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延べ人数7万4000人の署名は鹿沼方式だ

2006-6-17

●鹿沼市役所移転の署名が提出された

鹿沼市庁舎の移転問題について下野新聞は、次のように報道しています。

2006年6月3日付け下野新聞
7万4000人の署名提出

 今秋撤退が予定されるイトーヨーカ堂鹿沼店などの既存施設利用も視野に入れた市役所の新庁舎設置を求める「新市庁舎整備促進協議会」(会長・中津宰鹿沼商工会議所会頭)は2日、署名7万4127人分(延べ人数)を阿部和夫市長に提出した。
  同協議会は5月15日、市内の自治会や各団体の代表者らで発足。旧粟野町との合併で十万都市となったことを機に、市民が集まりやすく利便性の高い場所に市役所を整備すべきだとし、署名活動を展開。
  (以下略)

中津宰会長(中津工業株式会社の社長であり、鹿沼市長の後援会長でもある。)は、「署名の提出が間に合わなかった団体もあり、最終的には8万人を超える。」と言っているそうです。

●7万4000人はあり得ない数字だ

鹿沼市の人口は、103,866人(2006年5月1日現在)です。そのうち旧粟野町分が10,032人で、旧鹿沼市分は93,834人です。

「新市庁舎整備促進協議会」が6月2日に鹿沼市に提出した7万4127人分の署名は多すぎます。多すぎるが故にうさんくささを感じさせます。

同協議会が発足したのが5月15日で、署名提出日が6月2日です。2週間程度で 鹿沼市の人口の71%(署名の数が8万人なら77%になってしまいます。)の署名を集めることは、物理的に不可能と思われます。集計作業に1週間はかかるでしょうから、署名活動に当てられる期間は実質1週間しかないと思われるからです。

同協議会も重複署名が相当数あることを認めているから、記事が「署名7万4127人分(延べ人数)」という表現になったのでしょう。「延べ人数」と表現される署名というものがこれまであったでしょうか。

●署名の重複が多いことは間違いない

2006年6月16日付け下野新聞によれば、前日に開催された鹿沼市議会定例会一般質問において、山崎正信議員からの「新市庁舎整備促進協議会による署名と新庁舎建設をどのように考えているか。」という質問に対して、阿部和夫鹿沼市長は、「当初、7万4127人の署名提出があり、現在、重複を含め集計確認作業中。」と、わざわざ「重複」を強調して答弁していますから、無視できないほど重複が多いことは間違いないでしょう。

ちなみに、6月23日付け朝日新聞には、「署名数は、市外の1万1千人分を含め約7万4千人分。複数の団体が署名活動にかかわっていることから「相当数のだぶりがある」(市担当者)として、市は実数の把握に努めているという。」と書いてあります。

●署名活動は時間がかかる

署名活動を正攻法でやれば、時間がかかります。問題意識を持っていない人に活動の趣旨を説明し、理解してもらってから、署名をもらうまでにはかなりの時間を要します。短期間で多数の署名を集めるには、多数の運動員が必要です。運動員は市民からの質問に答えられるだけの知識を持っていなければなりません。「新市庁舎整備促進協議会」がそのような運動員を大勢抱えていたとは思えません。

そもそも、イトーヨーカ堂鹿沼店が9月に撤退することさえ、旧粟野町を含めた全市民に周知されているとは言えないと思いますから、署名をしてもらうには大変な手間ひまがかかるはずです。

●なぜ重複署名が多いのか

重複署名が多いとすれば、団体の会員名簿を書き写しているからでしょう。一人の人が複数の団体に加入していれば、団体の数だけ重複する可能性があります。この方法なら短期間に大勢の署名を作成することができますが、もはや「署名」とは言えません。

●署名は一人一筆だから価値がある

署名活動における署名は、一人が一筆だけを書くからこそ選挙における投票と同じような機能を果たし、民主政治において価値が認められると思います。一人が何筆でも書ける署名活動に意味はありません。

今回の署名活動の主催者は、「署名」や「民意」の意味が分かっていないと思います。署名活動を侮辱さえしていると思います。

●自治会員は知らない

「新市庁舎整備促進協議会」は自治会の代表者などで構成されているそうですが、一般の自治会員は、自治会がそのような活動をしていることを知らされていません。少なくともダム反対鹿沼市民協議会の会員の家には、自治会の回覧板で市庁舎移転に関する署名簿は回ってきませんでした。イトーヨーカ堂付近への庁舎移転が自治会の総意のようにされてしまうことは問題です。

●市民は署名簿を見れない

署名が本人によって書かれたものであるのか、同じ筆跡で書かれていないのか、という疑問を一般市民が抱いても確かめる術がありません。市民は署名簿を見ることができません。情報公開条例で「個人が識別できる情報」であることを理由に非公開とされてしまうからです。真性に作成された署名であるかどうかは、市の職員と「新市庁舎整備促進協議会」の関係者だけが知っています。

●二匹目のドジョウをねらった鹿沼商工会議所

鹿沼商工会議所には「成功体験」があります。

鹿沼商工会議所は、2001年4月半ばから下旬にかけての2週間足らずで、東大芦川ダムと南摩ダムの建設に賛同する署名を54,258人分集め、5月8日に栃木県知事に提出しました。集計期間を除くと、署名活動期間は9日間でした。上記のように、市民が署名の真贋を確認する手段はありませんので、特に問題にされることはありませんでした。鹿沼商工会議所は、二匹目のドジョウをねらったと言えましょう。

ほかの自治体でも、今回のような署名が行政に提出されているのでしょうか。短期間に極めて多数の署名を集める鹿沼商工会議所の署名活動は、「鹿沼方式」と呼ぶべきユニークなものではないでしょうか。

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