鹿沼市長暴力団密会事件のどこが問題か

2008-04-02,2008-04-03追記,2008-04-04追記・修正,2008-04-09追記・修正,2008-04-11追記,2008-04-16追記,2008-04-17追記,2008-04-18追記,2008-04-19追記,2008-04-20追記,2008-04-24追記,2008-04-25追記,2008-04-27追記,2008-04-28追記

●鹿沼市長暴力団密会事件とは(2008-04-11追記)

2007年11月、旧ジャスコの解体工事を市が発注し、市長の後援会長が社長を務める会社が受注しました。その工事を巡り、受注業者と暴力団の間で起きたトラブルを収拾するため、同年12月に2回、市長、議長、商工会議所会頭、元県議会議長、住吉系暴力団組長が市内で会談しました。

2008-03-29朝日によると、1回目の会談は、12月12日に開かれ、阿部和夫市長、小松英夫議長、新井喜久雄元県議会議長、組長の4人が出席しました。12月20日の会談には、上記のメンバーに、受注業者の社長で市長の後援会長で商工会議所会頭の中津宰氏が加わりました。

市長の後援会がいう「怪文書的テープ」とは、12月20日の会合の録音のことです。

●鹿沼市長暴力団密会事件は議論するに値しないか

鹿沼市長選に候補者を擁立しようというすばらしいブログがあります。鹿沼にダムは必要か?という記事では、ダム問題、水道問題について極めて正しい認識を示されています。

しかし、市長が組長に会った件について、「本当は、こうしたスキャンダルの事で、紙面を費やしたくはありませんでした。ですから、この問題についての記事は、これで終わりにしたいと思います。」と書かれていることは残念に思います。

本件は「スキャンダル」でしょうか。「スキャンダル」とは、大辞林 第二版 (三省堂)によれば、「名誉を汚すような不祥事。金銭や異性などに関係した、よくないうわさ。醜聞。」です。「不祥事」とは、「好ましくない事件。いまわしい事柄。」です。「醜聞」とは「聞き苦しいうわさ。よくない風評。」です。

本件は、「うわさ」でも「風評」でもありません。密会は事実です。しかも鹿沼市にとっては極めて重大な事実です。確かに、刑事罰を科されるようなことではありませんが、「好ましくない」という程度の問題として済ませてよいものかどうかが問われていると思います。本件は、政治家の資質を問われる問題だと思います。本件を「スキャンダル」扱いするのは軽すぎると思います。

本件を「スキャンダル」と呼ぶかという言葉の問題はともかく、本件は鹿沼市民が今後議論するに値しない出来事なのでしょうか。阿部市政は、"鹿沼事件"からどのような教訓を得るかが大きなテーマでした。この観点から本件をとらえると、本件は重要な意味を持っており、未解明なままにしてよいような問題ではないと思います。

「鹿沼市議会は3月26日、各会派幹事による幹事会を開き、市議会全員協議会を31日に開催し、阿部市長から直接事情を聴くことを決めた。」(2008-03-27朝日)そうです。市議会は、本件を重要な問題ととらえているということです。自民党県連鹿沼支部は27日、「阿部市長に出ている推薦を取り下げることを決め」(2008-03-28朝日)ました。公明党県本部も推薦を辞退するよう阿部和夫市長に要請し、市長は辞退しました。

「(鹿沼)市議会各会派幹事会が一日開かれ、幹事会は小松議長に、議員辞職をするよう申し入れた」(2008-04-02下野)ようです。市議会や政党がこのようなことをするのは、本件が政治にとって重要な意味を持つと考えているからであり、スキャンダルで済ませられる問題ではないと考えているからでしょう。

上記ブログが「鹿沼市が今後どうあるべきなのか、 その政策について考え、 誰が次の市長にふさわしいのかを、 見極めるための場にしたいと立ち上げたもの」である以上、「本当は、こうしたスキャンダルの事で、紙面を費やしたくはありませんでした」ということになるのは当然かもしれません。しかし、鹿沼市では政策論で市長を選ぶというレベルまで達していないという現実があるのですから、政策以前の問題であっても徹底して議論することが必要だと思います。「政策以前の問題=議論するに値しない問題」ということにはならないと私は考えます。

上記ブロガーは、「今の鹿沼の何が問題なのか、 これからの鹿沼をどうしていけばよいのか、 そうした点をこそ、市長選挙の争点にしてほしいと思います。」と書きます。賛成です。「今の鹿沼の何が問題なのか、 これからの鹿沼をどうしていけばよいのか」を考察する対象は、政策問題にしぼるべきではないと考えます。

上記ブロガーは、「もし阿部市長がこのまま5月の市長選挙に立候補した場合、 この問題をどうとらえるのかは、市民の一票にかかってきます。 まさに市民の良識が試されるわけです。 そういう意味では、大きな争点といえるでしょう。」と書き、密会問題は政策以前の問題であるが、市民の良識が問われる問題であり、大きな争点となることを認めています。そうであるならば、鹿沼の将来を真剣に考える者にとって、この問題は追及すべき問題だと思います。

もっとも、上記ブログの「開かれた市政を作るには」という記事には、3月31日の鹿沼市議会全員協議会での事情聴取の「成り行き次第では、情勢が動くかもしれません。 様子を見守りたいと思います。」と書いてあり、密会問題を今後も取り上げるようなので安心しました。

●密会事件はニュースバリューがないのか(2008-04-09修正)

密会事件について、朝日が3月23日に最初の報道をしたのに、他の新聞社は記者会見後の25日に最初の報道をしました。朝日だけがニュースバリューがあると考え、他社はないと考えたのでしょうか。26日の下野は、「「鹿沼事件」の教訓はどこに」と題する百点満点とも言える論説を載せました。ということは、下野も ニュースバリューがあると考えていたことになります。

ではなぜ、下野などは、記者会見後に報道したのでしょうか。密会の事実を確認できなかったのでしょうか。市長が取材に応じなかったとはいえ、朝日は密会の裏付けをとれたから書いたのです。新井喜久雄氏も組長もあれだけしゃべっているのですから、他社も22日までに裏付けをとれたはずです。

新聞記事が横並びでは面白くありません。新聞によって記事が違っていて当然です。しかし、ほかの記事ならば、記事になる日が2日ぐらいずれたって目くじらを立てるようなことではないかもしれませんが、権力者から選挙妨害だと言われることを恐れて報道を自粛したのだとしたら、ジャーナリズムではないと思います。密会の情報は各新聞社に入っていたはずです。なぜ朝日のスクープになったのかを知りたいものです。

