電力会社は無駄遣いをしていないか

2012年6月20日,2012年6月24日追記

●おおい町にコピー会社が多いわけ

6月13日付け赤旗に次のような記事があります。

福井・おおい町議が経営のコピー会社
関電は超お得意先
再稼働に賛成 中立性問われる
割高外部発注で"地元対策"
福井県おおい町にある関西電力大飯原発3・4号機の再稼働に前向きな時岡忍町長の選対幹部であり、町議会では再稼働容認決議に賛成した町議の経営するコピー会社が関西電力から長年にわたって多額の業務を受けていることが12日、明らかになりました。関電から業務を受注しながら再稼働に賛成した町議の中立性が問われます。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-06-13/2012061315_01_1.html

「関電からの受注が判明したのは松宮史知(まつみや・ひとし)町議が経営するコピー会社「有限会社マツミヤ」。」だそうです。

「マツミヤ」は、大飯原子力発電所と高浜原子力発電所(高浜町)之近くに支店をおいているそうです。

東京商工リサーチによると、同社は毎年1億円前後の売り上げをあげており、「関西電力など原電(原子力発電所)関係業者を主対象にコピーサービス等を提供」しているそうです。

「関西電力の原発がある福井県内のおおい町や高浜町、美浜町には関電を主な顧客としたコピー店がそれぞれ3、4店ずつ発電所近くで営業しています。」。

「関電は「外注コピーが必要だという判断でコスト面も考えて注文している」と回答。」しているそうです。

関西電力が町議会議員を飼いならしているという見方もできませんか。

電力会社は核発電をやめたいかに書いたように、富士常陽大学教授の山本隆三氏は、電力会社は無駄金を使っていないと言いたいようですが、コピーを外注するのは無駄遣いのように見てなりません。

もっとも山本氏は、地元町議などを飼いならすためにカネを使うのは無駄ではないと言うのでしょうね。

無駄という言葉の意味を共有できない人を説得することはできません。

それにしても原発御用学者のリストに山本氏が載っていないのが解せません。

●野田首相が大飯発電所再稼働を宣言した

野田佳彦・首相は8日、首相官邸で記者会見を開き、関西電力大飯原発3・4号機について、「国民生活を守る責務がある。再起動すべき」と明言しました(6月日8日ヤフーニュース)。

人は正反対のことを言われると、頭の中が混乱して反論する言葉を失ってしまうものです。

「国民生活を守る」ために再稼働するというのです。

政府は、福島の被災者の生活を守っていないと思います。

おそらく、福島の被災者は、自分たちの生活は守られていないと言うと思います。

野田氏に「国民の生活を守る」と言う資格があるとは思えません。

彼は詭弁の天才だと思いました。

●いつか見た風景(2012年6月24日追記)

5月30日付けウォール・ストリート・ジャーナル日本版に大飯再稼働で閣僚会合=関西の理解得たと判断ー政府という記事があり、関西電力大飯原子力発電所周辺自治体を含む関西広域連合が「「再稼働は限定的なものとして適切な判断をするよう強く求める」との声明を発表した。」そうです。

政府関係者はこの声明について「再稼働容認と受け止める」と語った。」そうです。

同日付け産経の橋下市長「大飯再稼働は期間限定にすべき」によると、橋下徹・大阪市長は、関西広域連合の声明の「「再稼働は限定的」との文言について「僕と松井(一郎大阪府)知事は期間限定の意味だ」と語った。」そうです。

政府は関西広域連合が(期限を限定せずに)再稼働を容認したと言います。

橋下市長は、期間限定で容認したと言います。

どちらも責任逃れをしようとしているとしか思えません。

この構図は、どこかで見た風景です。

過去記事栃木県の思川開発事業参画のカラクリで紹介したように、鹿沼市は、思川開発事業への参画水量について2度回答しています。

栃木県は、栃木県企画部長と栃木県保健福祉部長の連名で2001年2月23日付け水第199号及び環衛第52−8号の文書を作成しています。

タイトルは、「思川開発事業に係る水需要調査について」です。「今回、思川開発事業に係る水需要調査を行うことになりました。」と書かれています。

1度目の回答は、2001年3月5日付け企鹿水第188号です。阿部和夫・鹿沼市長(当時)から栃木県企画部長と栃木県保健福祉部長あてです。タイトルは、「思川開発事業に係る水需要調査について」です。

