鹿沼市が思川開発事業に参画継続

2011年6月30日

●栃木県県土整備部長が南摩ダムに「違和感」

4月1日に、池沢昭氏が栃木県県土整備部長に就任しました。

そのインタビュー記事が5月5日付け下野に掲載されています。

「一時凍結の思川開発事業(南摩ダム)の見通しは。」と聞かれて、次のように答えています。

現計画には違和感があるかもしれないが、それは謙虚に認めたとしても、全体のベクトルを変えるのには影響が大きすぎると思う。もし方向転換するなら、国がきちんと説明しなければならない

「現計画には違和感がある」とのことですが、違和感どころか、明白な環境破壊と税金の無駄遣いがあると思います。

県幹部には、環境破壊と税金の無駄遣いが違和感にしか思えないということのようです。

見方を変えれば、水なし川に巨大ダムを造る思川開発事業は、栃木県県土整備部長でさえも「現計画には違和感がある」と言わざる得ないような、問題のある事業だということです。

「全体のベクトルを変えるのには影響が大きすぎる」とのことですが、現地住民の移転はとっくに終わっているのですから、住民への影響はありません。中止を喜ぶ住民がほとんどでしょう。

完全に中止して影響が大きいとすれば、建設業者に対してでしょう。

池沢氏は、住民よりも建設業者を重視しているように私には見えます。

「もし方向転換するなら、国がきちんと説明しなければならない」という発言も理解できません。国営ダムだから、やめるのだったら国が説明すればいいということでしょう。

しかし、国が説明する前に、南摩ダムが治水上、利水上栃木県に利益があるかどうかを栃木県がはっきりさせるべきでしょう。

ところが、福田富一・栃木県知事は、「八ツ場ダムも南摩ダムも水需要を再度確認した上で国民に対して説明責任を果たすべきだ」(2009年8月26日付け下野)と言ったかと思えば、「治水、利水の面から南摩ダムは必要」(2009年10月16日付け下野)と言ってみたりして、わけが分かりません。新聞記者も知事発言の矛盾を問いただそうとしません。

見方を変えれば、福田知事でさえ、ダム推進という一貫性を保てないほど南摩ダムは道理のない事業だということです。

「もし方向転換するなら」と言いますが、栃木県が「南摩ダムの水は必要ありません」と正直に言わなければ、国は「方向転換」がしづらいでしょう。

ところが県は、南摩ダムの水が必要だという立場を変えていないのですから、国に方向転換をさせないという腹です。

福田知事や池沢部長には、少しは建設業者以外の県民の利益も考えてほしいものです。

●6月議会で芳田議員が南摩ダムについて質問した

6月10日付け下野によると、芳田利雄・鹿沼市議会議員が9日の鹿沼市議会一般質問で南摩ダムについて質問しました。テレビ中継を見ていないので質問内容の詳細は分かりません。

同記事は、執行部の答弁について次のように報じます。

国交省などの南摩ダム見直し作業に際し、市は2月、新たに同ダムに参画表明。この点を佐藤市長は「検証作業第1弾として市に需給計画の点検・確認と利水参画の意思確認があったが、確定する判断材料がない。最終的には代替案含め総合的に検討、決定するが、現時点は『参画継続』とした」と答えた。併せて表明した水必要量「毎秒0.2トン」も「現計画に沿ってまず回答、今後の国の案を精査後調整する」とした。芳田氏が質問した。

記事以外からの情報を総合すると、鹿沼市は、国と水資源機構から思川開発事業計画への参画継続の意思があるのか、及び参画継続の意思がある場合の必要な水量を照会され、参画継続の意思がある、必要水量は毎秒0.2m3であると今年2月に回答したということのようです。

●市民の知らないところでダム事業への参画が進んでいる

ほとんどの市民は、国土交通省などからこのような照会があったことなど新聞を見るまでは知らなかったと思います。

鹿沼市議会議員は2月28日の議員全員協議会で執行部から回答内容を急遽知らされ、執行部はその日のうちに国に回答したようです。当時、全員協議会は非公開でしたから、記者も知らなかったと思います。したがって、記事にもならなかったのだと思います。

ちなみに、「自民党の石原伸晃幹事長は14日の記者会見で、東京電力福島第1原発事故を踏まえた原子力政策の見直しについて「あれだけ大きなアクシデントがあったので、集団ヒステリー状態になるのは心情としては分かる」と述べた。」(6月15日付け毎日)そうです。

吉野川第十堰については、2000年に住民投票が行われました。そして可動堰化に反対する票は91.6パーセントに達し、計画は頓挫しました。石原氏に言わせれば、この住民投票も「集団ヒステリー」なのでしょう。