●鹿沼事件への反省はあるのか

政務調査費で市側が敗訴した問題でも阿部市長が反省していないことは、「鹿沼市議会の政務調査費は違法」の判決に書いたとおりです。

また、鹿沼市長は過大な水道計画を反省していない に書いたように、阿部市長は、鹿沼市人口11万人を前提とする第5次拡張計画に固執したことへの反省も見られません。

2001年10月31日に阿部市政の下で、クリーンセンターの参事が暴力団組員らに誘拐され、その後殺害されました。再発防止のために何をするかが阿部市政の大きなテーマだったはずです。鹿沼市では、2003年度に不当要求対応マニュアルを策定し、暴力団等からの不当な要求には組織として毅然として立ち向かうことを決めました。そう決めておきながら、市長自らが組長に対して「何かあったら、議長を通しても結構ですし、私にじかにでもいいですし。お願いします。」(2008-03-23朝日)と言い、暴力団にすり寄る姿勢を示すのは、鹿沼事件を反省していないと見られても仕方ないと思います。

阿部市長は、「(暴力団などとの)不適切な関係は今はもうない」「事件を風化させることのないよう市政に生かしたい。」(2008-03-23朝日)と言っていたし、密会当時、小佐々さんのご遺族から提起されていた民事訴訟の和解協議の最中に、組長に「前から会いたかったんですよ」(2008-03-27朝日)と言っていたのでは無反省と見られても仕方ないと思います。

●なぜマニュアルどおりに対応しなかったのか

市長はなぜマニュアルどおり、警察や暴力追放県民センターと連携して対応しなかったのでしょうか。この点について小松英夫議長は、「「警察に言っても、いつも付きっきりでいてくれるわけではない。判断が難しい」と述べた。」(2008-03-27朝日)そうです。原則としてマニュアルどおりに対応しないなら、マニュアルなど最初から作らなければいいと思います。また、本庁とクリーンセンターには、警察官OBなどが配置されていて、少なくとも勤務時間中は「付きっきり」で職員を守っている状態ではないか、なんのために警察官OB等を配置したのか、という意見もあるようです。

警察に「付きっきりで」警護してほしいほどの切迫した危険が職員に迫っていたのなら、やはり警察に連絡するのが筋ではないでしょうか。

市長によれば、入札は官製談合でないのですから、それでも官製談合があったと思い込んで何かを要求してくる暴力団がいるなら、逆恨みですから、警察と連携して対応するのが筋です。

市長は暴力団に対してなぜ自分が作ったマニュアル通りの対応をしなかったのでしょうか。それがこの事件の最大のポイントのような気がします。今の段階では回答は出せません。分からないことが多すぎます。

●「密会」ではないのか

阿部市長は、「密会ととらえられるのも不思議」(2008-03-25下野)と言いますが、そもそも暴力団への対応は警察と連携するという正攻法を市長がとらなかったことが不思議ですし、朝日からの再三の取材申し込みにも応ぜず、市長がマスコミに出した申入書にも組長との面会の有無を記載しなかったことが不思議です。密会でないなら朝日の取材を避ける必要はなかったと思いますし、早期に面会の事実を認めるべきだったと思います。

●「職員を守る盾となった」のか

市長は、密会したことが「職員を守る盾となった」(2008-03-25下野)と言います。「小佐々さんの事件を受けて、より以上に職員が恐怖心を覚えている」(同)とも言います。ということは、職員が危険にさらされていたということです。市が暴力団からの不当要求に応じないから、職員が脅されていたということでしょう。

暴力団は市に何を要求したのか、どこの部署の職員がなぜ、どのように脅されていたのかが分からなければ、なぜ市長の行動が職員を守ったことになるのか理解できません。

職員が身の危険を感じていたなら、市長や議長はもっと危険だったのではないでしょうか。実際市長は、「実際は私だって本当は恐ろしいですよ。」(2008-03-27朝日)と言っていたのに、市長と議長はなぜ警護も付けずに組長と面会したのでしょうか。市長の危機管理能力が問われると思います。

「市長の行動でほっとしたと言う職員がいる」と小松議長は言いますが、市長が組長に立ち向かったならともかく、実態は市長が組長の御機嫌取りのようなことをしていたのですから、「職員にとっては市長が暴力団と近づく方が逆に恐ろしかろう」(2008-03-26下野論説)ということになると思います。職員が暴力団から脅されたときに市長に泣きついても、その市長が暴力団と気軽に話せる仲では、職員は市長に相談することもできなくなります。

●暴力団は市に何を要求したのか

本件で暴力団からの不当要求とは何でしょうか。市長によると「(建物解体工事の落札が)「官製談合だ」などと市側の説明を求められ」(2008-03-25下野)ました。これが不当要求ということになるのではないでしょうか。この推測は、市長が記者会見で「面会の結果については「私の説明を聞き、不正や談合など全くないことを理解してくれたのでよかったと思っていた。」(同)と語ったこととよく符合します。

しかし、「組長は朝日新聞の取材に対し「(会談を設定した)新井先生の仲介だったから(追及を)断念した。談合の疑いは晴れていない」と話した。」(2008-03-29朝日)とされています。

また、密会発覚の発端となった、新聞社に配られたと思われる、テープ起こし形態の文書を見ても、組長が「市長の関係は、話はそれでわかりました。」と言う場面はあるのですが、その前の市長の発言が官製談合がなかったことの説明には読めません。したがって、上記の推測は外れている可能性大です。そうだとすると、組長は何を要求していたのかが分からなくなってしまいます。市長には市民に説明してほしいと思います。

●市長はなぜ問題発言をとがめないのか

密会の場で出席者の一人から「私たち(元県議会議長、市長、議長、商工会議所会頭、組長)が手を組めばうまく行く」(2008-03-27朝日)、「違った道の帝王ですから、手を組めば何だってうまく鹿沼市を持って行ける」(2008-03-23朝日)というとんでもない発言がありましたが、市長はこの発言をとがめていません。

市長は上記の発言の有無を記者に問われ、「(出席者の一人が)言ったんでしょうけど、強い怒りを感じます。」(2008-03-27朝日)と答えました。それほど、ひどい発言だと思うなら、その場でとがめなければいけないと思います。市長は、「メールが入ったり、電話が入ったりして、ボーっとしてたときだったんだと思います」と言っているのは、発言をとがめなかった言い訳だと思います。市長自身が強い怒りを覚えるようなとんでもない発言をするような人物と今後も付き合いを続けるなら、市長も同じ発想の持ち主と思われても仕方ないと思います。

●本当の一市民には会わないのか

市長は、「(組長も)一市民とすれば、どこで何を話そうとかまわない。」(2008-03-23朝日)とか「(3月)24日の記者会見で「疑問を持った一市民に説明することが市長として必要と考えた」と説明した。」(2008-03-29朝日)と言っています。

ダム反対鹿沼市民協議会の副会長は、「市長に面会を申し込んでいるのに、会ってくれない。組長とは会うのに一市民とは会わないのはどういうことか」と怒っています。阿部市長は、「疑問を持った一市民に説明することが市長として必要と考えた」と言いますが、入札問題に疑問を持った組長には説明するのに、ダム問題に疑問を持つ一市民には説明しないのは、市長が暴力に屈していることになりませんか。そうでなければ、ダム反対運動に関わる市民を差別していることになります。

