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簗川ダムはムダ(重油を積載したタンクローリーがダム湖に転落する確率)

2005-5-18

●簗川ダム訴訟判決が出た

岩手県に県営簗川ダム建設計画があり、この計画への公金の支出について住民訴訟が提起されていました。2005年5月13日に盛岡地裁が判決を出しました。

5月14日付け毎日新聞は、次のように報じています。  

「盛岡市が03年度に県営簗川ダム建設で出資金などを負担したのは地方財政法などに反するとして、同市の住民団体のメンバー4人が、谷藤裕明市長らに対 し、斎藤勲・前水道事業管理者らに計1億9000万円を返還請求するよう求めた住民訴訟の判決公判が13日、盛岡地裁であり、高橋譲裁判長(榎戸道也裁 判長代読)は請求を棄却した。

判決は「支出時点までに簗川ダムの取水事業の必要性はかなり減退したが、全く否定されるものではない」とした。」

●徳山ダム判決より悪質

徳山ダム裁判においては、 2003年12月26日岐阜地方裁判所(林道春裁判長)判決で「なお、当裁判所は、本件水需要予測について建設大臣が平成10年12月にこれを是認した判断が、当時においては建設大臣の裁量の範囲を逸脱するものではないと判断するにすぎないものであり、現時点においてはウォータープラン21の水需要予測の法が合理的であるから、独立行政法人水資源機構としては、早急に水需要予測を見直し、最終的な費用負担者である住民の立場に立って、水余りや費用負担増大等の問題点の解決に真摯に対処することが望まれる。」と良心の呵責の一端を見せたのに対し、今回の簗川ダム訴訟判決は、完全な行政追認型判決です。

この判決を書いたのは、高橋譲裁判長ですので、名前を覚えておきましょう。

●盛岡地裁判決のどこが悪質か

「簗川のダムと自然を考える市民ネットワーク」のサイトに判決の全文が掲載されています。

「しかしながら,他方において,そもそも水需要推計は多くの不確定要因に左右されざるを得ない性質のものであって,特に将来人口の推移は都市計画等のその他の行政と密接に関連することから,その予測は非常に困難 であることは重言を要しない。また,水は人間の生活に不可欠のものであり,安定的な供給が高度に要請される一方,ダム等の水資源開発施設の建設は,計画から完成に至るまで長期間を要することから,水需要が逼迫してから対応するのでは市民生活に致命的な支障を及ぼしかねない。

そのため,水道事業者は,将来の経済,社会の発展や水源の汚染,渇水,大地震などの非常事態に対応できるように長期的な判断によって,ある程度先行的に水道事業計画を策定していかなければならない。      

こうした水需要推計の困難性及び水道事業・行政の特質等に照らせば,水需要推計を基に取水事業の中止ないし見直しをするか否かの決定に当たっては,数値上の検討に加えて多様な政策的判断が必然的に伴うものといえるのであって,その判断は,基本的に,選挙によって選出された水道事業者(本件では当時市長であった谷藤)の裁量権に属すると解するのが相当である。」としています。    

しかし、この判決のように市長に大きな裁量権を認めることは、最少の経費で最大の効果を挙げるという地方自治法や地方財政法の要請に違反し、違法な裁判と言うしかありません。

●簗川ダムはどこから見てもムダなダム

治水については、基本高水流量として7000年に一度の確率の洪水を想定していることになるし、利水については、盛岡市が水利権を取得していながら利用していない御所ダム(1982年完成、総事業費488億円)さえ必要がなかったことが明らかになっています(詳しくは「簗川のダムと自然を考える市民ネットワーク」のサイト参照)。

●簗川ダムからの取水開始は2061年

簗川ダムの異常さは、取水開始時期の遅さに表れています。通常、利水ダムは、20〜30年後の水需要を見越して計画するものですが、60年先を見越して造るダムというのは珍しいと思います。

ですから、岩手県知事や盛岡市長は、簗川ダムが完成して10年後ぐらいに「盛岡市の水需要は伸びないからムダなダムだったではないか」と言われても、「いやいや、あのダムは60年後を見越して造ったダムだから、評価を下すのは早い」という言い訳ができるわけです。

そして60年後にやっぱり簗川ダムはムダであることが判明しても、知事も市長も、簗川ダムを推進した議員も職員もあの世に行っているから責任をとりません。簗川ダムは無責任のかたまりのようなダムです。

