安倍答弁が菅答弁のウソを暴く(森友問題)

2018-04-14

(敬称略)
●「首相秘書官が夫人付職員に電話」という記事のどこに価値があるのかは普通に読んだら分からない

2018年4月11日付け共同通信が次のように報じます。

首相秘書官が夫人付職員に電話

学校法人「森友学園」への国有地売却問題で、今井尚哉首相秘書官が昨年3月に安倍昭恵首相夫人付の政府職員だった谷査恵子氏に電話し、森友問題の事実関係を確認していたことが11日、分かった。安倍晋三首相が衆院予算委員会で認めた。

谷氏は2015年11月に森友学園の籠池泰典前理事長の要請を受け、財務省に照会し、結果を森友側にファクスで返信していたが、首相は予算委の質疑で森友側とのやりとりは谷氏が自発的に行っていたと強調した。

普通に読んだら、このニュースの価値がどこにあるのか分からないと思います。結論的には、内閣官房長官答弁と比較しないと分からないと思います。

ニュースソースについては、「安倍晋三首相が衆院予算委員会で認めた。」としか書かれていませんが、下記のとおり、枝野幸男委員の質疑応答だと思います。

●枝野が安倍に今井と谷の接触を尋ねた

2018年4月11日の衆議院予算委員会で枝野幸男委員が安倍晋三首相に今井尚哉(たかや)総理秘書官と総理夫人付きの谷査恵子が国有地売却等について連絡を取ったかを聞いています。180411 国会中継 枝野幸男 えだのんという動画(52:30〜)から書き起してみます。

【枝野】
今井秘書官と谷査恵子さんとの間でこの土地の貸借・売買等に関して、ファクス、メールその他含めたやり取りはありましたか、ありませんか。
【安倍】
あの、これは、今井秘書官にですね確認したところ、谷さんと今井秘書官との間での本件のやり取りは、以下のようなものであります。

今井秘書官は、国会で取り上げられた頃、昨年の3月、本件の事実関係について確認するため、谷さんから電話で事情を聞いた、その時点で谷さんから、国有地払下げ問題については、籠池氏側から、これは私の妻にでありますが、妻に留守電が幾度となくあった後、自分、自分というのは谷さんでありますが、自分が籠池氏側からの問い合わせについて、財務省に照会し、その回答をそのまま籠池氏側に返答したことはある、ま、それは、自分、これは谷さんでありますが、自分が自発的にやったものであり、妻には返答する前に報告したことを確認したということであります。
【枝野】
あの、ですから、去年国会で問題になる前の時点で、メールやファクスを含め、あるいは、当時今井さんというのは、多分局長級か次官級のキャリアですから、役所にいれば、直接ではなく、間に間接の中間の官僚を含めても、それまで接触、この件に関してのやり取りはなかったという理解でよろしいですね。
【安倍】
えー、この今井秘書官はですね、この谷さんとの、おー、やり取りについては、今申し上げたとおりであります。

谷を夫人付きに推薦したのは今井だと言われているのに、今井と谷との接触が1回きりという話は解せません。

安倍が、「国会で問題になる前の時点でのやり取りはありません。」と言わずに、「今申し上げたとおりであります。」と、真正面から答えないのは、ウソと疑われても仕方がないでしょう。

●答弁は総理の意向で売却が学園に有利に進んだことの根拠にならない

冒頭の共同通信の記事は、「森友問題の事実関係を確認していたことが11日、分かった。」と、今井と谷が電話連絡をしていたことが問題であるかのような書き方をしていますが、問題はその時期です。

売買契約が成立したのは、2016年6月20日で、今井が谷に事実関係を確認したのが、2017年3月なら、今井と谷との接触が総理の意向で売却が学園に有利に進んだことの根拠になりません。

だからこそ、安倍は安心して上記の答弁をしたのだと思います。

しかし、安倍が、今井が事実関係を確認した時期が2017年3月と答えたことは、菅義偉内閣官房長官の答弁がウソであったことの根拠となると思います。

●今井が「3月」に事実関係を確認したとする首相答弁は官房長官答弁と符合しない

安倍の上記答弁は、案外ウソではないような気がします。

ただし、電話で事実関係を確認したという点は、ウソだと思います。今井は、谷と会って事情を聞いて記録したと思いますが、それを正直に言えば、野党から「記録を出せ」と言われますから、「電話で確認した。記録はない」という話にしたいだけでしょう。内容的にも、夫人が「口利き」をしたかどうかという重大問題ですから、電話で済ませるような話ではありません。

私が真実だと思う部分は、今井が「3月」に谷から事実関係を確認したということです。

昨年3月23日には、籠池泰典の証人喚問がありました。そこで籠池が谷からのファクスを示すわけですが、おそらく官邸は、それまでこの件(谷が質問を仲介した件)について知らなかったと思います。

前回記事「森友問題での菅義偉官房長官と太田充理財局長の答弁は虚偽ではないのか」に書いたとおり、菅義偉内閣官房長官は、2017年3月24日の参議院予算委員会で谷ファクスの入手時期について「その全体の話を聞いたのは一週間ぐらい前であって、その後、そんなに時間たたないで入手をしました。」と答弁していますから、籠池証人が暴露する前から谷ファクスを入手していたと言いますが、その答弁を信用するとしても、谷が口利きをしていたことを菅が把握したのは、3月中旬ということになります。

いずれにせよ、上記2018年4月11日の安倍答弁と2017年3月24日の菅答弁は符合します。

それらと符合しないのが、2018年4月11日の衆議院予算委員会での川内博史委員に対する菅の答弁です。

菅は、2017年2月22日に佐川理財局長(当時)らから森友問題について説明を受けた際に、「また、総理夫人のことについて、夫人付きから財務省に問い合わせがあり、一般的な回答をしたことがあったが、何か問題になるようなことではない、ということでありました。」と答弁しました。

つまり菅は、2月22日には、谷ファクス事件を知っていたと言っています。

そうであれば、今井はなぜ突如3月になってから谷ファクス事件について谷に確認する必要があったのでしょうか。

安倍と菅は、3月23日の籠池証人喚問で初めて谷ファクス事件を知ることになり、どちらかが今井に指示して、今井が谷から事情聴取したと考えるのが自然だと思います。

仮に菅が2月22日に谷ファクス事件を知っていたとすれば、総理から徹底的に調査させるよう指示されていた以上、今井から谷への事情聴取は、同日に実施されていなければなりません。なぜなら早くも2月23日には、総理に対し、徹底的な調査の結果、夫人の件についても「問題ない」旨報告していることになっているからです。今井が3月になってから谷に事情聴取する必要はないはずです。

要するに、同じ日(2018年4月11日)の答弁なのに、谷ファクス事件に関する安倍の答弁と菅の答弁には齟齬があると思います。

ということは、どちらかが虚偽答弁ということになります。

私は、森友問題での菅義偉官房長官と太田充理財局長の答弁は虚偽ではないのか に書いたとおり、菅の答弁が虚偽ではないかと思います。

いずれにせよ、菅が谷ファクス事件を知ったのはいつなのかをはっきりさせる必要があると思います。

(文責:事務局)
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