ブログ「鹿沼市政ウオッチング」に、2008-06-21に就任した佐藤市長の「公約」実現経過を検証するという記事が載りました。
JR新駅整備と夏まつりとごみ袋の値下げについては公約実現と評価できるが、ほかの公約についてはこれから、というのが結論のようです。確かに4か月で公約の実現を求めるのは性急すぎますから、行方を見守ることは必要ですが、行方が見えてしまったテーマもあります。
●ダム問題関連の公約は守られたか
佐藤市長は、2008-05-16に板荷の足立区休暇センターで開催された演説会で「南摩ダムの水は水道に使わない」と宣言しました。
過去記事「南摩ダムの水は使わない」 で書いたように、当選後の2008-08-10に、西大芦地区で西大芦漁業協同組合主催のアユの食味会で「鹿沼市水道事業第5次拡張計画の第2回変更計画として、南摩ダムの水は使わない計画を作る」と述べました。
ダム一辺倒だった阿部市政に比べたら、大きな前進です。ダムの水を使わないのなら、取得した水利権は当然返上するものと私たちは期待しました。
●ダムの水を使わなければそれでよいのか
ところが一方で佐藤市長は、2008年7月22日の鹿沼市議会一般質問で次のように答弁していました。
選挙のときに地下水でいいのだというお話をさせていただきました。水のことですから、どうしてもなくなれば表流水ということを否定するわけにはいかない。したがって、南摩ダムにつきましても、水利権を持つということについては、これは私も了解をいたしているところであります。
ダムの水を使わなければ、16億円かけて水利権を取得してもいいではないか、というのが市長の考え方です。たしかに南摩ダムから逆送されたダム水を取水するために大芦川に取水堰を造り、水道水とするために浄水場を建設するという無駄は避けられますが、南摩ダムと導水トンネルのもたらす災いを免れることはできません。
また、使わない水利権に16億円も払うのは、「もったいない」以外の何物でもありません。「財政健全化でほこれる鹿沼をつくろう」も公約でした(市民の勇気ニュース第4号2008-05-02発行)。
●導水トンネルで井戸水・沢水がかれる
黒川と大芦川から南摩ダムに導水するためのトンネルを掘れば、かなりの確率で地下水脈が断たれ、井戸水・沢水がかれることが予想されます。神奈川県の宮ケ瀬ダムや圏央道のための東京都八王子市の高尾山トンネルでも井戸水・沢水がかれるという現象が起きています。高尾山と圏央道 迫りくる自然破壊というサイトをご参照ください。
佐藤市長は、井戸水や沢水で生活している板荷地区・加蘇地区・東大芦地区の住民の気持ちを理解しているのでしょうか。
●黒川・大芦川の水質が悪化する
黒川と大芦川から導水されると、両河川の流量が減ります。流量の減った川は浄化能力を失い、水質が悪化します。鹿沼の顔とも言える黒川と大芦川を清流と呼べなくなるかもしれません。
市長は、7月29日の下野新聞のインタビュー形式の広告で、「鹿沼の売りは、豊かな自然と昔ながらの人情だろうと考えています。」と言いますが、導水管の建設と導水事業により、「豊かな自然」は、かなりの確率で破壊されます。「豊かな自然が鹿沼の売り」と言うなら、川の下にトンネルなんか掘らせてはいけないと思います。
●南摩ダムのもたらす災い
南摩ダムそのものも、地震の誘発や地震で決壊した場合の水害のほか、生物多様性の喪失という損害をもたらすおそれがあります。建設費も維持費もかかりますから、国と地方の財政を圧迫するという災いもあります。
佐藤市長は、ダムの水を買うことを了承しているわけですから、南摩ダムの建設にも導水管の建設にも反対していないわけです。
市長は、マニフェストには「環境保全」という言葉を掲げましたが、南摩ダムと導水管の建設容認の姿勢を見ると、生物多様性の意義も自然の摂理も理解していないと市民から判断されかねません。「環境保全」が言葉だけではないと言うなら、南摩ダムに反対し上南摩の環境を守ってください。
●ハーベストセンターは「ゼロベースで見直し」だった
冒頭で紹介したブログでブロガーは、「願わくば、鹿沼市の借金を減らす事も公約としているのですから、その方向に沿った「見直し」を行っていただきたいものです。」と書いています。
ハーベストセンターは「ゼロベースで見直し」(市民の勇気ニュース第4号2008-05-02発行)だったはずです。どうもそうではなくなっている気配も感じますので、佐藤市長には原点に立ち返って見直しを進めてほしいと思います。
以上、ダム問題から市長公約の実現過程を見ると、後退している面もありますので、佐藤市長には当初公約を実現されるよう期待します。