エネルギー政策のような重要な問題は、国民が直接決めるような問題ではない、政治家と官僚と学者が決めるべきだということなのでしょう。

しかし、どんなに知能の高い政治家と官僚と学者でもその高い知能を最大多数の最大幸福のために用いる保証はありません。私利私欲のために用いているということはないでしょうか。

イタリア国民は自分の命を守ろうとして脱核発電の道を選びました。石原氏はそれを「集団ヒステリー」と呼びますが、それも「私利私欲」と呼べるのかもしれません。

しかし、その「集団ヒステリー」や「私利私欲」と「原子力村」と呼ばれる利権集団に属する政治家と官僚と御用学者と業界人の「私利私欲」と、どちらが最大多数の最大幸福をもたらすのかは、既に明らかではないでしょうか。

●とりあえずの回答でいいのか

「現計画に沿ってまず回答」とのことですが、「本当のところ」を回答するわけにはいかなかったのでしょうか。

執行部は、「最終的には代替案含め総合的に検討、決定する」と答弁しましたが、今回の回答が「最終的」なものではないのでしょうか。今後も参画水量を変更できるということなのでしょうか。

ちなみに自民党政権が続いていたら、今回の照会はなかったでしょう。その意味で民主党政権誕生の意味はあったと思います。

国がダムを建設すると決めてしまった後で何を検討、調整するのでしょうか。

「今後の国の案を精査後調整する」とのことですが、「精査後調整する」機会が保証されているということなのでしょうか。

国からの照会は、「検討の場」の議論の材料にするためのようです。

今年、参画の意思や要望水量について国から照会があったということは、思川開発事業計画を止めるチャンスがあったということです。

ここで流れを変えなかったら、いつ変えられるというのでしょうか。

参画自治体がここで従来どおりの回答をしていたら、推進の流れは止められません。

6月29日に開催された「検討の場」第2回幹事会の資料を見ると、思川開発事業計画の参画団体は、すべて現計画と同じ参画水量で参画継続で回答していました。

●要望水量毎秒0.2m3は検証に耐えるのか

2001年に栃木県が思川開発事業計画への参画水量を調査したときには、市町から報告された要望水量が妥当なものであるかどうかの検討はなされませんでした。

これに対して、今回の「検討の場」による検討では、参画団体による「必要量の算出が妥当に行われているかを確認する」という作業があるらしいのです。発想は実にまともです。

6月29日に開催された「検討の場」第2回幹事会の資料3に、「検討主体が行う思川開発事業利水参画者の開発量 の確認方法について(案)」という文書があり、「ダム事業の検証に係る検討に関する再評価実施要領細目「第4 再評価の視点」 (2)4で示されている「必要量の算出が妥当に行われているかを確認する」に基づき、必要量の算出方法の確認を行う。 」と書かれています。

「開発量の算出方法の確認(水道用水)」の項目には、給水人口、原単位、負荷率、確保水源の状況等について確認すると書かれています。

鹿沼市は、給水人口を多く見積もり、負荷率を小さめに設定することによって1日最大給水量を過大に推計しています。

「検討の場」でまともな検討をするとしたら、鹿沼市の計画1日最大給水量は過大であり、精査もせずにとりあえず報告しておいた参画水量毎秒0.2m3は過大であることになってしまうのではないでしょうか。

この問題は、「検討の場」がまともな検討を行うかどうかの試金石になるかもしれません。

●確定する判断材料がないのか

鹿沼市が南摩ダムの水をどれだけ必要とするかを「確定する判断材料がない」とのことですが、意味が分かりません。

判断材料がなければ回答は不能となるはずですが、それがなぜ毎秒0.2m3で参画継続という回答になるのか分かりません。

結局、上記記事からは、鹿沼市の回答の理由は読み取れません。

●地下水源は足りているか

鹿沼市は、本当に南摩ダムの水を毎秒0.2m3必要なのでしょうか。

鹿沼市の水道水源が足りているかを考えてみます。

2009年度の1日最大給水量は30,441m3です。根拠は、「(鹿沼市)上水道のあらまし」p6です。

鹿沼市は、鹿沼市上水道の現在の保有水源量(地下水)は、36,290m3/日であるとしています。この水量は、地下水の揚水試験結果から得られた取水が可能な量であるとしています。根拠は、鹿沼市水道ビジョン(案)p21です。

