六つの観点から検討しても違法だ(黒川検事長勤務延長問題)

2020-02-19

●奥野総一郎委員のフリップでも国家公務員法第81条の2第1項の規定が省略して記載されている

森雅子法務大臣は条文の文理解釈ができない において「誰でもいいから野党議員は早くとどめを刺すべきです。」と書きましたが、なかなかそうはなりません。

2月17日の衆議院予算委員会で奥野総一郎委員が次のとおりフリップを示しましたが、そこでも国家公務員法第81条の2第1項の規定が省略して記載されています。(ちなみに、フリップの字が薄くてよく読めません。野党は、テレビ映りも考えて作ったらどうでしょうか。)
予算委員会 (2020/02/17)4:25:40

奥野フリップ

どう書かれているかというと、国家公務員法第81条の2第1項は、「職員は、法律に別段の定めのある場合を除き、定年に達したときは・・退職する。」と、同条第2項は、「前項の定年は、年齢60歳とする。」と書かれています。

肝心な部分が「・・」になっています。

この書き方では、新しい解釈が誤りであることを一般市民に分かってもらうことは無理だと思います。逆に政府の新解釈もアリではないか、と思わせる書きぶりです。

●問題の本質は何か

野党議員が問題の本質を理解していないからこういう事態が続くと思うと、野党議員に対して腹が立ってきました。

検察官勤務延長問題の最大の問題は、「前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において」「同項の規定にかかわらず」(いずれも国家公務員法第81条の3第1項)という文理をどうやってクリアできるのか、という問題であり、政府の抱く魂胆ではないと思います。

もちろん解釈の妥当性を判断する上で、解釈の動機や目的は重要ですが、二の次だということです。

素人がそう言っても信用できないでしょうが、既に書いたとおり、海渡雄一弁護士が「国公法では「定年に達した日以後における最初の3月31日に」退職する。」と呟いているのも、文理解釈が問題の本質であることを言い当てていると思います。

●国家公務員法第81条の3第1項に規定されていること

繰り返しですみません。

黒川弘務・東京高等検察庁検事長の定年後の勤務延長の根拠規定である国家公務員法第81条の3第1項は、要点として次のように規定しています。

正確な条文は、国家公務員法で確認してください。

●国家公務員法第81条の2第1項に規定されていること

国家公務員法第81条の3第1項に規定されている「前項」とは、国家公務員法第81条の2第1項のことであり、そこには次のように規定されています。

(定年による退職)
第81条の2 職員は、法律に別段の定めのある場合を除き、定年に達したときは、定年に達した日以後における最初の3月31日又は第55条第1項に規定する任命権者若しくは法律で別に定められた任命権者があらかじめ指定する日のいずれか早い日(以下「定年退職日」という。)に退職する。

大雑把に言えば、次の2点を規定しています。
(1)一般職の国家公務員は、定年(=原則60歳。第2項参照)に達した日の属する年度の末日(3月31日)に退職すること。(任命権者が「指定する日」は実例がないので無視してよい。)
(2)検察官や大学教官のように「法律に別段の定めのある」一般職国家公務員法には適用されないこと。

●野党議員が攻めきれなかった理由とは

野党議員が攻めきれなかった理由は、上記(1)及び(2)の観点からの追及がないことにあると思います。

特に、(2)の観点から、「検察官は3月31日に退職するのか」と質問した議員はいません。それが決定打を欠く理由だと思います。

本来なら次のようなやりとりでで終わる話です。
質問「検察官は3月31日に退職するのか。」
答弁「しません。誕生日の前日限りで退職します。」
質問「だったら、「前条第1項の規定により退職すべきこととなる場合」に該当しないだろう。」
答弁「該当しません。」
質問「そうであれば、第81条の3第1項を適用できないはずだ。」

●山尾質問も国家公務員法第81条の2第1項の当てはめの説明がない

2月10日の山尾の質問(28:44あたり)においても、なぜ「(国家公務員法第81条の3第1項が)前条第1項の規定により」というように、検察官に適用がないような条文の書き方をしたのかを考慮すべきだ、という追及の仕方をしており、国家公務員法第81条の3第1項の書き方からいきなり「検察官に適用がない」という結論に飛んでしまいます。国家公務員法第81条の2第1項の文言が検察官の定年退職に当てはまるかの説明がすっ飛んでいるために、「特例は定年年齢と退職時期に関するもので、勤務延長には及ばない」という屁理屈を招く余地をつくっていると思います。

