2008年9月鹿沼市議会の分析

2009-01-31

●芳田議員の質問を読む

2008年9月議会(9月11日)で芳田利雄鹿沼市議会議員が水道問題について質問しました。鹿沼市議会のホームページの議事録検索サイトからでも読めます。

(芳田議員)
 それでは、最後ですが、水道事業とダムの問題についてお尋ねをいたします。
まず最初に、市民の飲み水についてお尋ねをいたします。これまで、市民の飲み水についてはいろんな角度から議論がありました。鹿沼市が主張してきたことは、今の地下水の能力では将来にわたって安定して市民に提供できない、だからダムの水が必要だと言っておりました。

 そこで考え出したのが、ダムの水使用を前提にした第5次拡張計画です。ところが、東大芦川ダムが中止になったため、今度は南摩ダムの水を使う計画を明らかにしました。それが第5次拡張計画を見直した変更計画です。ことしの3月に厚労省の認可を受けたものです。そのために、1日当たり1万1,100トンの取水能力を持つと言われた南押原地区の地下水は廃止となってしまいました。そして、そのかわり、南摩ダムの水、表流水を1万7,280トン取水する計画であります。今、これに向かって鹿沼の水道事業は進んでいると言ってもいいんじゃないかと思います。これが今進められている鹿沼の水道事業の実態です。

 そこで伺うわけですが、市長は、市民の飲み水についてできる限り地下水で賄う、あるいは南摩ダムの水は使わなくても済むかもしれないと、このようなことを言っております。市長のこの考え方は大変私はすばらしいと思います。評価をするものであります。
 それじゃ、今後の水道事業にこの市長の考えをどのように生かすのか、まずこの点についての答弁をお願いしたいと思います。

 (佐藤信市長)
 市民の飲み水についての質問にお答えをいたします。

 水道は、市民生活になくてはならないものであり、常に清浄にして豊富、安価で安定的に供給しなければなりません。現時点では、地下水を基本とした事業が展開できるよう、あらゆる方策を検討して運営を行ってまいります。

 ただし、毎年給水区域の拡張を図っている中、予期せぬ異常渇水や災害、地下水汚染など、地下水のみでは対応できなくなり、市民生活に支障が出た場合には、水源を南摩ダムからの表流水と地下水の2系統により確保することも選択肢の一つとして持っておく必要があると考えております。いずれにいたしましても、でき得る限り地下水だけで供給水量が賄えるよう、水源や取水量の確保について検討してまいりたいと考えております。
 以上で答弁を終わります。  
   

「水道は、市民生活になくてはならないものであり、常に清浄にして豊富、安価で安定的に供給しなければなりません。」は、水道法第1条の「清浄にして豊富低廉な水の供給を図り」に由来する水道事業者の常套句です。  

市長が2008年12月8日に市民との懇談の中で「ダム水には水質の不安もある」(鹿沼市長に申入書を提出した 参照)と言っているように、一般にダム水は地下水よりも水質が劣ります。含まれている細菌などの数を調べれば明らかでしょう。ダム水は地下水よりも清浄ではないのです。おまけに枯れ葉の成分が溶け込んでいる表流水に塩素を混ぜると発ガン物質のトリハロメタンができやすいのですから、表流水利用は安全から遠ざかります。  

清浄でないダム水を清浄に変えるには、高額のコストがかかります。だから「鹿沼市水道事業変更認可申請書(第5次拡張変更)」に「(料金の)改定は、平成24年度及び平成27年度に15%の改定を行うこととする。」と書いてあるのです。  

また、表流水は地下水よりも気候に左右されやすく、取水可能な水量が不安定になりますから、「豊富」という理想からも遠ざかります。    

したがって、保有する地下水源をわざわざ一部放棄して、清浄でも豊富でも低廉でもないダム水を水源とすることは、水道法の精神に反するのではないでしょうか。このことは市長も理解しているからこそ、後に紹介するように、市長は「南摩ダムからの取水については、できる限り使わない方が市民にとってもいいわけであります」と言っているのだと思います。    

市長は、「毎年給水区域の拡張を図っている中、予期せぬ異常渇水や災害、地下水汚染など、地下水のみでは対応できなくなり、市民生活に支障が出た場合には、水源を南摩ダムからの表流水と地下水の2系統により確保することも選択肢の一つとして持っておく必要がある」と言いますが、「市民生活に支障が出た場合」に表流水で対応するには、浄水場を新設して配管しておく必要があります。芳田議員も次の質問で「万が一のときには南摩ダムだということになると、万が一のために引けるための安全弁としてそういった施設の整備が必要になってしまうんです。」と言っています。  

