鹿沼市長が争点つぶし作戦に出た

2008-04-28,2008-04-30追記,2008-05-01追記,2008-05-02修正,2008-05-03修正,2008-05-07修正,2008-05-11修正

●市長陣営が討議資料を配っている

阿部和夫市長陣営が「討議資料」を市内で配布しています。公設市場とそば屋「古里」(入粟野)にあることは確認しています。連絡先は書いてありませんが、「未来を考え!!元気な鹿沼を守る会」が発行人のようです。「私たちは市長として実績のある人に期待します」と書かれていますから、現職市長陣営が発行したものと思われます。

●争点つぶしではないか

この討議資料は、対立候補の佐藤信氏の討議資料に対抗するために作られたように見えます。佐藤氏の討議資料に書かれていることと阿部市長の政策については、"鹿沼市長選に候補者を擁立しよう"というブログの佐藤県議の公約というページにうまく対比されていますので、参照してください。

この討議資料を発行した意図は、佐藤氏との間の争点をつぶしてしまうことにあるように思います。争点がなくなれば、どっちの候補が市長になってもいいわけです。で、どっちを市長にした方がいいかと言えば、実績のある現職を支持しましょう、という作戦のように見えます。以下に具体的に争点をながめてみます。

●JR新駅に"?"とは?(2008-04-30修正)

まず、「JR新駅?」と書かれています。JR新駅に"?"が付いてしまいました。その意味は、佐藤氏が明確に「「JR新駅整備」を中止します」と公約していることに対抗するかのように、「市民意識も変化してきました」を理由に「再度市民の意見を聞き、是非を問います。」とし、争点から外すことではないかと思われます。

しかし、2007-03-07の鹿沼市議会一般質問で、塩入佳子議員が次のように聞きました。

この事業の推進に対して、市民の声はかなり否定的であります。合併により約10万4,000人にもなりました鹿沼市民の声は、さまざまなものがあろうかとは思います。どのようなことにも多くの市民の中には賛成も反対もあって当然ですが、党派を持たない客観的な視点の無所属議員の私たちの知る限りにおいては、絶対的に新駅構想に反対する意見の方が多く聞かれるように思います。

しかし、ここ数年にわたり、新駅整備事業として予算は計上をされてきました。平成16年が4,565万円、平成17年が2,697万8,000円、平成18年が2,645万4,000円、そして今回、平成19年度も駅舎及び周辺整備の基本設計、用地調査等の委託料等々ということで2,643万1,000円が計上されておりますが、市民を代表する議員の一人として、市民の声に耳を傾け、JR日光線新駅事業費は一時凍結して、見直しが必要と思われます。
市長の見解をお聞かせください。

(新駅整備のために、税金が現在までに1億2000万円も使われてきたようなのです。)これに対し、大橋勲企画部長(当時)が次のように答弁しています。

 JR日光線新駅整備事業についての質問にお答えします。
 「予算を一時凍結して見直しが必要では」とのことでありますが、新駅整備事業は、市民生活の向上や人口増を含む地域の活性化に寄与することはもとより、公共交通の充実という視点からは、高齢化や環境問題の解決にもつながるものであり、本市の将来の発展のためには必要な施策であるとの考えのもと、市議会からの要望等を踏まえ、重点事業として取り組んできた事業であります。

 そのようなことから、新年度からスタートする第5次総合計画におきましても、引き続き重点事業に位置づけ、早期実現を図ってまいりたいと考えております。したがいまして、JRからの協議開始の回答を得次第、整備に向けた作業に入れるよう、新年度予算にも計上したものでありますので、現時点で予算の凍結や事業の見直しは考えておりません。  以上で答弁を終わります。  
 

