2009年3月鹿沼市議会の分析

2009-03-24

●芳田利雄議員が水道問題について質問した

2009年3月13日の鹿沼市議会本会議において、芳田利雄議員が水道問題について質問しました。今回は、水問題は芳田議員の最後の質問ではなかったのですが、再質問もなく、先を急いでいた印象を受けました。

例によって、今議会でも水問題について質問した議員は芳田議員だけでした。

(芳田利雄議員)
水道事業についてお尋ねをしたいと思います。
まず、新たな水源の確保の問題についておうかがいいたします。

市(執行部)はこれまで地下水が足りないから安定した供給が必要だとして、ダムの水とか表流水の利用を必要だという理由を述べてまいりました。

しかし、佐藤市長の下で飲み水は地下水でまかなうと、南摩ダムの水は使わないでも済むようにすると、こういう考えが示されました。こういうことによって、新たな水源の確保、地下水の発掘調査というのは最優先の課題として、もう進めなきゃならん問題が起きてくるんだろうと思います。

ところが、来年度の予算には、新たな地下水調査の予算が計上されておりません。 そういう点で、なぜ水源確保のための事業予算がないのか答えていただきたいと思います。

そこで新たな水源の確保のための三つの提案をしたいと思います。通告もこの点してあります。

第1点は、5拡の見直しで廃止にしてしまいましたが、南押原の取水井、第3浄水場の6、7、8の井戸ですが、1日当たり11,100トンの取水能力を持っております。改めて水が足りないわけですから、水源としての確保をすべきじゃないかと思いますので、この点について答えていただきたいと思います。

2点目は、大芦川の御幣岩橋付近の地下水が少なくなっております。ここも当初は、当初と言っても、かなり前なんです、25年ぐらい前になりますかね、11,000トンの取水能力が当初ありましたが、現在では7,000トンしかない、そこまで下がってしまったと。やっぱり、水っていうのは、タダじゃないんですね。それなりの手を加えないと取水能力を保つことができない、ということで、やっぱり取水能力を復元するための対策っていうのが必要だろうと思います。この点についての答弁をお願いしたいと思います。

もう一つは、黒川流域から新たな水源を発掘することについてです。 これは第5浄水場の第2取水井、以前から予定していましたが、未だに手つかずの状態となっている井戸です。なぜ、予定していながら今まで放置をしたのか分かりませんが、この水源開発を急ぐべきじゃないかと思います。 この3点についての答弁をお願いいたします。

(佐藤信市長)
新たな水源確保についての質問にお答えをいたします。

まず、廃止いたしました第3浄水場第6、7、8の取水井についてでありますが、地元から地下水の取水は農業用水への影響が多大であるとして平成8年でございますが、取水反対の陳情書が提出をされ、さらには壬生町からも同様の要望が提出をされました。そこで事業説明会を何度か開催いたしましたが、理解を得ることができませんでした。

さらに、平成13年にも、資料によりますと3回というふうに見ましたけども、再度地元に取水について打診をいたしましたが、その時点でも理解が得られなかったこと、さらにまた、平成13年から15年にかけて実施をいたしました鹿沼市地下水調査報告書による市域の地下水適正利用量は1日当たり23,187立方メートルということであり、これらの取水井から取水しますと、地下水の適正利用量を超えてしまうということが明らかになったわけであります。

以上の理由から、取水の断念に至ったものであり、先ほど述べましたようなクリアしなければならない課題が多々あるということで、廃止したこれらの取水井からの取水については現時点では、極めて困難と言わざるを得ない状況であります。

次に大芦川御幣岩橋付近の水源対策についてでありますが、この橋梁の付近にあります第3浄水場には5か所の取水井があり、昭和49年度の第3次拡張計画で1日当たり11,200立方メートルの取水計画でありましたが、その後の周辺取水状況の変化により、取水量が低下し、平成8年度の第5次拡張計画において1日当たり5,100立方メートルに変更をいたしております。

また、先ほど述べましたように、鹿沼市の地下水調査報告書の適正利用量から現認可の1日当たり取水量4,544立方メートルとしたもので、これ以上の取水は現状ではほぼ限界に近いというふうに考えております。

次に黒川流域の新たな水源開発についてでありますが、現在、黒川流域には第2、第4、第5浄水場があり、取水井が多数あります。さらに現認可である鹿沼市水道事業第5次拡張計第1回変更の中で地下水の適正利用量の範囲内に位置づけされている未鑿井の第5浄水場第2取水井からの取水に向けた検討に着手をいたしたところでございます。
今後、諸条件が整いましたらば、段階的に事業を進めていきたいと考えております。

以上で答弁を終わります。


●質問と答弁の概要

芳田議員は、3点について質問しています。

第1点は、第5次拡張計画で確保する予定だった南押原地区の地下水源を、今後、確保すべきではないか。

第2点は、第3浄水場の取水能力が落ちているので、能力を復元するための対策を講じるべきではないか。

第3点は、黒川流域にある第5浄水場の第2取水井が未設置となっているが、設置を急ぐべきではないか。

これに対して市長は、次のように答弁しています。

第1点については、南押原地区における新規地下水源の確保は困難である、理由は、農業用水への影響を心配する地元住民の理解を得ることが困難であること、及び地下水調査報告書で定めた上水道事業における地下水の適正利用量を超えてしまうことである、と述べています。

