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飲料水兼用耐震性防火水槽整備の予算がついた

2006-5-27

●飲料水兼用耐震性防火水槽整備の予算がついた

「広報かぬま」(2006年4月25日号)に2006年度の鹿沼市予算を説明する記事が載っています。

その中に「飲料水兼用耐震性防火水槽整備事業費 6200万円」と書かれています。

なぜこの予算がついたのでしょうか。鹿沼市議会で下記のとおり2回の一般質問がありました。

○2003年12月8日鹿沼市議会本会議一般質問

(芳田利雄議員)
 地震の問題、最後ですが、発生時即時の応急対策として、飲料水兼用耐震性貯水槽が最適・最大の役割と効果を発揮することは、衆目の一致するところであります。お隣今市市もこれを設置したと聞きました。宇都宮市では、もう既に6基も100トンのものを設置していると伺いました。ところが、この鹿沼市ではいまだに一つも設置されておりません。阪神・淡路大震災から教訓を学んでつくられたものは、飲料水と兼用にならない100トンの耐震性だけの貯水槽4基の設置であります。ライフラインが地震によってずたずたに寸断されたとき、防火用水だけではなくて、水道水も使用することができなくなるわけですから、飲料水と防火用水を兼ね備えた貯水槽を設置すべきだと思います。この点についての答弁を求めて、次に移ります。

(中村道雄参事)
震災対策の質問のうち、飲料水兼用耐震性貯水槽を本市にも設置したらどうかというご質問についてお答えいたします。
 現在鹿沼市には、10トンから100トンまでの307基の防火水槽があります。防火水槽は、河川や消火栓等のない地域に有効な消防水利として設置しているものであり、平成7年の阪神・淡路大震災を教訓に、平成8年度からは耐震性の防火水槽に切り替えて設置しております。現在40トンの耐震性防火水槽が21基、100トンの耐震性防火水槽5基が設置されており、今後においても耐震性の防火水槽を計画的に設置していく考えであります。
 災害時における飲料水兼用耐震性貯水槽の整備については、鹿沼市地域防災計画の災害予防計画に掲げ、その必要性を認識しておりますが、多額の設置費用と維持管理を要するため、今後十分に検討してまいりたいと考えております。
 以上で答弁を終わります。

(芳田利雄議員)
阪神・淡路大震災から学んだ飲料水、それと防火用水の兼用の問題ですが、そこから学んで、5基、100トンのものをつくったということですけれども、当然水道の問題、防火用水の問題は、ライフラインの破壊で本当にずたずたになって、飲料水もその間とまるわけですから、これは多少費用がかかっても対応が必要だろうと思います。特にこの対応の問題につきましては、4,200万円ぐらいの費用がかかるということですか、その2分の1は国から補助金が出るということで、これはもうなくてはならない問題、このように受けとめてもいいのではないかと思いますので、少なくとも100トンのものを1基や2基は、高台と街の中心部、こういうところを探して設置する必要があるというふうに思います。人間が1人生きていくのに1日3リッターの水は最低必要だということが言われているそうです。100トンですから、これで逆算しますと、3日間に計算して1万人がこの100トンの耐震水槽があることによって救済されるということになりますので、もっと検討を要するのではないかなと。積極的な設置を望みます。答弁を求めます。

(中村参事)
 耐震性、飲料水兼用の防火水槽を早期つくれという再質問についてお答えしたいと思います。
 先ほども申し上げましたとおり、鹿沼市の地域防災計画の中の災害予防計画、ここに載っておりまして、これはつくるという前提で載っております。先ほど議員、4,000万円ぐらいでできるというお話だったのですが、厳密にいいますと、約6,000万から7,000万円、この中の補助基準額が4,200万円ぐらいということなのです。ですから、その持ち出しは基準額の半分ということですから、やはり結構な数字になってしまうということで、あわせまして、これをつくるに当たりましては、消防独自ではできません。何といっても水道管が必要になりますので、関係部局とよく協議の上、検討してまいりたいと思います。
 以上で再質問に対する答弁を終わります。

(芳田利雄議員)
要望が三つほどあります。一つは、飲料水と防火用水を兼ねた貯水槽の建設については、先ほどの答弁でわかりました。ぜひ、確かにそれは高い費用を伴うと思うのですが、それだけの効果があるわけですから、ぜひ検討を急いでいただきたいというふうに思います。

○2004年3月12日鹿沼市議会本会議

(芳田利雄議員)
 次に、震災対策として飲料水兼用耐震性貯水槽の設置について伺います。
 この問題については来年度には予算化していただきたいと思いまして、12月の議会で取り上げました。設置を求めてきました。残念ながら来年度の予算に予算化なっておりません。これは地震に対する認識が違うために対策が遅れているのではないかと思います。地震の発生時、即時の応急対策として、この飲料水の兼用耐震性貯水槽が最も大きな役割と効果を発揮することは、どこの自治体でも認めているところであります。今市市や宇都宮市などでは、この貯水槽はあの阪神・淡路大震災が起きた直後、その後直ちに設置をしております。お隣、宇都宮市では、この貯水槽設置のために15億円もかけて用地を確保し、そういう努力を重ねております。
 鹿沼市はどうか、災害予防計画の中に載っていると言って胸を張っておりますが、地震に対する認識が甘いと、ほかの自治体との比較でこれだけの違いが出てくることになります。政府の調査でも、日本は地震の活動期に入ったと。大地震の起きる可能性も指摘しております。そういう点では地震はいつ来てもおかしくないとさえ言われております。そこで、不要不急の公共事業というのは後回しにして、財源を確保して、飲料水と防火用水を兼ね備えたこの貯水槽を急ぎ設置すべきと思います。答弁を求めます。