そして市長自身も2007-12-05の大貫武男議員への答弁で、次のように発言していました。  

 重点施策をどのように考えるかについてお答えします。
 JR新駅事業についての考え方についてでありますが、昨日7番、松井議員にお答えをしたとおり、鹿沼市における長年の課題として、また市の将来の発展につながる施策として、市議会の要望も踏まえ進めてきたものであり、第5次総合計画にも重点事業として位置づけた事業であります。計画に盛り込まれた施策については、着実な目標の達成に向けて対応することを基本とし、加えて市の財政状況を十分踏まえ、確実な財源確保を図りながら推進してまいりたいと考えております。  

市長は、JR新駅整備事業を総合計画の重点事業に位置づけて、市民や議員から、どんなに見直せと言われても、やるんだという強い意欲を見せていたのに、佐藤氏が中止を宣言すると、急に軟化してしまうのは、節操がないように市民には写るでしょう。

●「夏まつり」も見直す(2008-04-30修正)

佐藤氏が「「夏まつり」を見直します」と書いたことに対抗するかのように、「夏まつりは、1日開催とします」と書かれています。なぜ、ここにきて見直しなのでしょうか。

阿部氏のお祭り行政は、市長の人気取り政策として始まったものと想像しますが、動員される自治会や市職員にとって迷惑な話で、人気取りにさえなっていなかったように思います。

お祭りについては、上記ブログの"お祭り行政を見直そう"に鋭い分析がありますので、ご参照ください。そこには、「実際、各地で行われていた地域の盆踊り行事が、この夏祭りが開催されるようになったために、取りやめになっているという話も聞きます。」と書かれています。それが真実だとすると、市長がお祭りを統廃合してしまっているわけですから、地域の活力を奪ってしまう結果になると思います。そうだとしたら、夏まつりはやってはいけない政策だったのではないでしょうか。これまでも夏まつりに関する批判は市長の耳に届いていたはずですが、対立候補が見直しを公約として掲げるまで、市長は市民からの批判に耳を傾ける気はなかったということです。

●ごみ袋も値下げ(2008-04-30修正)

佐藤氏が「「有料ゴミ袋」の値段を引き下げ、強度を高めます。」と書いたことに対抗するかのように、「ごみ袋は市民の要望を受けとめ、本年度値下げを検討します」と書かれています。

しかし、2007-12-05の市議会で市長は、芳田利雄議員の質問に次のように答弁していました。

芳田議員の再質問にお答えします。
 ごみの袋、いわゆるその袋について、値下げはどうなのかと、こういうことでありますが、この40円に至るまでの経過についてはもう何度も申し上げているかと思いますが、審議会の委員、いわゆる環境審議会委員の皆様方に審議をいただきました。そのメンバーというのは議員も含め、さらには公募の一般市民の主婦の方々も参加をいただいて審議会が構成をされているところでありまして、その中でごみ袋の値段についての特別の委員会が設置をされまして、その中でまた検討されたと。いわゆる審議会の中においても、2度にわたる審議がされたということであります。そして、当時は50円がいいのではないかなどという話もあったところでありますが、やはりこれからの家庭の負担というものもふえては困るだろうということで、40円という適正な価格に手数料審議会の結論を得て、その決定をいたしたところでございます。

 実は、芳田議員のほうには5,715名の署名でごみ袋を安くしろと、こういうふうな話が届いているということでありますが、もともと人はただのほうがいいのでありまして、ただであればこそいいと、こういうことは人間の心理からしてそれこそ究極の願いだと、このようにも思っているところであります。しかし、これは受益者負担、いわゆる多くの方々の中にあって公平にその施設を使って運営をしていく。それには莫大な管理運営費、ランニングコストもかかることもあるわけでございまして、それを理解している主婦の方々もおられます。実は私のところに連絡が届いているのは、この袋については40円というのは安いよねと、50円、あるいは50円から100円の間でもいいんじゃないかと、そうすることによってやはりごみの減量やさらには分別というものについても協力ができるし、そのような金額が、あるいは余剰的に金額が出てくれば、それぞれの支援の対策もできるんでありますよねと、こういうような声も届いているところでありまして、一概にしてそれが安くせよ、あるいは半額にせよということにはつながっていかない、このように私は理解をいたしているところでございます。

