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福田昭夫氏のダム論

2005-11-1

●福田昭夫衆議院議員が決算行政監視委員会で質問した

2005年9月11日の総選挙で初当選を果たした福田昭夫氏(民主党)が10月26日に決算行政監視委員会でダム事業について質問しました。

10月27日の下野新聞は、次のように報じています。
**********引用ここから**********
  「ダムは万能ではない」 福田氏、国交省に質問
 

衆院決算行政監視委員会が26日開かれ、民主党の福田昭夫氏が既存水利権の転用問題やダム事業の抜本的な見直しなどについて政府の考えをただした。  

福田氏はダムをめぐる環境の変化について「利水面では人口減少時代の到来で生活用水の需要は減っていく。治水面でもダムは万能ではないことが明確に なっている」と持論を展開。

(中略)

福田氏は「例えば水道水などを調整する権限を知事に与えてほしい。余った工業用水などを生活用水に切り替え、その水を県内くまなく供給でき る態勢をつくることもできる。そうすればこれ以上ダムを造らなくて済むのではないか」と主張した。 **********引用ここまで********

●福田議員の主張は3点

福田議員の主張は、次の3点です。

  1. 水需要は減る。
  2. 治水面でもダムは万能ではない。
  3. 水利権転用の権限を知事に与えよ。

福田議員の今回の質問だけを聞けば立派な質問だと思いますが、過去のいきさつを知っている者にとっては、ひっかかるものがありますし、今後の問題としても、福田議員は栃木県知事時代に思川開発(南摩ダム)に栃木県として参加を決定した以上、一般論としてダムは不要と言っても、南摩ダムだけは不要とは言わないでしょうから、その点でもどれだけ意味のある質問だったのか疑問が残ります。

福田議員には、栃木県知事をやっていたときに同じことを言ってほしかったと思います。

●福田議員の知事時代のダム問題に対する対応

思川開発事業を考える流域の会とダム反対鹿沼市民協議会は、2001年5月16日に、福田昭夫栃木県知事(当時)あてに「南摩ダム・東大芦川ダム建設に関する知事の見直し結果に対する公開質問書」を連名で出しました。

「去る5月8日、福田知事は、かねてから見直し作業を行っていたダム事業について、「南摩ダムを縮小して継続推進」・「東大芦川ダムについては引き続き調査するが、その間約2年は保留」という結論を公表されました。私たちは、この結論が知事選で掲げた公約を裏切るものであるという憤りを禁じ得ず、強く抗議します。」という文章で始まります。

質問事項への回答は、2001年6月1日付けで作成されています。

●水需要に関する福田昭夫知事(当時)の回答

思川開発事業関係の水需要について私たちは次のように質問しました。

「(栃木県による見直し結果に)思川開発事業では、下流関係県(茨城・埼玉・千葉)の需要水量・・・に見合った」とありますが、当会が調べたところ、いずれの県でも思川開発を必要とする理由が見当たりません。下流各県からは具体的にどのような需要水量が出てきたのか、明らかにしてください。

知事の回答は次のとおりでした。

下流関係3県の知事(千葉県は副知事)とお会いしましたが、総体的には水が必要と理解しました。
なお、関係県の需要水量については国で一括把握することになります。

下流県で水需要が増えることを論証できず、「総体的に水が必要」というだけです。

私たちはさらに次のように質問しました。

(栃木)県南各市町の水需要を再調査したということですが、その内容が明らかにされていません。必要水量の算出方法、人口増加の妥当な予測、一人当たり使用量にいたるまでその数字の根拠を追求し、各市町からの回答が過大であれば再計算を求める等、徹底して調査するのが、今回の庁内検討委員会の目的だったのではありませんか。実際にはどのような調査が行われたのでしょうか。(以下略)

知事の回答は次のとおりでした。

平成13年2月23日付けで関係市町あて、思川開発事業に係る水需要調査を実施し、回答をいただいております。その上で県といたしましては、各市町の要望水量について確認を行ったところであります。(以下略)

栃木県南市町の水需要に関する科学的な検証はなされていないにもかかわらず、水需要が増えるという前提で知事は思川開発への参加を決めたのです。

私たちは、鹿沼市の水需要についても次のように質問しました。

(見直しの結論では)鹿沼市の将来の水需要増分として約0.2m3/秒を南摩ダムに上乗せしています。現在の1人1日最大給水量469リットルで計算すると、約36,000人分の水です。鹿沼市の給水人口がこんなに増えるとは考えられませんが、庁内検討委員会では鹿沼市の将来人口、1人1日当たりの水道使用量をどのような根拠で計算したのでしょうか。(以下略)

知事の回答は次のとおりでした。

将来人口については、栃木県の予測値を参考に確認しており、水道使用量についても、地域的な特性を勘案のうえ、使用水量を予測しております。
また、鹿沼市の水需要は、今後の給水区域の拡大、更に、将来の地下水の転換も考慮しております。(以下略)

どうです。知事は、鹿沼市の水需要が減るなんて全く言っていないのです。

ちなみに、ここでも「鹿沼市の水需要は、今後の給水区域の拡大、更に、将来の地下水の転換も考慮しております。」と明言していることが重要です。つまり、鹿沼市は地下水源を放棄してダム水を買うという選択をすることが既に決まっていたのです。

●水利権の転用に関する福田昭夫知事(当時)の回答

私たちは水利権の転用についても次のように質問しています。

栃木県内にはすでに川治ダム、草木ダムに1.6m3/秒の未利用水利権が保有されています。近い将来、湯西川ダムでも0.6m3/秒の水利権を保有する予定です。今後、県南各市町で仮に需要があったとしても、県がすでに保有している未利用水で十分まかなうことができ、新たなダム建設は必要ないはずです。今回の見直し作業は、財政上大きな負担となる未利用水の活用方法を考えるよいチャンスだったはずです。それなのに南摩ダムでさらに1.02m3/秒もの水を保有し、今後も営々と未利用水に関する費用を支出し続けることは問題ではありませんか。財政上の観点から知事のお考えを説明してください。

知事の回答は次のとおりでした。

県内の保有水の転換についても検討を行いましたが、県が保有する川治ダムの工業用水(鬼怒工水)以外については、転換の可能性が低いと判断しました。
なお、代替水源として鬼怒工水を転換するためには相当の財政負担が必要となります。また、仮に転換しても下流関係県の需要まで対応することができません。
なお、未利用水については、将来の地盤沈下対策のための代替水源や新規の水需要に対応するため、保有していく必要があると考えております。

取りつく島もありません。知事時代の福田氏の考え方は、今回の質問内容(「余った工業用水などを生活用水に切り替え、その水を県内くまなく供給でき る態勢をつくることもできる。」)と大分違うということが分かっていただけると思います。

特にひどいのは、「仮に(鬼怒工水を)転換しても下流関係県の需要まで対応することができません。」という部分です。「下流関係県の需要」は、福田氏が「総体的に」理解した架空の水需要です。こんないい加減なものを根拠に余剰工業用水の水道用水への転換を否定されてはたまりません。

●法律をつくるのは議員

福田氏は国土交通省の官僚に対して「例えば水道水などを調整する権限を知事に与えてほしい。」と言われたようですが、筋違いのような気がします。

官僚に水道水などを調整する権限を知事に与える権限はありません。知事に水利権の調整権を与えるかどうかは法律事項と考えるべきであり、国会が決めればよいことです。

要するに、官僚支配を前提とした議論をしないでいただきたいということです。

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