回答の内容は、次のとおりです。

1.東大芦川ダム建設事業に係る毎秒0.2m3については、県と協定済であるので、これを再確認したい。
2.これ以外の水需要については、平成13年度から実施する「地下水調査」を実施し、その結果を待って対応したい。

その後、4月23日に福田昭夫・栃木県知事(当時)が阿部市長と直談判しました。

2度目の回答は、2001年4月26日付けです。鈴木義夫・鹿沼市企画部長から栃木県企画部水資源対策室長あてです。タイトルは、「知事懇談の際の鹿沼市の水需要について」で、「さて、去る平成13年2月23日に水第199号で照会のあった件に関し,3月5日付けで回答(企鹿水188号)いたしましたが、先般の知事と市長の懇談の際に、再度、知事より問い合わせがございました鹿沼市の表流水の需要について、以下のとおり報告いたします。」と書かれています。

「以下のとおり」とは、次のとおりです。

1.表流水の需要量 0.423m3/s
なお、この数値には、東大芦川ダム建設事業に関わる毎秒0.2m3が含まれております。

鹿沼市の1回目の回答は、0.2m3/秒を東大芦川ダムからとることで県と協議済みであることを確認するということで、思川開発事業に参画するとは言っていません。

2回目の回答も、表流水の需要量が0.423m3/秒であると言っているだけで、思川開発事業に参画するとは言っていません。

だから、鹿沼市は、将来0.423m3/秒思川開発事業の負担金を払えと水資源機構から言われても、「思川開発事業に参画するとは回答していない」と言い逃れができる書き方をしているのです。

しかし、県側は、鹿沼市が思川開発事業に参画したと受け止めています。

鹿沼市の回答について、2001年10月15日に思川開発事業を考える流域の会会員が栃木県環境衛生課に問い合わせたところ、担当の岡本氏は、「鹿沼市からは文書で(思川開発事業への参画)要望が出ていると理解しています。」と答えています。

なお、岡本氏は、「計画水量は通常の場合、最大水量を基にしております。将来の予測水量であるため、将来減少する可能性は否定しません。」とも話していました。

鹿沼市からは、要望水量0.423m3/秒で参画したいという回答をもらったが、事業が始まった後で要望水量を減らしても構いませんと言っているわけで、事実そのとおりになりました。2006年には、鹿沼市は0.2m3/秒で単独参画ということになっていました。

ちなみに、0.423m3/秒とは、どれくらいの水量なのかピンと来ませんが、大変大きな水量です。日量では、36,547m3/日となります。

鹿沼市の2010年度の1日最大給水量は、29,849m3/日ですから、実際の給水量をはるかに上回る水量を河川から取る計画だと回答していたことになります。

朝日新聞は、「鹿沼市は、新たに開発する水源をすべてダムなどの表流水にする計画だ。」(2001年6月6日付け)と書いていましたし、水谷正一・宇都宮大学農学部教授も「それにしても、鹿沼市だけが突出していて異様だ。1日300リットル使用すると仮定した場合、南摩ダムに要望する毎秒0.42トンで計算すると、約12万人分の水道水源になり、すべての地下水を表流水に転換することになる。」(同記事)と語りました。

水量の問題はともかく、鹿沼市は表流水の需要量を書いたまでで、思川開発事業に参画するとは書いていないと主張し、栃木県は参画を要望すると受け止めていました。

栃木県も鹿沼市も言葉を都合よく解釈することで、責任を追及されたら言い逃れをしようとしていたと思います。

思川開発事業への参画については、「表流水の水需要」というキーワードをアリバイ的に設定し、当事者が「すれ違い解釈」をしてその場をしのぎ、後日責任を問われたら、「言った言わない」の類いの子どものケンカみたいなものを演じて、責任のなすり合いをしている間に時間が経って責任があいまいになることを目論んでいたのだと思います。

核発電所の再稼働問題でも、「限定的」というキーワードを巡り、政府と橋下市長がすれ違い解釈をして、責任のなすり合いをしている構図が見られます。

便利な方法があるものですね。

キーワードを巡り、すれ違い解釈をすることで責任のなすり合いをして、政治家も役人も責任をとらない、税金は無駄に使われる、これでは国民も住民もたまりません。

(文責:事務局)
文中意見にわたる部分は、著者の個人的な意見であり、当協議会の意見ではありません。
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