ところが市長は、後に紹介するように、「取水のための設備投資をするという考えはございません」と述べています。取水のための設備投資をしないで、どうやっていざというときの「予期せぬ異常渇水や災害、地下水汚染など」の緊急事態に対応できるのか分かりません。  

また、取水のための設備投資はしないということは、ダム水を使わないということであり、水利権を遊ばせるということです。遊ばせることを予定して水利権を取得することが違法であることは、過去記事水利権の遊休化は違法な選択肢に書いたとおりです。  

「予期せぬ異常渇水や災害、地下水汚染」がどの程度起きるかは、確率的に考えることが必要であることは以前書いたとおりです。「予期せぬ事態に対応する」などと言いだしたら、1日3万トンも使わない鹿沼市が1日30万トンの水源を確保するという理屈も正当化されてしまいます。要するに際限がなくなります。  

鹿沼市は、当面、1日当たり37,800m3の水源を確保すれば足りるという推計を鹿沼市がしました。「予期せぬ異常渇水」等に対応するというなら、37,800m3でも足りないのではないでしょうか。ダム水を16,200m3/日、新規に確保すれば「予期せぬ異常渇水」等に対応できる、となぜ言えるのでしょうか。  

行政は、予期できる範囲でしか対応できません。「予期せぬ異常渇水や災害、地下水汚染など」は、水源確保の理由にならないと思います。行政には、将来の事態を合理的、科学的、確率的に想定して対応する責務があると思います。かつ、それをもって足りると思います。財源も水資源も限られているのですから、市民も行政に対して「どのような事態にも対応できるように万全の施設整備をやれ」、「絶対に断水は許さない」とは言わないはずです。市民は、想定外の渇水や事故は受け入れなければならないと思います。無限大の行政サービスを要求する市民のために税金を使われては、普通の納税者はたまりません。    

過去記事で書いたように、鹿沼市が2006年に水利権を取得しておきながら、「水源を南摩ダムからの表流水と地下水の2系統により確保することも選択肢の一つとして持っておく必要がある」と、あたかも水利権取得を検討中のような言い方をすることが理解できません。逆に「選択肢の一つ」と言っていられる段階なら、市長は「南摩ダムからの取水については、できる限り使わない方が市民にとってもいいわけであります」と言っているのですから、思川開発事業からすっきりと撤退してほしいと思います。  

 (芳田議員)
  もう一度、今の問題について再質問をさせていただきます。

 あらゆる方法を使って検討していくという、大変ありがたい答弁なんですが、少なくとも市民の飲み水を地下水で賄うというからには、新たな水源の確保、あらゆる方法じゃなくて新たな水源の確保を目指して努力する、こういうことがまず一つ必要なんじゃないかと思うんです。この点について。

 また、具体的には廃止した南押原地区の1万1,100トンの水源をどうするのか、これも廃止はしたけれども、改めて新しい水源として確保する、こういう答弁がいただけないかどうか。

 さらには、南摩ダムの水は使わないということですから、表流水の見直し計画というものも俎上にのせなきゃならぬと思うんです。そういう面で、この見直し計画についてはどうなのか。

 そしてもう一つ、大変重要なことなんですが、市長も今答弁で言いましたけれども、地下水が万が一不足した事態のときには南摩ダムから表流水を使うという答弁がありましたけれども、私はそうじゃなくて、万が一地下水が不足した事態のときには、自治体間の水の融通で、例えば宇都宮市から買うとか今市から買うとか、そういうやっぱり方針をはっきり打ち出す必要があろうと思います。そういう点でやっていかないと、万が一のときには南摩ダムだということになると、万が一のために引けるための安全弁としてそういった施設の整備が必要になってしまうんです。だから、この点についてもう一度答弁をお願いしたいと思います。

 (市長)
  地下水で賄えるようにというふうなお話をさせていただきました。いくつか検討をしている事項がございます。

 まず1つには、今お話がありましたように、近隣水道事業者からのいわゆる融通水という問題でありますけれども、実はこれはかなり厳しいといいますか、それぞれの自治体の非常に事情というか、ガードがかたいというか、そういったことで簡単に融通がし合えるような状況でないことは明らかなんです。たまたま隣接しているところで1軒2軒の話であるならば、それは可能なんですけれども、いわゆる地域ぐるみみたいな話になると、まだまだちょっと越えなきゃならないハードルが高いというふうに思っています。しかし、このことを決して否定、選択肢を捨てたわけではなくて、これからも粘り強く、お互いに融通し合えるような、1つには、こういう時代ですから、一自治体で完結する時代からやっぱりお互いに融通し合うような時代だろうというふうに思っていますんで、そういう視点で取り組んで粘り強くやっていきたいと思っています。

 それから、現在、井戸がブロックに分けて、5つに分けているんですけれども、そのブロック間の融通といいますか、それなんかも工夫をしながらですね、調整を図っていきたいと思っております。