 そういう中で、やはりこれからこの40円のためのその利益と言われておりますが、我々はその使用料に対して今度は次の施策を考えていかなければならないということで、ごみの減量に対する、いわゆる生ごみ処理機に対しての手厚い支援もいたしているところでありますし、さらには環境にやさしいまちということでありまして、電気による発電に供する住宅などに対しての支援などもしておるところでありますし、またあのごみ焼却炉は年数が経過するごとにその修繕費、維持費というのが大いにかさんでくるわけでありまして、そういう部分に使わせていただくと、こういうことでございます。そのようなことで、この40円につきましては、当分の間は検討をする余地がないわけでありまして、この40円で続けて進めていきたいと、このようにも考えているところであります。

 他の自治体の話をしては申しわけございませんが、他の地域では65円などと言っている地域もあるようでございまして、これから厚生労働省の言っているごみについての有料化を先取りするがごとし対策を練ってきたわけでもございますし、さらにこの40円というのが決して高くないと、このように感じているところでございます。裏づけは、審議会やその中に設けられた委員の皆さん、そして議員自らがそれにも議決をいただいているということも大変強いわけでございまして、これについては、これからこの40円を上げるということではなくて、持続的にこのまま進めていければと、このように考えているところでありますので、ご理解を願いたいと思います。  
 

数か月前までは、「値下げしない」と断言していたのです。節操がないと思います。

 ●「(仮称)ハーベストセンターは、基本計画を策定します」(2008-05-02修正)  

佐藤氏は、「23億円をかけて造るハーベストセンターなどを取り上げ「子や孫の世代に付けを回す時代ではない」と見直す考えを示した。」(2008-03-22下野)そうですし、5月2日発行の「市民の勇気ニュース」には、ハーベストセンターを「ゼロベースで見直し」と書いてあるように、中止とも受け取れる発言をしていますが、阿部氏は、ここは譲れないようで、絶対に造りたいということのようです。(2008-05-06この段落修正)  

「規模、内容については、市民合意を得て進めます。」と書いてありますが、「市長の思いどおりに進めます。」と同義と見た方がよいと思います。阿部氏の使う「市民合意」は、私たち一般市民の考える「市民合意」とは、かなりの隔たりがあると思います。阿部氏は、鹿沼市が南摩ダムの利水事業に参加することや黒川の水が南摩ダムに取られることを「市民合意」に基づくものと言うのでしょうか、それとも自分が勝手に決めたと言うのでしょうか。  

「基本計画を策定します」の意味が分かりません。基本計画は2007年に既に策定されています。鹿沼市のホームページの「(仮称)ハーベストセンター 整備事業基本計画」のページからダウンロードできます。  

なお、「市が負担する事業費のうち、約3分の2は水利用者が財政負担する事業です。」の意味が分かりません。  

私たちが入手した資料「南摩ダム水源地域整備事業」では、ハーベストセンターの概算事業費は21億2250万円で、そのうち国庫補助が2億2500万円で、市が18億9750万円を負担する、受益者(下流自治体)の負担はゼロとなっています。9割が自己負担となっていました。  

ところが、上記基本計画書を見ると次のように書かれています。  

 水特事業についての負担率は、協議の結果、下流県の負担が62.19%(市の実負担37.81%)と決定されています。  
 

交渉の結果、下流県の負担割合が増えたのかもしれません。しかし、基本計画が既にあるのに、討議資料に「基本計画を策定します」と書いてある意味は、依然分かりません。また、初期投資額の負担割合の問題はともかく、莫大な維持費を賄えるのかを考えると、ハコものはもう勘弁してくれと考えている市民も多いのではないでしょうか。  

阿部市長は、「市民合意」をどのような手法で把握するつもりでしょうか。市が補助金を出している団体の会長を集めて意見を聞くという、いつもの手法でしょうか。「市民合意」を持ち出すなら、市長は、それを把握する手法まで明らかにすべきです。  

