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人口推計における「政策人口」はなぜ不要か

2005-3-29

●「すう勢人口」プラス「政策人口」という推計手法は当たらない

人口推計をする場合に、鹿沼市や宇都宮市は、「すう勢人口」に「開発人口」や「政策人口」を加算する方法を採用しています。そうした方法による推計は、どの程度正確に将来を予測できたのでしょうか。

鹿沼市水道事業第5次拡張計画(1995年度策定)における鹿沼市による人口推計の結果と実績を照らし合わせてみましょう。グラフ(PDFファイル52KB)をご覧ください。(2005年度の実績値は、3月1日現在)

宇都宮市はどうでしょうか。宇都宮市水道事業第6次拡張計画(1998年度策定)がどのくらい当たったのかを検証してみましょう。グラフ(PDFファイル52KB)をご覧ください。(2005年の実績値は、2月1日現在)

栃木市はどうでしょうか。栃木市新総合計画資料(2000年5月13日。思川開発事業を考える流域の会のサイト参照)がどのくらい当たったのかを検証してみましょう。グラフ(PDFファイル52KB)をご覧ください。(2005年の実績値は、2月1日現在)

栃木市の新総合計画の「将来人口フレーム」には、「将来人口(案)については、平成12年から平成17年までの前記5年間は人口の減少に歯止めをかけ、現在の85,000人規模を維持するような施策展開を行う。(前記5年間は現状維持)平成17年から平成22年までの後期5年間では、人口が増加に向かうよう努力するものである。(後期5年間で2,000人、年平均400人程度の増加)」という記述がありますが、計画が達成できるとは思えません。

人口推計において、「すう勢人口」に「開発人口」や「政策人口」や「政策流入人口」を加えるという手法は、一見精緻に見えますし、理論的にも正しいように思えますが、実際には、その分だけ実績値とかけ離れる度合いを大きくしています。

もっとも鹿沼市と栃木市の場合、人口9万人以上の都市で時系列傾向分析(トレンド法)で推計すること、あるいはトレンド法を使わざるを得なかったこと自体が問題ですが、宇都宮市のようにコーホート法で推計しても、「開発人口」を加算した分だけ現実からかい離した推計になるという結論は同じです。

●当たらない推計方法は使うべきでない

当たらない推計方法を使うのはやめるべきではないでしょうか。三つぐらいの事例を見て「当たらない」と決めるのは乱暴だ、という意見もあるでしょうが、ダム事業に参加する自治体の人口推計は、こうした方法で推計しており、結果は常に過大であると言えると思います。

もし、「すう勢人口」プラス「開発人口」という手法でかなり正確に推計できた事例があるなら、そうした手法を採用しようとする自治体が推計に成功した事例があることを立証すべきです。

●「すう勢人口」プラス「政策人口」という推計手法はなぜ当たらないのか

理論的には正しいように見える「すう勢人口」プラス「開発人口」ないしは「政策人口」という枠組みを用いた推計は、なぜ当たらないのでしょうか。

一つには、コーホート法の場合、出生率や純移動率(ある地域の転入超過数が地域人口に占める割合を示したもの)などの仮定値を甘く(人口が増える方向で)設定しがちであることが考えられます。そうして算出された「すう勢人口」が過大であれば、それに「開発人口」を加算すれば、推計人口がより過大になるのは当然です。

二つには、「政策人口」や「開発人口」が自治体の目論みどおり増えないことが考えられます。なぜ、増えないかと言えば、各自治体がいわば”綱引き”をしていて、緊張状態にあり、人口が移動しないということが考えられます。どこの自治体も人口を増やそうとして、あるいは減らすまいとして、それなりに努力をして、人口を呼び込む政策あるいは流出しないようにつなぎとめておく政策を実施している、つまり”誘致合戦”をやっていますので、自分の自治体だけに目論みどおりに人口を集めることは無理です。

鹿沼市の人口は2001年以降減少傾向に転じていますが、それは現市長の怠慢のせいではないでしょう。裏を返せば、市長でも人口は思いどおりに操作できないということです。 できると思うのは「余の辞書に不可能の文字はない」と言ったナポレオンと同じくらい傲慢でしょう。

ものには原因があって結果があるものです。だから、人口の増減にはそれなりの理由があるはずです。したがって、その原因をつぶしたり、つくったりすれば、思惑どおりの結果が得られるはずです。理論的には。しかし、これまで権力が人口を”いじって”うまく運んだ試しがあったとは思えません。

人口を増やすことに頭を使うよりも、減っても困らない制度づくりに頭を使った方が得策でしょう。

●当たる人口推計をする気があるのか

問題は、当たる人口推計をする気が自治体にあるのかどうかです。自治体には、人口推計を当てる意思がそもそもないように思えます。当たらないのを承知で人口推計をしているとしか思えない節があります(「推計人口は国が地方に配分する」参照)。始めに「ダム水を買う」という結論があって、それを正当化するために行政は過大な人口推計を繰り返すのが実態であることは、調べればすぐ気づくことですが、「業者に高い委託料を払って推計しているのだから、科学的に正しい推計だろう」と思ってしまう市民が多いと思います。

善良な市民をだます魔法の杖は、「政策人口」や「開発人口」です。私たちは、いつまでもこのようなテクニックでだまされ続ける必要はないと思います。

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