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鹿沼市の水需要見直しはどこが間違っているのか

2005-4-20

●水需要の見直しは既になされていた

ダム反対鹿沼市民協議会は、鹿沼市に対し、水需要の早期見直しを要求してきました(思川開発事業を考える流域の会のサイト参照)が、市は、「計画の見直しは、議会で答弁しましたように、新たな水源の確保の見通しができた段階で、再調査し、必要があれば見直しについて、関係機関と協議したいと考えております」(2004年2月10日付け市長発ダム反対鹿沼市民協議会あて文書)と回答していました。

ところが、鹿沼市は「新たな水源の確保の見通し」ができていなかった2004年9月に水需要の見直しをしていたのです。

その見直しが記載されている文書名は、「鹿沼市・粟野町新市建設計画フレーム調査報告書」です。表紙と鹿沼市上水道分の水需要推計はこちら(PDFファイル192KB)です。

●給水人口が総人口を超える!?

上記報告書は、鹿沼市分の給水人口を次のように推計しています。もちろん2000年までは実績値です。
1995年 69,723人
2000年 73,154人
2005年 75,971人
2010年 80,440人
2015年 84,542人
2020年 87,873人
2025年 90,450人
とにかくグラフ(PDFファイル56KB)を描いてみましょう。2020年を超えるころには、給水人口が総人口(人口問題研究所推計)を上回ってしまいます。

なぜそうなるのかと言えば、一つには鹿沼市の推計人口を「政策人口」というトリックを使ってふくらませているからです。もう一つのトリックは、「鹿沼市上水道、粟野町簡易水道については、将来の普及率は実績の直線回帰により推計し、推計人口に乗じて給水人口としました。」という点です。

鹿沼市のように広大な面積に人口が散在している自治体では、上水道の普及率が「実績の直線回帰により」伸びていくことは考えられません。農村部は簡易水道で対応することになるでしょう。現に鹿沼市は、板荷地区住民からの上水道を引いてほしいとの要望に「簡易水道で対応したい」と答えています。

●年間総配水量も過大

新市建設計画における鹿沼市上水道年間総配水量の推計をグラフ(PDFファイル40KB)で見てみましょう。人口問題研究所の人口推計と対比して見れば、どれだけ過大な推計かが分かると思います。とにかく鹿沼市では、水源は今のままでもどんどん水が余ってきます。

●1日平均・最大給水量も過大

これらについても、実績と新市建設計画による推計をグラフ(PDFファイル52KB)で描いてみましょう。 鹿沼市の給水人口が伸びているにもかかわらず、1日平均給水量も1日最大給水量も減少しているという近年の傾向を全く無視した不当な推計です。

今回の見直しでも、2025年の1日最大給水量は、38,971m3です。現在の鹿沼市上水道の給水能力は、38,100m3/日ですから、さほど変わりません。それにしても、第5次拡張計画の50,500m3/日がいかにあり得ない数字であったかが分かります。

●負荷率は過小

まずは、鹿沼市上水道の負荷率の推計値を実績値と一緒にグラフ(PDFファイル52KB)に描いてみます。

第5次拡張計画では、負荷率を74%と推計して最終的な水需要を文字通り水増ししていたのですから、82.1%に上げたことは一応評価できますが、2003年度には84.2%を達成していること、県内のほとんどの市では85%を超えていることから、85%以上の数字を採用してもよかったと思います。鹿沼市は、上水道普及率で用いた「実績の直線回帰により推計」する手法を負荷率でも使えばよかったのではないでしょうか。

水道普及率が他市に比べて低いのが恥ずかしいからダム水を買って上水道事業を拡張すると言いながら、県内他市に比べて負荷率が低い(PDFファイル52KB)ことを恥じないのはご都合主義というものです。

●1人1日最大給水量も過大

グラフ(PDFファイル52KB)を描いてみます。今回の見直しでは、1人1日最大給水量は2005年度以降431リットルに抑えられています。

鹿沼市は、2010年には、1日最大給水量は50,500m3になる、1人1日最大給水量は561リットルになると言い続けてきました(例えば「広報かぬま」2001年5月10日号)。市民団体や議員に「過大な推計ではないか」と質問されても、過大ではないと言い張ってきました。なぜ推計値を下げたのか。市民に対してきちんとした説明があってしかるべきだと思います。

●年間有収水量も過大

グラフ(PDFファイル52KB)を描いてみます。新市建設計画は、第5次拡張計画よりはましですが、鹿沼市上水道の年間有収水量は、最近では800万m3にも達しないのに、2025年には960万m3近くまで持っていこうとしていますから、かなり無理をしています。

●有収率は過小

グラフ(PDFファイル52KB)を描いてみます。第5次拡張計画では、2010年には90%に達すると意気込んでいたのに、新市建設計画では、あっさり79.3%で頭打ちにしています。

一見、近年の傾向を見極めて現実的な数字を採用したように思えますが、そもそも近年有収率が下がったということは、有収水量は減っているのに、総給水量が減らないということであり、おかしな現象です。なぜ総給水量がへらないのかは鹿沼市に聞いてみないと分かりません。

鹿沼市では、国庫補助金を導入して、石綿セメント管の布設替えは2005年度までに、老朽鋳鉄管の布設替えは、2008年度までに完了する予定です。

さらに、配水エリアをブロック化することにより漏水箇所を発見しやすくする工事もしています。

したがって、今後、漏水量は著しく減少し、有収率は上がるはずです。もし漏水が減少しなかったら、莫大な工事費をつぎ込んだ配水管の布設替え工事は、無駄だったことになります。

鹿沼市でも有収率は、4、5年後には、宇都宮市や足利市なみに85%程度は達成できるものと見てよいのではないでしょうか。

●1人当たり年間有収水量も過大

グラフ(PDFファイル52KB)を描いてみます。近年の減少傾向を無視した推計です。

●1人1日有収水量も過大

グラフ(PDFファイル52KB)を描いてみます。近年の減少傾向を無視した推計です。


結局、新市建設計画による水需要推計というのは、科学性を無視したやりたい放題の"推計"ではありませんか。実績値を踏まえて推計したのは、上水道普及率と有収率だけです。後はすべてこれまでの傾向を無視して勝手な数字を並べていると言わざるを得ない推計だと思います。

鹿沼市としては、「勝手な数字を並べたのではない。余裕を見た数字を設定するが水需要推計の常道だ」と反論すると思います。

確かに余裕は必要でしょう。しかし、水需要推計の過程のあらゆる段階で余裕を見た数字を設定していったら、相乗効果で最終的な水需要量はとてつもなく大きな数字になってしまいます。

どれくらいの水量が正味必要な水量で、プラス何割の水量を余裕として確保するのかをはっきりさせることが市民の合意を得られる方法ではないでしょうか。行政の効率化が求められている時代に「余裕は多い方がいい」という費用対効果を無視した考え方では、市民は納得しないと思います。

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