鹿沼市上水道の保有水源量は、2009年度の1日最大給水量と比較して、5,849m3の余裕があります。

この水量を2009年度の鹿沼市上水道の1人1日最大給水量391m3で割ると、約15,000人分の水量ということになります。

この余裕の水量が将来不足してくるのかというと、1人1日最大給水量が増える要因は見当たりません。

給水人口が15,000人も増えるとも思えません。

したがって、約6,000m3/日の余裕があれば、鹿沼市上水道の水源が将来不足することはないと思います。

●鹿沼市は将来の水需要をどう推計しているのか

鹿沼市は、鹿沼市水道ビジョン(案)p21において、鹿沼市の水需要のピークは、2015年であると推計しています。

2015年といえば、4年後です。

あと4年経てば、水需要は減っていくのです。繰り返しますが、鹿沼市がそう推計しているのです。

思川開発事業計画の完成年度も2015年とされていますが、現在凍結されているのですから、とても予定どおりには完成しないでしょう。

6月29日開催の「検討の場」第2回幹事会の資料によると、思川開発事業計画は、再開したとしても完成までに81か月を要するとされています。したがって、仮に事業継続となっても、2018年までは完成しないと報道されています(7月1日付け読売参照)。

ダムと導水管が完成するころには、鹿沼市の水需要は減少傾向に入っていると思われます。

したがって、鹿沼市が南摩ダムの水を必要とする場面は、鹿沼市による水需要推計によっても想定できません。

●水源余裕率はどうか

水源余裕率という尺度があります。水源余裕率とは、「水源水量と実際に消費される水量の比であり、水源のゆとり度、水源の効率性を表しているが、 渇水への備えのため、ある程度のゆとりが必要である。 」とされています。

水源余裕率=[(確保している水源水量÷1日最大給水量)ー1]*100という式で表します。鹿沼市は20%を下回らないことを目指しています。

2009年度の鹿沼市の水源余裕率は、[(36,290÷30,441)ー1]*100=19.2%ということになります。

20%には足りませんが、今後、1日最大給水量が減少していくと予想されますので、20%を超えていくものと思います。

●水源利用率はどうか

水源利用率という指標もあります。高いほど水源水量に余裕がないと言えます。

水源利用率=(1日平均給水量÷確保している水源水量)*100で表します。

2009年度の鹿沼市上水道では、(27,025÷36,290)*100=74.5%となります。

この数値は高いのでしょうか。

宇都宮市のホームページの水道事業に関する業務指標のページを見てみましょう。

宇都宮市上水道の水源利用率は、
2007年度が77.4%
2008年度が75.8%
2009年度が75.0%
となっており、「本市はおおむね適正に利用しています。」と書かれています。

そうだとすると、鹿沼市の74.5%は、高すぎて問題があるとは思えません。

推測ですが、民間企業が水道事業を経営したら、水源利用率は80%くらいで運用すると思います。

他市では、水源利用率が50%台のところも確かにありますが、余裕の持ち過ぎ、過剰な設備投資、役所仕事、親方日の丸のそしりを免れないと思います。

●有収水量は減少している

上記の見方については、1日最大給水量が将来増えないと見ている点で間違っているという反論が予想されます。

確かに、鹿沼市上水道の有収水量は減少しているに書いたように、鹿沼市上水道の1日最大給水量は、2006年度の29,196m3で底を打ち、2007年度から2009年度まで3年連続で増加しています。

しかし、同じページに書いたように、年間有収水量は減っています。2000年度の約779万m3をピークに減少しています。2009年度の年間有収水量は約758万m3です。

市民が買う水の量は増えていません。本当の水需要は増えていないと見るべきではないでしょうか。

1日最大給水量は見せかけの水需要です。都合よく操作することもできます。現に東京都水道局ではやっていました。そんな需要に合わせて水源を確保すべきでしょうか。

結局、水需要をどの指標で見るかという問題です。

●ピークをカットすれば施設は減らせる

これまで電力会社は、「電気は使いたいだけ使ってください。不足すれば核発電所を増設します」という姿勢でした。水道事業も同様で、「水は使いたいだけ使ってください。足りなければダムを造ります」という考え方で、全国至る所にダムを建設してきました。

電力消費のピークは、「平日、日中、午後2〜3時、気温31度以上の時で、年間10時間にすぎない。」(田中優、「週刊朝日」2011年6月10日号p89)そうです。

電力会社は、このピークに合わせて発電所を建設してきたのです。

福島の事故の後、電力消費のピークカットが重要であることは多くの人が理解したと思います。

水道事業でもピークをカットすれば、余計な水源を確保しなくても済むはずですが、取り組んでいる自治体は少ないのではないでしょうか。

電力や水の消費を野放図にしておくことが問題だと思います。

鹿沼市が1日最大給水量に合わせて水源を確保すべきだと主張するなら、1日最大給水量が発生する原因を把握し、消費量が特定の日に突出しないような対策を講じるべきだと思います。余計な水源を確保するために加入者に負担をかけたくないと思うなら。

