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水源地域対策基金事業助成金=協力感謝金とは〜嶋津暉之さんに聞く〜

2005-3-8

鹿沼市が南摩ダムの水没地区住民に支給している「水源地域対策基金事業助成金(生活環境整備対策)」(当サイト内の「水没世帯へ940万円補償金上乗せ?〜こんなのありですか〜」参照)とはどのようなものかなどについて水源開発問題全国連絡会(通称「水源連」)共同代表 嶋津暉之さんから教えていただきました。
 (*)などは、編集者。

●南摩ダムでの助成金は「協力感謝金」だった

鹿沼市役所や栃木県庁に電話で聞いて次のことが分かった。

この助成金は「生活環境整備対策助成金」という名目で、各水没予定世帯(対象は78世帯)に対して一律に940万円支出するものとのこと。総額約8億円になる。3年間で78世帯に支出する予定なので、毎年2.5億円くらいの支出になる。

直接、金を支払うのは鹿沼市であるが、金の出どころは「財団法人利根川・荒川水源地域対策基金」で、栃木県を通じて鹿沼市に来る。利根川・荒川水源地域対策基金は流域の都県(思川開発の場合は栃木県・埼玉県・千葉県・茨城県)が金を出しているので、結局は私たち、流域の人間が負担することになる。

受水予定県である栃木、茨城、千葉、埼玉県が支出に同意したという話になっているが、本当のところは分からない。

生活環境整備対策助成金は、生活再建を支援するため、防災、防犯、緑地回復等のために支出するということだが、それはあとでつけた理由であって、ダム事業に協力したことへ感謝する趣旨のカネ、いわゆる協力感謝金だ。

今回は地元の要求が強かったので、鹿沼市が栃木県を動かし、基金から金を出させることになったようだ。

●宮ケ瀬ダムでも協力感謝金が出ていた

同じような協力感謝金は宮ケ瀬ダムでも払われている。支給額はなぜか一律ではなく、条件によって異なったようで、最高1,000万円だが、はるかに少ない世帯もあったようだ。 宮ケ瀬ダムの場合、協力感謝金の総額は28億円で、神奈川県一般会計、県企業庁、広域水道企業団が負担したと聞いている。

●苫田ダムでも協力感謝金が出ていた

岡山県苫田(とまた)ダムの場合は受水予定自治体で吉井川水源対策基金をつくって、そこが協力感謝金(総額28億円)を水没予定地区住民に支出した。

協力感謝金の額は最高500万円で、移転の同意が1年遅れれば半分になり、更に遅れればゼロになるという仕組みになっており、水没予定者を屈服させる手段に使われた(*)。

苫田ダムの協力感謝金については、その支出は違法であるとして、受水予定自治体の住民が住民訴訟(**)を起こした。

(*)樺嶋秀吉(かばしま・ひでよし)氏のブログ版「チホウ政治じゃーなる」に「その一方で、(長野士郎岡山県知事は)反対派住民の頬を札ビラで叩いて切り崩しました。年の暮れに県職員が移転先選定資金として100万円を持って各戸を回り、その2年後には宅地取得資金として1世帯平均2000万円の貸し付けを始めました。さらに5年後には国の補償とは別に協力感謝金名目で1世帯500万円を交付することを決めたのです。」と書かれている。

(**)苫田ダム問題というホームページで広島高裁の判決文が読める。

●協力感謝金をどう考えるか

宮ケ瀬ダムでも南摩ダムでも協力感謝金は基本的には同じような性格であって、「ダム事業に賛成すれば金をやる」という意味のものである。

水没予定者の長年の苦しみを考えれば、このような感謝金はあってもよいのかもしれないが、一方で、地元を屈服させる手段として使われ、更にその金を私たち流域の人間が負担していることを考えれば、問題とすべきことだ。

●八ツ場ダムでも協力感謝金が出ていた

なお、八ッ場ダムの水源対策基金事業を担当している群馬県特定ダム対策課に問い合わせたところ、「八ッ場ダムについては協力感謝金のような支出は予定していないし、地元からも要望が出ていない」という話だった。しかし、鈴木郁子さんの著書『八ッ場ダム』(明石書店)p133によれば、例えば、水没予定地区については、宅地100坪、農地10アール所有の3人家族には、1世帯当たり1,030万円を基準額とする協力感謝金が支出されているとのことであり、特定ダム対策課はなぜか真実を語らなかったようである。

●湯西川ダムでは協力感謝金は出ていないのか

栃木県の水資源対策室は、思川開発のほかに湯西川ダムの水源地域対策基金も担当しているので、南摩ダムについて聞いたついでに、「湯西川ダムでも生活環境整備対策助成金を支出しているのか」と担当者に聞いたところ、そのような支出はないということだった。なぜ、思川開発にはこのような助成金の支出があって、湯西川ダムにはないのか、不可解(***)である。

(***)利根川・荒川水源地域対策基金の2004年度事業計画書には「4. 栃木県が利根川水系湯西川ダム及び思川開発施設に係る水没関係住民のために実施する生活再建対策事業に要する費用について助成を行う。」と書かれている。湯西川ダムと思川開発が並列して書かれているのに、「生活再建対策事業に要する費用について助成」のための支出が思川開発にあって湯西川ダムにないというのは不可解。

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