第2点については、第3浄水場の取水能力を復元させるための対策があるのかないのか、あるとした場合、その対策を講じるのか講じないのか、全く答えていません。市長は、第3浄水場の計画取水量を減らしたという経過を述べただけです。取水能力が低下したとさえ明確には言っていません。

第3点については、「第5浄水場第2取水井からの取水に向けた検討に着手」したので、段階的に進めると述べました。

●不足水量を確定することが先決ではないか

冒頭、芳田議員は、「佐藤市長の下で飲み水は地下水でまかなうと、南摩ダムの水は使わないでも済むようにすると、こういう考えが示されました。こういうことによって、新たな水源の確保、地下水の発掘調査というのは最優先の課題」と発言していますが、「(鹿沼市の)飲み水は地下水でまかなう」ということが、「(だから)新たな水源の確保」が必要だということには理論的には結び付かないと思います。芳田議員の考え方の前提には、「現在の保有水源では不足している」という認識があると思います。しかし、現在の保有水源で不足なのか、不足しているとすれば、どのくらいの量かをきちんと議論するのが筋だと思います。「新規水源を確保すべきだ」という議論は、水源がどれだけ不足しているのかを明らかにしてからでも遅くないと思います。

鹿沼市の水道用水を地下水でまかなうのであれば、現在の保有水源量と将来見込まれる水需要とを照らし合わせてみないと、新規水源の確保が必要なのか、そしてどれくらい必要なのかが分からないと思います。

したがって、第1点の南押原地区の新規地下水源については、「そもそも新規地下水源はどれくらい必要か」という議論から入るのが筋だと考えます。それと関連して、仮に南押原地区の新規地下水源が必要ということになったとしても、11,100m3/日(1人1日最大給水量を400リットルと仮定すると27,750人分の水)もの大量の水が必要かが問題です。取水量が数千m3/日程度であれば、地元の理解が得られる可能性も十分あると思います。地元説明会の記録は地下水源確保のための地元協議中断の謎 に掲げてあります。そこに書いたように交渉の余地はまだあったと思います。

第5次拡張計画は、給水人口を90,000人、1日最大給水量を50,500m3/日とするものです。(ちなみに、2007年度の給水人口は76,889人で、1日最大給水量は29,520m3/日です。)この荒唐無稽な水道計画において、南押原地区で計画されていた地下水源確保計画は、以下のようなものでした。
名称町名計画取水量(m3/日)井戸半径(m)井戸深さ(m)
6号井戸北赤塚町4,2003 10.0
7号井戸亀和田町5,0003 10.0
8号井戸亀和田町1,9003 15.8
11,100


直径6m、深さ10〜15.8mの井戸を掘られ、日量1万トン以上の水をくみ上げられて、直径40cmの導水管で上日向の第3浄水場まで運ばれて浄水するという計画だったのですから、地元住民が反対する気持ちは分かります。

繰り返しになりますが、私たち一般市民は、水道水源が足りるのか、足りないとすればどれくらい足りないのかが分かりません。水道部と芳田議員が鹿沼市上水道の水源が不足しているという共通の認識を持っているのなら、どれだけ足りないのかを市民に示してから水源を確保する議論をしてほしいと思います。

●第3浄水場に関する問答は禅問答

第2点の第3浄水場に関する問答は全くかみ合っておらず、第三者には禅問答にしか聞こえないと思います。第3浄水場の取水能力がテーマであるならば、取水能力が低下したのか、したとすればどれだけ低下したのか、なぜ低下したのか、復元するための対策はあるのか、それにはいくらの費用がかかるのかという議論が必要ですが、抜けていると思います。取水能力が低下したとすれば、その理由が分からなければ、「対策」という話にならないと思います。

両者のやりとりの中に7,000m3/日、11,200m3/日、5,100m3/日、4,544m3/日という数字が出てきます。1日当たりの取水能力のことですが、その1日とは、いつの1日なのかが分かりません。夏と冬では、1日当たりの取水能力が変わるはずです。

市長は、「鹿沼市地下水調査報告書による市域の地下水適正利用量は1日当たり23,187立方メートルということであり」と述べていますが、「市域の」ではなく「市域の既設の上水道水源における」が正しいと思います。鹿沼市地下水調査報告書では、鹿沼市域の既設の上水道水源における地下水適正利用量を定めていますが、市域全体の地下水適正利用量は定めていません。

