阿部和夫後援会のホームページに阿部氏のマニフェストが掲載されていますが、主要事業に上水道の話が出てきません。下水道についてはp17に16行も使って事業内容を説明しているのに、水道事業については全く触れられていません。「8年間の歩み」の1項目に「上水道整備と水資源の確保」p29と書かれているだけです。
「市民の勇気ニュース」第4号によると、JR新駅整備事業費は44億円、ハーベストセンター整備事業費は23億4250万円です。鹿沼市水道事業第5次拡張事業第1回変更計画は、総事業費180億円を超える大規模事業なのですから、選挙公約に掲げられてしかるべきです。主要事業に掲げられていない理由が分かりません。水道事業が「歩み」の中で「将来の水資源確保(H18〜)」と過去形で書かれる理由が分かりません。阿部市政の水道計画は、南摩ダムの水を水源とする計画です。市民には、これから水道料金の大幅値上げが待っているというのに、南摩ダムの問題を「終わった話」にすることが許されるのでしょうか。
2001-05-10「広報かぬま」には、鹿沼市が河川水を確保する理由を次のように書かれています。
地下水の保全や、安全で安定したこれからの水道事業を考えるとき、水源は地下水一辺倒でなく、表流水による水源の確保も必要です。
地下水と表流水の2系統の水源による、安全で安定した上水道の整備が市民生活にとっても経済の発展においても、必要不可欠な施策であると考えています。
「安全で安定したこれからの水道事業」のために180億円もかけるのですから、「市民が快適に暮らせる生活基盤の整備」という主要施策の中の重点事業に挙げなければならないはずです。市民の快適な生活のために必要な事業なら堂々と主要事業や重点事業として掲げたらいいと思います。なぜ市民の目から隠れるように水道計画を進めるのでしょうか。
なお、実績として挙げられている「●思川開発の関係住民の生活保障(H14)と将来の水資源確保(H18〜)」という記述も不可解です。
思川開発事業は国の事業です。「関係住民の生活保障」をするのは、国の役割です。「思川開発の関係住民の生活保障」をなぜ鹿沼市がしなければならないのでしょうか。水没予定地区住民への1世帯当たり940万円のつかみガネのことを指しているのでしょうか。
「将来の水資源確保」が(H18〜)というのも不可解な話で、鹿沼市が表流水を確保することに決めたのは、1983年のことです。「将来の水資源確保」とは、おそらく思川開発事業に参加したことを指しているのでしょうが、そうだとすると、栃木県のホームページに掲載された資料思川開発事業に係る参画水量の内訳によれば、鹿沼市は既に2001年に0.22m3/秒で思川開発事業に参加していることになっています。
鹿沼市が思川開発事業に参加したのが2006年のことだとすると、栃木県のホームページにはウソが書いてあったということになります。ウソをついたのは当時の知事福田昭夫氏なのでしょうか。
ちなみに、阿部マニフェストには、「ダム」の文字が1箇所だけ出てきます。「南摩ダム周辺山林の樹種転換など高度利用を図ります。」と書いてあります。体系的には「市民とともに進める「かぬまと地球」の環境づくり」に位置づけられています。阿部氏にかかると、南摩ダムを造ることが"環境政策"になってしまうわけです。ブラック・ユーモアです。
●総合計画では水問題をアピールしていた(2008-05-10追記)
2007-04-25広報かぬまを見ると、p2とp3に鹿沼市第5次総合計画の紹介記事が載っています。2011年度までの5か年重点事業には、「上水道第5次拡張」「漏水防止対策」「水道事業経営基盤の強化」「思川開発事業(南摩ダム)の促進」と、水道問題とダム問題が列挙されています。
広報には「今回の特集では、今後5年間で特に推進する重点事業を紹介します。」と書かれているのですから、阿部マニフェストからそっくり外すのは変です。全部書ききれないのは分かりますが、「上水道第5次拡張」と「思川開発事業(南摩ダム)の促進」は、金額や市民への影響の上から、本来外せない事業でしょう。わざわざ外したということは、争点隠しと受け取られても仕方がないと思います。
●水道計画は最少の経費で最大の効果か
阿部マニフェストで気になるのが、「最小の経費で最大の効果」(p7)、「少ない経費で最大効果を生む」(p20)と書かれていることです。少なくとも水道計画については、最少の経費で最大の効果を挙げるとは思えません。水道水源は地下水で足りるのに、わざわざ16億円の負担金を払って川の水を使い、その浄水のために80億円も使う。しかも、河川水が汚染される可能性は地下水よりもはるかに大きくなるし、味もまずくなります。なぜ阿部氏の政策が「最小の経費で最大の効果」なのか理解できません。
●「先見性」があるのか
阿部マニフェストには「先見性」p2という言葉も出てきます。
2000年5月12日に阿部氏からいただいたアンケートの回答には、鹿沼市の人口が2025年には12万人になると書かれています。あり得ない数字です。自治体の基本的要素である人口の読めない阿部氏に先見性があるとは言えないと思います。年金制度の破たんや道路や空港への過剰投資を見れば分かるように、おかしな政策はおかしな人口予測に基づきます。
●なんで一番?