●森雅子法務大臣は勤務延長は1985年から適用されると答弁していた

2020年2月10日 衆議院予算委員会で山尾志桜里委員は、「検察官の定年延長が認められるようになったのはいつからか」と質問しました。2020年2月10日 衆議院予算委員会(山尾志桜里、天皇後継者・検事長定年延長など)

森は、「昭和56年の改正の時です。」(25:45)と答弁しました。

「改正の時」とはいつか、と聞かれて、「昭和56年に国家公務員法が改正され、60年に施行され、定年制の制度が入った時に、勤務延長が検察官にも適用されるようになったと理解しております。」(26:33)と答弁しました。

つまり、森は、検察官の勤務延長は1985年から可能だったが、たまたま35年間、適用される事例がなかっただけだ、と言ったことになります。

しかし、前回記事に書いたように、2020年2月13日の衆議院本会議(45:44)で安倍晋三内閣総理大臣は、「検察官については、昭和56年当時、国家公務員法の制定、定年制は検察庁法により適用除外されていると理解していたものと承知しております。他方、検察官も一般職の国家公務員であるため、今般、検察庁法に定められている特例以外は、一般法たる国家公務員法が適用されるという関係にあり、検察官の勤務延長については、国家公務員法の規定が適用されると解釈することとしたところです。」と答弁しました。

つまり、「今般」「解釈することとした」ということであり、「今般」とはいつなのか、ということについて、2020年2月17日の衆議院予算委員会で、「森法務大臣が閣議請議(1月31日)をする前にこういう解釈を行ったということであろう」(4:42:00)と総理大臣は答弁しました。予算委員会 (2020/02/17)

つまり、政府は、検察官の勤務延長の制度は、1985年から認められていたと答弁していたのに、山尾志桜里議員から当時の政府の答弁は、検察官には国家公務員法による定年制は適用されないということだった、と指摘されたので、「1985年から認められていた」という答弁を維持することはさすがに無理だと悟り、2020年1月に解釈を変えたという話にしたというわけですから、いい加減なものです。最初から確たる法解釈をしていたわけではなかったことの証拠です。

●森の珍解釈はあり得ない

2020年2月15日付け毎日新聞記事の一部を紹介します。

検事長定年延長の閣議決定は何が問題なのか 政府解釈変遷を追う

一方、一般職の国家公務員の定年を60歳とし、定年延長の手続きも定めた国公法改正案は81年に提出された。この際に検察官の定年も議論され、当時の斧誠之助・人事院事務総局任用局長はこう答弁した。

「検察官は現在すでに定年が定められている。今回の定年制は適用されないことになっている」

また斧氏は「今回は、別に法律で定められておる者を除き、ということになっている」とも述べていた。これは国公法の付則13条を指すとみられる。その条文はこうだ。

▽国家公務員法 付則13条 一般職に属する職員に関し、その職務と責任の特殊性に基づいて、この法律(国家公務員法)の特例を要する場合においては、別に法律または人事院規則をもって、これを規定することができる。

つまり、検察官は特殊な一般職公務員なので、特例が必要なら検察庁法などで決めてよいとする内容だ。

この答弁を今年2月10日の衆院予算委員会でただされた森雅子法相は「承知していない」と答えた。政府内で整理できていなかった模様だ。

1981年に政府は、「検察官は現在すでに定年が定められている。今回の定年制は適用されないことになっている」「今回は、別に法律で定められておる者を除き、ということになっている」と答弁していたのですから、「検察官の勤務延長は1985年から可能だった」という森の答弁はあり得ません。

●内閣法制局長官答弁もデタラメだ

2月17日に近藤正春・内閣法制局長官閣僚の一員)は、奥野総一郎委員から法務省から相談があったのか、なぜ変更した解釈を認めたのか、の2点を質問されて次のとおり答弁しました。予算委員会 (2020/02/17)

