鹿沼工業団地に日量16,000m3の地下水が余っている

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●鹿沼工業団地における地下水の取水可能量は23,000m3/日

鹿沼工業団地における地下水の取水可能量はどれくらいなのでしょうか。

1976年6月22日鹿沼市議会一般質問で江崎清一議員の質問に山下和男企画調整部長が答弁しています。

(江崎清一議員)
「工業団地も地下水を使用しておるわけでございますけれども、この問題につきまして、大分前に私は質問をさせていただきましたが、このときは具体的なお答えがございませんでしたので、今回は明確に工業団地の地下水の限界というものはどうなのか、その場合の対応策につきまして、どのような考え方をお持ちになっておられますか、これらの問題につきましてもお答えを願いたいと思います。」

(山下和男企画調整部長)
「工業団地の地下水の限界はどれだけなのかというようなご質問ございましたけれども、あそこの地域を工業開発しますときに、いろいろ調査をしたデータがございまして、それから考えていきますと、大体日量2万2,000から2万3,000トンが限界だと、こう思います。

 現在、それではどのくらいあそこで水をくみ上げているかといいますと、工業統計調査によりますと、あそこで使っている水が、大体日量1万トン、このうち約3,000トンは回収水を使っている企業がございますので、実際にくみ上げている水は7,000トンぐらい、こういう数字が出ます。

 そうなりますと、2万2,000から2万3,000トンぐらい限界があるのに、現実に現在7,000トンぐらいしかくみ上げていないのですから、かなり余裕があると、こういうことは言えますけれども、それはあくまでも、あの地域の総量の問題であって、たとえば22社が1本ずつ井戸を掘れば、1か所の井戸では、日量1,000トンしか上げられない。

 そういう制限をつけませんと、企業の中には、非常に水を比較的使う企業も使わない企業もございますけれども、平均的に考えますならば、1本当たり1,000トン以上くむことは制限しなくてはいかぬと、こういうことが言えると思うのです。ということがございます。

 それからもう一つは、それでは仮に景気が回復して、工業団地があの当時のように、工業団地の操業計画のように、今後仮に、設備投資があった場合どうかと、こう考えますと、これは非常に計算もむずかしくなりますけれども、いろいろな数字を使って計算いたしますと、大体あそこが当初の計画程度に操業いたしますと、日量で2万6,000トンぐらい必要になるであろうと、こう考えます。

 そうなりますと、現在の取水の限界からですと、約3,000トンぐらいオーバーになりますから、もう不足すると、こういうことが言えます。」

   ちなみに鹿沼工業団地における地下水の性質について、1976年12月15日鹿沼市議会一般質問で山下和男企画調整部長は江崎清一議員の質問に次のように答弁しています。

 「工業団地周辺の深層地下水の観測井を県がやると、その深層地下水の観測井の設置と規制を鹿沼市としては設置要請すべきだが、その必要性をどう考えるか、こういうご質問でありますけれども、鹿沼の工業団地は深層地下水は使っておりません。武子川の伏流水を主たる涵養源とする浅層地下水を使っております。(略)

 なお、工業団地の井戸の深さは何メートルぐらいかということでありますけれども、大体の井戸が約40メートル程度掘っております。」

 ●16,000m3/日の地下水が余っている

ここから言えることは、鹿沼工業団地における地下水の取水可能量は、22,000~23,000m3/日だということです。もう一つは、鹿沼工業団地における1975年ごろの地下水揚水量は約7,000m3/日だということです。したがって、最近の鹿沼市地下水調査の報告書に昭和50年代後半の工業団地での揚水量が約1万m3/日というグラフが描かれているのはちょっと怪しいと思います。

いずれにせよ、鹿沼工業団地の近年の地下水揚水量が日量約7,000m3ですから、取水可能量が約23,000m3/日だとすると、16,000m3/日の地下水が余っているということになります。

鹿沼市は、工業団地の地下水が大量に余っている事実をひた隠しにしているのではないでしょうか。

ちなみに、山下部長は「大体あそこが当初の計画程度に操業いたしますと、日量で2万6,000トンぐらい必要になるであろう」と答弁していますが、鹿沼市史地理編には、鹿沼工業団地について「(工場)誘致の条件としては、当時は各地で公害問題が発生していたので、公害のない企業であること、台地上にあるので大量の水を必要としないことなどがあげられた。」(p540)と書かれており、この記述が正しいとすると、鹿沼工業団地の必要水量が26,000m3/日にはならないと思われます。

●1工場の地下水使用量は多くても200m3/日以下

ちなみに、鹿沼市内の工場はどれくらいの地下水を使っているのでしょうか。2002年の「鹿沼市の工業」(PDFファイル92KB)を見てみましょう。

鹿沼市内の従業者30人以上の72の工場の1日当たりの水使用量は、11,442m3です。1事業所当たりでは、159m3/日ということになります。72事業所の地下水の使用量は5,901m3/日ですから、1事業所当たりの地下水使用量は82m3/日にすぎません。水のリサイクル率が4割を超えていることが地下水の揚水量を減らしています。

最も水を使う業種はプラスチック関係の工場であり、12事業所で4,652m3/日を使っています。1事業所当たりでは約388m3/日です。そのうち地下水は、12事業所で2,330m3/日を使っていますので、1事業所当たりでは194m3/日となります。

山下部長は、「たとえば22社が1本ずつ井戸を掘れば、1か所の井戸では、日量1,000トンしか上げられない。」という心配をしていましたが、1社が「日量1,000トン」の地下水を使うという事態にはなりそうもありません。したがって、鹿沼工業団地での必要水量が「日量2万6,000トン」になるという心配も杞憂です。

●豆腐工場でも日量2,000m3

 工場というものはどれくらい水を使うものでしょうか。栃木県でも最大規模の豆腐類製造工場でも日量2,000m3程度のようです。大量の水を使わないことが誘致条件の鹿沼工業団地で日量1,000m3も使う工場は、考えられません。

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