市長は質問に答えておらず、「対策」について執行部がどう考えているのか分からないのに、芳田議員は再質問もしないという不思議なやりとりでした。

●第3浄水場の取水能力は4,544m3/日なのか

市長は、「鹿沼市の地下水調査報告書の適正利用量から現認可の1日当たり取水量4,544立方メートルとしたもので、これ以上の取水は現状ではほぼ限界に近い」と述べていますが、第5次拡張計画第1回変更計画では、第3浄水場の「単独で揚水試験を実施した場合の能力」は6,590m3/日であると「鹿沼市水道事業変更認可申請書(第5次拡張変更)」(2007年2月作成)のp1−3−1〜p1−3ー2に書かれているのですから、取水量4,544立方メートルが「ほぼ限界に近い」ということはないと思います。その差は2,046m3/日ですから大きいです。それだけあれば、5,000人分の水がまかなえるのですから。

市長の答弁が正しいとすれば、2,730万円かけて作成した「鹿沼市水道事業変更認可申請書(第5次拡張変更)」にウソが書かれていたことになります。

逆に「鹿沼市水道事業変更認可申請書(第5次拡張変更)」に書いてあることが真実ならば、市長答弁の基となった4,620万円をかけて実施した地下水調査の報告書にデタラメな数字が書かれていたことになります。

要するに、鹿沼市は取水能力の数字をコロコロと変えてくるので、市民には本当の取水能力が分からないというのが実態です。

●認可されていた井戸が未設置だった理由が知りたい

第3点は、第5浄水場第2取水井の設置を急ぐべきであるという意見でした。水が足りないと言いながら、認可された井戸を設置しない不可解さについては、当サイトでも鹿沼市上水道第5水源にはポンプ未設置 で指摘していました。

この質問は、2008年12月議会で水道部長が「現時点では水道水源としてあらゆる方策を検討しながら、地下水をできるだけ使用していく方針でありますので、当面は未整備の取水井1か所の整備に向けた準備を行ってまいりたいと考えております。」と答弁していたことの続きの話です(2008年12月鹿沼市議会の分析 参照)。やはり「未整備の取水井1か所」とは第5浄水場第2取水井のことでした。

芳田議員は、「なぜ、予定していながら今まで放置をしたのか分かりませんが」と言っていますが、なぜ1,300m3/日の水源井戸が未整備のままで過ごせたのかは重要な点だと思いますので、答弁を求めてほしかったと思います。推測するに、その答は、「必要がなかったから」ではないでしょうか。

●隣接自治体との水融通は必要か

(芳田議員)
それでは次にいきます。
隣接自治体との水の融通の問題についてうかがっておきたいと思います。

(昨年の)7月議会では、これは市長答弁ですが、これからはお互いの水の融通をしあう時代だ、こういう答弁がありました。私もそのとおりだと思います。しかし、なかなか難しいという話もありました。私も調べてみましたら、確かに簡単ではないようであります。ですが、是非そういう早めの手を打ってですね、対策を立てるべきではないかと思います。

早めに手を打てば、何とかなるというふうに私も調べて感じました。 例えば、松原団地は宇都宮水道の給水区域に今からもうそういう手続に入っていくとかお願いする。板荷地区は日光水道の給水区域に働きかける。こういう手が必要だろうと思うんですね。

現在、板荷の一部地域は日光市の水道給水区域となっておりますから、これを見ても決してできないことではないと思いますので、将来を見すえて、なおかつ、我々の水道事業の取水能力全体を見れば、そういう点でバランスのとれた給水事業というのを考えられるんじゃないかということで今からこの手を打つ考えを示していただければと思います。答弁をお願いします。

(佐藤市長)
隣接自治体との水の融通についての質問にお答えをいたします。
水道事業は水道法によりまして原則市町村が厚生労働大臣の認可を受け、経営するものとなっておりますが、最近の動きといたしましては、水道事業の広域化の推進につきまして、社団法人日本水道協会、今年の2月20日に報告書が出されましたけども、水道の安全保障に関する検討会の報告書などにより広域化について提案をされているところでございます。

これらが実現されますと、人口減少等の社会情勢の変化や経営上の問題等に対処するための方策としては、極めて有効であり、今後ともそれらの方向、成り行きに注目をしていきたいと考えております。

しかしながら、現在はまだ各市がそれぞれの行政区域で給水することが基本でありますので、行政区域を超えた給水区域の変更は鹿沼市と隣接両市の同意が必要になってまいります。

昨年、事務レベルではございますけども、隣接する宇都宮市及び日光市を訪問をし、状況を調査したところでございますが、現時点では、両市とも厳しい水事情ということでございまして、早期実現はなかなか困難の情勢にございますが、引き続き働きかけをしてまいりたいと考えております。

以上で答弁を終わります。

ここでも水が足りないという前提が芳田議員にあると思います。本当に足りないのか、どれだけ足りないのかという科学的な議論を議会質問に期待します。

隣接自治体との水融通と言うなら、常に融通し合うのではなく、栃木県南自治体でやっているように、隣接自治体同士で水道管はつないでおくが、普段は仕切り弁で仕切っておき、異常な渇水のときだけ弁を開けるという形の方が話は進むと思います。

水が足りているのかいないのか、科学的な議論が必要だと思います。事実をはっきりさせれば、進む方向は自ずと見えてくるはずです。それには情報の開示が必要ですが、水道計画を自ら市民に広報しようとしない鹿沼市の姿勢に疑問を抱く市民もいると思います。

(文責:事務局)
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