1月になってから(中略)法務省からご説明があって、現行法(検察庁法)をこう解釈しますというお話があって、私どもとしてもそれを了としたところでございます。

内容については、法務大臣が何度もご説明されておりますような解釈でございまして、私どもも現行法、国家公務員法82条の2とそれから検察庁法の32条の2という特例を書いたところというのは、ほとんど解釈でやられておりまして、明文上ははっきりしておりませんけれども、従来そういう解釈だったが、今回、正しく、特例については、定年の年齢と退職時期だという解釈であり、そうであるならば、定年で退職するという規範そのものは、国家公務員法の適用がされる。それは一般法と特別法の通常の関係でございますので、そういうことでもあり、また、検察官につきましても、定年延長についての趣旨を適用するべきというふうに考えたいということでございまして、それ自身は今の条文から見ますと、十分可能な解釈であるということで、私ども了といたしました。

歴史に残る恥ずべき答弁です。

「今の条文から見ますと、十分可能な解釈である」と言いますが、条文に沿った説明はありません。

この問題は、「前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において」「同項の規定にかかわらず」をどうやってクリアできるのか、という問題ですが、その説明が全くない答弁であり、有害無益です。

今回の「検事長黒川弘務の勤務延長について(決定)」という閣議決定により、「法律に別段の定めのある場合を除き」の意味が変わってしまいました。

内閣法制局は、今後の法案作成作業においても、「法律に別段の定めのある場合を除き」という文言を今回のような意味で使うつもりでしょうか。

近藤の責任は重大だと思います。

●法務大臣が協議した日と相談記録を野党は問うべきだ

近藤正春の話で「1月になってから(中略)法務省からご説明があって、現行法(検察庁法)をこう解釈しますというお話があって」は、怪しいと思います。

内閣法制局が「検察官の勤務延長ができる解釈に変更したいがどうか」という相談をされたとしたら、内閣法制局としては、慎重に法律改定時の政府答弁を調べた上で回答するはずです。そして、それを相手に伝えると思います。

森雅子は、1981年の政府答弁など承知してないと2月10日に言ったのですから、法務省から内閣法制局への相談や協議はなかったと見るべきだと思います。

野党は、相談の記録の提出を求めるべきだと思います。部分開示になるとしても、相談の記録自体はあるはずなので、内閣法制局は出すべきです。

「森雅子法相は17日の衆院予算委員会で、国家公務員の定年の引き上げに関する検討の一環で、検察官の定年延長に関する法解釈を変更したと説明した。」(2020年2月17日付け朝日)そうです。

内閣法制局に協議もしないで法解釈を変更した失態を取り繕うために、国家公務員の定年の引き上げに関する検討のついでに協議したことにしていると推測します。

●政府の新しい解釈が成り立たない理由

検察官に勤務延長が認められるかということに関する政府の新しい解釈の妥当性を判断する上で、少なくとも、次の六つの観点からの検討が必要だと思います。結論から言って、政府は、どれ一つとっても十分な説明をしていません。

(1)文理解釈が成り立つか。
(2)一般法と特別法の関係をどう理解するか。
(3)逐条解説書の見解はどうなっているか。
(4)立法者意思はどうであったか。
(5)結果から見た妥当性はあるか。
(6)具体的に黒川検事長が勤務延長の要件を満たすか。

普通なら、判例・学説はどうなっているかを検討すべきですが、どちらもおそらくないと思います。あるとしても、検索方法が分かりません。

(1)については、再三書いているように、国家公務員法第81条の2第1項は、3月31日に退職する一般職国家公務員に適用される規定であるところ、検察官は、63歳とか65歳の誕生日の前日限りで退職するので、同項は適用されず、したがって、「前項の規定による」と定める国家公務員法第81条の3第1項を適用できません。

(2)については、項を改めて書きます。

(3)海渡雄一弁護士がツイッターで「逐条国家公務員法」(全訂版は2015年)を示しています。

https://twitter.com/kidkaido/status/1225430644945125376

「逐条国家公務員法」p691〜692には次のように書かれています。

「法律に別段の定めがある場合」には、本法の定年制度の対象とはならない。一般職の国家公務員については、原則的に本法に定める定年制度が適用されるが、従来から他の法律により定年制度が定められているものについては、その経緯等に鑑み、それぞれの法律による定年制度を適用しようとするものである。このようなものとしては、検察庁法第22条による検事総長(65歳)及び検察官(63歳)の定年、教特法第31条の規定に基づく・・・の定年がある。