 ●子育て支援は「第1子から」と言い出した(2008-04-30追記,2008-05-03修正,2008-05-07修正 )  

佐藤氏が「「1人目からの子育て支援策」を推進します。」と書いたことに対抗するかのように、市長陣営の討議資料には「第1子から皆さんのライフステージにあわせて支援」と書いてあります。  

「鹿沼市長選に候補者を擁立しよう」のブログの私が佐藤氏を支持する理由という記事によると、佐藤氏も別の資料で「妊婦検診や不妊治療、保育の充実、子どもの遊び場機能や相談機能など」と具体的な政策を打ち出しているようです。これに呼応するかのように、市長の討議資料には、「新婚家庭の住宅、不妊治療、妊婦検診の充実を図ります。」とも書いてあります。したがって、「妊婦検診」と「不妊治療」では、差がなくなってしまいました。佐藤氏が「保育の充実、子どもの遊び場機能や相談機能」を掲げているが特徴的で、上記ブロガーはこのことに期待を寄せています。  

なお、鹿沼市のホームページに「「第3子対策事業」19年度の実績について」というページがあり、「事業開始からちょうど丸二年が経過しました。ここで「第3子対策事業」の実績をお知らせします。」と書かれていますが、第3子がどれだけ増えたのか、という検証はありません。「3人目以降の支援に力を注ぐ理由」というページには、「そこで鹿沼市では、(理想的な子どもの数は3人という)多くの市民の願いをかなえるために、3人以上の子育て家庭に対する支援に特に力を注ぎ」と書いているのですから、「理想がかなったか」についての実績の検証があってしかるべきではないでしょうか。しかし、鹿沼市は、出生数で実績を示しています。実績を出生数で表すなら、「第3子」という言葉を使うべきではないと思います。  

そこに描かれているグラフによると、出生数の推移は、次のとおりです。  

 2005年度858人
 2006年度869人
 2007年度892人
 

確かに出生数は、2005年度から2006年度で11人の増、2006年度から2007年度で23人の増となっています。しかし、2006年に増えたのが全国的な現象だったことは、鹿沼市の少子化対策が功を奏したのかに書いたとおりです。2007年度に全国的に増えているのかどうかが分かりませんので、鹿沼市での出生数の増加が少子化対策の効果と言えるかどうかは、現時点では判断できないと言うのが正しいと思います。  

市のホームページの「「第3子対策事業」19年度の実績について」というページには、「出生数については、6年ぶりに上昇に転じた平成18年と比較しても、さらに増加傾向を示し、全国的に減少傾向とされる中」と書かれています。出生数が2006年に6年ぶりに全国的に増加に転じたのは、上記のとおりです。  

では、2007年度は「全国的に減少傾向」なのでしょうか。「年度」としての全国のデータは公表されていないと思いますが、「年」のデータとしては、「厚生労働省が20日発表した人口動態統計(速報)によると、2007年の出生数は前年に比べ 1341人減の112万937人」(2008-02-21日経)とされています。2006年の112万2278人から2007年の112万937人に減ったというわけです。確かに減少しましたが、1341人は全体の0.1%ですから、「減少傾向」というほどのものではないと思います。鹿沼市でも年度ではなく、年を単位として他の自治体と比較してどうなのかが検証されなければ、第3子対策事業の効果が出たのかは言えないと思います。

市は、「制度実施前の17年度と比較すると、34名の増となりました。」と自慢しますが、上記のように2006年は6年ぶりに全国的に増加に転じたのですから、2005年度と比較すれば、2007年度は、ほとんどの自治体でもある程度増加しているはずです。34名の増が多いかどうかは、団塊の世代の女性が同数程度居住する自治体と比較しないと判断できないと思います。  