「ここが一番、さすが一番、まして一番」をキャッチフレーズにする阿部市政ですが、なぜ一番でなくてはならないのでしょうか。現代は、SMAPの歌にもあるようにナンバーワンよりオンリーワンの時代ではないでしょうか。「一番」を目指してあくせくするなんて時代錯誤ではないでしょうか。勘弁してくれと言う市民や職員も多いのではないでしょうか。
●佐藤信氏の公約からもダムが抜けている
対立候補予定者の佐藤氏が南摩ダムや水道計画のことを知らないはずはないと思いますが、その公約からも、なぜかダム問題、水道問題がすっぽり抜けています。
そこで当協議会では、4月21日に佐藤氏に公開質問状を郵送しました。内容は、次のとおりです。
2008年4月21日佐 藤 信 様ダム反対鹿沼市民協議会会長 広 田 義 一水問題に関する公開質問状日ごろの議会活動に敬意を表します。また、2002年だったでしょうか、県営東大芦川ダムについては、推進から中止に方針を転換されたことに敬意を表します。
既にご承知かと思いますが、私たちは、思川開発事業(南摩ダム)に反対する活動を行っている市民団体です。
さて、新聞報道によれば、議員は、3月21日の記者会見で5月25日投票の鹿沼市長選挙に立候補されることを表明されました。
当選された場合の政策として、「大型の箱モノはゼロからの見直しを基本に」(3月22日読売新聞)、「南摩のハーベストセンター計画も「ゼロベースで見直す」」(4月5日下野新聞)、「借金のつけ回しをして『ハコもの』を造る時代ではない」(3月22日朝日新聞)、「子や孫の世代に付けを回す時代ではない」(3月22日下野新聞)、「子や孫の世代にツケを回さない市政を作りたい」(3月15日読売新聞)などと報道されています。後援会カードと一緒に配られている「討議資料」には、「『第二の夕張市』にしないために、借金を減らします。」と書かれています。
しかし、これらの政策がダム問題及び水道問題とどう結び付くのか分かりません。
そこで、別紙のとおり質問をさせていただきますので、お答えくださるようお願い申し上げます。お忙しい時期とは存じますので、回答になるべく時間がかからないような設問にしたつもりです。5月6日(火)までにご回答いただければ幸いです。送付状不要。
回答先及び連絡先は、下記のとおりです。回答の方法は、郵送又はファクシミリでお願いします。ただし、ご連絡いただければ、回収にうかがいます。 なお、回答は新聞社に送付するほか、インターネットで公表する予定です。回答先及び連絡先(ダム反対鹿沼市民協議会事務局)省略
水問題に関する質問事項及び回答書お名前 :連絡先(電話番号):作成日 :選択肢の番号を○で囲み、理由等もお書きください。
1 国が思川開発事業を進めることについてどう考えますか。
(1)賛成する。(理由: )
(2)反対する。(理由: )
(3)その他( )
(理由: )
2 鹿沼市が思川開発事業に参加して水利権を確保することについてどう考えますか。
(1)賛成する。(理由: )
(2)反対する。(理由: )
(3)その他( )
(理由: )
3 時期は特定できないのですが、私たちは、かつて議員が南摩ダムに賛成かと問われた ときに、「水没予定地の住民が全員移転して、なおかつ、ダムを造らないというのがベ ストの解決策である。住民の生活再建を考えると反対はできない。」と発言されたこと を忘れません。議員は、このような発言をされたことを記憶しておられますか。
(1)記憶している。
(2)記憶していない。
4 上記の考え方は、現在も変わっていないのでしょうか。
(1)変わらない。
(2)変わった。(理由: )
(3)その他( )
5 上記の発言からは、水没予定地の住民が全員移転した現在、ダム建設は中止すべきと いうことになりませんか。
(1)中止すべきである。
(2)中止すべきでない。(理由: )
(3)その他( )
6 思川開発事業を進めることは、 借金と環境破壊というツケを子や孫に回すことにな ると考えますか。
(1)考える。
(2)考えない。(理由: )
7 水道水源として地下水と河川水とどちらが安全で安定的と考えますか。
(1)地下水
(2)河川水
