国会での質問時間の配分見直し首相支持は国会への干渉か

2017-11-07

●首相が国会での質問時間の配分見直しを指示

2017年10月29日付けHUFFPOSTの自民党、野党の質問時間の削減検討 長妻昭氏「姑息な試み」と猛批判「魔の3回生」イメージの払拭か、 疑惑の追及避ける思惑か。に次のように書かれています。

衆院選で自民党が大勝したことを受け、政府・自民党は10月27日、衆院での与野党の質問時間の配分を見直す方向で調整に入った。野党の質問時間を削減する一方、与党の質問時間を増やす方針だという。共同通信などが報じた。

議席占有率では与党よりも少ない野党に、なぜ質問時間が多く配分されるのか。これには、議会で多数を占める政党が政府を構成する「議院内閣制」の仕組みと密接な関係がある。

国会制度を定めた「国会法」には、与野党の質問時間に関する配分規定はない。時間配分は与野党が協議し、決めている。

近年、衆院の予算委員会などでは質問時間の7〜8割を野党に配分することが慣例となっている。

そもそも与党は、予算案や法案を国会提出前の段階から政府から説明を受け、審査するなどして了承。政府と一体となって政策をすすめる立場だ。

一方、野党は行政の監視機能を担っている。こうした役割に配慮して、質問時間は野党に多く配分されてきた。

時事ドットコムによると、「麻生政権時代は与党4割、野党6割だったが、旧民主党が与党時代に野党分を手厚くして与党2割、野党8割となり、第2次安倍政権以降も定着していた」という。

2017年11月1日付け赤旗の「国会の視点」という欄で中川亮という人(記者?)が「野党質問の削減提案」という題で意見を書いています。

第2段落に、次のように書かれています。

「今回の国会で質問を受ければ、しっかりと丁寧に説明したい」。森友・加計疑惑についてこう繰り返してきた安倍晋三首相は、「与党2割、野党8割」の質疑時間配分を見直し与党の持ち時間を拡大するようにとの自民党議員の要望を受けて、配分見直しに取り組むよう党幹部に指示。


●中川氏は「立法府への干渉」と評価した

この事実について、中川氏は次のように評価しています。

安倍首相は森友・加計疑惑の証人喚問などについて、「行政府」の立場にあるとして「国会のことは国会でお決めいただく」と逃げ回ってきました。野党に対する“質問封じ”では首相自ら指示まで出したことは、行政府による立法府への干渉であり、国会の権限を侵す異常な対応です。


●首相の対応は立法府への干渉か

確かに「国会のことは国会でお決めいただく」と逃げ回る態度と野党の質問時間を減らすように党幹部に指示することは矛盾しています。

だから、「矛盾を解消すべきだ」「態度を統一しろ」という趣旨の主張は、筋が通っていると思います。

しかし、野党の質問時間を減らすように党幹部に指示することに対して「行政府による立法府への干渉であり、国会の権限を侵す異常な対応」だと批判することは、「国会のことは国会でお決めいただく」と逃げ回ることを許すことにならないでしょうか。

日本共産党は、証人喚問に関する質問での首相の逃げ回りを許すのでしょうか。

野党が証人喚問については首相に意思決定を迫り、質問時間の配分については「首相が口を出すな」と批判することが矛盾しているのではないでしょうか。

首相に「態度を統一しろ」と批判するのは結構ですが、方向性が正しいのか疑問です。

●首相の指示の内容が「与党1割、野党9割」でも批判するのか

もり・かけ問題は勝負あったに書いたように、そして、中川氏が「議院内閣制のもとで、政府と与党は一体関係」にあると指摘していることからも分かるように、三権分立は日本の議員内閣制には当てはまらないのだとすれば、首相が質問時間の配分について指示すること自体を野党が批判するのは的外れなのかもしれません。

あり得ないことですが、仮定の話として、安倍首相が「国会審議を充実させるために、質問時間の配分を「与党1割、野党9割」にする」と与党幹部に指示した場合でも、野党は、「内閣の国会への干渉だ」と批判するのでしょうか。