(中村道雄参事)
 震災対策についてのご質問にお答えいたします。
 飲料水兼用耐震性防火水槽が予算化されていないについてでありますが、地震等災害時の飲料水兼用の耐震性貯水槽の整備につきましては、必要性を十分に認識しております。地域防災計画の災害予防計画に飲料水兼用耐震性貯水槽の整備について掲げており、前回も答弁いたしましたとおり多額の設置費用と維持費を要することから、財源確保につきましては、実施計画の中で検討してまいりたいと思いますので、ご理解をいただきたいと思います。

(芳田利雄議員)
 飲料水兼用耐震性貯水槽の問題ですが、今ほど答弁がありました。実施計画の中で検討していくと。実施計画とは、どんな実施計画なのか答えていただきたい。そして、実施計画の中で検討するとは、設置時期はいつになるのか、この点についても答えていただきたいと思います。

(渡辺政夫水道部長)
 震災対策についての再質問にお答えいたします。
 芳田議員がご心配になっている水の問題ですけれども、一応私の方は水道を預かっていますので、現在の水道施設の防災対策、結局いざというときの市民の方が飲む命の水でありますので、大規模地震がいざ発生したと。地震の発生というのはめったにないですけれども、一たん発生した場合の被害は非常に大きいものになるということは水道事業に携わる我々にとっても強く認識をしております。
 本市におきましても災害に強い水道を目指していろいろな形の老朽管の更新とか、エリアのブロック化とかを実施しておりますが、特に平成13年度からは水道施設の耐震診断を計画的に実施しております。昨年度は第1から第3浄水場の配水池、管理棟、ポンプ室の調査、それから平成14年度は坂田山の高配水池、低配水池を調査しました。調査の結果につきましては、残りの第4、第5の浄水場の配水池等を含めて、すべての構造物が耐震上安全であるという評価を得ています。万一の地震のときにはこの配水池にたまっている飲料水の活用も考えております。
 議員からご指摘の災害時におけるまちの中などに設置する飲料水兼用耐震性貯水槽の必要性につきましては、鹿沼市総合計画「かぬま夢未来創世プラン」の中の鹿沼市地域防災計画の中にもうたっておりまして、今後、先ほど中村担当参事の方からも答弁がありましたが、実施計画の中でとらえて、なるべく早い時期に予算措置等そういうものの中で各部局間の調整をして検討していきたい。とりあえず今の段階ではこのような形で、水道施設の配水池を活用する考え方をとっております。

●芳田議員の言いたいことは何か

2003年12月現在、鹿沼市には、「40トンの耐震性防火水槽が21基、100トンの耐震性防火水槽5基が設置されており、(鹿沼市は)今後においても耐震性の防火水槽を計画的に設置していく考え」(中村参事)があるということですが、芳田議員は、「耐震性防火水槽」ではダメだ、「飲料水兼用耐震性防火水槽」でなければダメだ、高価な買い物だが優先して実現すべき政策だ、と言っています。

●執行部の答弁はどうだったのか

執行部は、飲料水兼用耐震性防火水槽の設置は、地域防災計画にも書かれており、やるつもりではいるが、お金がかかる、とか、第1、第4、第5浄水場の配水池にたまった水を活用する、などと逃げています。

●予算がついたのは芳田議員おかげか

芳田議員は、2003年12月議会と2004年3月議会に飲料水兼用耐震性防火水槽を設置するように執行部に要求し、2年後に予算がついたという事実があります。

しかし、鹿沼市は、2001年3月策定の総合計画で既に飲料水兼用耐震性防火水槽を設置する計画を持っていたというのですから、芳田議員の質問のおかげで予算化が実現したのかどうかはよく分かりません。

●飲料水兼用耐震性防火水槽で水需要が増大する

飲料水兼用耐震性防火水槽の詳しい構造は分かりませんが、水需要を増大させることは確かです。執行部が「 これをつくるに当たりましては、消防独自ではできません。何といっても水道管が必要になります」と答弁していますから。

水槽内の水がいつでも飲めるような状態にしておくには、水が死に水にならないように、常に又は定期的に循環させる必要があるはずですから、1基100トンの貯水槽を設置するには、その何倍もの水道水が必要になるということです。

