水需要水増しのカラクリは給水人口と負荷率

2008-02-21

●水需要水増しのカラクリは給水人口と負荷率

鹿沼市水道事業第5次拡張計画が変更される予定であることは、水需要予測誤りを詫びないのかでお知らせしたとおりです。

変更計画では、2015年度の鹿沼市上水道の水需要(1日最大給水量)を37,800m3/日と推計しています。この推計が過大であることは、来年のことが分からない者に12年後のことが分かるのかに書いたとおりです

鹿沼市は、どうやって過大な推計を行ったのでしょうか。カラクリは給水人口と負荷率です。

●「給水人口が増える」というカラクリ

以前の水需要推計は、「人口が増える」、「1人当たりが使う水量も増える」、だから水需要は増大する、と言ったものですが、鹿沼市はさすがにそうした強引な理屈は引っ込めたようです。1人当たりが使う水量が減少傾向にあることは認めざるを得ないと考えたようです。

そうなると水需要を水増しするには、「1人当たりの使用水量は少ないが使う人の数が多い」という理屈を言う必要があります。だから変更計画では、給水人口を膨らませています。2015年度に86,000人になるという推計をしています。

本当にそんなに増えるのでしょうか。変更前の万9人(目標年次2010年)から86,000人(目標年次2015年)へと下方修正しましたが、まだ高すぎます。2006年3月31日現在の給水人口は76,728人で、過去10年で約6,000人のペースでしか増えていませんから、今後給水区域内の人口が減少する中で、あと10年で9,000人増はあり得ないでしょう。給水人口がこれまでの5割増しのペースで増えるとは思えません。

●「負荷率」が低いというカラクリ

変更計画は、「負荷率は、一日平均給水量と一日最大給水量の割合で表され、都市の性格によって異なった値を示し、その年の気象条件によっても左右されるため時系列的な傾向を持つものではなく、今後どのように推移していくか推定するのは困難である」(p2−5−43)から、「安定給水の観点から、負荷率の将来値は過去10ヶ年の最小値を採用し75.2%で将来とも一定値と設定する。」(p2−5−43)とします。

しかし、鹿沼市上水道の負荷率は時系列的な傾向を示していますし、全国的にも負荷率は時系列的な傾向を示していることが、水道施設設計指針2000年版p25のグラフ(図−1.2.4給水人口規模別負荷率の推移)を見れば分かります。

したがって、「時系列的な傾向を持つものではなく」という記述は誤りだと思います。

1997年度の負荷率の全国平均値は83.0%で、給水人口規模が5万〜10万人未満の事業体の平均も同じく83.0%です。変更計画には負荷率の実績値について、「現在の84%程度という値は鹿沼市の規模から見て比較的高いレベルにある。」(p2−5−5)という記述がありますが、誤りだと思います。平均が83.0%ですから。

ちなみに、給水人口が5千〜1万人未満の事業体の平均が74.9%(1997年度)です。

鹿沼市上水道の負荷率の将来値が1万人未満の事業体の実績値と同程度と推計することは不当です。水需要を多く見積り、余剰水源を抱え込む危険があります。「安定給水の観点」はあってしかるべきですが、限度があります。

新市建設計画(2004年)では82.1%と推計していたのですから、この程度の数字に合理性があることは鹿沼市も否定できないはずです。今回、更にそれより6.9ポイントも低い75.2%と推計することは、あまりにも低すぎます。

2002年度の宇都宮市水需要予測では最近10年間の平均値を採用しています(不当に低いと思いますが)。鹿沼市でも最近10年間の平均値を採用すれば、82%にはなります。もちろん宇都宮市と事業規模が違うから同じ方法で推計するべきでないという批判はあるでしょうが、だからといって鹿沼市上水道を給水人口が5千〜1万人未満の事業体と同列に置くのは不当でしょう。

(文責:事務局)
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