既に対策を講じているのかもしれませんが、有収水量が増えていないのに1日最大給水量が増えているのでは、講じているように見えません。

●負担額を判断する材料がないということか

「鹿沼市が南摩ダムの水をどれだけ必要とするかを「確定する判断材料がない」とのことですが、意味が分かりません。」と書きましたが、 一つだけ心当たりがあります。

鹿沼市は、「最終的には代替案含め総合的に検討、決定する」と言うのですから、真実は今回の国への報告とは別のところにあるという意味ですから、私が苦労して証明するまでもなく、鹿沼市は、水源が足りていることを承知しているのだと思います。

だから鹿沼市はダム事業から撤退したいと言いたいのかもしれません。

しかし、「水が足りているから思川開発事業計画から撤退します」と言った場合に、どれだけカネを払わされるのか分からない。水需要ではなく、負担する金額について「確定する判断材料がない」という答弁になった可能性もあります。

国は撤退のルールを示さずに参画の意思を確認しているとしたら、うっかり「撤退します」とも言えないという事情があるのかもしれません。

民主党に脱ダムの意思はあるのかで紹介したように、2011年1月29日付け下野は、ダム事業の検証について、「撤退費用ルールを示せ」という見出しで良い論説を書いています。

「自治体に事業参画継続の意思を問うならば、まず国は、今回の検証でダム事業を中止、撤退した場合の費用分担のルールを明示する必要がある。」、「ダム事業から自治体が撤退しても、財政的負担を求めないことにする特別立法を考えるべきだ。」と書かれています。

実は、「ダム事業を中止、撤退した場合の費用分担のルール」は明示されています。

2003年に制定された独立行政法人水資源機構法施行令の「第三章 業務の実施に要する費用(第十八条-第四十二条) 」に書かれています。第30条には、「水道等負担金及び水道等撤退負担金」について規定されています。

ただし、一読して分かる文章ではありませんので、自治体が独自に負担金を算出することは期待できません。国がこのルールを適用して計算した具体的な金額を示して照会すべきです。

なお、この政令には、撤退した場合の負担金の算出方法が書いてあるだけで、撤退の手続が規定されていません。

撤退の手続は、撤退の意思を表示した文書を水資源機構に送付することだけです。

6月30日付け下野によれば、霞ヶ浦導水事業で、「水道用水の利水予定者の千葉市と東総広域水道企業団(千葉県銚子市など2市1町で構成)が、事業からの離脱を表明していた」そうです。

「千葉市の参画水量は毎秒0・06立方メートル、同企業団は0・114」立方メートルだったそうです。

千葉市が離脱した理由は、「(1)今後の水道事業の需要の伸びが見込めない(2)現在保有している水源で補える」ことだそうです。

離脱はできるのです。

●負担金なしに撤退できるルールをつくるべきだ

確かに、思川開発事業計画について鹿沼市の負担する額については、事情が複雑です。

水が必要ならダムが必要かに書いたように、鹿沼市の負担額は、事業に要する費用の額に1,000分の28.9を乗じて得た額であり、事業費1,850億円に1,000分の28.9を乗じると53億4,650万円となります。この負担割合は、2008年7月9日に水資源機構が埼玉県公営企業管理者に出した文書である、思川開発事業に関する事業実施計画の第3回変更(案)に書かれています。

この負担割合は、鹿沼市の要望水量が毎秒0.423m3であることが前提となって計算されたものです。

この経緯は、栃木県の思川開発事業参画のカラクリに次のように書きました。

鹿沼市は、2001年2月の調査では、[東大芦川ダムに参画するから、思川開発事業には参画しない]と報告していましたが、2001年4月23日に福田昭夫知事自ら鹿沼市に乗り込み、阿部和夫鹿沼市長(当時)と直談判した結果、鹿沼市は同年4月26日に「表流水の需要量は0.423m3/秒」とする内容の報告書を提出しました。

つまり、毎秒0.423m3は、栃木県からの働きかけによって出てきた数字なのです。

栃木県の思川開発事業参画のカラクリで紹介したように、2001年10月に、鹿沼市長がこの数字は思川開発事業計画への要望水量ではないとしていることについて思川開発事業を考える流域の会会員から質問された栃木県環境衛生課の岡本氏は、「計画水量は通常の場合、最大水量を元にしております。将来の予測水量であるため、将来減少する可能性は否定しません。」と回答しています。要望水量は将来減少させたってかまわないのだと言っています。

