原発を宣伝する下野新聞

2010-02-01

●「脱ダムの行方」シリーズは良かった

下野新聞は、昨年末から「脱ダムの行方」シリーズなどで県内のダム問題を詳細に報道しました。

賛否双方の意見を載せて、公平な扱いだったと思います。ダムを造りたい人たちは、反対派の意見を詳しく載せていたように感じたかもしれませんが、推進派には、ダムを建設する正当な論理を持たないのですから、仕方がありません。

一連の記事は、専門的になりがちなダム論議を普段ダムに興味を持っていなかった読者にも分かるように表現を工夫していました(専門用語をさりげなく解説しているとか)。さすがにプロの物書きだと感じさせました。

長年ダム問題を追い続けた記者がいないと書けない記事だと感じました。ダム問題では、東京新聞を超えたかもしれません。

●匿名広告復活

下野新聞は、2010-01-27付けの7面に「企画特集」として、「放射性廃棄物地層処分とその安全性・必要性」に関して座談会記事を載せています。座談会は、下野新聞社と原子力発電環境整備機構(NUMO)との共催だそうです。

座談会で発言する「県内のオピニオンリーダー」は、惣誉酒造株式会社代表取締役社長の河野遵さん、消費生活アドバイザーの高木智子さん、原子力発電環境整備機構広報部長の片平重博さんです。コーディネーターは、関隆一下野新聞社論説委員です。

下野の「企画特集」の問題点については、新聞は行政を批判できるのかに書きました。2009年の正月に下野が同社と縁の深い田中正造の記事を載せてからは、国土交通省関係の企画特集は見なくなりましたが、今回の企画特集の性格は、国交省のそれと同じで、本質は、原子力発電環境整備機構の広告です。広告なら「広告」と書くべきです。広告を記事と誤解させて読ませるのは、きたないやり方です。

ちなみに、消費生活アドバイザーまでが、「安全性が確保され、問題なく動くのであれば、資源のない日本では、推進に値するシステムだと思います。」と言っています。

●「原子力発電はCO2を出さない」というウソ宣伝に加担するな

原子力発電環境整備機構の片平広報部長は、座談会とは別枠で次のように書いています。

環境問題の面からみると、化石燃料は発電するのに非常に多くのCO2を出しますが、原子力発電はCO2を出しません。

国(国土交通省)にだまされてはいけないで書いたように、100万キロワットの発電能力を有する原発が10兆人を殺せる放射性物質を生産し、「日本全土に林立する原発50基が、わずか24時間のうちに、広島に投下された原爆90発分に相当する熱を海に捨て、海水を直接温め、生物が死滅した白い砂浜を広げている。(中略)原発の排熱が海中に溶け込んだ炭酸ガスを空中に大量に放出している」(広瀬隆著「私物国家」光文社)のです。

また、2009-04-30赤旗の「原発 温室ガス/「ゼロ」じゃない/年82万トン 運輸・郵便部門に迫る/政府・財界の"推進宣伝"はごまかし/政府資料で明らかに」も再確認してください。

「日本の原子力発電所や核燃料製造施設などから、中規模火力発電所一カ所分並みの年間約八十二万トンの温室効果ガス(CO2とフロン)が出ている」のです。「電力会社などは、さきに横浜市で開かれた日本原子力産業協会の年次総会で、「CO2ゼロ」と原発を持ち上げましたが、実態は大違い。業種別でみても、運輸・郵便部門の事業所(約九十万トン)に迫る排出源となっています。」。

広告料収入のためとはいえ、新聞社はウソ宣伝に加担してはいけないと思います。

(文責:事務局)
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