(3)その他( )
8 鹿沼市の水需要は今後10年くらいのスパンでどうなると予測しますか。
(1)増える。
(2)減る。
(3)その他( )
9 鹿沼市の人口は今後どうなると予測しますか。2012年の人口を予測してくださ い。(2008年4月1日現在の人口は、103,411人です。)
2012年の人口: 人
10 民主党は八ツ場ダムについては、反対の立場を表明しています。思川開発事業につ いて民主党はどういう立場なのでしょうか。
(1)反対である。
(2)賛成である。
(3)その他( )
以上です。ご協力ありがとうございました。
5月6日を期限としたことは、平日と勘違いしたことによるミスですが、5月8日になっても佐藤氏から回答が届いていません。同日、電話で事務所に問い合わせましたが、責任者がおらず、回答してくれるのか、くれないのか、分かりませんでした。
思川開発により鹿沼の自然が大規模に破壊されます。水を取られる大芦川、黒川の流域の住民にとって特に大問題です。佐藤氏は、環境破壊や取水の影響についてどのように考えているのでしょうか。佐藤氏陣営の「市民の勇気ニュース」第4号(2008-05-02発行)には、「国や県に対する働きかけを強めます」と書いてありますから、「思川開発事業は国の事業だから、中止か継続かは国が決めればいいことで、鹿沼市としては何も言うことはない」という立場ではないと想像します。
●南摩ダムに関する佐藤氏の考え方(2008-05-10追記)
上記の公開質問状について、5月8日と9日に「市民の勇気で鹿沼を変える会」の事務所に電話を入れましたが、いずれも本人に確認がとれないので答えられないということでした。今後も回答はないと考えた方がよさそうです。
佐藤氏にとって忙しい時期ですが、設問は百問ではなく十問で、択一式だから、そう時間はとらないと考えたのですが、無理のようです。80円切手を貼った返信用封筒も同封したのですが。思川開発事業計画は、1964年に構想が発表された、ということは、44年前から存在するのであって、今降って湧いたような問題ではないのですから、鹿沼に関わる政治家なら、当然一定の所見を持っているはずで、質問されてこれから考えるような問題ではありません。
そこで、ダムと水道に関する佐藤氏の考え方をほかの方法で探ってみます。
佐藤氏を支持することになった日本共産党は、2008-05-08「新しい鹿沼」(日本共産党鹿沼市委員会発行)で次のように書きます。
市長選挙では、日本共産党に対し新人候補(予定)から推薦依頼の申し入れがあり、検討した結果、国保税、南摩ダムに対する明確な意志表明が無いことから全面的な選挙協力にはいたらず、「支持」となったものです。
要するに佐藤氏は、南摩ダムについては、歯切れが悪いのです。明確に反対と言えない事情があるのでしょう。
しかし、当協議会の公開質問状に書いたように、佐藤氏はかつて(2002年ごろ?)「水没予定地住民が移転して、ダムを造らないのがベスト」と発言したのです。連休前に遊の郷で偶然佐藤氏と会ったときに、上記の発言をしたことを認めていましたから、発言したことは間違いありません。「水没予定地住民の利益を考えれば、今、南摩ダムに反対するわけにはいかない」という考え方だと当時、私たちは受け取りました。逆に言えば、「移転対象者の生活再建ができるのなら反対する」という意味になると思います。
そして今、水没予定地住民の移転は完了しています。佐藤氏が南摩ダムに反対する理由はなくなったはずです。
佐藤氏は、「ダムを造らないのがベスト」と発言していたのですから、南摩ダムが無駄であることは理解されていると思います。しかし、その有害性についてはどうでしょうか。黒川と大芦川から導水されたら、両河川の流域の住民への影響は大きいでしょう。特に板荷地区では、黒川の水を用水堀に導き、堀からしみた水が堀の近くの住民の井戸に補給されるという仕組みになっています。したがって、黒川から導水されたら、堀に入れる水が不足し、井戸水が干上がるという構図になっています。