2007年度1年間で「延べ15,450件に及ぶ制度のご活用」があったのに、「17年度と比較すると、34名の増」にしかなりません。しかも34名の増は、2005年度との比較です。2006年度に11名増えていますから、2007年度中に増えたのは、23名です。2007年度1年間で「延べ15,450件に及ぶ制度のご活用」にいくら経費がかかったのか知りませんが、1年間に23名しか増えないということです。  

費用対効果が得られないから子育て支援のためにカネを使う必要がないなどと言うつもりはありません。子育て支援をやった結果、逆に出生数が減るとしても、福祉政策として子育て支援は行うべきです。(子育て支援は逆効果かもしれないという説もあります。赤川学氏の著書の紹介http://media.excite.co.jp/book/interview/200501/p02.html)  

では、鹿沼市は、福祉として子育て支援をしているのでしょうか。それとも、人口を増やそうとしているのでしょうか。鹿沼市のホームページの第3子対策事業に対する鹿沼市の願いに書いてある、「人口問題や少子化対策など、国レベルの大きな課題が、一地方都市の対応で簡単に解決するなどとは、毛頭考えていません。」、「鹿沼市は、市民の家族や子育てを大切にしたいという思いのために「第3子対策事業」をはじめとした多くの子育て支援策を実施しています。」という記述を見ると、福祉として子育て支援をやっているように見えます。  

しかし、鹿沼市は、実は人口を増やそうとしていると思います。根拠は、子どもを産みやすい、育てやすい環境をつくれば、自ずと第3子までたどり着くはずですから、殊更「第3子」と言う必要はないからです。不公平感をもたらすという意味でも「第3子」のみを対象とする事業はやるべきではないと思います。また、市の「3人目以降の支援に力を注ぐ理由」というページで「第3子対策事業は   急速に進行する少子化の流れを変え」とはっきり銘打っているからです。  

さらに、阿部市長は、総合計画と水道計画では、2015年度に人口が105,457人になるとか、同年度に給水人口が86,000人になるとか、非現実的な推計を行って、人口が増えることを前提に巨額の設備投資をしようとしているからです。阿部氏の進める第3子対策事業が、「夫婦が2人の子どもをつくっても人口は増えないが、3人以上つくれば人口が増えるからご褒美を上げましょう」という政策に私には聞こえてしまうのは、実際に過大な人口推計を行っているからなのです。阿部氏は、鹿沼市の人口が減っていくという現実を見ようとしないということは確実に言えます。  

阿部氏が「人口問題や少子化対策など、国レベルの大きな課題が、一地方都市の対応で簡単に解決するなどとは、毛頭考えてい」ないのなら、現実的な人口推計を行うべきです。総合計画における人口推計を変更すべきです。  

ちなみに、市の第3子対策事業に対する鹿沼市の願いのページに「一地方都市には何もできないのではなく、地方から何らかの行動を起こすことで、国としての取り組み、対応を促したい。」と書いてありますが、「国としての取り組み、対応」とは、「移民の受け入れ」です。  

4月20日のサンデープロジェクトに自民党元幹事長中川秀直氏と 坂中英徳氏(外国人政策研究所)が出演しました。中川秀直氏は、「人口が減り続ける今後の日本は、国をオープンにして、 外国から移民を多数受け入れて、多民族国家として経済成長を目指すべきだと大胆な提言をし」(テレビ朝日のホームページから)、坂中英徳氏は、「人口危機を乗り越えるためには今後50年間で1000万人の移民を受け入れるべきだと主張」(同)していました。 移民は、彼らの個人的な思いつきではなく、政府として本気で考えていると思います。国としても、人口を増加する妙案は、移民しか思いつかないのでしょう。  

下記のように鹿沼市の2006年度の経常収支比率は92.6%で、かなり硬直化しています。独自の政策に使える予算は限られています。ユニークな子育て支援事業をやるなら、ハコもの事業をゼロベースで見直すのが筋だと思います。  

 ●交通対策の充実(2008-04-30追記)  

