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栃木市市政モニター通信への回答はどこが間違っているのか

2005-4-1

栃木市のホームページに栃木市市政モニター通信が掲載されています。2005年1月31日受信の市政モニターからの質問「70.栃木市が南摩ダムの水を買うことについて」があり、それに対する栃木市の回答が掲載されています。

質問の内容と回答は、次のとおりです。

*****引用開始*****

【内 容】

栃木市が南摩ダムの水を買うことになっているらしい、という話を最近聞きました。栃木市が水不足であるとは聞いた事がありません。

2万2000人分の水を買う予定らしいですね。それほど多くの水がなぜ必要なのでしょうか?また、その水を買う契約は水を使おうが使うまいが応分の負担金を支払うようになっているというのは本当の事でしょうか?

この財政危機の時期に不要な支出をするというのはあまりに不可解だと思うのです。

また、市民に水を買う必要性やどれほど多くの出費をしなければならないのかの周知広報はまったくと言っていいほどされていません。

水が貯まらないダムと言われている南摩ダム、全国でダム建設が見直されている現実を踏まえて、栃木市もダム水を買うのを見直すべきでありませんか?地下水汚染を心配するのは出ないお化けにおびえるようなものではありませんか?水の旨い栃木市はまずいダム水の思川開発から撤退して欲しいのですが。

【回 答】

栃木市が南摩ダムの水を買うことについてお答えを申し上げます。

本市は水需要のほとんどを地下水に依存しており、確かに、平常時では十分な供給を確保できる状況にあります。

しかし、平成8年の異常渇水時には浄水場の水位が著しく低下し、生活水の供給に支障を来たしたことは記憶に新しく、また、県内各地で地下水汚染が度々報告されていることも事実です。

このように地下水環境は不安定であり、将来にわたり市民の皆さまが安心して生活できる安全で安定した水源を確保しておくことは、危機管理という点でとても重要なことであり、当然のことであると考えています。

このようなことから、南摩ダムには、長期的展望からの水源の安定供給について期待しているところであります。

一方、社会経済情勢は急激に変化をしていることから、人口見通しの検討と併せて、適切な水需要の計画につきましては引き続き研究してまいりますとともに、今後県や南摩ダムを利用する市町村とで広域的水道整備計画が定められることになりますので、内容等につきましては適時適切に市民の皆さまに情報を提供してまいりたいと考えておりますので、ご理解をいただきたいと思います。

*****引用ここまで*****

栃木市の回答には、次の点において間違いを含めた様々な問題があると思います。

(1)「本市は水需要のほとんどを地下水に依存しており」というのは間違っています。モニターは、なぜ南摩ダムからの水道用水を買うのかと質問しています。水道用水のことを聞いています。栃木市の水道用水源は、100%地下水です。栃木市水道部のサイトをご覧ください。(リンク切れの場合はこちら(PDFファイル384KB))日量34,782m3を供給できます。揚げ足を取るつもりはありませんが、栃木市がなぜ「ほとんど」という言葉を使ったのか、 その意図が分かりません。

(2)「平成8年の異常渇水時には浄水場の水位が著しく低下し、生活水の供給に支障を来たしたことは記憶に新しく」とありますが、どこの水源でどの程度水位が低下したのか、断水したのか、給水制限をしたのか、それによって何人の市民がどの程度不便な生活を強いられたのか、渇水による不足水量はどれだけだったのか、定量的な記述が一切ありません。「支障を来した」という印象だけでダム水を買うことを合理化することはできません。モニターは、22,000人分の水を買う必要があるのかと定量的に聞いているのに、栃木市は定量的に答えていません。高いダム水を買うなら、科学的・定量的に理由を説明すべきです。

(3)栃木市が思川開発事業に参画したのは、渇水に備えるためではありませんでした。2001年5月30日付けの栃木市長から栃木県企画部長及び保健福祉部長あての文書(栃市企第91号。PDFファイル268KB)を見てください。2025年における水需要量が5,500~8,800m3/日であり、内訳は、新規水需要量が500m3/日、地下水水源転換量が5,000~8,300m3/日ということになっています。地下水水源転換量は、「地下水汚染等による代替水量分を考慮して」ということであり、渇水対策として南摩ダムの水を買うわけではなかったはずです。

(4)理論的に考えても、栃木市が渇水対策として思川開発事業に参画することは矛盾しています。渇水対策なら、既存の地下水源を放棄せずに新規水源を確保すべきです。既存の地下水源を5,000~8,300m3/日も放棄し、代わりに南摩ダムの水利権を取得するのでは、水源の水量は増えません。

(5)「平成8年の異常渇水時には浄水場の水位が著しく低下し、生活水の供給に支障を来たしたことは記憶に新しく」と言いますが、南摩ダムは5年に1回の確率で起きる渇水にしか対応できません。1996年の渇水は、おそらくそれよりも少ない確率の渇水でしたから、南摩ダムでは対応できません。栃木市は、南摩ダムがあれば、1996年の渇水のときにも、十分な水量を確保できたという証明をしていないのに、1996年の渇水を思川開発事業に参画する理由にすることは間違っています。