●市長は暴力団の意味を分かっているのか

阿部市長は、「(暴力団員も)一市民とすれば、どこで何を話そうとかまわない。なんぼでもできると思うんです」(2008-03-23朝日)と言いました。市長は暴力団の意味を分かっていないように思えます。

「暴力団」とは、「暴力あるいは暴力的脅迫によって自己の私的な目的を達しようとする反社会的集団」(大辞林 第二版 (三省堂))、あるいは「組織された暴力を背景に金品の利益などの私的な目的を達成しようと、日本を中心に活動する反社会的な集団のこと」(Wikipedia)と定義されます。

「暴力団員達は生き残りのため系列に思想団体・政治結社(右翼団体、特に「右翼標榜暴力団」と呼ばれる)や合法的に見せた会社(企業舎弟)を持つことも多い」(Wikipedia)と言われています。阿部市長が「任侠道の方々はいろんな形で来ていた。街宣車も来た。」(2008-03-27朝日)と言っているのは、「任侠道の方々」と「街宣車」で来る人たちが一体であるという意味でしょう。そのことは理解されているようです。

2008-03-23朝日も「(2007年11月臨時議会のころ)議場の外では、組員らが街宣車を乗り回し、この「疑惑」を取り上げていた。」と書いています。(2008-04-04この段落追加)

阿部市長が暴力団員と市民を同列視するなら、暴力団関係者を市営住宅に入居させない、工事の入札に参加させないという鹿沼市の制度をどう説明するのでしょうか。

暴力団員らに幹部職員を殺害された役所の市長が暴力団の定義を知らないとしたら、問題です。

●市長と議長は密着している

市長と議長が密着している自治体の住民は幸せでしょうか。 市長と議長がツーカーの仲では、議会のチェック機能は働きません。

小松議長は、2007-09-27に再び議長に就任しました。就任あいさつが「あなたと議会」(2007-10-10発行)に載っています。「議会は、議決機関であることを再認識し、円滑な議会運営をめざしてまいります。」と書いてあります。執行部をチェックするという議会の使命を果たす意欲が感じられず、市民を不幸に陥れる予感を覚えました。その議長と市長が兄弟みたいな付き合いをしながら市政運営をされたら、市民にとって問題です。

小松議長は組長と旧知の仲、しかも単に旧知というだけでなく、市長との面会を頼むほどの仲です。そういう人が議長というより議員をやっていていいのか、ということで、上記のように市議会幹事会は小松議長に議員辞職を申し入れたのだと思います。

2007-09-27朝日には「(組長は)旧知の小松議長に電話をかけ、市長への面会を要望」と書かれています。小松議長は、辞職要請を受ける受けないにかかわらず、どういうきっかけで組長と旧知の仲になったのかを説明する責任があると思います。(2008-04-05この段落追加)

●後援会長が公共事業受注者でいいのか

2008-03-23朝日に「組長は「市長と(後援会長でもある)中津会頭との癒着がある」と思い」とあるように、中津工業の社長が市長の後援会長であるから、組長が官製談合があると勘ぐったようです。勘ぐられても仕方がないのではないでしょうか。違法ではないとしても、李下に冠をたださずということわざもあるのですから、税金が市長の後援会長に流れるという構図をつくること自体に問題があると思います。

疑惑を感じたのは、組長だけではありません。「選定方法が不透明だとして、市の(2007年)11月臨時議会で質問が相次いでいた。」(2008-03-23朝日)のです。(2008-04-04この段落追加)

●森山真弓衆議院議員は知らなかったのか

森山真弓衆議院議員は自分の事務所が市長らと暴力団との会合に使われることを知らなかったのでしょうか。ある程度は知っていたのではないかという疑いを持つ市民もいると思います。

●新聞記者が聞かなかったこと(2008-04-03追記)

3月24日に記者会見が開かれました。密会発覚の端緒となった、新聞社に送られてきた、市長の言う「不審文書」に書いてあることが事実なのかをどの記者も市長に確認しなかったのでしょうか。特にテープ起こしの形で書かれた会話は事実なのかは重大問題ですが、この点に触れた記事は見当たりません。記者は聞かなかったのでしょうか、それとも聞いたけれども書かなかったのでしょうか。

●職員組合は無関心なのか(2008-04-04修正)

上記のように、市長は、密会したことが「職員を守る盾となった」(2008-03-25下野)と言います。ということは、職員が危険にさらされていたということです。

阿部市長は、「01年の「小佐々さん事件」を何度も引き合いに出し、「職員を守るためだった」と正当性を訴えた。」(2008-03-27朝日)のです。下野も「「鹿沼事件」口にし涙」と小見出しを付け、「小佐々さんの事件を受けて、より以上に職員が恐怖心を覚えている」と市長の発言を具体的に紹介しています。したがって、旧ジャスコ解体工事を巡る今回の事件は、職員にとって「小佐々さん事件」に匹敵する大事件だったことになります。安心して働ける職場をつくるのが組合の使命である以上、組合は、多分、「小佐々さん事件」については何度か記事にしたでしょうから、今回の事件を無視するとしたら不自然です。もし、組合が職員の危険など存在しなかったと確信しているなら、職員の危険を偽装して自分の行動を正当化する市長の姿勢を問題にしなければなりません。

職員の身体・生命が危険にさらされていたのに、鹿沼市職員労働組合が無関心のはずはないと思います。だったら、その機関紙に記事を書くはずです。執行部としての意見をまとめる時間がないのなら、一執行委員の文責記事として個人的な意見を書くこともできると思います。ところが、3月23日に朝日がスクープ記事を書いてから、機関紙(週2回発行)に密会事件関係の記事が掲載されたという情報はありません。

市長が強調するような職員の危険が具体的にどの程度あったのかは不明ですが、08-03-23朝日が「(鹿沼事件の)教訓いずこ」と書き、08-03-26下野論説が「「鹿沼事件」教訓はどこに」と書くように、密会事件は、小佐々さん事件とつながっていることは事実です。上記のように再発防止が市政の課題であったと同時に、組合にとっても課題だったと思います。組合も公器であり、権力へのチェック機関だと考えるからです。会社が公器であると考えるなら、会社の組合も公器であり、自治体の組合はなおさら公器です。為政者の身近にいるのですから、権力の暴走をチェックする役割が期待されています。

香川県では、組合が新聞に意見広告を載せ、県の無駄遣いについて県民の喚起を促しています。2005-01-10四国新聞に「私たちは求めます!「公共事業優先の体質」「国の言いなりの体質」からの脱却!」という全面広告が載っています。広告主は「香川県政を考える県民会議」となっていますが、事務局は香川県職員労働組合書記局内となっていますので、実質、組合が出した広告でしょう。