批判どころか歓迎するのではないでしょうか。そうだとしたら、ご都合主義になります。

今回の首相の指示については、形式ではなく、中身を批判するのが筋ではないでしょうか。

●時間配分変更は究極のご都合主義だ

立憲民主党の長妻昭・衆議院議員のツイッターによれば、「自民党が野党時代、強力に要請をして今の配分比となった。」のです。

自分たちの要請で作ったルールを、立場が変わるとルールを変えようするのは、究極のご都合主義です。

中川氏が「野党時代に自らが要求していたものを、与党になれば平然と覆すことに、ひとかけらの道理もありません。」と批判するのは当然です。

●野党質問時間の削減は民主主義の根幹を揺るがす

中川氏は、次のように書きます。

しかし、議院内閣制のもとで、政府と与党は一体関係にあり、政府の政策や方針は自民・公明両党の合意にもとづき決定されていることから、与党は政府に対するまともな「監視役」とはなりえません。与党質問のほとんどが政権持ち上げの“おうかがい質問”であるのが実情です。

野党の質問時間を削って、まともな監視役になれない与党の質問時間をいくら増やしてもチェック機能を充実させることにはならないという指摘は、どう考えても正しいと思います。

Everyone says I love you !というサイトのカジノ法案審議中に突然般若心経!与党に国会での質問時間を今より与えたらこうなる。というページには、次のように書かれています。

そもそも、議院内閣制の下では、国会で多数を占める与党から内閣総理大臣が選ばれ、内閣が組織されますので、政府と与党は一体であり、与党から出される法案はもちろんのこと、政府から出される予算案や法律案はすべて与党内で議論され、承認を得て国会に出てきます。

予算案、法案の説明は官僚から与党に対して十分なされ、質疑応答が尽くされているのです。これに対して、野党にとって予算案、法律案に対して質問できるのは国会の質問時間に限られます。

ですから、野党の質問時間が与党よりずっと多いのは当たり前のことなのです。 

逆に、2016年の国会ではこんなことがありました。
いわゆるカジノ法案の審議が始まった11月30日の衆議院内閣委員会では、自民党の谷川弥一議員(長崎3区選出)が「あまりにも時間が余ったので」と言い出して、時間を潰すために「般若心経」を唱えはじめたのです!
さらには、同議員は地元への郷土愛を語り出したりしました。
これは、カジノ法案があまりにも問題だらけで質問できなかったということもありますが、与党議員に質問時間を与えても無駄以外の何物でもないことを示す象徴的な出来事だったといえるでしょう。

 国会での野党の質問時間削減は、国会の立法権、予算審議権などの権能そのものを揺るがし、ひいては国民の知る権利を侵害します。  
 

2016年12月7日付け東京新聞(情報速報ドットコムの【批判殺到】カジノ法案の審議中に自民議員が般若心経!谷川弥一「時間が余ったから紹介した」も引用)は、次のように報じます。

「あまりにも時間が余っている。地元のことと最後に私見を述べて終わる」

法案が衆院内閣委で審議入りした十一月三十日。自民党の谷川弥一氏は前置きすると、四十分の質問時間のうち二十八分を過ぎたあたりから般若心経の一部を唱え、さらに「夏目漱石が好きだ」と文学論を展開した。「法案の『負の部分』に対する私の心構えだ。反対、反対と言うのは芸がない」と発言し、時間を余して質問を終えた。

日本維新の会の浦野靖人氏も「私は高校で毎日般若心経を唱えていた」と応じ、質問時間を残して席に座った。ギャンブル依存症への懸念が広がる中、質疑では時折、笑いが起きた。

確かに野党議員の質問にも問題があるものもありますが、日本維新の会を野党と呼ぶべきかは疑問です。

いずれにせよ、こんなことになった原因は、自民党と公明党に票を与えた国民にあります。国民の多くが民主主義を(別件ですが、植民地支配からの脱却も)望んでいないのですから、どうしようもありません。

(文責:事務局)
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