの衝突時の残量は同じ数字が書かれています。

ボストンからロサンゼルスへのジェット機での所要時間は約6時間半です。

乗客81人と乗務員11人を乗せたとされるアメリカン航空11 便機の飛行時間は7時59分~8時45分の46分でした。

乗客56人と乗務員9人を乗せたとされるユナイテッド175便機の飛行時間は7時58分~9時05分の1時間07分でした。(根拠は、上記「航空デパート・ホーブン」のBoeing767の操縦とハイジャックテロのページです。大元のソースは、米国誌[FLIGHT]のようです。)

したがって、燃料は、離陸後1〜2割は消費されていたということです。

ちなみに、上記WTC1,2の倒壊 (911陰謀論)には、燃料の「一部はエレベータ・シャフトをつたわり、地下にも達している。」と書かれており、その後には「ジェット燃料はすぐに燃え尽きたと考えられているが、それ以外の可燃物に引火し、燃焼温度は最高で1000℃に達したと推定されている。」とあり、建物全体が1000℃の高温に達したように書かれていますが、 ビルの破損部から黒煙を上げていましたので、1000℃で燃え続けたとは思えませんし、下層階で1000℃に達するような火災が起きていたとはなおさら思えません。

下層階で火災が起きていたとしても、スプリンクラーが作動したという話は聞きませんが、どうしてでしょうか。

それはともかく、衝突時の燃料の残量は、多くてもタンクの半分程度だったと思います。

●何分間燃えるのか

では、衝突した飛行機から漏れ出た燃料は、何分間燃えるのでしょうか。

過去記事9.11に触れると言論弾圧を受ける(その2)で紹介したように、9.11に関する公式見解信奉者の持ち出す資料に、「NY/WTC 被害拡大過程 被災者対応等に関する日米共同研究」の報告書というものがあります。

東京大学と京都大学と国土交通省の職員が作成した資料ですので、信用性に疑問がありますが、その資料でさえも、WTCに衝突したジェット機の燃料について次のように書いています。

いずれにしろ燃料自体は最初の数分で燃え尽き、そ の後は、航空機自体を含めて衝突した階に存在する可燃物がほとんど燃焼を始めたものと考えら れる

NIST(米国標準技術局)による「世界貿易センター・タワー崩壊に関する最終報告」(Final Report on the Collapse of the World Trade Center Towers)のp183にも次のように書かれているようです。

両タワーで、火災は飛行機からのジェット燃料の一部により複数の階で同時に始まった。最初のジェット燃料による火災自体が続いたのはせいぜい数分間であった。ツインタワー「火災の熱」についてを参照。

「最初のジェット燃料による火災自体が続いたのはせいぜい数分間であった。」に異論を唱える者はいません。

では、「数分」とは何分でしょうか。

「数」とは、「三、四、五、六など十位に満たぬ数をばく然と示す」(旺文社国語辞典)接頭語です。

したがって、ジェット燃料は、最大で6分間で燃え尽きたということになります。

上記下野記事には、「ジェット燃料が推定千度以上で燃え続けた」と書かれていますが、仮に「千度以上」であったにしても、「燃え続けた」時間は、せいぜいたったの6分間です。

記事のいう「ジェット燃料が推定千度以上で燃え続けた」という事実はないと言わざるを得ないと思います。

もちろん、「燃え続けた」の時間的な長さは定義されていませんから、数分間でも「燃え続けた」と言えるという理屈を言う人はいるでしょうが、文脈から判断して「数分間燃え続けた」という意味ではないでしょう。

読者のほとんどは、「長時間燃え続けた」と解釈するでしょう。

次のセンテンスの「約2万2千の遺体や遺体の一部が見つかったが、多くは長時間高温にさらされた骨片だった。」における「長時間高温にさらされた」は、「ジェット燃料が推定千度以上で燃え続けた」と同義だと考えるのが普通の読者でしょう。

読者は、「ジェット燃料が推定千度以上で長時間燃え続けた」と誤解するように文章が書かれています。

だから記事は、科学的に書かれていないと思います。

ちなみに、火災でビルが崩壊した原因についても、ジェット燃料がビルの中で燃焼したことが強調されることがありますが、ジェット燃料が火災の原因になったとしても、崩壊と直接結び付けることはできないことに注意すべきです。

●6分間で遺体が骨片になるか

記事は、ジェット燃料が6分間燃えたことと、建物が「崩壊した衝撃」によって、1121人の「遺体の損傷は激しかった。」と言っています。

また、「約2万2千の遺体や遺体の一部が見つかったが、多くは長時間高温にさらされた骨片だった。」とあります。

「高温」とは、1000℃以上を指すのでしょう。

「長時間」とは、6分間を指すのでしょうか。6分間で遺体が「骨片」になるのでしょうか。

仮にジェット燃料が1000℃以上で燃焼したとしても、数分間燃焼しただけで、1121人の遺体を骨片になるまで焼き尽くすことができるとは思えません。

もちろん、ジェット燃料が燃え尽きた後も火災は続きましたが、それは通常のビル火災と考えるべきなのでしょうから、遺体が骨片になることはないはずです。

では、通常のビル火災では何度になるのでしょうか。

NISTの報告書には、「普通のビル火災や炭化水素(例えばジェット燃料)での火事はおよそ1100℃(華氏2000度)までの温度を発生させる。」(ツインタワー「火災の熱」について)と書いてあるそうです。

つまり、ジェット燃料があってもなくても同じというわけです。

しかし、十数時間かけて焼け落ちたビル火災では、1000℃に達するのかもしれませんが、WTCは焼け落ちていません。

崩壊する前のビルの映像をYouTubeなどで見てください。火災が下層階に及んでいたようには見えません。

●崩壊の衝撃で遺体はどうなるのか

上記のように書くと、火災の熱だけでなく、建物の崩壊の衝撃と相まって遺体の損傷が激しくなったという反論が出るでしょう。

確かに、WTCは、110階建て、高さ417メートルの超高層建築物ですが、崩壊の映像を見れば分かるように、建物は、上の方から消し飛んでコンクリートは粉末状になっていましたから、上層階の重さが、そこにいた人を含めて下層階を押しつぶすことは考えられません。

当時のWTCの火災の熱で遺体が骨片になることは考えられませんし、崩壊する建物の重さで1.121人の遺体が約22,000ピースに分裂するとも考えられません。

WTCで爆発があったから、高温が発生し、遺体はバラバラにちぎれ、肉が蒸発し、骨片と化したと考えるのが合理的ではないでしょうか。

WTCのコンクリートは、99%が粉塵と化したと言われており、その「直径は平均して60ミクロン(0.06ミリ) というとんでもなく細かいものだった。」(ツインタワー全面崩壊 :その他の特徴の研究/超微粒子の《火砕流》)という研究もあります。

このサイトには次のように書かれています。

痛ましい話だが、ビル内にいて犠牲になった人々の肉体もまたそれらと一緒にビル外に吹き飛ばされたのであろう。事件後5年以上もたって第2ビルから80mほど南にあった旧ドイツ銀行ビルの屋上ー地上171mーから700個にのぼる人骨小片が発見された。

鉄骨が強度を失ってビルが崩壊したのなら、どうしてコンクリートが粉塵になるのでしょうか、人骨が80メートルも飛ぶのでしょうか。

爆発で説明する方が合理的ではないでしょうか。

(文責:事務局)
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