佐藤氏が「郡部や高齢者の足として、乗合タクシー・リーバスで、ドアからドアの交通ネットを整備します。」と書いたことに対抗するかのように、「交通弱者への新たなシステム導入とリーバスの充実」と書きます。

 ●鹿沼市の財政は心配ないのか(2008-04-30追記)  

佐藤氏が借金を子孫に付け回してはいけないと言い、「「第二の夕張市」にしないために、借金を減らします。」と書いていることに対抗するかのように、市長陣営は「鹿沼市の財政は心配ありません」と書いています。借金の返済能力を判断する「実質公債費比率は県内14市で最も低い12.1%」と書きます。実質公債費比率の意味は次のとおりです。  

 実質公債費比率とは、財政状況の健全度をみる指標のひとつで、平成18年度から新しく定められました。

具体的には、(1)借金の返済にあてたお金、(2)別のお財布で経理をしている企業会計(水道や病院など)が借金を返済するために一般会計が負担したお金、(3)借金ではないが、それと同じように過去に誰かと約束をして、その約束に従って支払ったお金などの合計額が、その年度に県の判断で使い道が決められるお金のうち、どのくらいの割合を占めるのかをみる指標です。

過去3カ年分の計算をして、その平均の値が実質公債費比率となります。低ければ低いほど、借金の返済以外で自由に使えるお金が多いことになります。
(群馬県のサイトから引用)
 

しかし、自治体の財政状況を表す指標は実質公債費比率と市民一人当たり借金の額だけではありません。不利なデータも示すのが現職としてフェアな姿勢ではないでしょうか。(2008-05-01この段落修正)  

2008-03-29朝日は、「財政調整基金の残高激減」の見出しで、鹿沼市の財政状況を分析しています。記事によると、財政調整基金は2004年度には21億円以上あったのが、2006年度には8億円に減り、2007年度末には「さらに約4億円減る見込み」と書いてあります。阿部市政において、市債の期末残高は確かに増えていないのかもしれませんが、貯金を2004年度から17億円も取り崩してしまって、いざというときに大丈夫なのでしょうか。その17億円は、どこに使われたのか、広報されているのでしょうか。  

上記記事は、鹿沼市の2006年度の経常収支比率は92.6%だと書いています。経常収支比率とは、歳出のうち人件費や公債費など経常的な支出に、市税などの経常的収入がどの程度充当されているかにより、財政構造の弾力性を判断する指標で、比率が低いほど弾力性が大きいことを示し、一般的に80%を超えると弾力性が失いつつあるといわれています。  

2006年度の借金は、一般会計で326億円、特別会計で270億円、合計596億円です。上記記事によれば、鹿沼市では「合併特例債は172億円の上限ぎりぎりまで予定している」そうです。実質公債費比率が低いからといって、どんどん借金をして本当に大丈夫なのでしょうか。

 ●借金を3年間で20億円減らせるのか(2008-05-01追記)  

佐藤氏が「鹿沼の財政が心配」(2008-03-15読売)と言っていることに対抗するかのように、市長陣営の討議資料には「市の借金を平成23年までに20億円減らします」と書いてあります。  

鹿沼市のホームページの鹿沼市の財政状況のページに第3期財政健全化推進計画が掲載されています。作成年度は書いてありませんが、計画期間が2007年度〜2011年度とされていますので、おそらく2006年度に策定した計画でしょう。計画書のp6には、次のように書かれています。  

 目標ーー市債現在高を平成23年度までに10億円の縮減を目指します。

 平成17年度末の市債の年度末現在高は、319億8千万円であり、平成18年度末では、328億2千万円となる見込みである。今後は、建設債の発行額を年平均20億円に抑制することにより、市債の現在高を5年間で10億円縮減することを目標とします。  
 