(6)栃木市が1996年の渇水におそらく断水することなく対応できたのは、水源が100%地下水だったからだと思います。もし、表流水への依存度が高かったら、渇水被害は大きかったと思います。

(7)「県内各地で地下水汚染が度々報告されていることも事実です」と言いますが、だから何だというのでしょうか。県内各地で河川水の汚染が度々報告されていることも事実です。「地下水汚染が心配だから地下水を水道水源とすることができない」と言うのなら、「河川水汚染が心配だから河川水を水道水源とすることができない」ということにもなるはずです。地下水汚染のことだけをあげつらい、河川水の汚染のことを言わないのはご都合主義であり、矛盾です。地下水汚染は心配だが、表流水汚染は心配でないと言うなら、なぜそう言えるのかを証明すべきです。トリハロメタン、クリプトスポリジウム、環境ホルモンの害は、河川水において、より心配です。

(8)モニターは、「地下水汚染を心配するのは出ないお化けにおびえるようなものではありませんか?」と聞いているのですから、栃木市は、地下水汚染という「お化け」がどこの水源井戸にどの程度の確率でが発生するのか、河川水の汚染より発生の確率が高いのか、どの程度の規模で汚染されると予測されるのか、汚染への対策費用はどれくらいで、ダム事業に参画するより高くつくのかを答えるべきです。

(9)「地下水環境は不安定であり」というのもおかしな話で、量的に見ても地下水は河川水よりも安定しています。降水量の影響をより大きく受けるのは、地下水よりも河川水です。地下水の方が安定しています。

(10)「将来にわたり市民の皆さまが安心して生活できる安全で安定した水源を確保しておく」と言いますが、河川水の方が地下水よりも「安全で安定した水源」であるという前提の説明も証明もなされていません。実際は、地下水の方が安全で安定しています。そうでないという証拠があるなら、栃木市が立証すべきです。

(11)「南摩ダムには、長期的展望からの水源の安定供給について期待している」と言いますが、モニターは、「水が貯まらないダムと言われている南摩ダム」の水を買うことはどうなのか、と聞いています。水のたまらないダムの水利権を確保してどうして「安定供給」ができるのでしょうか。

思川開発事業が1984〜1989年の流量データを用いて南摩ダムの水収支を計算すると、6年間のうち45%の期間はダム湖がカラになっているという結果が出ています。モニターは、こういう話を前提に質問していると思いますが、 栃木市は、南摩ダムに水がたまるのか、という疑問に全く答えていません。

(12)「人口見通しの検討と併せて、適切な水需要の計画につきましては引き続き研究してまいります」と悠長なことを言っていては、研究しているうちに南摩ダムの水を買わされてしまい、環境と財政を破壊する事業に加担することになります。南摩ダムができてから水需要予測をしても遅いのです。今すぐ適正な人口推計と水需要予測を行い、思川開発事業から脱退すべきです。

(13) モニターが「その水を買う契約は水を使おうが使うまいが応分の負担金を支払うようになっているというのは本当の事でしょうか?」と聞いているのに、答えていません。

(14)モニターは、「それほど多くの水がなぜ必要なのでしょうか?」と聞いているのに、答えていません。2010年の人口が86,000人、給水人口が80.000人、1日最大給水量が38,000m3/日、1人1日最大給水量が475リットルとする計画があるからでしょう。その計画が適正だと考えるなら、堂々と市民に説明するべきです。しかし、人口推計が過大であることはもちろんですが、栃木県内でも一人当たりの使用水量が減っている時代に、1人1日最大給水量が405リットル(2001年度)から475リットルに増えるという推計も過大であり、とても適正な計画とは言えないことは明らかです。

(15) 「市民に水を買う必要性やどれほど多くの出費をしなければならないのかの周知広報はまったくと言っていいほどされていません」という指摘にも栃木市は答えていません。答えられないはずです。栃木市自身が「1m3当たりの水利権の費用負担が不明であり、平成6年の水需要予測調査を行い、費用負担については平成11年の新聞報道で大まかにわかっただけで、本市には今までその事について何も連絡がない。今回も、積算中でわからないとのことであり、本来費用が判ってから水量の要望、決定等があるのではないか」(2001年3月2日付けの文書の資料。上記PDFファイル268KBの中)と愚痴をこぼしています。

「価格が分からない商品を買え」という話ですから、「どれだけほしいのか」と聞かれても答に窮します。栃木市は、なぜそのような無茶と分かっている計画に参画しなければならないのでしょうか。

(16)モニターは、「水を買う契約は水を使おうが使うまいが応分の負担金を支払うようになっているというのは本当の事でしょうか?」と聞いているのに、答えていません。

モニターは、
今後22,000人分の水が必要か
ダム水を使うかどうかにかかわらず料金を払うことになるのか
水需給計画を見直すべきではないのか
地下水汚染は起きるのか
などを質問していますが、栃木市はどれにもまともに答えていません。栃木市が思川開発事業に参画する道理がないということです。

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