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渡良瀬遊水地第2貯水池計画再浮上

2005-9-19

●下野新聞の報道

2005年9月16日下野新聞の「渡良瀬遊水地第2貯水池計画が再浮上」と題する記事の一部を引用します。

 「渡良瀬遊水地に第2貯水池を造る計画が再浮上した。国土交通省利根川上流河川事 務所の佐藤宏明所長は15日、下野新聞社の取材に対し、第2貯水池について「河川 法に基づく整備計画を本年度中にまとめ、出来るだけ早く公表したい」と述べ、実現 に意欲を示した。同貯水池は渡良瀬遊水地総合開発2期計画の中で、治水と利水を兼 ねた多目的ダムとして位置づけられていたが、水需要の低下などで2002年に国交 省が中止を表明。ただ治水部分は「引き続き検討する」としていた。新たな貯水池は 遊水地の植生に大きな影響を与えることから、自然保護団体の反発は必至だ。  

佐藤所長はこの日、小山市生井の渡良瀬遊水地堤防で開かれた「第二調節池周辺地 区治水事業促進連絡協議会」の設立総会に出席、終了後に質問に答えた。この中で整 備計画の策定作業に着手していることを認めた上で「治水事業は地元の要望が強い。 遊水地を広げることができない以上、掘削するしかない」と述べ、第2貯水池の必要 性を強調した。  

同貯水池は渡良瀬川と思川に挟まれた現在の第2調節池内に計画されていると見ら れる。貯水容量について、佐藤所長は「利水部分が中止になったが、治水機能強化の ため2期計画(千百四十万トン)より大規模になる見込み」と示唆。その理由に上流 の県営東大芦川ダムが中止されたこと、近年集中豪雨が頻発していることを挙げた。 着工予定時期は明らかにしていない。」

●利根川上流河川事務所の言い訳

国土交通省利根川河川事務所は、上記記事が掲載されたその日のうちに、自らのホームページにおいて「平成17年9月16日付け下野新聞掲載「「第2貯水池」が再浮上」の記事について」という反論のようなコメントを次のように載せています。  

「下記の事項について一部誤解があるので当方の主旨を述べます。

@「「第2貯水池」が再浮上」について  

渡良瀬遊水池総合開発(期)事業は、平成14年8月6日の「渡良瀬遊水池総合開発(期)事業審議委員会」の最終答申を受け中止されたもので「「第2貯水池」が再浮上」という事は誤りです。

A「治水目的 年度内に整備計画」 「「河川法に基づく整備計画を本年度中にまとめ、できるだけ早く公表したい」と述べ」について       

河川法改正により、「河川整備基本方針」及び「河川整備計画」を定める事となっています。「河川整備基本方針」は計画高水流量その他当該河川の河川工事及び河川の維持についての基本となるべき方針に関する事項を定めるもので、「社会資本整備審議会」の意見を聴き定めるものです。また、「河川整備計画」は河川整備基本方針に沿って計画的に河川の整備を実施すべき区間について当該河川の整備に関する計画を定めるもので、必要があると認めるときは河川に関し学識経験を有する者の意見を聴き、また、必要があると認めるときは、公聴会の開催等関係住民の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならないとなっています。 現在、利根川については「河川整備基本方針」を策定すべく検討中です。

B「「利水部分が中止になったが、治水機能強化のため期計画(千百四十万トン)より大規模になる見込み」と示唆。その理由に上流の県営東大芦川ダムが中止されたこと、近年集中豪雨が頻発していることを挙げた。」について  

渡良瀬遊水池総合開発(期)事業は治水容量500万トン、利水容量洪水期550万トン、死水容量90万トンの総貯水容量1,140万トンでありました。期事業が中止されたことにより、利水容量、死水容量は不要となりました。  

また、東大芦川ダムの中止は例示として挙げたもので、思川開発事業が縮小になるなどダムが出来にくくなったと述べたもので、東大芦川ダムの中止が直接渡良瀬遊水地の治水容量増加に結びついたものではありません。  

ダムが出来にくくなったことと近年集中豪雨が頻発していることにより、渡良瀬遊水池総合開発(期)事業の計画時点より条件が悪くなっているので、渡良瀬遊水地の治水容量はその時点より増える可能性があると述べたものです。  