ここまで読むと、第3期財政健全化推進計画を策定した人物と討議資料を書いた人物が同一なのかという妙な疑問が生じます。市の借金を3年間で20億円減らせるなら、なぜもっと早くやらなかったのでしょうか。なぜ5年間で10億円減らすという計画を策定したのでしょうか。第3期財政健全化推進計画は、目標設定が甘過ぎたということなのでしょうか。そうだとすれば、市長はなぜ達成があまりにも容易な目標を設定したのでしょうか。逆に、厳しい目標設定だったとすれば、3年間で20億円減らすことは不可能ということになります。つまり、「平成23年までに20億円減らします」は、口から出任せということになってしまうのではないでしょうか。

 ●大型医療機関への支援(2008-05-01追記,2008-05-07修正)  

佐藤氏が「「新駅」よりも「医療と福祉」」と書いていることに対抗するかのように、市長陣営は「大型医療機関を支援」、「医療連携体制づくり」と書いています。佐藤氏の資料に医療政策が具体的に書かれていないことに対比して、具体策を出した点において一歩進んだ印象を与えます。2008-04-25自治労とちぎには、佐藤氏の政策として「救急車のたらい回しなどに歯止めをかける政策を推進します。」とは書いてあります。

 ●地域分権と産業振興(2008-05-01追記)  

佐藤氏の資料には「農林業・産業の振興、地域の活性化を推進します。」と書いてありますが、市長陣営の資料には「地域分権(予算配分型)によるまちづくりの推進」と「新たな産業団地の整備と雇用の創出」という具体策を打ち出しています。  しかし、佐藤氏も粟野地域の振興策については、方向性を打ち出しています。討議資料では、市長陣営は、粟野地域の振興策には触れていません。

 ●結局どこが違うのか(2008-05-01追記,2008-05-11修正)  

佐藤氏の政策と阿部氏の政策は、結局どこが違うのでしょうか。主要な争点で阿部氏が佐藤氏の政策にすり寄るような姿勢を見せ、一見争点は消滅したかに見えますが、よく見ると消えていない争点もあります。  

一つは、上記のように(仮称)ハーベストセンター整備事業です。阿部氏は、絶対に遂行したいが、佐藤氏は中止をにおわせています。  

もう一つは、各種団体の自主的な活動の尊重です。市長陣営の討議資料がこの点に関して全く触れていないことは、市長の自治会、老人クラブ、婦人防火クラブ等の各種団体に対する考え方を象徴しているように思えます。  

財政の健全性についても見解は分かれています。  

ダム問題と水道問題についても両者の政策は異なりますが、もうすぐ佐藤氏の見解が明らかになりますので、別ページで紹介する予定です。  

佐藤氏の政策でユニークと思われるものが少なくとも三つあります。  

一つは、「鹿沼市のまちづくりの憲法である「自治基本条例」を制定します。」です。条例の内容は説明されていませんが、善通寺市が説明するような条例を想定しているのだと思います。  

二つには、水源保護条例の制定です。「豊かな水と緑を守るため、水源地域の森林を優先的に守っていきます。」とマニフェスト(基本編)に書かれています。阿部氏にはない発想だと思います。  

三つには、「公契約基本条例」の制定です。「年間所得200万円未満の「ワーキングプア」を無くしていくための」(マニフェスト(基本編))だそうです。      

 ●民意に基づく政策なら変える必要はない(2008-05-01追記)  

上記のように、両者の討議資料を読み比べると、佐藤氏の政策を阿部氏がパクるような形で阿部氏が政策を修正や転換をしているわけですが、なぜ変える必要があるのか私には分かりません。言い換えれば、なぜ争点を消す必要があるのか分かりません。  

新駅にしろ、ごみ袋にしろ、夏まつりにしろ、阿部氏の政策が民意に基づくものならば、選挙で負けるはずはありませんから、従来の主張を方向転換せずに貫き通せば良いと思います。対立候補の政策に対抗するかのように政策を曲げるということは、これまで民意を尊重しないで市政運営をしてきたことを認めていることにならないでしょうか。      

(文責:事務局)
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