そこでは、「綾川水系ダム連携100億円」「五名(ごみょう)ダム200億円」「内海(うちのみ)ダム200億円」「椛川(かばがわ)ダム500億円」などのダム事業を具体的に挙げ、ダムの必要性に疑問を投げかけています。組合が公器としての役割を果たしている例だと思います。(2008-04-05修正)

職員を守るのが組合の使命なら、暴力団に接触した市長の責任を問うのが筋ではないでしょうか。そうすることによって、組合もまた、鹿沼事件の再発を防止する責任があると思います。ためにする議論をしていると思われたくないという考え方も組合にあるかもしれませんが、この問題を取り上げることは、「小佐々さん事件」を風化させないために必要なことであり、市長選の前であることや市職労出身の佐藤信県議が立候補することと関係のない問題だと思います。

要するに、市長は「職員を守れた」と言っており、職員組合の使命は職員を守ることなのですから、市長が本当に職員を守ったことになるのかについてノーコメントというわけにはいかないと思います。組合は、「組合が守るのは組合員のみの利益である。職員=組合員ではない。今回の事件で暴力団からの脅威にさらされていた職員が組合員か非組合員かが不明な段階でコメントすることはできない」という理屈を立てて沈黙しているわけではないと思います。(2008-04-05この段落追記)

●ブログで紹介された(2008-04-04追記)

上記鹿沼市長選に候補者を擁立しようというブログの「市長は政策論と資質で選びたい」(08-04-03up)の記事で当サイトが紹介されました。当ページのうち、4月2日掲載分については、ブロガーからは概ね賛同をいただきました。

しかし、「鹿沼市では政策論で市長を選ぶというレベルまで達していないという現実があるのですから、政策以前の問題であっても徹底して議論することが必要だと思います。」という部分については、疑問をいただきました。どうも「政策以前の問題だけを議論すべきだ」とか「これまでの市長選はすべて政策が争点でなかった」と受け取られている節がありますので、誤解を解いておきたいと思います。

私も政策で選ぶのが理想だと思いますが、政策論を戦わす土俵に上がる資格が問われるような問題もまた、政策同様に重要だと言いたいのです。暴力団に媚を売るような市長では、どんな立派な政策も色あせます。

今回の市長選については、政策以前の問題が大問題になっているということです。8年前の市長選では、ダム問題が大きな争点だったと思います。前市長の福田武氏はダム推進派でしたが、阿部氏は「ダム推進」とは言いませんでした。それが大きな勝因という見方もできると思います。

私たちは、今回の市長選でもダム問題、水道問題を争点に論戦してほしいと考えています。青年会議所もこれらの問題を取り上げてほしいと思います。

佐藤信氏は、南摩ダムについて、「水没予定地の住民が移転して、ダムは建設しないというのがベストの解決策だ」と公の席で発言しました。その考え方が変わっていないのかを是非とも確認したいところです。

●阿部市長はなぜ3月19日に警察に説明したのか(2008-04-05追記)

分からないのは、阿部市長がなぜ2008年3月19日になって鹿沼警察署に一連の経過について説明をした(2008-03-25下野)のかということです。警察に経過を説明するなら、2007 年12月に組長に会う前にしておけばよかったと思います。説明する必要がないのなら、説明しないという態度を貫けばよいと思います。

朝日がスクープしたのが、3月23日です。3月19日はその直前の時期です。朝日はおそらく市長の言う「不審文書」をきっかけに記事を書いたはずですし、不審文書は3月23日の直前の時期に送付されたと思います。不審文書が送付されなければ、市長は最後まで警察に説明しないつもりだったのでしょうか。

阿部市長は、警察に説明した時期がなぜ3月19日なのかを市民に説明する責任があると思います。

2008-03-25読売には、「話し合いの内容を記した怪文書が市内に流れたことから、市長側は今月19日、鹿沼署に相談に行った。」と書かれていますから、やはり怪文書が流れたことがきっかけで相談に行ったのが真相でしょう。したがって、怪文書が流れていなければ、市長側は最後まで警察に連絡しないつもりだったと見てよさそうです。市民としては、市長側がなぜ警察と連携したくなかったのかが知りたいところです。(2008-04-20この段落追記)

●小松議長は辞職要請の意味がなぜ分からないのか(2008-04-05追記)

2008-04-02東京新聞は、「鹿沼市の阿部和夫市長が暴力団組長と会合した問題で同市議会は(4月)一日、各会派幹事会を開き、会合に同席した小松英夫市議会議長に対し「市議会の信頼を損なった」として、議員を辞職するよう申し入れた。」と書き、小松英夫議長の「突然言われても意味がわからず判断ができない。」というコメントを紹介しています。阿部市長も「悪い事はしていない」(2008-03-28下野)と言っているので、議長と同じ気持ちだと推測せざるを得ません。

小松議長は、自分の所属する会派や各会派幹事会から辞職を要請されたことの意味がなぜ分からないのでしょうか。

鹿沼市では、2001年10月31日に発生した「小佐々さん事件」の再発防止のため、議会の百条委員会と執行部の調査委員会が2003年に設置されました。百条委員会の報告書では、四役に関する倫理条例及び内部告発制度を早急に制定することが提言され、調査委員会の第三者特別調査班の報告書では、外部監査制度の導入、危機管理マニュアルの再点検、職員の資質向上、職員倫理の充実、口利き等への対策制定、四役の倫理確立が提言されました。

阿部市長は、百条委員会の報告書を鈴木貢議員から受け取った際、報道陣に対して「時折涙ぐみながら、「厳粛に受けとめ、二度とこういうことのないよう努力していきたい」と小さな声で話した」(2003-08-20朝日)のです。

「小佐々さん事件」の反省の上に、上記の二つの報告書の提言を受けて、暴力団となれ合ったり、暴力や脅しに屈したりしないで行政を執行するための仕組みづくりをしてきたのではないでしょうか。新聞も「日頃、暴力への毅然とした対応を声高に訴えてきた市長」(2008-03-23朝日)と書いています。百条委員会や執行部の調査委員会の調査は不十分で未解明の部分が多く、市民の間では不満が残ったのですが、調査結果を受けた対応策を講じることで事件の再発が防止できると信じた市民も多かったと思います。

ところが、市長と議長と商工会議所会頭(=市長の後援会長)が市民にも議会にも警察にも内緒で組長と面会したのでは、これまでの市の取組を無にすることになると思います。市民は一気に10年前くらいに引き戻された感じで、悪夢を見る思いだったと思います。

そうした市民の思いを受けて自民党の県連も鹿沼支部も阿部市長への推薦決定を撤回したのだと思います。

小松議長がこうした状況を理解できずに、「意味がわからず」と言っているとしたら、小佐々さんの死は何だったのかと思います。

2008-03-26朝日を読むと、市民の中には、「問題ない」とか「裏工作しなければ収まらないこともあるのでは」と言い、市長らの行動に理解を示す人もいます。このような市民が多数いるとすれば、鹿沼市が「小佐々さん事件」でうみを出し切れなかったせいかもしれません。