なお、文中内の「第二貯水池」の記載がありますが、当方は「第二貯水池」と言う表現はしていません。」

●東大芦川ダム中止が第2貯水池計画再浮上の理由

「第2貯水池」という名称を使うかどうかはともかく、国土交通省が渡良瀬遊水地において大規模な掘削工事をやろうとしていることは間違いありません。

そして、東大芦川ダム中止が第2貯水池計画再浮上の理由になっていることも間違いありません。東大芦川ダムのしかばねを肥やしにしてしまおうというのですから、したたかと言うほかありません。

ダム官僚の生きる目的が生涯賃金の増大である以上、国や県の官僚がそう簡単に東大芦川ダム事業をあきらめるとは思えませんでしたが、渡良瀬遊水地第2貯水池計画復活の口実という形で利用されるとは予想しませんでした。その意味で東大芦川ダム計画は完全に消えたわけではなかったということです。

●想起すべき東大芦川ダム中止の理由

ここで思い出していただきたいのは、東大芦川ダム中止の理由です。ダムの完成が遅れるというのが主な理由でした。治水計画規模も基本高水流量もそのままです。治水上も利水上もその必要性は否定されていません。

東大芦川ダムを復活させることは、当分の間、政治的な理由によってないでしょうが、理論的には含みを持たせる形で中止されたのです。

東大芦川ダムが必要ないことをダム官僚が認めるまでは、「中止」とは言えないということです。

●ダム官僚は生物多様性の異議を理解していない

渡良瀬遊水地は、ラムサール条約で登録されるべきという意見が多く、奇しくも、9月16日の毎日新聞は、ツリフネソウの新種発見について次のように報道しました。朝日、毎日、読売、産経、下野新聞、東京新聞、埼玉新聞、上毛新聞でも報道されました。

「ツリフネソウ:渡良瀬遊水地で新種発見 花弁の形、模様異なる /栃木  ◇起源を探る上で重要 県植物研究会・大和田さん、21日に学会で発表  県植物研究会会員の大和田真澄さん(55)と渡辺幹男・愛知教育大助教授(42)は15日、渡良瀬遊水地からツリフネソウ属の新種を見つけたと発表した。新たに見つかったツリフネソウは他の種とは花弁の色が変異に富み、ツリフネソウの起源を探る上でも重要な発見であることから、渡辺助教授は21日からの日本植物学会で発表する予定。」    

渡良瀬遊水地については、渡良瀬遊水地の植物というサイトがあり、新種ワタラセツリフネソウの写真も見ることができます。このサイトには、渡良瀬遊水地における絶滅危惧植物のリストなども掲載されており、非常に優れたサイトです。  

そのほか、「安蘇の山懐から」というサイトに「渡良瀬遊水池」のページがあり、「一度でもこの緑の広がりを目にしたならきっと強烈な印象とともに、いつまでもこのままであって欲しいと願わずにはいられないはずです。」と書かれており、「遊水池の貴重な動植物を守ろう!」と訴えています。  

利根川上流河川事務所の佐藤宏明所長は、「環境に影響のないようにすることは可能。科学の粋を集めてやる」と下野新聞の記者に語ったようですが、口ではなんとでも言えます。長良川河口堰も環境に影響を与えないはずだったのですが、現実は悲惨な結果になっています。「環境に影響のないようにすることは可能」なら、成功例を挙げていただきたいものです。  

ダム官僚は環境保全とか生物多様性を理解しようとしません。生涯賃金の増大という人生の目的を達成することの障害になるからです。もちろん生涯賃金が増大すればいいのですから、ダム官僚にとって金儲けのネタはダムでなくてもよいのですが、今のところ飛行場建設などよりも手慣れたダム建設の方が手っ取り早いので、世論がどんなに脱ダムでも、これからもダム造りにこだわり続けるでしょう。  

●渡良瀬遊水地の運命  

要するに国土交通省の役人とそのOBを中心とする族議員と御用学者、そしてゼネコンにとっては、渡瀬遊水地という、税金による環境破壊の対象となる広大な土地が放置されていることが許せないのでしょう。ですから、渡良瀬遊水地は、これからも彼らに狙われ続けるでしょう。渡良瀬遊水地を彼らの毒牙から守るには、環境に優先順位を与える人たちが団結するしかないのでしょうね。

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