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鹿沼市は、「鹿沼市・粟野町 新市建設計画フレーム調査報告書」(2004年9月)p22(PDFファイル140KB)で農業用水の需要量を推計しています。
推計の方法は、「地目別面積の推計で求めた将来の水田面積に、「水田1haあたりの用水量の全国平均値」を乗じて推計しました」とのことです。
「水田1haあたりの用水量の全国平均値」とは、全国の農業用水使用量(農林水産省による推計値)を全国の水田面積で除したものであり、2000年で21,655m3/haだそうです。
鹿沼市分の水田面積と用水量に関する推計値をグラフ(PDFファイル60KB)に描いてみましょう。鹿沼市の農業用水の需要量は、2000年の約7,800万m3から漸減していくと推計されています。
●鹿沼市地下水調査では、鹿沼市の農業用水は1.5億m3
他方、鹿沼市の農業用水については、2001年度から2003年度までに実施された鹿沼市地下水調査の調査対象にもなっています。「鹿沼市地下水調査報告書」の該当部分(PDFファイル228KB)をご覧ください。
p34の図3-5によれば、2001年9月から2002年8月までの1年間において、鹿沼市域で水田に使われた水量は次のとおりです。
P2:水田への降水量 2,079万m3/年
IR:河川から水田へのかんがい水量 11,188万m3/年
地下水から水田へのかんがい水量 1,800万m3/年(地下水調査報告書p12参照)
合 計 15,067万m3/年
となります。
鹿沼市の農業用水の実績値は、新市建設計画によれば年間約7,800万m3(2000年)であるのに、鹿沼市地下水調査報告書によれば約1.5億m3(2001年9月〜2002年8月)となり、約2倍の開きがあります。
新市建設計画の推計値と鹿沼市地下水調査報告書の推計値を対比してグラフ(PDFファイル60KB)に描いてみましょう。全く理解に苦しむほどかけ離れた数字です。
●鹿沼市の農業用水は1.5億m3か
これはどういうことでしょうか。農林水産省の推計値が現実離れしているのでしょうか。鹿沼市地下水調査報告書の推計値が過大なのでしょうか。
もし、現実に鹿沼市内で農業用水が年間1.5億m3使われているとすれば、かなり不経済な使い方をしているということになります。そうだとすると、農業用水が年間約7,000万m3、日量19万m3以上余っていることになり、それを水道水源に転用できるということにもなってきます。そうなればダム水を買う理由はなくなります。
現実には農業用水が余っていないということなら、鹿沼市地下水調査報告書の推計が間違っているということではないでしょうか。
新市建設計画と地下水調査報告書とでは、どちらの数字がまともなのでしょうか。
●全国の水田における使用水量の平均を21,655m3/haと見ることは妥当
インターネットで調べると、2000年における日本の農業用水使用量(国土交通省のサイトから)は、約572億m3であり、その95%が水田で使われると考えると、水田で使用される農業用水は、543.4億m3となります。
2003年における水田の作付け延べ面積は、241万2,000ha(農林水産統計から)です。
3年ずれてますが、543.4億m3/241万2,000ha=22,529m3/haという数字が出てきますから、合併協議会が全国平均の水田用水としてこれに近い数字を使うことは妥当だと思います。
●鹿沼市の水田での使用水量は41,806m3/haか
鹿沼市地下水調査報告書によれば、2001年9月から2002年8月までの1年間において、鹿沼市域で水田に使われた水量は1億5,067万m3です。2000年の鹿沼市の水田面積が3,604ha(新市建設計画p22)だとすると、鹿沼市の水田1ha当たりの使用水量は、1億5,067万m3/3,604ha=41,806m3/haとなります。
鹿沼市の水田農業は、全国平均の倍ぐらいの水を使っていることになります。
●鹿沼市の水田での減水深は大きくない
鹿沼市地下水調査報告書には、鹿沼市の水田の減水深に関する記述(PDFファイル128KB)があります。
「減水深」とは、田んぼにおける蒸発散量(水面表面から蒸発する量と稲を通じて蒸発する量)と水田浸透量の合計を水深単位で表したもので、1日にどれだけの水が必要かを日減水深としてmm/日で表します。
地下水調査報告書には、「湿田の一般的な減水深は、壌土で14mm/日が知られているが」、鹿沼市においては、「代掻き期(5月〜6月)に120〜160mm/日、普通期に20〜60mm/日を示している」、「鹿沼の減水深は大きい値であることが分かる。これは鹿沼の地盤(玉砂利を多く有する沖積層)が影響しているものと考えられる」と書かれています。
一般的な減水深については、栃木県の作成した「農作物施肥基準」というサイトがあり、そこには、「エ.透・排水性改善水田の透水が過多になると水稲の秋落ちや冷水害が発生しやすくなり、過度の用水量を必要とする。水田の日減水深は20〜30cmが適正とされており、これより減水深が大きいときは床じめやベントナイトの施用によって漏水防止に努める。」と書かれています。「cm」は、「mm」の誤記と思われますが。
また、高知県のサイトにも、「日減水深は、透水性の良否を表すもので、10〜30mmが適当である。透水性が良すぎる水田では、水稲が秋落ちし易く、また冷水の害も受けやすい。」という記述があります。30mm/日までは普通ということです。
鹿沼市では土地改良が進んでおり水はけの良すぎる水田は少ないと思われること、鹿沼市の水田で秋落ちや冷水の害が多いという話も聞かないこと、鹿沼市地下水調査報告書に記載された9地区の普通期の減水深の平均値は37mm/日であることから、「鹿沼の減水深は大きい値である」と殊更言うのは間違っていると思います。
●鹿沼市の水田への降水量は2,079万m3/年か
鹿沼市地下水調査報告書のp34の図3-5には、2001年9月から2002年8月までの1年間において、「P2:水田への降水量」は、2,079万m3/年であると書かれているわけですが、この数字がどこから出たのかも不明です。
地下水調査報告書p23には、2001年9月から2002年8月までの年間降水量は1,670mmであると書かれています。そして「鹿沼市・粟野町 新市建設計画フレーム調査報告書」p22には、鹿沼市の2000年の水田面積は3,604haであると書かれています。そうすると、鹿沼市の水田への年間降水量は、1.67m*3,604*10^4m2=60,186,800m3、つまり約6,000万m3/年となるのではないでしょうか。なぜ、2,079万m3/年になるのでしょうか。
ちなみに、鹿沼市地下水調査報告書の河川から水田へのかんがい水量が11,188万m3/年であるという根拠も書かれていません。
農業用水に関しては、鹿沼市地下水調査報告書よりも新市建設計画の方がまともな数字を出しているように思えます。