その量がどれくらいになるのか、質問では明らかにされていません。

●飲料水兼用耐震性防火水槽の有効性は自明なのか

芳田議員は、「(大地震)発生時即時の応急対策として、飲料水兼用耐震性貯水槽が最適・最大の役割と効果を発揮することは、衆目の一致するところ」 「地震の発生時、即時の応急対策として、この飲料水の兼用耐震性貯水槽が最も大きな役割と効果を発揮することは、どこの自治体でも認めているところであります」と褒めちぎります。要するに、費用対効果の証明など不要だということですが、ほかの対策との比較をしたのでしょうか。比較は必要ないのでしょうか。執行部の言っている、浄水場の配水池の水を活用することでは対応できないのでしょうか。

●恩恵を受けるのは1万人

飲料水兼用耐震性貯水槽を今年度、どこに設置するのか分かりませんが、東部高台地区又は「街の中心部」なのでしょう。そしてその周辺の1万人が恩恵を受けるということです。6200万円かけても、残りの9万市民には恩恵がないのです。

●道路が寸断されていないことが前提

芳田議員は、次のように主張します。

「 少なくとも100トンのものを1基や2基は、高台と街の中心部、こういうところを探して設置する必要があるというふうに思います。人間が1人生きていくのに1日3リッターの水は最低必要だということが言われているそうです。100トンですから、これで逆算しますと、3日間に計算して1万人がこの100トンの耐震水槽があることによって救済される」

1万人が1か所に集まれる、あるいは、1か所の水を1万人に配達できるということは、道路が寸断されていないということです。道路が使えるなら、執行部の言っている、浄水場の配水池の水を活用することでは、なぜ対応できないのでしょうか。浄水場の配水池の水は何トンあるのかも質問のやりとりの中では明らかにされていませんので、判断が難しいのですが。

●災害時に井戸水を提供してもらう方法もある

愛知県豊川市(2006年4月1日現在人口137,487人)は、大規模地震などが発生したときの生活用水を確保しようと、市内800か所の井戸の所有者から災害時に井戸水を提供してもらう約束を取り付けたそうです。自治会が所有者との交渉に当たったそうです。費用はかかりませんね。

地震で水が濁る井戸もあるでしょうが、すべての井戸で濁るとは思えませんし、濁っても即飲用不可ではないと思います。

こういう政策を鹿沼市が既に採用しているのかどうかは分かりません。

●「浄水自転車」という方法もある

毎日新聞は次のように報じています。

○2005年7月13日付け毎日新聞

浄水自転車:堀川の水が飲み水に"変身"---松江市の職員らに公開 /島根

 ◇人力で移動も簡単、災害時に威力を発揮
 ペダルをこいで川の水をくみ上げ、ろ過して飲料水を作る「浄水自転車」が12日、松江市で公開された。開発した企業らが県庁裏の堀川で実験を行い、堀 川の水が短時間で飲み水に"変身"。関係者は、「災害時に威力を発揮し、人力で簡単に飲み水を供給できます。自転車なので移動も簡単」とPRしている。 【久野洋】
 自転車は、上水道が普及していない開発途上国や国内でも災害時に人力で浄水できるよう、水を浄化するプラント建設などを手掛ける東洋紡エンジニアリン グ(大阪市北区)と大津市の浄水器メーカーが共同開発。移動に便利なことから2輪車に着目し、自転車やバイクに浄水器を組み合わせた。
 01年春に開発をはじめ、05年1月に第1号が完成。松江市東朝日町の防災機器販売会社「吉谷」が7月に全国初の販売店になったことを記念し、松江市 や県の防災担当職員らに公開した。
 自転車は、荷台に浄水器などが取り付けてあり、ペダルとポンプが連動。ペダルをこぐと取水ホースから水がくみ上げられる。くみ上げた水は計4枚のフィ ルターを通って浄化され、飲料水になる。通常の河川や湖沼、プールの水であれば飲み水にできる。毎分約5リットルの水が処理でき、災害時には1時間で1 日分の水が100人に供給できる。
 この日、県庁裏の堀川であった実験では、ペダルをこぐと、堀川の薄緑色の水が、透明な飲み水に変わった。飲み水を飲んだ、松江市防災安全課の林繁幸課 長は「水はおいしく飲めました。自転車はどこにでも行って水を浄化できるので良いですね」と話していた。

吉谷という会社が緊急用自転車型造水機を売っています。

毎分約5リットルと処理能力が低いのが欠点ですが、14台あれば1日100トンを超えます。値段も75万円と高いのですが、14台買っても1050万円ですから、飲料水兼用耐震性防火水槽よりもはるかに安いし、移動も簡単、学校のプールの水も使える、などの長所があります。処理能力に不満なら、毎時2トンの処理能力を有する「非常用浄水装置」(エンジン駆動)を買う手もあります。

鹿沼市内には川も農業用水路も井戸も沢水もたくさんあります。特に民間井戸の所有者である家庭や事業所と豊川市のような協定を結ぶことと緊急用自転車型造水機の組合せで、大規模震災時の飲料水の備えとしては十分と言えるのではないでしょうか。

鹿沼市議会や執行部では、震災時の防災対策として飲料水兼用耐震性防火水槽以外の方法が検討されたのでしょうか。

(文責:事務局)
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