これを読んだら、無理な解釈を諦めるのが普通ですが、「非学者論に負けず」のとおり、安倍や森にとっては、人事院を始め、国家公務員の人事担当者にとってバイブルである「逐条国家公務員法」の権威なんて関係ありません。自分こそがルールだと考えているのでしょう。

(4)の立法者意思(本件では国家公務員法の改定を提案した者の意思)については、2月10日に山尾が1981年4月23日と28日の政府答弁を紹介したとおりであり、「逐条国家公務員法」とも同じです。

定年年齢、退職時期、勤務延長、再任用等についてはパッケージで説明されていました。なので国家公務員法による定年制度はパッケージで検察官には適用除外と解すべきです。

なお、検察庁法が制定された1947年の国会審議でも、検察官の定年は、勤務延長のない裁判官の定年と対比されて決められたと答弁されていることから、制定当初から勤務延長は想定されていなかったようです。

森は、総理大臣の調整機能(国家公務員法第81条の6)が検察官にも及ぶと1981年に説明されていたとしきりに言います。国家公務員法による定年制度がパッケージで検察官に適用除外されていたわけではない、と言いたいのだと思いますが、何をどう調整するのか、説明不足で意味不明です。

(5)の結果から見た妥当性については、毎日新聞の社説の「検察は行政機構に属する一方、全ての犯罪捜査が可能であり、起訴する権限を原則独占している。社会の公平・公正を守るとりでだ。特に政官界の汚職摘発を期待されている。」「今回の異例の人事によって、国民が検察の判断に対し、政権への萎縮やそんたくがあるのではないかとの疑念を抱く恐れがある。検察に対する信頼を揺るがしかねない。」という言葉を引用すれば十分でしょう。

(6)の具体的に黒川検事長が勤務延長の要件を満たすか、については、国家公務員法第81条の3第1項に「その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは」と規定されています。

人事院規則11−8(職員の定年)第7条に例示的に要件が規定されていることについては前回記事に書いたとおりです。

定年制度の実施等について(昭和59年12月25日任企―514)には、勤務延長の要件が次のように解説されています。

第3 勤務延長関係
 1 規則11―8第7条の各号には、例えば、次のような場合が該当する。
  (1) 第1号
  定年退職予定者がいわゆる名人芸的技能等を要する職務に従事しているため、その者の後継者が直ちに得られない場合
  (2) 第2号
  定年退職予定者が離島その他のへき地官署等に勤務しているため、その者の退職による欠員を容易に補充することができず、業務の遂行に重大な支障が生ずる場合
  (3) 第3号
  定年退職予定者が大型研究プロジェクトチームの主要な構成員であるため、その者の退職により当該研究の完成が著しく遅延するなどの重大な障害が生ずる場合
   重要案件を担当する本府省局長である定年退職予定者について、当該重要案件に係る国会対応、各種審議会対応、外部との折衝、外交交渉等の業務の継続性を確保するため、引き続き任用する特別の必要性が認められる場合   
  

キーワードは、「名人芸」「僻地勤務」「大型研究プロジェクトチーム」です。   

郷原信郎弁護士のYahooニュース記事「検事長定年延長」森法相答弁は説明になっていないによれば、森は、「東京高検検察庁の管内において遂行している重大かつ複雑困難事件の捜査公判に対応するため、黒川検事長の検察官としての豊富な経験知識等に基づく管内部下職員に対する指揮監督が不可欠である」と答弁したそうですが、上記具体例のうちどれに属するのか分かりません。   

消去法で考えると「名人芸」しか残りませんが、黒川は法務官僚としての経験が長く、捜査公判への対応なら部下の方が詳しいと言われており、黒川の勤務延長を認める正当な理由があるとは思えません。   
  
   ●森雅子と近藤正春の言う一般法と特別法の関係は誤りだ   

森雅子は、「特別法に書いていないことは、一般法である国家公務員法の方で、そちらが適用されることになります。」と言い、近藤正春・内閣法制局長官はこれを是としますが、そんな単純なものではありません。   