 それから、配水池の容量を大きくする、結局、くみ上げる水量について、夜間の量が少なければ、その間にくみ上げてもっとためることができないかとか、そういう策も講じていきたいと思っています。

 それから、ご指摘いただいた新規の井戸についても、当然一つの有力な選択肢として考えていきたいと思っています。

 南摩ダムからの取水については、できる限り使わない方が市民にとってもいいわけでありますから、そのことを前提にして、あらゆる考えられる策について検討を先にすることが大切だというふうに思っていますので、とりあえず使うから設備をやっとこうという、設備というか、そのための取水のための設備投資をするという考えはございませんので、ご了解をいただきたいと思います。
 以上で答弁を終わります。

 (芳田議員)
 わかりました。よろしくお願いいたします。
 
 

芳田議員は、「市民の飲み水を地下水で賄うというからには、新たな水源の確保、あらゆる方法じゃなくて新たな水源の確保を目指して努力する、こういうことがまず一つ必要なんじゃないか」と言いますが、そうでしょうか。  

鹿沼市の現有水源は38,100m3/日です。現在の1日最大給水量は3万m3/日以下ですから、8,000m3/日以上の余裕があります。8,000m3/日と言えば、2万人分の水です。2万人分の余裕があるということです。2000年12月から人口が減少している鹿沼市で給水人口があと2万人増えるとは思えません。新たな水源が必要でしょうか。  

ちなみに鹿沼市の人口はどれくらい減っているか。上水道の対象地域である、旧鹿沼市で見ると、2000年12月1日に94,378人だったのが、2009年1月1日には93,431人に減っています。947人の減少です。年間120人くらいの割で減っています。  

近隣自治体との水融通の問題については、水需要の減少が予測される中、どれほど優先順位が高い方策なのか分かりません。実現は厳しいとの答弁ですが、やってどちらも得をすると思えば、話は進むはずです。現に県南では実現しています。やって得をすると思われる自治体からやって損をすると思われる自治体にカネを払えば、更に容易に話が進むと思います。鹿沼市と宇都宮市の場合、両方とも水融通をやる気はないでしょう。鹿沼市は思川開発に、宇都宮市は湯西川ダムに参画しています。相互の水融通で水の安定供給が可能ということになれば、ダム事業への参画は不要ということになってしまいます。  

やたらと水源を増やすのではなく、給水ブロック間の水融通などで現有水源を有効に活用するために工夫すべきことがあるという点はそのとおりだと思います。  

「取水のための設備投資をするという考えはございません」ということを確認したことは重要だと思います。議会でこの答弁を覆さない限り、ダム水を取水するための浄水場を設置することはできないはずです。だから、今年の3月議会で、第6浄水場設置のための予算が計上されるようなことはないはずです。  

ただし、取得した水利権を温存して遊休化させる政策が違法であることは、再三書いたとおりです。  

 (芳田議員)
  中項目の2つ目の質問です。7月議会答弁にありました変更計画の調査研究について2点ほど伺っておきたいと思います。

 市長は7月議会で、第5次拡張計画の見直し、この変更計画は厚生労働省の認可取得したものばかりだから、まだ見直すわけには今のところはいかない、こういう答弁でした。そこで、担当部の調査研究を待ってほしいというものでありました。7月議会からまだ余り時間もたっていないので、研究はこれからだと思いますが、基本的なことを聞かせていただきたいと思います。

 変更計画にはさまざまな内容が書かれていると思いますが、主に基本的なことでどの点を変更するのか、ちょっと答えていただきたい。

 また、やっぱり急ぐ必要があると思うんです。変更計画が今動いているわけですから、そういう点では、急いでそういったものを、日程ですね、いつごろまでにどうやっていくのかという日程なども示していただければと思います。
 以上です。

 (市長)
 計画変更の調査研究についての質問にお答えをいたします。

 現在の課題は、さきの質問にもお答えしたとおり、上水道の水源として地下水をできるだけ長く使用していくということでありまして、そのためのあらゆる方策をただいま調査研究していることであります。水源をできるだけ長く地下水で賄っていくための対応策が、現在の事業認可を変更する必要があるのかどうか、そして実施可能かどうか、検討する時間がかかるということでございまして、現時点で計画を変更することについては考えておりませんし、時間的なものですが、いつまでにということも申し上げづらい状況にあることをご理解いただければと思います。

 (芳田議員)
 わかりました。ひとつよろしくお願いしたいと思います。  
 

芳田議員の質問は、2008年7月議会(7月22日)の「なお、計画見直し後の新規事業につきましてでありますけれども、既に事業に着手している部分もございます。今後考えられる方策について調査、研究を指示しているところであります。 」という市長答弁を受けたものです。  