●密会は鹿沼市長等政治倫理条例に違反しないのか(2008-04-05追記)

2003-12-26に公布された鹿沼市長等政治倫理条例という条例があります。第4条には、「市長等は、次に掲げる政治倫理基準を遵守しなければならない。(1) 市民全体の奉仕者としてその品位及び名誉を害するような一切の行為を慎み、その職務に関し疑惑を持たれるおそれのある行為をしないこと。」と書かれています。

3月31日に開催された鹿沼市議会全員協議会(非公開)では、この倫理条例に違反するのではないかという意見も出たようです。確かに、阿部市長の後援会長の入札を巡る問題で見せた暴力団幹部へのすり寄るような行為は、「市民全体の奉仕者としてその品位及び名誉を害するような」行為又は「その職務に関し疑惑を持たれるおそれのある行為」に当たるように思えます。

同条の第2項には、「市長等は、市民から前項各号のいずれかに違反する事実があるとの疑惑を持たれたときは、自ら誠実な態度をもってその疑惑の解明に当たり、責任の所在を明らかにするとともに、市民に対して弁明しなければならない。」と書かれていますが、市長は「悪い事はしていない」(2008-03-28下野)と言っている以上、疑惑解明等をやるはずがありません。

市長が自ら疑惑解明等を行わない場合には、市民は、有権者の100分の1以上の連署をもって調査を請求することができると書いてあります(第5条)。きちんとした調査が必要だと思いますが、署名を集めるために立ち上がる人がいるでしょうか。

●密会事件は政治手法の問題だ(2008-04-09追記)

上記ブログで密会事件が「スキャンダル」と呼ばれたことに強い抵抗を感じていたのですが、その理由が昨日分かりましたので、スキャンダルにかかわる問題を再燃させることをお許しください。

「スキャンダル」という言葉は、辞書には書いてないので、あるいは私だけの思い込みかもしれませんが、少なくとも日本では、「本業でない」部分の問題であること、それゆえ「本来は重要でない」こと、という意味合いを含むように思うのです。

例えば、俳優とかスポーツ選手とか会社の経営者が非常に立派な仕事をするのに、私生活においては、異性関係や金銭関係で世間から非難されるようなことをしてしまう場合は、まさにスキャンダルであり、その人の本質的な問題ではないにもかかわらず、世間がおもしろがって騒ぐのはおかしいという意見があってもよいと思いますが、市長が組長と密会するというのは、政治家の仕事上の問題であり、政治手法の問題です。どういう政治手法をとるかは、政治家にとって本質的な問題です。密会事件は、「政治手法が適切であったか」という問題ですから、「スキャンダル」という言葉で呼ぶのは、やはりふさわしくないと思います。

●何を約束したのか(2008-04-09追記)

2007-12-20の会合の録音を聞くと、阿部市長の声で次のような発言があります。

ま、あの、(組長から)いきさつを聞かせていただいて、そのとき二つのお話をするという話を私申し上げたと思うんですが、あのダイオキシンについては厳重に取り扱えということを指示させていただきました。これが一つと、もう一つは、中津さんがダイオキシンの関係でそのようなことがあるのかと、そんなことがあって行政に持ち込まれたんじゃオレのほうでは困るという話をするということを申し上げたと思うんですが、その件については、あの、ちゃんと約束通りに指示あるいは話をしてありますんで、えーご理解いただきたいと思います。約束通りのことはちゃんとさせていただいていますので、ご理解いただきたいと思います。

市長は、いつだれと何を約束したのでしょうか。新聞には書かれていません。市長は、市民に対して説明する責任があると思います。

●暴力団と手を組もうという発言をとがめないのか(2008-04-11追記)

密会の出席者の一人から出た発言を録音から書き起こしてみます。なお、市中に出回っている録音は、冒頭に記載したように、2007-12-20の会談の録音です。朝日の記事が正しいとすると、「ある出来事による会合」と題する文書に記載された「平成19年12月12日(水)午前10時ごろから」という日時は、誤りということになりますので、この文書をお持ちの方は、ご注意ください。

既に新聞記事から引用して書いたことですが、市長が強い怒りを覚えたが、とがめなかった発言は次のとおりです。

いやほんとにそういうことでやっていけば、市長中心にね、その辺にそんで新井さんもいる、議長がいる、会頭ですから、そんで、そっちのね、違った道の帝王ですから、それでもって手を組めば、なんだってね、うまく鹿沼市を持っていけるわけですよ。そういうことで新井先生にはね、も、ほんとに大変なことでしょうが、いろいろまたお世話をいただきましてね、それでもって中に入っていただければね、ま、こんなにいいことはないかと、そんな気持ちです。

とんでもない悪だくみだと思います。市長は、この発言をとがめていません。会合に出た人たちが民主主義を理解しているとは思えません。

●暴力団と手を組もうという発言をとがめないのか(その2)(2008-04-16追記)

2008-04-06しんぶん赤旗は、「中津会頭は「市長を中心に新井さん、議長、会頭がいて、違った道の帝王がいるから、それで手を組めば、なんだってね、うまく鹿沼市を持っていけるわけです」と発言。中津会頭は阿部市長の後援会長です。」と書きます。

この発言を巡って、市長は辞職すべきだという意見を持っていると思われる人と話をする機会がありました。その人は、「あれは、組長を持ち上げようとして言ったわけだから・・・」と言います。

「・・・」の中身は、「大した問題ではない」とか「額面どおりに受け取るのは大人げない」とか「本気で言ったんじゃないわよ」としか思えません。しかし、本当に額面どおりに受け取ってはいけないのでしょうか。

延べ人数7万4000人の署名は鹿沼方式だに書いたように、2006年の庁舎移転問題では、商工会議所会頭が中心となってあり得ないほど多くの署名を集め、2001年4月にも中津会頭率いる商工会議所が、私たちの集めた43,000を超えるダム反対署名に対抗して、実質9日間でダム賛成署名を54,258人分集めるという暴挙を成し遂げました。当時、組長は入っていなかったでしょうが、一部の有力者が「手を組めば、なんだってね、うまく鹿沼市を持っていける」は、現実に実行されてきたことであり、組長をおだて上げるためのお世辞の意味の発言でも机上の空論でもないことが実証されているではありませんか。

少なくとも、ダム反対の仲間は、阿部市長と中津会頭の二人三脚(その後三人四脚かもしれません)にしてやられてきたのです。それでも中津会頭の発言が本気ではないと受け取る市民がいるとは!「それで手を組めば、なんだってね、うまく鹿沼市を持っていける」を、市長もとがめなければ、(一般)市民もとがめようとしません。