そこで鹿沼市は、2005年までに栃木県に対して次のような主張をしたと思います。

元々東大芦川ダムによる水利権毎秒0.2m3を要望していたのに、毎秒0.423m3で思川開発事業計画に参画することになったのは、栃木県の求めに応じたからである。東大芦川ダムを中止したのは、栃木県の責任なのだから、鹿沼市はあくまでも東大芦川ダムの負担金(310億円*5.1%=15億8,100万円)しか払わない。水資源機構から思川開発事業の鹿沼市分の負担金として53億4,650万円の請求書が届いても、15億8,100万円しか払わない。残りの37億6,550万円は、栃木県が支払うべきだ。

鹿沼市は、2006年に思川開発事業計画への参画水量を毎秒0.423m3から毎秒0.2m3へと減らし、参加形態も単独参画となりました。栃木県は、鹿沼市の上記主張を受け入れ、鹿沼市が毎秒0.423m3で参画することになったことの責任をとりました。

鹿沼市の負担分53億4,650万円のうち、栃木県が37億6,550万円を肩代わりすることになったのです。

栃木県が鹿沼市の言い分を飲んだということは、鹿沼市の参画水量毎秒0.423m3は、県主導によるでっち上げだったことになると思います。

鹿沼市の要望水量毎秒0.423m3が県主導によるでっち上げでなければ、栃木県が鹿沼市の負担金の7割を肩代わりするはずがありません。

もしも県に何の責任もないのに、鹿沼市の支払うべきダム建設費負担金を肩代わりするとしたら、知事は背任の罪を犯すことになります。

いずれにせよ、鹿沼市にデタラメな要望水量を報告させてまでして栃木県が思川開発事業計画を促進しようとした理由は、未だに分かりません。

このような事情の下に鹿沼市が事業から撤退した場合、ペナルティとしてどれだけのカネを取られることになるのか分からないので、鹿沼市としては身動きがとれず、照会に対しては、現計画で回答したという推測もできます。

また、鹿沼市が事業から撤退するということになれば、鹿沼市の負担分53億4,650万円のうち、栃木県が37億6,550万円を肩代わりするという枠組みが崩れるということです。

そうなると栃木県は、「鹿沼市が東大芦川ダムの時代から毎秒0.2m3を要望するということだから栃木県は要望水量を水増しさせた責任をとって負担金を肩代わりするが、要望水量をゼロにするというなら話は別だ。」という理屈を言ってくることも考えられます。

しかし、栃木県環境衛生課の岡本氏は、「計画水量は通常の場合、最大水量を元にしております。将来の予測水量であるため、将来減少する可能性は否定しません。」と言っていたのですから、計画水量をゼロに変更しても、鹿沼市は何の責任も負わないと思います。そうでないなら、岡本氏がウソを言っていたことになります。

民主党政権ができるだけダムに頼らない治水と利水を目指しているなら、下野新聞の論説が説くように、事業を廃止又は事業からの撤退をしても参画自治体に負担金を求めないという特別立法をすべきです。そうでなければ、「できるだけダムに頼らない」というモットーの実現は無理です。

仮に撤退により負担金を払うとしても、「ダムの水が必要か」と聞かれたら必要ないと素直に答えるべきだと思います。

ダムで環境を破壊されるよりましです。

しかし、鹿沼市では環境の価値が理解されていないように思います。

環境を守れと言いながらダムに賛成と言う人がいます。鹿沼市の26人の市議の中で、ダムに反対している議員は2人しかいないという事実が、環境の価値が理解されていないことの証拠でしょう。

●安い買い物ではない

鹿沼市が東大芦川ダムについて支払う予定だった15億8,100万円で思川開発事業計画の開発水量毎秒0.2m3を万一の保険として確保できるのなら、安い買い物ではないかと思われる向きもあるかもしれません。

しかし、鹿沼市に南摩ダムを建設されるということは、黒川と大芦川から取水されるということです。

両河川の流量の減少により水田農業は大打撃を受けることが予想されます。生活用の井戸にも影響が出るでしょう。

導水管工事により加蘇地区、板荷地区などの水環境が破壊されます。

鹿沼市の水源井戸は黒川と大芦川に依存していますから、両河川から取水されれば、水源井戸の水位が低下することが予想されます。上水道事業に影響が出る可能性があるということです。

カネ勘定の問題は、ダム問題の一部にすぎません。

発電所の事故で避難民が出た今こそ、環境への影響について、もっと想像力を働かせるべきだと思います。

(文責:事務局)
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