栃木県はなぜ八ツ場ダム建設費を負担するのか

2011年1月11日

●測量・コンサルタント業務の半分以上は天下り法人が受注

八ツ場ダム関連の天下り問題については、既に八ツ場ダムのウソで紹介したように、高野孟氏の「極私的情報曼荼羅」の八ッ場ダム関連に国交省176人天下り!などに書かれています。

1月6日付け赤旗は、次のように報じています。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2012-01-06/2012010601_01_1.html

八ツ場ダム調査業務など

天下り法人が52%受注

 民主党が公約破りで事業再開を決めた八ツ場ダム関連のコンサルタント(調査・検討)や測量業務を、少なくとも45の"天下り"法人が受注し、発注額の半分以上を占めていることが5日、日本共産党の塩川鉄也衆院議員と本紙の調べでわかりました。とくに安全性にかかわる地質や環境評価など、重要なコンサル業務は、天下り法人に集中。こうした実態から、同ダム"中止"と"天下り根絶"という二大公約への民主党の無責任さも浮き彫りになっています。
 
民主の無責任鮮明

 調査したのは、2008年度から11年11月までの期間に国土交通省八ツ場ダム工事事務所からコンサルタントや測量などの業務を受注した136法人。

 塩川議員が入手した資料や有価証券報告書、国交省への届け出書類などによると、中央省庁や旧日本道路公団、水資源機構、群馬県庁、栃木県庁OBが再就職した実績があるのは、少なくとも45法人にのぼります。そのうち国交省からが39法人と大半を占めます。

 八ツ場ダム工事事務所は、同期間に644件、総額142億円分のコンサル業務などを発注。このうちの291件(45%)、74億130万円(52%)分を天下り45法人が受注していました。  受注額が14億9100万円(26件)と最多の日本振興(本社、大阪府泉南市)の東京支店には、04年から08年の間に国交省OB3人が再就職しています。  その次に多かった7億6600万円(17件)を受注したアクアテルス(さいたま市)の東京支店には国交省OB6人が再就職していました。

 天下り企業に再就職した中には、国交省の地方整備局長や土木研究所長など同省元幹部も目立ちます。退官後に所管法人に再就職を繰り返す"わたり"をする元幹部も少なくありません。

 中には、顧問で入社した2週間後に常務に就き、3カ月後に社長という"スピード出世"もありました。

 同ダムをめぐっては、地すべりの危険性を多くの地質学者や建設技術者が指摘しています。事業継続の一つの"カギ"ともいえる17の地質調査業務のうち12業務を天下り法人が受注していました。
 
 地質の他にも安全性の評価にかかわる「代替地実施設計」や「ダム本体修正設計」といった業務が天下り法人に集中。同ダム事業では、天下り法人が作成した「調査報告書」が多数ありますが、事業や安全性を「妥当」としたものばかりです。

建設の妥当性問われる

 塩川鉄也衆院議員の話  
  国交省の「身内」がダムの安全性や環境影響評価を調査していたことになり、八ツ場ダムの妥当性が問われます。「ダム利益共同体」ともいうべき政官財癒着の利権構造を解体するためには、企業献金禁止、天下り根絶こそ必要です。  
 

上記記事の関連記事として赤旗は「八ツ場」受注の天下り法人/ずさん業務でも「優良」/報告書ミスだらけ/各地で指名停止という記事も載せていますので是非ご覧ください。  

3年半の間に八ツ場ダム工事事務所が測量・コンサル業務に142億円を使い、そのうち半分強の72億円余を天下り法人が受注したというのです。  

八ツ場ダムを巡っては、役人の天下り利権のほかに、八ツ場ダムマネー還流にも書いたように、国民の払った税金が八ツ場ダム関連の工事請負代金や業務委託料として使われ、それが政治献金に化けるという、政界ルートの利権があります。  

まさに建設の妥当性が問われると思います。
 
 ●八ツ場ダム推進派は利権をどう見るのか  

栃木県内にも八ツ場ダム建設を支持する人はいます。  

そういう人たちは八ツ場ダムを巡る巨大利権構造についてどう考えるのでしょうか。  

おそらく彼らは、利権の問題は無視するのでしょう。  

おそらく彼らは、「利権の問題とダムの必要性は理論的に関係がない。どんなに必要な事業でも、利権の問題は発生する可能性がある。利権を断ち切るために公共事業をやめるのは本末転倒だ。役人と政治家と御用学者とゼネコンとマスコミが利権に食らいついているから事業をやらないことにしたら、どんなに必要な事業もできなくなる。公共事業に利権は付き物だ。国民は事業に必要な経費と割り切るべきだ。利権は一般国民にとって好ましいものではないとしても、それは薬の副作用のようなものだ。利権が悪いというのであれば、利権を減らすための努力を別にすればよいのであって、事業をやめる理由にはならない。」と言うのでしょう。  

天下りの問題は、カネの問題だけではありません。地質調査を天下り法人が受注していたとなれば、ダムの安全性が確保されないことにもなりかねません。  

建設の必要性を信じている人にとっては、利権の証拠がいくら出てきても、必要性と結び付ける発想は全くしないのでしょう。役人と政治家が税金を吸血鬼のように吸っている証拠がいくら出てきても、建設の妥当性や必要性を疑うという気持ちにはならないのでしょう。  

つまり、建設の必要性を信じている人に対して、いくら利権の証拠を示しても無視されてしまうということです。  

だから、そういう「信者」を論破することも、説得することも無理なのです。  

でも、信者でない人は、数々の利権の証拠が出てくれば、「八ツ場ダムは利権のための事業ではないか。」、「建設そのものが目的ではないのか。」という疑いを持ってくれると思います。  

日本が民主主義国家なら、そして「信者」でない人が多数なら、八ツ場ダムは止められるはずです。
 
 ●栃木県庁OBが天下っていた  

栃木県が八ツ場ダムの治水負担金を最低限10億4000万円も支払うのは、他県との付き合いかと思っていましたが、それだけではなさそうです.  

冒頭の赤旗記事には、栃木県庁OBが八ツ場ダムの測量やコンサルタント業務を受注する法人に天下っていたと書かれています。  

栃木県民が八ツ場ダムの建設費を負担しても何の御利益もないのに知事が支払いたいと言い張るのはおかしいと思っていましたが、栃木県庁OBには立派な御利益があったというわけです。不覚にもこんな御利益に私は気がつきませんでした。  

きっと知事にも御利益があるのでしょう。      

(文責:事務局)
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