●後援会発行文書の問題点(2008-04-16追記)

阿部和夫後援会が4月に発行した文書には次のように書かれています。

市の担当者からも適正な入札制度や契約履行に説明をいたしましたが、その後も右翼団体の街宣等もあり、職員が恐怖心を感じていたことから、市長は、小佐々参事の事件のようなことがあってはいけないと心配するとともに、トップとして説明する機会があればと考えておりました。
(中略)
恐怖心を感じていた職員のことを思い、トップとしての責任として、市長自身が盾となり、会うことにしました。
会談により、癒着や官製談合など、まったくないことを暴力団関係者が理解してくれたので安堵したとのことであります。
(中略)
また、今回の怪文書的テープ騒動により、市長が暴力団との癒着が無いということが明白となった等、先日、本人自ら記者会見により弁明したところであり、警察への告訴も予定しております。

「癒着や官製談合など、まったくないことを暴力団関係者が理解してくれた」とのことですが、組長が「談合の疑いは晴れていない」(2008-03-29朝日)と話したことは既に書いたとおりであり、組長の話と矛盾します。これも既に書いたように、怪文書的テープには、市長が、官製談合がなかったことを説明する会話はないのです。考えられるのは、2007-12-12に会談したときに説明したということです。しかし、そうだとすると、なぜ12月20日に2回目の会談をする必要があったのかという疑問が出ます。

仮に市長の説明によって組長が納得したとしても、市長のどのような発言で納得したのかが全く分かりません。契約担当職員も官製談合がなかったことを説明したはずです。市長の説明は職員の説明とどこが違うのでしょうか。

「トップとして説明する機会があれば」と言いますが、気を使って説明する相手を間違えていないでしょうか。別のページに書く予定ですが、水道料金を最低でも32%も上げる水道計画の認可申請書を厚生労働大臣に提出する前に市民に説明すべきではないでしょうか。

「市長が暴力団との癒着が無いということが明白となった」というのは、「癒着がなかった」というのが正確です。これから「何かあったら言ってください」という仲になりたがったことが市民の間では問題になっていることが後援会には分かっていないようです。

また、市長は、確かにこれまでは、少なくともあの組長とは付き合いがなかったでしょう。これも既に書いたことですが、それなら、なぜ旧ジャスコ解体工事については、市長が組長と面会しなければならなかったのかがどうしても分からない部分です。

●告訴を早くやって(2008-04-16追記)

「警察への告訴も予定しております」とのことですが、「予定しております」なんて書いてないで、早くやってほしいと思います。選挙の前に真実が少しでも明らかになる可能性がありますから。

例の怪文書には、小松議長が2003年11月に飲酒運転で検挙され、議長を辞任した事件についても書かれていますので、告訴すればその辺の事情も明らかになると思います。ダム反対鹿沼市民協議会の会員が議長の飲酒運転について警察に情報公開を請求しましたが、非公開どころか、「文書が存在するかどうかも答えない」という決定通知が届きました。人を処罰する以上、警察も文書を裁判所に提出しないわけにはいかないでしょう。鹿沼市民が事件の真相を知る機会は、市長が怪文書の発行者を告訴することでしか得られないかもしれません。

「告訴予定」は、「相談」とは違い、告訴する側も「言いたくないことは言わない」というわけにはいきません。警察から事情を詳しく聞かれます。「告訴予定」が口だけだということになると、市長に告訴できない事情でもあるのかと市民から疑われてしまいます。(この段落2008-04-20追記)

●自治会は市長の集票マシンか(2008-04-17追記)

鹿沼が一部の有力者に牛耳られているのでは、という話の続きになりますが、2008年2月中旬に「広報かぬま」2月10日号と一緒に阿部市長の後援会カードが私の家に回ってきました。

今までにこのようなことはなかったので、3月4日に自治会長あてに、「後援会カードを回覧することを決めたのは、会長ご自身でしょうか、それとも合議によるものでしょうか。」「後援会カードを回覧で配布した理由を教えてください。」「今後も阿部市長後援会が作成した印刷物を回覧で配布されるのでしょうか。」「○○町では、ほかの政治家の後援会カードや私が作成した印刷物なども回覧で配っていただけるのでしょうか」「「自治会は政治団体ではないのだから、特定の政治家の便宜を図るべきではない」という意見についてどう思われますか。」などの質問を書いた手紙を送りました。

最後に「以上の質問についてご返事をお待ち申し上げますので、よろしくお願い申し上げます。」と書きましたが、1か月以上たっても未だに返事をいただいていません。

自治会長から返事をいただいていないので、推測になりますが、市長が自治会長に後援会カードの回覧での配布を依頼したのではないでしょうか。市長側から頼まれもしないのに自治会長の方から後援会にカードをもらいに行くとは思えません。自治会長を市長の手先として使うという市長の傲慢を感じます。

●組長は情報公開請求を取り下げたのか(2008-04-17追記)

怪文書によると、テープ起こしのような会話の文章のあとに「このテープの問題な所」と題するページがあり、「情報公開申請を取下げさせている」と書かれています。

確かに、録音には、新井氏の声で「そんなことで、仲良くやってもらったら、えー、ほら、あの役所に情報開示に基づいて、あの請求している書類あっぺ、それは、山野井さんの方から、もー今日、オレら話したから、ま、一切必要なくなったから、取り下げるというふうにして、取り下げてやってくんねーか、なっ」という件があります。そして組長は「はい」と返事してました。

怪文書に書かれているように、組長が情報公開請求を取り下げたかどうかを確認するために、ダム反対鹿沼市民協議会の会員が「旧ジャスコ解体工事に関する情報公開請求の取下書」の情報公開を求めましたが、「文書不存在による非開示」という決定だったとのことです。つまり、取下書は存在しないということです。取下書は提出されていないと総務課職員は言ったそうです。

それが本当だとすると、「情報公開申請を取下げさせている」という怪文書の記述は虚偽であるということになります。

そんなわけで、どちらの言うことが本当なのかを確認するために、4月15日に、再度、情報公開請求をしました。2000年の市長公約は、「情報公開を一層徹底し、早期公開します。」ですから、早期に公開してくれるでしょう。

上記のように、鹿沼市長等政治倫理条例には、「市長等は、市民から前項各号のいずれかに違反する事実があるとの疑惑を持たれたときは、自ら誠実な態度をもってその疑惑の解明に当たり、責任の所在を明らかにするとともに、市民に対して弁明しなければならない。」と書かれているのですから、本来なら、市民が情報公開請求をしなくとも、市長の方から「市民に対して弁明」するのが筋です。

●市長の後援会長が代わった(2008-04-18追記)

2008-04-17下野によると、阿部市長の後援会が13日に緊急臨時会を開き、後援会長を鹿沼商工会議所の中津宰会頭から関口良夫前鹿沼市自治会連合会長に代える人事を決めました。