大芦川でも導水されれば被害は甚大です。だからこそ、東大芦地区大芦川取水対策協議会(会長・福田三男氏)は、その被害を軽減するために、東大芦川ダムの建設を熱望していました。したがって、「東大芦川ダムが建設されないのならば、南摩ダムの建設に反対する」とまで言っていたのです。(ところが今のところ、同協議会が南摩ダム反対運動を始めたという情報は入っていませんが。)
加蘇地区でも導水トンネル工事により沢水や井戸水がかれるおそれがあります。南摩ダムは鹿沼市民の問題です。「国のダムだから、鹿沼市長が口を出すべき問題ではない」ということにはなりません。
佐藤氏は、導水の影響をどう考えているのか。全く未知数です。
来週板荷で佐藤氏の演説会がありますので、そこでこの点に関する佐藤氏の考え方が分かるかもしれません。
●水道に関する佐藤氏の考え方(2008-05-10追記)
上水道の水源については、これからも地下水を使えばいい、というのが佐藤氏の考え方です。これも直接会って聞いた話です。高い負担金を払ってダムの水を買うことはないというのが理由です。この点は、阿部氏と180度違うのですから、最大の争点と言ってもいいくらいだと思います。第6浄水場建設費80億円と南摩ダム負担金16億円、合計96億円が節約できる話ですから、佐藤氏が大きくポイントを稼げる争点だと思いますが、なぜか自らアピールされません。
●佐藤氏を支援する市議がダム促進(2008-05-10追記)
佐藤氏が南摩ダムを無駄だと認識しているとしても、彼を支援する小川清正市議が南摩ダム促進を唱えています。どう調整するのでしょうか。どちらが妥協するのでしょうか。小川市議は阿部市長と対立していたようですが、東大芦川ダムと南摩ダムの促進という点では、完全に一致していました。
小川市議が南摩ダムに賛成する理由は、下流の都市に対して発言権が持てるということです。板荷地区などで、生活用水や農業用水への影響が懸念されることについて、小川議員がどう考えているのかは不明です。
●森林組合が佐藤氏を推薦(2008-05-11追記)
5月10日に鹿沼市民文化センターで開催された佐藤信総決起集会に行ってきました。大変な盛会でした。受付で名前を書いた人だけでも3,000人はいたようです。
私にとって意外だったのは、鹿沼市森林組合が佐藤氏を推薦していることです。森林組合は、阿部市長のダム促進政策に協力してきた団体です。森林組合が阿部市長に反旗を翻した理由や今でもダム促進派なのかは、残念ながら分かりません。
●公開討論会のテーマからも「ダム」が抜けている(2008-05-14追記)
ブログ「鹿沼市長選に候補者を擁立しよう」の(報告)さとう信総決起集会とマニフェストのページに5月15日開催のテレビ討論会の内容が紹介されています。
質問1 財政について
質問2 地域産業振興について
質問3 農業政策について
質問4 地域活性化について
質問5 子育て・教育政策について
質問6 高齢者福祉政策について
以上の6問のようです。「ダム」と「水道」の問題はどこで議論されるのでしょうか。抜けていると思います。青年会議所の役員さんたちは、水道料金の値上げに興味はないのでしょうか。南摩地区の環境破壊に興味はないのでしょうか。加蘇・大芦・板荷地区の水涸れに興味はないのでしょうか。
また、上記ブログのブロガー佐渡ケ島氏も心配していますが、「政治倫理の問題(暴力団との密会問題)」について討論されるのか疑問です。おそらく討論されないと思います。「このまちは暴力にどう立ち向かうのか」が鹿沼市の最大の政治テーマではないでしょうか。「小佐々さんの死にどう報いるのか」が、どうして小佐々さんの死後、最初の投票による市長選における市長候補予定者の討論のテーマとならないのでしょうか。
市民が一番聞きたいテーマを避けて質問項目をつくったような感じがします。おそらくは、両候補予定者が同意することを条件として質問項目を決めたので、上記のようなテーマ設定になったのだと思います。両者とも同意したテーマが上記6項目だったということではないでしょうか。
そうだとすれば、一体だれの反対で重要なテーマが外されたのでしょうか。その辺の事情を明らかにしていただければ、だれがどのテーマを避けているのかが市民に知らされて、投票するときの参考になると思います。