●「二つの浄水場が同時に使用不可能」、「高位人口推計」、「負荷率最小」を想定する無理

盛岡市は、水需要を推計する際に、「雫石川御所ダム上流で水源汚染が生じ,中屋敷浄水場と御所浄水場が使用不可能となる場合で,かつ高位人口推計と最小値の負荷率を採用した場合」を想定しています。    

「そこまでやるか」というような無理な想定をしてまで水需要を創出しようとしています。そして裁判所は、そういう主張を採用して、「必要性が全く否定できない」という結論を導きます。

●「ダム湖へのタンクローリー転落」を大まじめに議論

この判決の不当さを象徴するエピソードが第1次簗川ダム住民訴訟の最終準備書面のp29(上記サイトに掲載)に書かれています。

「なお、水源汚染の確率をめぐって、盛岡市議会(2004 年3 月定例会)で 下記の質疑が交わされている。

○盛岡市議会定例会(3 月 10 日) 庄司議員のリスク対応に関する質問に 対する谷藤市長の答弁。 (谷藤市長)今回検討いたしましたリスクは、水源汚染や洪水など長期 間の浄水場停止につながる重大な災害リスクを想定したものでござい ます。一つの想定として、御所ダム上流でタンクローリー車が転落し 大量の重油が流出したことにより水源が汚染され取水ができず、御所浄水場と中屋敷浄水場が長期間運転停止となり、断水が避けられない 状況を想定したものでございます。

○予算審査特別委員会(3 月22 日) 水源汚染の可能性についての質疑。

(伊勢委員)車両事故が重視されているように思われたんですけれども、 確率的に非常に低いと私は思うんです、この資料から見ると。そのと きになぜ全協の御説明であのように、実際、油を運んでいる車両事故 が起きてという具体的なお話をなさったのかが、私ちょっと理解でき ないんですが、その辺についてちょっと御説明いただけませんでしょうか。

(水道部長)車両が走っている以上、そのパーセントは低くても事故が 起きないという断言はできない。」

徳山ダムの事業主体である水資源機構の「朝シャンとガーデニングの流行で水需要が増える」というへ理屈を思い出します。

●なぜ簗川ダムについてだけ発生確率の低い事態を想定するのか

どうです、驚いたでしょう。水源汚染について、そこまで発生確率の低いと思われる事態を想定するなら、全国すべての利水ダムでそういう想定をしなければならないはずです。なぜ、簗川ダムでだけそういう想定をしなければならないのかを盛岡市は説明すべきです。

●ダム決壊も想定せよ

そういう想定をするなら、御所ダムや簗川ダムがテロリストによって爆破された場合(映画「ホワイトアウト」はそういうストーリーであり、今や荒唐無稽な想定とは言えない)やダムが直下型地震で崩壊した場合に何人が犠牲になるのかも想定すべきです。

●重油汚染への対処なら地下水源確保が本筋

ダム湖が重油で汚染される場合を想定するなら、それによる被害を避けるためには、地下水源を確保するのが一番良いはずです。もっとも盛岡市は既に十分な水源を確保しており、更なる地下水源を確保する必要さえありませんが。

要するに、ダムを建設する理由として盛岡市の水道水源が使われているだけです。ムダなダム計画をごり押しする岩手県の増田寛也知事を革新的な知事として持ち上げるマスコミもありますが、とんでもない話です。

●盛岡市の水需要は伸びない

盛岡市の水需要は伸びないと思います。グラフ(PDFファイル64KB)を見れば明らかなように、盛岡市の人口は、2000年の288,843人をピークに減少していると思われるからです。人口問題研究所の推計は、右下がりにはなっていますが、大きすぎる数字だと思われます。

●矢巾町の水需要も伸びない

矢巾町の人口については、人口問題研究所は、グラフ(PDFファイル64KB)のように2030年までは増え続けると推計しています。

しかし、グラフ(PDFファイル64KB)のように年間人口増加数は、年々減少していますので、近い将来頭打ちになると見るのが自然ではないでしょうか。したがって、矢巾町の水需要もそう大きなものにはならないと思われます。

したがって、盛岡市と矢巾町の水需要が増えるから、ダムがもう一つ必要だという理屈は成り立ちません。

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