「税金が市長の後援会長に流れるという構図をつくること自体に問題がある」ということに今になって気づいたのか、「市長中心にね、その辺にそんで新井さんもいる、議長がいる、会頭ですから、そんで、そっちのね、違った道の帝王ですから、それでもって手を組めば、なんだってね、うまく鹿沼市を持っていけるわけですよ。」と発言した人が後援会長ではイメージが悪すぎると考えたのか。理由は記事には書いてありません。

小松議長も新井元県議会議長も後援会要職を辞任する意向と書かれています。後援会関係者が「役員の責任をきちんとしないと」と言ったようですが、「役員の責任」を言うなら、市長本人の責任に言及しないと矛盾します。市長は、「悪いことはしていない」(2008-03-28下野)と言っているのですから、役員が責任をとる必要はないように思います。役員が責任をとるなら、市長も責任をとるのが筋ではないでしょうか。

●自治会が対立軸か(2008-04-18追記)

昨日、某自治会長が市長の後援会カードを回覧と一緒に回してけしからんという話を書いたら、奇しくもその翌日の新聞に市長の後援会が前自治会連合会長を会長にするという記事が載ったわけです。「前」とはいえ、関口氏は自治会連合会長だったのですから、市長側の発想は相変わらず自治会を抱き込んで市政を動かすことにあるようです。

そして奇しくも、佐藤信氏が「討議資料」で「自治会・老人クラブ・民生委員児童委員協議会など各種団体については、自主的な活動を尊重します。」と公約しています。

自治会長が後援会カードを配ったりしても、自治会員が自治会長の思惑どおりに動くとは思えませんが、そういう活動の仕方をしている自治会等の団体を苦々しく感じている市民にとっては、佐藤氏の公約は新鮮で魅力的に写ると思います。そういう効果があると考えたからこそ、佐藤氏も公約に盛り込んだのでしょう。

現職が各種団体との密着にこだわるなら、対立候補としては、そこを逆手に取る戦略は巧妙と言えるでしょう。だって、「各種団体の自主性の尊重」が公約になった話なんて、あまり聞きませんから。

●取下書は提出されていなかった(2008-04-19追記)

私が4月15日に鹿沼市長に対して行った情報公開請求の決定通知書が18日に届き、情報を入手しました。私が請求した情報は、「旧ジャスコ解体工事に関してこれまでなされた情報公開請求に対する決定通知書と公開文書」でした。

旧ジャスコ解体工事については、2007-12-10と2008-03-24と2008-04-01に情報公開請求がなされています。問題なのは2007-12-10の請求です。例の怪文書は2007-12-20の会談内容を書いたものですから、そこに出てくる「情報公開申請を取下げさせている」の「情報公開申請」とは、2007-12-10の請求を指すと思われるからです。

2007-12-10の情報公開請求書とこれに対する決定通知書については、旧ジャスコ解体工事情報公開請求書・決定書(PDFファイル204KB)をご参照ください。総務部は、12月21日と2008年1月23日の2回にわたり通知しています。ここに示した部分公開決定通知書は、総務部(契約検査課)の作成したものですが、そのほか企画部(特定課題推進室)と都市建設部(設計課)でも部分公開しています。

なお、低入札価格調査において、株式会社中津工業が2007-10-29に提出した履行可能申立書PDFファイル140KBも参考までにご覧ください。

録音を聞くと、新井氏が組長に対して情報公開請求を取り下げるように依頼しています。2007-12-10に情報公開請求したのは、おそらく組長かその関係者と推測されます。しかし、情報公開請求取下書はだれからも提出されていません。「取下書は出ていない」という言葉を総務課の職員に直接聞いたので間違いないでしょう。結局、新井氏の働きかけは未遂に終わったのですから、「情報公開申請を取下げさせている」という記述は、事実に反すると言わざるを得ません。

暴力団はしたたかだということが分かります。新井氏に取り下げてくれと頼まれて、組長は「はい」と答えていましたが、結局取り下げていなかったわけです。談合疑惑についても、当初は、入札が有効であることを前提として関連企業が下請に入らせてくれと中津工業に申し入れていたのに、交渉が決裂すると、談合だ、入札無効だと言い立てるというしたたかさを示しています。そんなしたたかな暴力団には、毅然とした対応をしなければならないというのがこの8年間の鹿沼市に最も求められていたことだったはずではないでしょうか。

●臨時議会で何を聞くのか(2008-04-20追記)

4月22日(火)に臨時議会が開かれます。2008-04-17日本共産党鹿沼市議団ニュースによると、小松議長に対する辞職勧告決議案と旧ジャスコ解体工事入札に関する官製談合疑惑解明のための、特別調査委員会の設置が提案されるようです。議員から市長と議長への質問もあると思います。

問題は、議員が何を質問するかです。私がとりあえず聞いてほしいのは、次の事項です。

この辺の質問が出ないで、市長と議長が長々と釈明に時間を使い、時間切れとなり、「疑惑解明は特別調査委員会で慎重審議する」というのが落としどころだとすると、臨時議会は茶番だったことになると思います。

2008-04-12下野によると、「臨時市議会の最大の狙いは、非公開だった市議会全員協議会での質疑を公開の場で再現し、小松議長以上に阿部市長の責任を追及する点にある。」とのことです。「再現」するだけですから、出来レースであり、新事実は期待するなということかもしれません。

●新事実は出たのか(2008-04-24追記)

4月22日の臨時議会では、阿部市長と執行部に対して8人の議員が質問したようです。「小松議長の辞職勧告決議については「反社会的な行為を行った」として19対7で可決した。」(2008-04-23下野)ようです。

「満席の傍聴席からは「同じやりとりの繰り返し」との失望の声があがった。」(同上)そうですし、数社の新聞を読んでも、目新しいことは書いてありませんでした。私は、ケーブルテレビを録画できる環境にありませんので、詳しい情報をお持ちの方は、ご連絡いただければありがたいです。

23日付け東京新聞だけは、「二十二日の市議会臨時会で大橋勲副市長は、会合当時の担当職員が恐怖を感じていたことを認めつつも「不当要求なのか判断がつきかね、(不当要求への)対策委設置を指示しなかった」と釈明。」(括弧は引用者)と書いています。そうだとすると、市長は「職員を守るため」と言いますが、不当要求があったのか、あったとすれば、どのような要求だったのか、名前は出せないとしてもおおよそどのような職員がどのような恐怖を感じていたのか、危険にさらされていたのか、一向に見えてきません。8人も質問したのですから、だれかはこの辺のことを質問したと思うのですが。

不要要求の中身が具体的に明らかにならないと、実は不当要求と言えるほどのものはなかったのに、小佐々さん事件を口実にして、自分の後援会長を助けたいだけだったのではないか、という市民の疑惑を払拭できないと思います。