森の答弁の詳細については、金原徹雄・弁護士の東京高等検察庁検事長定年延長問題について〜法律の規定は読み間違えようがないを参照ください。   

「後法優先の原理」と「特別法優先の原理」については、説明するまでもないと思います。   

検事長勤務延長問題は、第1に文理解釈の問題ですが、副次的には後法で一般法ある国家公務員法と前法で特別法である検察庁法との優劣関係の問題です。(二つの法律は、どちらも1947年に制定されましたが、ここで国家公務員法とは1981年に改定されたものを指すので後法になります。)   

この問題について、前田正道・編「ワークブック法制執務」全訂版のp39で次のように解説されています。   

   後法たる一般法と前法たる特別法との関係については、後法たる一般法自体が、その中で前法たる特別法を改廃し、又はその効力を否定する旨を明文をもって規定している場合、あるいは後法たる一般法の全体の立法趣旨から判断して、これに矛盾する従前の特別法の効力を否定する趣旨であることが明らかである場合には、後法優先の原理により、後法たる一般法と矛盾する従前の特別法が、当該一般法の規定によって改廃され、又はその効力を否定されることはいうまでもない。   
  
   しかし、右のような場合に当たらない限りは、一般法と特別法との関係においては、特別法が後法であるか否かには関係なく、特別法が常に優先的に適用され、その特別法によって規律されている事項については、一般法が後法であっても、当該一般法の規定は、特別法と矛盾しない範囲において補充的に適用されるにとどまる。したがって、その意味では、特別法優先の原理は後法優先の原理の例外をなすものであるということができる。   
  

これが法解釈の常識です。   

この解説を本件に当てはめれば、1981年の改定国家公務員法は「その中で前法たる特別法を改廃し、又はその効力を否定する旨を明文をもって規定している場合、あるいは後法たる一般法の全体の立法趣旨から判断して、これに矛盾する従前の特別法の効力を否定する趣旨であることが明らかである場合」に当たらないので、常に特別法である検察庁法が適用されるということです。   

森は、山尾の質問に次のように答弁しました。2020年2月10日 衆議院予算委員会30:44〜   

昭和56年の(国家公務員)法改正、そしてそれが昭和60年に施行されたんですが、その時にですね、もしですね、(勤務延長禁止が)特例ということになっているならば、(検察庁法)32条の2、また、32条の2の2になるか分かりませんが、そちらの国家公務員法と検察庁法の両法の関係を定める規定の中に定まるはずという、そういう理解です。   

分かりにくいですが、「1981年に国家公務員法が改定された時に、検察官には勤務延長を認めない定年制を相変わらず続けるのであれば、その旨が国家公務員法の特例を定める検察庁法第32条の2などに規定されるはずだ」ということです。山尾は「極めて独自の理解を繰り広げている」と言いました。そのとおりです。森は、上記解説とは全く逆のことを言っています。   

検察庁法第22条は、勤務延長を認めない定年制を規定しているものとして、解釈・運用されてきました。   

もしも、後法である改定国家公務員法が検察官にも勤務延長を認める趣旨、つまり、従来の解釈・運用を含めた検察庁法第22条の規定を否定する趣旨であるならば、同条を改定すべきだったのです。改定しなかったということは、勤務延長を認めないという解釈・運用を含めた検察庁法第22条の規定を維持する趣旨だったということです。   

したがって、検察庁法に勤務延長に関する規定が見当たらないから国家公務員法が適用され、検察官にも勤務延長が認められる、という解釈は誤りです。   

法律の専門家とされながら、この程度の解釈ができない森法務大臣、黒川検事長及び近藤内閣法制局長官は、失格ではないでしょうか。   

なお、2月16日、金原徹雄弁護士のブログに東京高等検察庁検事長定年延長問題について(3)〜論点は出そろった(渡辺輝人氏、園田寿氏、海渡雄一氏の論考を読んで)が掲載されたので、紹介します。   

官邸がなぜ黒川検事長を検事総長にしたい理由は、新恭氏が書いた「安倍官邸が「禁じ手」を使ってまで検事総長にしたがる男の正体」を読むと理解できます。   

(文責:事務局)
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