芳田議員は、「変更計画にはさまざまな内容が書かれていると思いますが、主に基本的なことでどの点を変更するのか、ちょっと答えていただきたい。 」と聞いていますが、7月議会の答弁で、市長は、単に計画見直し後の新規事業について調査、研究すると言っているにすぎず、実際9月議会でも「現時点で計画を変更することについては考えておりません」と言っており、質問と答弁がかみ合いません。  

計画は変更しない、ダムの水利権は取得するということを前提として、調査と研究をすると市長は昨年7月に言ったわけです。で、何を調査、研究しているのかと聞かれて、「上水道の水源として地下水をできるだけ長く使用していくということでありまして、そのためのあらゆる方策」だというわけです。そして、「水源をできるだけ長く地下水で賄っていくための対応策が、現在の事業認可を変更する必要があるのかどうか」を検討すると言います。  

市長はとにかく、「水源をできるだけ長く地下水で賄っていくための対応策」を調査、研究するのだと言います。しかし、ダム水の水利権を取得しながら使わないことが違法であることは、既に書いたとおりです。  

市長は、いつまでに調査、研究をするのかという期限も設定していないと言います。しかし、期限を設定しない指示というものが、行政の仕事としてあるのかどうか。「期限がない」ということは「何もしない」というのと同じではないでしょうか。  

要するに市長は、水利権を遊休化するという違法な行為の調査、研究を期限を設定せずにやると言っているのですから、あまり内容のある答弁とは思えません。    

 (芳田議員)
 最後ですが、水道事業の中長期計画について伺います。中長期計画といっても、変更計画の中に含まれちゃうものですから、ちょっと切り離して聞くのはどうかなと思ったんですが、わかりやすく言えば水道事業の10か年計画です。これは非常に、10か年計画といえば160億円の予算を持っていますから、その中で大幅な水道料金の値上げも含んでおりますので、市民生活に大きな影響を与えることになります。そういうことで、市長はさきの議会で、この問題は議会にも了承を得るために提案すると、また審議会についても検討するような答弁があったかと思うんですが、そのことをもう一度確認しておきたいと思います。

 ( 襲田利夫水道部長)
 水道事業の中長期計画についての質問にお答えいたします。

 国は、平成16年度に水道ビジョンを作成し、市町村にはその地方版である地域水道ビジョンの策定を推奨しております。それを受けて、本市におきましても、水道事業の現状分析、将来への目標などを盛り込んだ鹿沼市水道ビジョンの策定を計画しております。

 市民の意見を反映させるにつきましては、国がまとめた地域水道ビジョン策定の手引の中で検討会の設置、顧客ニーズの把握が記されており、懇談会的組織によって意見を聴取したり、アンケート調査結果を広く市民の声として反映していきたいと考えております。
 以上で答弁を終わります。

 (芳田議員)
  最後に、水道審議会についてなんですが、委員については、広く公募で集めるようにお願いをして、私の質問を終わりたいと思います。   
  

水道部長は「懇談会的組織」と言っていますが、芳田議員はそれを「水道審議会」と受け取っており、誤解があるようです。   

「南摩ダムの水は使わない」に書いたように、 「(ちゃんとした)審議会」と「懇談会」では、天と地ほどの違いがあります。懇談会は「聞き置く」だけ、「ガス抜き」です。行政は市民と会話をする必要はありません。言わせておけばいいのです。   

審議会となったら、そうはいきません。委員からの質問にはきちんと答えて議論を進める必要があります。   

市長は、マニフェストに「市民との対話を大切にするしくみをつくります。」と書いていました。水道問題について、市長の言う「対話を大切にするしくみ」がなぜ「懇談会」でなければならないのでしょうか。市長は、なぜ「審議会」の設置を避けるのでしょうか。懇談会にこだわるのでしょうか。水利権の取得が民意ならば、審議会の設置を避ける必要はないと思います。   

そもそも水道部長の言う「水道事業の現状分析、将来への目標などを盛り込んだ鹿沼市水道ビジョン」とはどういうものなのかが分かりません。第5次拡張計画の第1回変更計画で南摩ダムの水利権を取得すると、「将来への目標」を前市長が市民の意見も聞かずに勝手に決めてしまって、これから何を計画するというのでしょうか。ビジョンの策定にいつ着手し、いつまでに決めるのでしょうか。水利権を返上するなら南摩ダムの着工前に決める必要があると思います。   

水道部長は、「アンケート調査結果を広く市民の声として反映していきたい」と答弁しました。そうであるならば、鹿沼市が実施する市政世論調査の質問項目に借金をしてまでダムの水を買うべきかどうかという質問を加えてほしいと思います。   

ダムマネーを当てにした地域振興に関する賛否も問うてほしいと思います。

(文責:事務局)
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