なぜ密会は1回で済まなかったのか、市長は組長と何を約束したのか、なぜ約束をしなければならなかったのか、組長はどんな言葉に納得したのか、怪文書の発行者を告訴したのか、まだなのか、依然として私には分かりません。ご存知の方は、情報をください。

●小佐々さんの異動は何のため(2008-04-25追記)

2000年10月1日付けで小佐々さんがクリーンセンターに異動させられた理由は、阿部市長によれば、「21世紀は環境の時代。私は議員のころからISO14001(環境管理の国際規格)を取得しようと思っていました。小佐々参事は着実にやる性格で、そこを見込んで異動させたわけです」(下野新聞取材班著「狙われた自治体」岩波書店p102)ということです。

ISOは、9001にしろ14001にしろ、業務マニュアルを作成し、原則的にマニュアルどおりに業務を執行することを求めているのではないでしょうか。高い経費をかけてISOの認証取得をしても、簡単にマニュアルを無視するなら、取得する意味がないと思います。

「着実にやる性格」の小佐々さんを異動させてまでISOを取得したのに、市長がISOの精神を無視してしまうのは、皮肉な話です。小佐々さんを異動させたのは、本当にISO認証取得のためだったのかと疑われても仕方がないのではないでしょうか。

●"怪文書"は違法か(2008-04-26追記)

上記のように、怪文書的テープについて阿部和夫後援会が「警察への告訴も予定しております」と書いてから大分経つので、おそらく既に告訴したことでしょう。しかし、罪名は何でしょうか。公職選挙法第225条の選挙の自由妨害でしょうか。「偽計詐術等不正の方法をもつて選挙の自由を妨害したとき。」に当たるというのでしょうか。いわゆる「選挙妨害」を説明するサイトを見ると、 「候補者についてデマをとばしたり」することが例として挙げられています。怪文書のどの部分がデマなのか市長は説明する義務があると思います。

それとも、名誉毀損罪でしょうか。刑法第230条第1項には、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」と書かれています。しかし、第230条の2第3項には、「前条第1項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。」と書かれています。したがって、怪文書に書いてあることが真実であれば、処罰されません。

怪文書に書かれていることは、真実でしょうか。会話部分はテープの書き起こしですから、真実でしょう。民主党がニセメールにだまされて国会質問した事件がありましたが、メールは偽造できても、音声の偽造はそう簡単にはできませんから、真実と考えていいと思います。しかし、録音された会合の日を12月12日と書いたことは、真実ではないでしょう。臨時議会での市長答弁や朝日新聞の取材により、12月20日の会合の模様を記載したのが真実と考えます。

ではなぜ、怪文書の発行者は、「12月20日」と書くべきところを「12月12日」と書いたのでしょうか。結論として単純ミスと思います。12月12日にも、中津会頭を抜きにせよ、市長らと組長が会っていたことは真実ですし、会合の日付を偽っても、読者の印象に差は出ないと思われるからです。

では、怪文書の作者が指摘した次の問題点は真実でしょうか。

  1. 仲立ち人が自民党鹿沼支部長である
  2. 場所が森山衆議院議員の事務所である
  3. 出席者が市長、議長、会頭、自民党鹿沼支部長、任侠道関係者である
  4. 発注者である市長が請負者と任侠道関係者の仲立ち人になる事
  5. 情報公開申請を取下げさせている
  6. 官製談合の疑惑物件である
  7. 鹿沼市は、行政対象暴力事件で和解したばかりである

ほぼ真実と言っていいのではないでしょうか。ただ、上記のように「情報公開申請を取下げさせている」というのは結果として不正確ですが、「そんなことで、仲良くやってもらったら、えー、ほら、あの役所に情報開示に基づいて、あの請求している書類あっぺ、それは、山野井さんの方から、もー今日、オレら話したから、ま、一切必要なくなったから、取り下げるというふうにして、取り下げてやってくんねーか、なっ」と言われ、「はい」と返事した人がいたのですから、真実でないとは言い切れないと思います。

市長は、朝日新聞からの取材への回答で「関係者によれば、「このテープの問題な所」と題する書面において、仲介人をことさら冒頭で「自民党」と名指ししたり、場所につき「森山衆議院議員事務所」を2番目に指摘し、その後にも自民党や市長を摘記し」(2008-03-23朝日)、だから、「(市長側の)内部的混乱」を目的とするものだ、と書くのみで、指摘された事実が真実でないとは一言も書いていません。

市民もマスコミも権力者を批判する自由は憲法で保障されているのですから、細かい点で厳密には真実とは言えない部分があったとしても、事実を公表し、問題点を指摘することで名誉毀損罪が成立するとは思えません。市長は、怪文書のどの部分が真実でないと考えているのでしょうか。

●小佐々家は遺憾に思っている(2008-04-27追記)

22日の臨時議会において、松井正一議員が「答弁の中で小佐々さんのことを何回も出すが、小佐々家は今回のことを大変遺憾に思っていた。」(2008-04-23朝日)と発言したようです。松井議員がそう発言するからには、小佐々夫人に直接意見をうかがったのでしょう。だから、小佐々夫人が密会事件を遺憾に思っていることは真実でしょう。そうだとすると、市長が小佐々さん事件を何度も引き合いに出して、「小佐々さん事件の再発防止が(会合の)目的だったとする阿部市長の説明」(同上)も、ご遺族に迷惑なだけで、市民への説得力はありません。

●組長はなぜ談合がなかったことを納得したのか(2008-04-27追記)

塩入佳子議員は、「密会は公共工事のトラブルの手打ちのためか。談合疑惑がないと暴力団が理解したと判断したのはなぜか。」と私が聞きたいことを聞いています。しかし、市長の答弁は、「組長の「分かりました」との言葉を信じている。トラブルの手打ちではない。行政として説明にうかがった。」であり、答になっていません。市長がどう説明したら、組長は納得したのか、その説明は職員の説明とどう違うのか、さっぱり分かりません。

1回目の会合では、説明したのでしょうか。したとしたら、その説明に組長は納得しなかったのでしょうか。しなかったとすれば、なぜでしょうか。なぜ会合が2回必要だったのか、記事を読んでも全く分かりません。

●市長はなぜ涙が出たのか(2008-04-28追記)

録音を聞くと、ほかにも分からないところがあります。

新井氏が「小松君のこと心配してんだよ、ほら、小松君も長いこと、こないだもちょっと、ほら、な、だれも人生の中でいろいろあるからな、そういう時からの付き合いなんで」と言うと、市長が「涙が出た、こないだんときは」と言っています。その後、新井氏が「その小松君が一生懸命、傘になり、蓋になりして、がんばってんだが」と言います。

小松議長が人生の中で「いろいろ」あったときに、市長がなぜ涙を流すのか分かりません。また、小松議長が「傘になり、蓋になり」というのが、だれをかばい、どのような事実を覆い隠したのかも分かりません。

(文責:事務局)
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